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中国所得格差考察

中国の所得格差をどう考えるか? 3学者インタビュー

 中国経済を観察するとき、2本のグラフが特に注目される。
 一本は下がり続けているエンゲル係数である。豊かになってきている中国家庭
では、食品支出の総支出に占める割合はさらに小さくなっている。
 もう一本は上昇を続けているジニ係数で、わずかな上昇でも人々を悲しませる
ことになる。それは、13億中国人の所得格差がますます大きくなっていることを
意味するためである。
 最近発表された北京市統計局の報告では、北京の1人当たりの可処分所得格差
は2000年の3.1:1から2003年の4.7:1まで拡大している。この発表によって、所
得格差問題が再びクローズアップされている。
 中国のジニ係数は警戒線に接近しているのか?。貧富の格差という問題をどの
ように考え、解決するべきなのか?。蘇海南氏、趙人偉氏、岳希明氏の3氏に聞
いた。
<ジニ係数は「世界中どこにでも適用できる」警戒線がない>
《中国経営報》:最近、北京市統計局は北京住民に対し、北京市の所得分配状況
のサンプリング調査を行った。しかし、国際的に通用しているジニ係数は採用さ
れていない。現在の中国人の所得格差、特に都市・農村間の所得格差をどのよう
に推定すればいいのか?
▼岳希明氏:サンプリング調査では、一般的に収入の多寡によってグループ分け
がなされ、これを基礎として、あるグループの平均収入と別のグループとの比率
(通常は最高グループと最低グループでの比較)から所得格差を考察し、貧富の
格差を決める。
 この方法は簡単で、イメージしやすいため、比較的に受け入れられやすいが、
中間グループを軽視している。ジニ係数ではらに正確な実情が反映される。
▼趙人偉氏:所得格差の考察方法はとても多いが、現在国際的に比較的に通用し
ているのはジニ係数である。ジニ係数はローレンス曲線を基礎にして計算された
ものである。ジニ係数が0であれば、絶対平等である。ジニ係数の数値が1であれ
ば、絶対不平等である。国際上ではやっている見方では、ジニ係数が0.4―0.5な
らば所得格差が比較的に大きく、0.6以上は所得格差がかけ離れている。
 昨年3月に中国社会科学院経済研究所の所得分配プロジェクトチームが発表し
た調査レポートでは、2002年の全国のジニ係数は0.454、都市内部のジニ係数は
0.319、農村内部のジニ係数は0.366である。
《中国経営報》:国内外の統計では、中国の現在のジニ係数は国際警戒線に接近
しているか、上回っていると発表している。ジニ係数で中国の所得格差を考える
のは果たして中国の国情に合致しているか?
 これに対し、経済学界では、中国には都市と農村の二重構造が存在するため、
国際的に通用しているジニ係数は中国には適さないという見方があった。あなた
は、この問題に対してどう思うのか?
▼蘇海南氏:世界の多くの先進国では、ジニ係数で国民所得の格差を判断してい
る。しかし、これは厳格に言うと、実際には画一的に処理できない問題である。
 例えば、北欧の一部の国家では、ジニ係数は0.3以上で、格差が既に偏ってい
る。米国では0.4以上で格差が大きいと考えられている。実際、米国は0.47以上
である。ブラジル、アルゼンチンなどの一部のラテンアメリカ国家では、ひどい
ところでは既に0.5、0.6以上にまでなっている
 国家はそれぞれ社会収入の不公平の境界線に異なった判断をしている。このた
め、ジニ係数による住民収入状況の判断は、一つの計算の方法として使用できる
が、それぞれの国家の実情を考慮するべきである。
 第一に、ジニ係数で計算することができる状況にあること。第二に、国際的に
幾つかの先進国が取り入れている0.4の警戒線を簡単に模倣してはいけないこと
である。簡単に模倣すれば、住民収入の客観的な分析を間違った方向に誘導して
しまうかもしれない。
 結局、ジニ係数は「世界中どこにでも適用できる」基準ではない。
▼趙人偉氏:中国全国のジニ係数について、各種の調査で異なった結果が出てい
る。国家統計局のデータでは約0.4、中国社会科学院の経済研究所課題グループ
のデータでは0.454、南開大学の研究では0.5を上回っている。国際上では、ブラ
ジルと南アフリカのジニ係数は0.59にまで達している。
 しかし、ジニ係数では1つの国家の収入状況を画一的に処理することはできな
い。中国は都市地域と農村地域の格差がとても大きい国家である。つまり、社会
的均質性のとても低い国家と言える。
 このような国家では、ジニ係数が他の国家より多少高くなることを許容するべ
きである。中国の実情で、ジニ係数が幾つなら警戒線を上回っているのか、現時
点ではまだ権威ある基準がない。
 二重構造のもとでジニ係数を使って全国の所得分配状況を考察できるのかどう
かについては、私は可能だと考えている。全国のジニ係数を計算するべきであり、
また、それぞれ都市と農村のジニ係数も計算するべきである。この3つのジニ係
数がそれぞれで異なっているという問題を説明するためである。
<金持ちがさらに金持ちになり、貧乏人がさらに貧しくなるのはなぜなのか?>
《中国経営報》:望むと望まざるとにかかわらず、貧富の格差は現実に存在して
おり、中国の貧富の格差が迅速に大きくなっている主な原因は何であろうか?。
所得格差の拡大についてどう考えるか?
▼蘇海南氏:改革開放から国民経済の発展に従い、一部の人は合法的な経営で先
に裕福になり、所得格差はさらに大きくなりそうな趨勢を呈している。これは両
方面から見るべきである。
 一方面は、所得格差の拡大には合理性と必然性があるということだ。以前は収
入が余りに平均しており、このような状況は人々の積極性と主動性を奪っていた。
一部の人が先に豊かになるという政策が、所得格差の急激な上昇を招いた。
 また一方面では、政策法規が不健全、不完全な上で、社会主義市場経済がさら
に加わり、軌道を変更しているという特殊な時期にあり、一部の管理上・政策上
の問題があらわれ、収入のさらなる格差を招いているということだ。
▼趙人偉氏:所得格差の拡大を3つの段階に分けるべきであると考えている。
 第一段階は、改革の成果である。
 平均的に分配し、一律に同じ待遇を受けるという状況を打ち破ったことは、個
人収入を大きく上昇させ、社会に対し比較的大きな貢献があった。これは改革の
成果と言える。
 第二の段階は、改革につきものの代償である。
 例えば、80年代後期、価格の二重制を利用し、裏情報をつかみ不当な利益を得
る人がいた。これはある程度は改革の複雑性のために支払われた代償だと言える。
 第三の段階は、避けることができる代償である。
 例えば、90年代には権銭交換(金と権力を交換する)で、特別に裏情報を得て
暴利をむさぼり、不動産開発でこのような状況が著しくなった。このような状況
は別に避けられないことではない。
▼岳希明氏:全国の所得格差の拡大は、低収入グループの収入状況が悪化したわ
けではなく、高収入グループが超高度成長したからである。特に、一部業界が急
激に発展し、高収入グループを増加させた。
 反面、都市での、ここ数年の大量の一時帰休・失業現象も、大量の低収入グル
ープを生み出している。
<調和がとれている社会をつくり上げるためには「二極分化」は軽視できない>
《中国経営報》:中国は歴史的に「少ないのは問題ではないが、不公平は問題で
ある」という考え方がある。不公平と腐敗が普遍的な現象となったとき、社会安
定の殺傷力はいつ噴出するかはわからない。貧富の格差の増大は、社会と経済に
幾つかの不安定な要素をもたらしているのではないか。
▼岳希明氏:所得分配の不平等の社会問題への影響は、収入の不平等それ自身の
問題ではなく、不平等をつくっているものに原因がある。
 新中国建国以来、人々は長い期間、平均主義の所得分配政策を経験した。改革
開放以後は能力差により所得格差が生まれているが、圧倒的多数の人は受容でき
ている。
 しかし、私たちの社会には不正常な所得分配現象が存在しており、所得分配の
要素に影響している。例えば、都市と農村間の一部の政策性の不均衡、汚職腐敗
などの醜い現象などである。
《中国経営報》:貧富の格差には西側諸国の経済のいずれもにある、普遍的な社
会問題で、法律手段でこれに関与しており、そのうち税収調節は軽視することが
できない。
 現在の中国の現状について一体どの方面に力を入れるべきだろうか?「富んで
いる者を殺して貧しい者を助ける」という問題をどう評価するのか?
▼蘇海南氏:所得格差拡大の問題は随分前から中央ではとても重視されてきてい
る。中国共産党第16回全国代表大会では明確に「都市と農村の格差、地域差、労
働者と農民の格差の拡大状況を少しずつ転換させる」という目標を出している。
目標は発表しているけれども、短期間で根本的な転換は困難である。
 収入格差を緩和する方法を熟考すれば、その傾向をおくらせ、徐々に格差を縮
小することができる。肝心な点は、経済は調和し発展し続けなければならないこ
とである。また、発展過程の中でさらに社会の公平な発展に関心を持たなければ
ならないことである。そして、低収入グループの収入の上昇に適切に力を入れ、
法律に基づいて高収入グループの収入を調節し、中級収入グループを拡大させな
ければならない。
▼趙人偉氏:本当に解決しなければならない問題は、やはり経済体制の改革を徹
底的に行うことである。同時に、政治体制改革をさらに進めることである。また、
権銭交換が招いている貧富の格差の増大という現象を減らすことである。
 つまり、私が常に言ってきた市場収入の分配、政府収入の再分配である。
 政府の再分配には、主に2つの方法がある。1つは税収で、もう1つは転換支出
である。税収を通して富裕層からお金を集め、それを転換支出として一部の貧困
層に補助金を支払う。
 現在の政府作用は余り大きくないことから、今後、政府は再分配機能を働かせ、
政府行為によって貧富の格差を縮小させるべきである。わかりやすく言うと、
「多いところから抜いて少ないところを補う」ということである。
 「多いところから抜いて少ないところを補う」ということは、「少ないところ
から抜いて多いところに補う」ことを防止し、反対することでもある。比較的に
長い時期、都市と農村間で実行されたのは「少ないところから抜いて多いところ
に補う」で、経済学の上では「逆再分配」と呼ばれる。
▼岳希明氏:弱者層への保護措置は整ってきている。税収は最もよいバランスを
調節しなければならい。税収が高くなればいいというわけではなく、低ければい
いというものでもない。このバランスは、富裕層がさらに努力して働くことを保
証しなければならない。補償措置にもバランスがあり、経済学の方面からいって
も最もよいバランスがあるはずである。〔中国経営報1月15日〕