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社会保険制度と農村高齢化

国が富む前に国民は年老いていく

 農民の社会保障、医療、教育、その他の公的扶助は中国社会保障制度の最大の
問題となっているが、最大のチャンスでもある。
 現在発生している農村労働力の移転、就業、農民収入増は、都市と農村の統一、
制度の公平性、システムの健全性、全国的な社会保障体制の成立が可能かどうか
に直接かかわる問題となっている。

〈悲喜こもごも 農村人口の移転による利益とは〉
 北京師範大学の張秀蘭教授は以前、公の会議上で、現在の社会保障システムの
財政見通しと制度見通しについて質問したことがある。
 「国家は、社会保険未納補てんのため457億元を投入し、各省の養老年金の調
整のため、毎年地方財政と中央財政は5000億元を投入している。都市全体で生活
保護を受けている人口は2100万人で、145億元を費やしている。農村では100億を
随時持ち出し可能で、農村の高齢者問題解決に充てている。肝心な点は、財政見
通しと制度見通しにある。未納問題をどう解消するのか?。毎年幾ら持ち出すの
か?。そして、現在、農村にはまだ、560万人の貧しい高齢者がいるが、この
457億元は20年後のために使っていくのか?それとも、現在の農村の高齢者問題
を解決するのか?」

 社会保障基金会によると、1998―2002年に中央財政が支出した「2つの確定保
険(国有企業の一時帰休者の基本生活費と企業離職退職者の基本養老年金)」と
都市の「生活保護」は1934億元に達しており、そのうち2002年は594億元を支出
している。しかし、農村の生活保護支出については言及されていない。
 張秀蘭教授はこのことに対し、1つの簡単な命題を出している。「これは財政
見通しと国家政策の政策誘導の問題であり、社会安全の問題でもある」

〈移転の利益はどこから出るのか?〉
 専門家の指摘によれば、中国は高齢化プロセスには「人口の利益」という「タ
イムラグ」があり、今後の大量農村人口の移転によって意外な「移転の利益」を
得られるという。これは重苦しい話題の中でも、まだ窮地に追い込まれていない
という一縷の希望でもある。現在、まだ準備する時間と人口移転のチャンスがあ
るのだ。

 中国科学院の国情研究センターの胡鞍鋼主任は、中国における高齢化は、2015年
を境界にしているという。
 2015年以前の全般的な扶養する人口の割合の変化はさほど大きくなく、この時
期の労働年齢人口の割合は迅速に上昇し、つまり、人口全体の負担は下がり、人
口の利益が急速に明確にあらわれる。2015年以降は、中国の人口構造に著しい変
化が発生し、中国の経済成長に対し直接重要な影響を与える。
 例えば、正規部門の離職退職者の退職費用がGDPに占める比率では、1980年の
1%から現在3%以上となっている。米国の社会保障費用がGDPの5%を占めるまで数
十年かかったのに対し、中国はたった20年もたたないうちに達成している。

 経済学者の樊網氏は、今後の大量の農村人口の移転によって、今後、意外な「
移転の利益」を得るかもしれないと考えている。

 中国は一体どれだけの農民が非農業部門に移転するのか?。中国は今後どれだ
けの農業労働人口を必要とするのか?。
 先進国において農業労働力総人口に占める割合が最も高い日本を例にとると、
恐らくわずか三千五百数万人の農業労働人口で済むと推測される。
 それでは、どれぐらいの人が非農業部門に移転しなければならないのか?。
2050年の人口が16億人と計算すると、将来の農村労働力人口は3億―3.5億人の移
転しなければならなくなる。仮にこの速度で農民が移転すると、少なくとも20―
30年要する計算になる。

 樊網氏によると、現在社会保障体系は多くの問題に直面しており、中国の工業
化の進展をおくらせてしまうことになるかもしれないと考えている。それは、毎
年1000万―1200万人が大量の若年農民が工業社会に参入するためである。
 しかし、若年層が社会保障体系に入るに従い、「未納問題」による支払い危機
の懸念を、3.5億人の農村労働力の移転の後まで、30―40年後あるいはさらに長
い時間におくらせることができるかもしれない。
 一部の人が予測している今後10年後であるとは限らない。中国の高齢化のピー
クは10年―20年後だが、現状の社会保障体制の支払い能力に問題が起こっている
わけではない。このことは、懸案の解決にチャンスと時間が与えられていると考
えることができるのだ。

 そこで、樊網氏は以下のように提案している。
 「現在、大量の民工、特に非国有企業、特に非公的部門の民工は社会保険料が
未納である。社会保険法を徹底させるべく、都会に行く若年民工をできるだけ早
く社会保障体系に組み込み、保険料の支払いを始めさせなければならない」

 中国社会科学院人口労働経済研究所の蔡日方所長は4つのモデル、異なる政策
を組み合わせて、2000年から2020年までの養老保険の負担率を試算した。
1) 現在の養老保険体制のままで、農民工の加入がない場合、社会養老保険負担
 率は44%になる。
2) 農民工を体系に組み込み、養老保険体制の改革をしない場合、社会養老保険
 負担率は36%まで下がる。
3) 農民工を組み込まないが、新体制へ移行した場合、社会養老保険負担率はさ
 らに32%まで下がる。
4) 農民工を組み込み、新体制へ移行した場合、社会養老保険負担率は25%にまで
 下がる。

 「将来の就業モデルの変化は、中国の社会保障にとっては政策準備のためのチ
ャンスとなる。現在、既に働いている農民工を養老保障体制に組み込むことは、
農民工に中国の今後の老後問題を支援させ、都市の養老保険掛金の積み立てにつ
いても労働市場を利用して軌道修正できる、チャンスである」蔡日方所長は強調
している。

〈高齢化と健康 農村の危機〉
 国勢調査のデータから見ると、中国の老後の危機は、急速、大規模、高齢化、
少子化などの問題が際立っており、また都市と農村の格差にあらわれている。
 国家人口計画生育委員会政策法規司の于学軍司長は、「第2次国勢調査で、農
村の高齢化は都市の高齢化に比べ高い地域が多いことがわかった。深刻な農村高
齢化は、農村の養老年金は5%をカバーしているにすぎないという農村の社会保障
に問題を引き起こしている」と語っている。

 人々が軽視している最も大きな原因に、農村人口の健康予測寿命が都市より低
いということがある。
 健康予測人口は新しい推測データで、主に定年退職後の余剰時間内で、健康状
態で何年過ごせるのかを計算したものである。
 13省市で行った調査結果では、中国の65歳以上人口のうち、半分が健康状態で
はなく、また、都市は多少よい状況であるが、問題の多くは農村にあった。
 農村の高齢者健康予測が比較的低い原因は、社会保障がカバーされている割合
が低くなればなるほど、高齢者の健康状態が悪くなるという、農村の医療保障に
問題が起きているためだ。

 国家の国民全体への健康関連の歳出規模から見ると、政府衛生財政支出は毎年
下がっており、社会及び個人支出割合は大幅に上昇している。
 改革開放の初期においては、衛生総費用に占める政府予算支出の割合は36%で
あったが、2000年には14.9%にまで下がった。同時に、社会支出の割合(公費医療
費)も44%から24.5%まで下がった。
 逆に、都市住民の個人衛生支出の割合はどんどん上昇している。1980年の衛生
総費用に占める個人衛生支出の割合は23%にすぎないが、2000年には既に60.6%に
達している。
 なお、農村人口の衛生費用は個人支出がほとんどであることを説明しておかな
ければならない。

 そのほか、衛生政策配置の不公平は既に農村人口の予測寿命と健康指数に大き
く影響している。
 1985年の調査では、全国で実施されていた合作医療を行う村は、以前の90%か
ら5%まで激減し、1989年には4.8%まで下がっている。
 適切な医療保障制度が成り立っていない状況下では、多くの農民が基本的に自
費で診察を受けている。病気であっても医者に行かなかったり、病気を大したこ
とがないと見て、診察が必要なのに診察を受けなかったり、入院するべきなのに
入院しない割合が非常に高くなっている。

 このことについては2度の国家衛生サービスの調査で大量のデータが得られて
いる。
1) 未診察率については、1998年に3分の1以上の農村の患者は経済困難のため診
 察を受けることができていない。
2) かなり大きな割合で、入院すべき患者が入院をしていない。入院できない最
 大の原因は経済困難によるもので、入院費の支払いが困難なためである。農村
 人口では経済困難のため入院できない割合は都市より高い。
3) 病気で入院しても、全快前にみずから退院を求める。これは、立ちおくれて
 いる農村では48%、貧困な農村ではこの割合が80%にまで達している。

 医療体制の改革は、農村、特に農村の老齢人口に対する影響が最も大きい。
 80年代中期から、都市と農村の個人収入格差が10年間拡大し続け、1994年には
最高水準を達成し、格差は2.5倍近くになった。2000年の都市と農村の個人収入
格差は2.46倍である。
 これによって、都市と農村の医療保健における支出格差は大きくなった。2000
年の農村住民1人当たりの医療保健支出は87.57元、都市の住民は318.1元である。

 改革開放後、医療業界の市場化と監督不足のもと、医療費は急激に上昇した。
農民は保障が少ないため、その利益損失がさらに大きくなっている。
1993年の農民の1人当たり純収入は921.62元、医薬費支出は27.17元であり、1997
年の農民1人当たり純収入は2208.83元、医薬費支出は70.02元で、農民の1人当た
り純収入は139.7%増加し、医薬費用は157.7%増大している。医薬費上昇は農民の
経済収入の増加を上回っている。

 2000年、企業従業員の医療保障費はおよそ600億元で、行政と国家機関従業員
の医療保険費用は600億元で、両者は合わせて1168億元である。
 しかし、これほど巨額な金額の保障費用は、全国13億の人口のわずか6%の約
7000万人の都市部住民に対してなされているものである。つまり、圧倒的大部分
の農村住民は社会医療保障が全くなく、衛生保健のすべての費用は完全に自費負
担である。
 2001年、都市部住民の可処分所得は農村住民の純収入の2.9倍であり、さらに
国家の補助による医療保障を受けることができる。農民は低収入が多く、その上
医療保健の費用すべてを自費負担しなければならない。

〈政府のなすべき手順〉
 専門家の予測によると、今後20―30年の間に、3億―4億の農村の若年層が都市
に働きに出て、養老保険を納め始めるようになる。農民を利用して、都会の人の
社会保険基金を支払わせることにより、養老保険の「未納問題」による支払い危
機の到来を遅らせると人は感じるらしい。
 現在、何とかして農民の収入を増加させ、農業税収を減らそうとしているのに、
どうして養老問題で、また農民から搾ろうとするのか?。社会保障制度の設計は
結局、都市住民のためなのか、それとも農村住民のためなのか?。

 樊綱氏は、現在直面している核心問題は、就業することによって農村の余剰労
働力をできるだけ早く移転できるかどうかにかかっていると考えている。老後問
題の最も根本的な問題は収入であり、収入には当然仕事が必要である。

 どうして、農民工の収入増加幅が小さいのか?。それは、いまだに移転してい
ない農民が、既に移転した農民の収入に対する潜在的圧力を生んでいるからであ
る。毎年一千数万人の労働力予備軍が、既に就業した民工のポストの圧力となっ
ている。これでは収入が増加するわけもない。
 樊綱氏は「十分な就業先ができた後に、収入はようやく上がり、収入格差がや
っと逆転するかもしれない」と考えている。

 農村に残った高齢者を誰が扶養するのか?。中国の人口高齢問題は農村に住む
高齢者に集中しているのかもしれない。これは最も解決の難しい問題である。若
年者は都市に行けば、少ないかもしれないが、収入はある。しかし、大量の高齢
者を農村に残すことになり、高齢化問題は農村にいる高齢者に集中してしまう。

 このため、政策選択では2つの難しい立場に立っている。樊綱氏が以下のよう
に提案している。
 まず最初にしなければならないことは、多種多様な方法で農村に住む高齢者の
ために養老保険を提供する。そして、社会的、特に非営利機構を含む、低基準、
低所得の民工が両親のために支払うことができる養老保険を設計することができ
るかどうかである。

 次に、政府は何をしなければならないのか?。現在、政府は社会保障基金を何
に使ってきたのかといえば、都会の人のためであるのが実情である。将来的には、
政府は財政支出の中から一部の資金を使い、移転人口の流出調整政策を含む、農
村貧しい高齢者の問題を解決しなければならない。
 現在、一部地方では仕事がある人だけ都市へ行くことを許可している。しかし、
高齢者はどうしたらいいのだろうか?。家庭による高齢者扶養を継続させていく
ならば、都市で働く人の両親は都市で同居させ、家庭によって高齢者を扶養させ
る方法を拡大させることが必要である。

 順序からいうと、農村貧困者の老後問題がまず発生し、警鐘を鳴らしている。
まず、これを適切に解決するべきである。それから、都市の養老基金の歴史的な
「未納問題」に解決に着手すべきであると言えよう。〔世紀経済報道5月8日〕

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