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行政効率と行政区画の再配分

行政効率を高める50の省クラス区画の成否

 中国の民政部区画地名司の戴均良司長は4月初めの香港メディアの取材に対し、
中国の行政区画改革が今年正式にスタートし、改革案は2年以内に完了すると語
った。
 戴均良司長によると、中国は50の省クラスの行政区が適当だという。それでは、
中国行政区画が50となり、行政効率の上昇を実現するのであろうか?そして、県
市はさらに大きな自主権を地域経済発展につなげることができるだろうか?

▽テーマ:50の省クラス行政区の設置は合理的なのか
▽司会者:周華公
▽ゲスト:戴均良(民政部区画地名司司長) 徐逢賢(中国社会科学院経済研究
所研究員) 周一星(北京大学都市と環境学部教授) 牛鳳瑞(中国社会科学院
都市発展及び環境研究センター主任) 劉維新(中国都市経済学会副会長)

――2001年12月31日の時点で、中国には34の省レベル行政区画(23省、5自治区、
4直轄市、2特別行政区を含む)があります。現行行政区画は中国の発展情勢に適
合しているのか、また、中国に約50の省クラス行政区画を設けるのは合理的かど
うかについてお話しください。

▼戴均良司長:中国の現行行政区画制度は、省、市・地・州、県、郷・鎮での4
段階に分かれています。
 しかし、西部の少数辺境山岳地帯は県と郷・鎮の間にはさらに県の出先機関で
ある区公所が設置されています。また、東中部地域の郷・鎮の中には郷・鎮と村
の間に管理区又は事務所が設置され、5段階となっています。
 行政管理段階の多さは、世界のトップに位置しています。
 現在、一部の省は既に県を直接管理できる条件を備えており、地レベルの管理
段階は徐々に廃止されています。現在、福建、江蘇、浙江、湖北などの省では既
に試験的に改革を始めており、地レベル市の管理機能を県に与えることを模索し
ており、良好な効果を上げています。

 中国の実情から見ると、省の規模が大き過ぎて、管理が困難で、国家の長期安
定にとってはよいとは言えません。中国の国土面積と人口から考えると、中国は
50前後の省レベルの行政区画を設置することが比較的に合理的です。
 同時にまた、省の規模縮小の必要はありますが、政治環境、経済発展レベル、
インフラ建設などの各方面の条件がそろってから実施しなければなりません。
 大規模な省の分割、再編成は非現実的で、社会の安定に影響する可能性があり
ます。また、行政管理のコストがある程度増加する可能性もあります。

 中国は世界最大の人口、世界3位の面積を持つ大国ですが、1級行政区の数は諸
外国と比較すると明らかに少ないことがわかります。
 中国の1級行政区数を50前後にすることを目標に据えると、現在を基礎として
さらに16の省レベルの行政区画を設けることになります。
 地域経済の中心配置から考えると、最少の案でも4つの直轄市をふやさなけれ
ばなりません。つまり、東北地域、華中地域、華南地域、西北地域にそれぞれ1
つの直轄市を設置することになります。

▼牛鳳瑞主任:世界の国家には大きい国も小さい国もあり、行政区画も多い国も
少ない国もあります。中国の行政区画改革がどうなっても、国土面積と人口規模
は変わりませんし、中国が農業大国であるという基本的な国情は短時間で変わる
ことはないと考えられます。
 現実的には、国家の経済発展とその行政区画にはそれほど大変大きな相関関係
は見られません。

 中国の省レベルの行政区画を50にするというのは、アメリカに50の州があるか
らでしょうか?。しかし、中国とアメリカにはかなりの人口差があります。アメ
リカの州平均人口を比較すると、中国には100の省レベルの行政区画が必要とな
ります。したがって、諸外国の行政区画数を参考にすることはできません。
 中国経済発展の当面の急務は行政区画改革ではなく、行政機能の転換であり、
管理行政からサービス行政に転換することです。

 現在の行政段階はピラミッド型のようになっています。現在、言論界で取りざ
たされている行政区画改革では、企業管理のフラットな組織モデルを志向してお
り、より多くの中間組織を取り除き、最高管理層と下部層との直接管理関係をつ
くり上げようとしています。
 しかし、軍隊で行われている三三制と同じようなことです。1つの団に3個大隊
があり、1つの大隊に3個中隊があり、1つの中隊に3個の排があり、1つの排には
3個の班があるという制度は有効的であると言えますが、1つの団に突然直接81個
の班を管理させるのは現実的ではなく、行政区画改革はこのような困難を避けな
ければならないと考えます。

▼徐逢賢研究員:現在の省の行政区画はほぼ元時代の行省制を踏襲しています。
これは、農業社会の中で生まれたもので、交通や通信の発達していない状況で統
一された大規模な中央集権国家においては、管理が簡単ですし、自給自足経済を
主とする農業社会に適しています。
 したがって、このことが現在の行政区画体制の行政効率と経済発展速度にある
程度影響していると言えます。

 中国は土地が広く、人口が多く、省レベルの行政区画が少ないため、各省レベ
ルの行政区画で所轄している面積と人口は多くなります。したがって、このよう
な省市の都市影響力を弱め、経済の波及作用に影響しています。
 同時に、行政管理コストも増加し、過剰な人口と行政事務を管理するため、各
省レベル部門には多くの機関を設置され、地レベルの市や県にも同様に上級レベ
ルに対応する機関が設立され、機関が肥大化し行政の遂行に障害となっています。

 一方、都市数が少ないことは、都市化のプロセスにある程度影響しています。
例えば、西北部の省市では、管理する地域が広く、財政上の関係で各地のインフ
ラ建設にお金を分散して使っており、最終的にはやりくりがつかない状態になっ
ているなど、インフラ建設速度も比較的緩慢になってしまっています。

▼劉維新副会長:現時点で、行政区画を単純に50の省に分けると、行政効率の上
昇と経済発展が実情と合わなくなってくると考えられます。
 市場経済環境のもとで、中国はWTO加入後、市場ニーズに従って各レベルの行
政サービスを市場ニーズに合わせていますが、多くの行政関与は経済的な目的で
なされているものではありません。このことは、ここ20年来の改革開放の実践に
よって証明されていることです。

▼周一星教授:中国の行政区画改革は、幾つかの段階あります。
 1984年に郷から鎮に変わり、1986年に県レベル市が地レベル市に、地レベル市
がさらに拡張しました。そして、現在まだ加速しています。
 現在、行政区画に大調整が行われていますが、安定的な経済発展にとっては不
利益と言えます。例えば、河南省に2つの中心ができる、あるいは河南省を2つに
分割するということですが、そのことを河南省は望んでいないでしょう。
 私は、行政区画改革による都市化推進と経済発展は限度があり、かえって経済
発展を妨げることもあると考えています。都市化は法整備が担保された中で進め
なければなりません。

 しかし、中国には現在この種の法規がありません。
 例えば、県レベル市を地レベル市へと昇格させ、地レベル市はさらに各方面へ
と拡張して、周囲の県がその区となる。この周囲の県は市になり、その近郊地域
の農民は地レベル市の市民になりますが、彼らの生産生活様式に根本的な変化は
発生しません。彼らは農民のままで、市民という名札をつけているだけです。こ
れはつまり行政区画の市街地化であり、生産生活の市街地化ではありません。

 さらに憂慮すべき点として、これらの県が市になり、市はさらに大きな市にな
り、行政権限は増大しても、市場意識や法律意識が欠如していると、管轄地域内
の資源を乱用することが予想されます。
 例えば、各県と市には開発区がありますが、これらの開発区は全く開発の効果
が得られていません。ただ都市化のシンボルとなっているだけです。開発区がさ
らにふえれば、開発区造成面積分の耕地が流失することになり、農民の不満が多
くなるでしょう。これで経済を発展させることができるのでしょうか?
 したがって、行政区画改革の第一歩は立法化にあります。

――中国を50前後の省レベルの行政区画にするという意見に対しては、皆さんそ
れぞれの御意見をお持ちですが、では、中国の国情に適した行政区画改革はどう
あるべきなのでしょうか?

▼戴均良司長:私は、行政区画改革全体として、安定維持を前提に、国家全体の
発展戦略に合わせ、経済社会の発展ニーズに対応して徐々に実行することが求め
られていると考えます。全体的な政策思想としては、省の縮小と県の合併、省の
県の直轄、市制革新、郷・鎮の自治だと考えています。

 その中でも、市制革新は重要ポイントです。
 主要な内容としては、直轄市をふやすことにより、徐々に省を小さく分割する。
市の県への管理体制を改革し、行政管理の段階レベルを減らす。県レベル市を増
設することで、農村の余剰労働力移転のニーズに対応し、大部分の農村から都市
への移転人口を受け入れ、地方の発展競争と積極性を動員し、県地域の経済発展
活力を奮い立たせることです。

 郷・鎮の廃止、統合は行政区画改革の重要措置の1つです。
 民政部は1999年から郷・鎮での業務を廃止、統合を推進し、現在25の省で完了、
郷・鎮の廃止合併は7196地域になりました。今年は6の省、自治区でこの改革が
実施され、15%ぐらいの割合で廃止、合併がなされます。
 そのほか、一部の省市の小規模な廃止、統合業務が進められており、全国の郷
・鎮の廃止、統合業務は基本的に今年中に完了すると予想されています。
 次に、中国は、小さ過ぎる市、市轄区、県に対しても適切な調整を始めていま
す。現在全国の人口20万以下の県、市轄区は720地域あり、そのうち人口10万人
以下の地域は314地域あります。わずかにある辺境地域の市、市轄区、県を除き、
その他の地域では廃止、統合の要請にあわせ、該当する行政区画はこの改革を進
めるべきだと考えています。

▼徐逢賢研究員:省クラスの行政区画改革には少なくとも東北地域、華中地域、
華南地域と西北地域の4直轄市を設置することが必要と考えております。
 こうすれば、全国8直轄市の分布が比較的バランスがとれたものになり、都市
化を速めることになり、省レベル地域の経済発展にも寄与すると思います。
 例えば、東北の大連、西北の西安、宝鶏、石河子、華南の深セン、山東の青島
などが直轄市の選定候補になると思われます。もちろん、現時点では具体的な最
終結論ではありませんが。

――新設の直轄市には、どのような条件が必要でしょうか?

▼徐逢賢研究員:新設の直轄市の条件は、経済指針だけでなく、3方面の要素を
考慮するべきです。

 まず、場所が設置のために合理的であることです。
 新直轄市は大きなエリアの中でも中心都市であるべきで、さらに今後の発展の
ための空間が必要です。また、現在の直轄市から一定の距離になければなりませ
ん。この条件を備えていないと、資源が浪費され、都市内部での消耗が増加し、
中心都市の周りの都市に対する影響力が弱まることになります。

 次に、人口が200万以上であることです。
 人口が200万人以下でなければ、地域の政治の中心地としての地位を形成しに
くくなります。これは一つの都市経済の波及効果の基礎と言えます。

 最後に、比較的強力な経済的な実力があることです。
 経済規模が全国大都市平均値の2―3倍以上で、少なくとも財政的に自立可能で
あるべきです。これも中央財政コントロール能力の要求を担保するものです。

 一般的には、この3つの条件をすべて備えて初めて直轄市を設立できます。し
かし、それ以外の、例えば政治、経済あるいは軍事などの特殊ニーズによっては、
3つの条件のうち1つしか当てはまらなくても直轄市になる可能性も考えられます。

――行政区画改革の目的の1つは行政効率を高め、中間組織の減少させることで
すが、現在中国は各方面から見て、この効果を達成していると言えるのでしょう
か?

▼劉維新副会長:現在、心配されているのは次の2点です。
 まず、一部地域では県の市への昇格、県レベル市の地レベル市への昇格を求め
る目的は、段階レベルの向上、権力の拡大にあります。
 行政区画が小さいものから大きいものになっても、行政機能は積極的な転換が
なされませんので、行政機関は簡素化されません。客観的には官吏が3分の1以上
増加し、政府機構の重複により、管理コストは増加します。

 次に、市場経済というのは、各種資源の配置は市場の優位によってなされるこ
とを求めていますが、行政区画は分けてしまうと、分けるにつれて細かくなり、
地方の壁がつくられ、分散させ、調和が困難になりがちです。
 北京と天津を例に挙げると、アメリカのワシントンとニューヨークのようには
うまく調整されていません。北京空港は忙しいのに、どうして貨物を天津空港に
転送しないのでしょうか。
 このように、50の省の区画区分は地方の壁をさらに厚くすることになるかもし
れません。
 現在、湖南省長沙、株洲、湘潭を経済圏にしようとしていますが、3つの省に
分ければうまくいくのでしょうか?
 私は、行政区画改革は非常に用心にも用心を重ね、市場と立法の状況を見きわ
めねばならないと考えています。

▼徐逢賢研究員:実は、行政区画増加後の人員と機関の肥大化を心配する必要は
ないと考えています。
 仮に50の省クラスの行政区画が実現したとすれば、16の省クラス機関が増加し、
106個の中間機関である地クラス市は減少することになるからです。
 こうすれば、指導力が比較的集中し、中央のコントロール能力を強化すること
ができ、心配される地方の壁もあらわれることはありません。我が国の法制は健
全なので、地方行政区が小さくなれば、かえって中央のマクロコントロールに有
利であると言えます。
〔中国経済週刊5月9日〕
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▽第1回 6月16日(水) 13:00-17:00 「企業経営と人材育成」「中国市場参入の具体的方法」
▽第2回 6月23日(水) 13:00-17:00 「貿易管理制度」「中国進出成功のノウハウ」
▽第3回 6月30日(水) 13:00-17:00 「中国ビジネス成功の裏技」「国内販売・マーケット戦略」
▽第4回 7月5日(月) 13:00-17:00 「物流戦略」「人的資源管理システムの構築」

・会場:ANA全日空 本社 第一会議室(汐留シティセンタービル33階)
・主催:(株)パワートレーディング  共催:(株)チャイナワーク    
・協賛:全日空、明日香出版

・お問い合わせ先:
(株)パワートレーディング TEL:03-3260-5614 FAX:03-3260-5396
(株)チャイナワーク    TEL:03-3352-3455 FAX:03-3358-4828
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