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統計のなぞと問題点

中国一人当たりGDP 4580ドルはどのように計算されたか

 2003年の一人当たりGDPが1087ドルの中国が、国連開発計画の2004年「人間開
発報告」では一人当たりGDPが4580ドルと計算されていた。
 国連開発計画の駐華代表処の高宇氏は本紙記者に対し「一国の住民の真の生活
状況に対して評価を行うとき、国際機関は通常、購買力平価を用いて一人当たり
GDPを算出するのであって、名目為替レートを用いて一人当たりGDPは算出しない」
と述べた。

 国連開発計画の発表した報告によると、中国の一人当たりGDPは4580ドルに達
し、2003年の4020ドルより14%増加した。これにより、中国の人間開発指数(HDI)
は世界177カ国中、104位から94位になった。
 しかし、正式な方法に基づけば、2003年の中国一人当たりGDPは1087ドルであ
り、名目為替レートを用いて計算するデータでは、中国の一人当たりGDPのラン
キングは110位となる。〔中国青年報8月4日〕

国家統計局GDP修正の内幕

 国家統計局は7月19日、2003年の第2四半期及び上半期の全国GDP(国内総生産)
のデータ修正を行うと発表した。
 国家統計局によるGDP修正の特別発表は初めてのことである。これはすぐに国
内外の広い関心を集めた。一部のメディアなどでは、関連部門がわざと昨年の経
済成長を高くして、相対的に今年の増長速度を減少させる、マクロコントロール
効果を操作しているのではないかと考えている。
 しかし、国家統計局は断固としてこの推測を否定している。「統計という我々
の仕事は完全に独立したものである」国家統計局国民経済計算司の許憲春司長は
言う。

〈GDP修正経過〉
 「GDPに対する修正は一種の国際慣習であり、(統計の根拠とする)資料に変
化が発生したためである」
 許憲春司長によると、調整前の2003年第2四半期のGDPデータの一部は、昨年7
月初めに国家統計局が行った緊急調査によるものである。この緊急調査の社会サ
ービス業のデータの計算でGDPデータの偏りが発生してしまった。
 2003年7月初め、SARSはまだ完全に終息していなかったものの、この突然やっ
てきた災害の、中国経済に対する影響は既に非常に注目を集めていた。しかし、
SARSが中国経済に対してどれだけの破壊性があったかについては、意見が入り乱
れていた。
 「国家関連部門もまた、SARSの本当の影響を早く知りたがっていた。もし通常
資料を採用していたら、もう少し遅くなった」

 GDP計算の1つの重要なポイントである、中国の社会サービス業の調査制度は特
に不完全なものである。
 通常の方法では、国家統計局は必須関連資料とデータ取得を待たなければなら
ず、その後に、ようやく計算することができる。
 しかし、通常資料とデータがおくれていたため、7月初めに作業を開始するこ
とができず、7月15日まで待たなければならなかった。
 できるだけ早くSARSの影響を反映するため、その他の資料がない状況で、国家
統計局は新しい調査方法を試みた。

 許憲春司長によると、「国家統計局は緊急調査プロジェクトをスタートさせ、
主にSARSの影響が大きかった社会サービス業の調査を行った」という。
 社会サービス業には宿泊業、観光業、理容・美容業、娯楽業、公共旅客輸送業、
タクシーなどが含まれている。
 この緊急調査は2万以上の企業を調査サンプルとし、国家統計局調査センター
が企業の上半期の営業収入に対して調査を行い、最終的に営業収入が14.8%減少
という結果を得た。
 通常統計との偏りが発生する可能性があると考えられたので、「新しい資料と
データに対して確認を行ったところ、サービス業の下降幅が実際には過大評価さ
れていたことを発見した」
 「国際統計局が財政決算データ、部門会計データなどの営業税、労働者報酬、
財政支出などに関連するデータを取得したことにより、昨年第2四半期と上半期
の社会サービス業を含むその他サービス業のデータの修正を行った」
 社会サービス業の営業収入の変動から、さらにGDP成長率の変化へというのは
とても複雑な過程であるが、データの調整過程で、今回の社会サービス業調整の
影響が見られたという。

 緊急調査の結果では、2003年第2四半期のその他サービス業は前年同期比で6.8%
のマイナス成長、さらに第三次産業は前年同期比で0.8%増、GDPは前年同期比で
6.7%増であった。
 現在、2003年第2四半期のその他サービス業、第三次産業とGDPの前年同期比の
データは、それぞれ7.9%、5.7%、4.5%増に調整されている。
 これによって、2003年上半期のこの3項目のデータも0.4%、4.1%、8.2%から、
8.8%、6.5%、6.0%と修正されることになった。
 この修正により、2003年第2四半期のその他サービス業、第三次産業、GDPはそ
れぞれ1.5%、3.7%と1.2%の上昇となった。

 許憲春司長は、この偏りをつくり出した原因は、当時の統計資料不足とSARSに
よる社会不安の影響によるものだと考えている。
 当時、SARSはまだ完全に過去のものになっていなかったため、SARSの恐怖が中
国経済を悲観視させていた。「この種の悲観的な考えは実際に大多数の調査対象
に影響しており、統計局の調査人員でさえも影響は大きかったと考えられる」
 許憲春司長は「現在の正確な資料でこそSARSの中国経済に対する影響はさほど
大きくなかったと言えるが、当時は確かに悲観的だった」と語っている。

〈統計制度の大変革〉
 厳密には、国家統計局は今回初めてGDPデータに修正を行ったのではなく、1994
年にGDP成長率を11.8%から12.6%に修正している。
 しかし、統計局がこれまで修正したのは年度データだけであり、四半期のデー
タに対する修正、作業の制度化の修正は今回が初めてである。
 発表されたばかりの昨年第2四半期と上半期GDPデータの調整は、統計制度の変
更によるものである。

 2003年11月、国家統計局は「中国GDP計算とデータ公表制度の改革について」
という文書を発表し、2004年1月1日から新しいGDP計算と公表方法を規定している。
 許憲春司長によると、2004年以前は、GDP四半期のデータ修正に対する明確な
制度がなく、年間GDPに対しても、厳格な定期的修正、調整の構造の確立もして
いなかったという。このため、2003年第2四半期のGDPは修正と調整が行われてい
なかった。

 2004年から、新しいGDP計算と発表制度が実施され、新しい制度のもとで、国
家統計局ではGDPデータ計算と発表制度の大幅な改革を行っている。
 国家統計局は、2004年以前のGDP計算体系とデータ発表には不合理なところが
あり、これも、国内外が中国GDPとその成長率を疑っている理由の1つとなってい
ると考えている。
 年間GDPの不合理な点は、12月末に発表した予測データが統計データと間違わ
れやすく、信頼度と厳粛さを失っていることと、すべての基礎資料が集まった後
に、GDPの絶対値だけを修正し、成長率のデータを修正しないことがよくあり、
これが国際慣習に合致したものではなく、中国の経済発展の実情も反映しにくく
なっているということが挙げられている。
 このため、国家統計局は、年間GDP計算を概算、中間確認、最終確認の3段階に
分けることを決定した。
 概算は1月20日、中間確認は統計年報の資料を基礎として計算し翌年の9月、最
終確認は翌々年の5月と9月に分けて発表されることになった。

 許憲春司長は、四半期GDPデータにおいても重大な改革が行われていることを
明らかにした。
 国家統計局は、四半期データは見積もりが比較的多く、四半期GDPに対して修
正を行わないのは国際慣習に合致していないことで、年間GDPと誤差ができ、偏
りを発生させていると考えている。
 このため、四半期GDP計算も概算、中間確認、最終確認の3つに分けて、それぞ
れ公表することを決めた。
 概算は、主に統計資料を基礎として計算され、四半期のそれぞれ15日後、中間
確認は、さらに全面的に資料を基礎として計算され、四半期のそれぞれ45日後、
各四半期の最終確認は、年間GDP最終確認データと各四半期のGDP中間確認のデー
タによる調整され公表されることになった。

 四半期のGDP計算とデータ発表に対する重大な調整については、直接には2003
年第2四半期のGDPデータ修正公表の際に初めて行われた。
 この重大な調整について、許憲春司長はさらに国際慣習に合わせていくという
考えだ。「アメリカなどでは、いつもデータ修正を公表している。実際には、中
国も以前にデータの修正を公表したことがあるが、特に公表しなかっただけであ
る。データの修正は統計年鑑を見ればわかることである」

〈7省を巡回 データの正確性を保証〉
 国家統計局の今回のGDPデータ修正に対し、海外の一部で疑問が出されている。
 それは、国家統計局の昨年第2四半期GDPのデータ修正は、外部からの影響によ
るもので、わざと今年上半期のマクロコントロール効果を見せているのだと疑っ
ているためだ。
 これについて、許憲春司長は否定している。決して特殊な目的があるわけでは
なく、「いかなる影響を受けていないことを宣言する」と表明している。
 「統計はデータどおりである」ここ数年、国務院は国家統計局の統計データの
品質向上を大変重視しており、国家統計局に圧力を加えたことは一度もないという。

 許憲春司長の話には根拠がないわけではない。
 関係筋によると、今年7月6日重慶で行われた初めての国際シンポジウム上で、
国務院関係者は今年上半期のGDP増加を10%以上になるだろうと予想した。しかし、
その時点では、上半期の統計データはまだ最終的には完成していなかった。7月17
日に国家統計局が公布した上半期GDP増加は9.7%にすぎなかった。
 これは、一つの側面から見ると、中国の統計作業の独立性を示すものである。

 しかし、軽視できないのは、以前からずっと国家統計局の公布するGDPデータ
と地方の報告データに大きな差が存在するということである。統計データの真実
性を保証するため、国家統計局は統計方式でも努力をしている。
 許憲春司長は言う。「実際には、国家統計局が地方から報告されたデータを完
全に取り入れるのではなく、多くのデータは国家統計局が直接調査したものであ
る」「例えば、農業統計では、国家統計局の直属農村調査チームが800以上の県
に対して直接に調査を行っている」
 この調査方法は細微にわたり、一つ一つの田畑の測量や直接刈り取った食料の
重さをはかり、そのサンプルの生産高から全国の食料生産高のデータを計算して
いる。

 「GDPはデータの積み重ねではない」許憲春司長は言う。GDPは等級別に計算を
実施されるもので、国家統計局は全国GDPデータを計算し、地方の統計局は当該
地区のGDPデータを計算する。
 そのほか、国家統計局は、航空、郵便、電信、鉄道、金融、保険などの関連部
門から基礎資料を収集している。

 地方データの正確性を高めるため、昨年から、国家統計局は毎年大巡回調査に
よる統計を実施している。
 許憲春司長によると、「2003年、国家統計局は広東、山東、江蘇の3省を選び、
巡回調査を実施した。もし問題が発見され、データが事実と異なる場合は責任を
追及する」
 今年も巡回調査中で、現在、国家統計局は既に浙江、上海、河北、四川の4省
に対する抽出検査を完了し、今後は河南、遼寧、陝西を計画している。「国家統
計局は次第に統計制度を改善し、徐々に統計データの正確性を高めている」
〔21世紀経済報道7月27日〕