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「貧困」の蘇州

「貧困」の蘇州 GDP成長の影で広がる格差 上

    月落ち烏啼いて 霜天に満つ
    江楓漁火 愁眠に対す
    姑蘇城外の寒山寺
    夜半の鐘声 客船に到る
 古詩の中での蘇州は、深い文化と重厚な歴史を持つ地域である。市内の繁栄と
寒山寺の静寂、経済発展と思想の変化、静かな夜景と鐘の音、すべてがまざり合
う絵のように美しい情景である。多くの矛盾したものが混在しているのにもかか
わらず、調和がとれており、人々の心をつかみ放さない印象を残す。
 今の蘇州も、同様に幾つもの顔があり、同様にいろいろな音がまざり合う。GDP
の成長や外資が殺到しているが、それも「張子の虎」でしかなく、民族ブランド
は消失している。優遇政策やサイエンスパークが建設されてはいるが、資源を代
償とした外資導入型経済にすぎない。施政業績を上げるためのプロジェクトと政
府主導的経済が蘇州モデルであるが、一般市民の貧困と幹部との格差が新しい
「2元構造」となっている。
 蘇州の成果は誰の目にも明らかだ。「都市の顔は日進月歩で新しくなっていま
す。またインフラと社会事業は日増しに整備されており、庶民の生活水準は急速
に高まっています。この業績は外資によるものであることを忘れてななりませ
ん」と言う人もいる。
 また、大変に合理的な蘇州モデルは中国の国情にかなっている。資金導入によ
って経済の飛躍を実現することができ、コントロールしやすいのだから、このモ
デルを普及させる価値はある。
 しかし、蘇州経済の繁栄の背後にあるものは何か。一般市民は貧困で、「世界
の工場」は土地、環境の代償を無理やり背負わされ、「蘇州モデルは実際には現
地の民衆にとっては悲劇なのです」と言う人もいる。
 繁栄と貧困、どれが蘇州の真実の顔なのだろうか?
〈蘇州の「貧困」調査〉
 この数年の蘇州の経済成長は大変注目されている。2005年の統計データによる
と、蘇州は全国の大中都市GDPランキングでは、上海、広州、北京に続いて第4位
である。蘇州の外資導入の規模は上海や深センを上回り、全国の各都市のトップ
である。
 しかし、1つの都市経済の「神話」が誕生するに従って、多くの専門家、学者、
メディアなどによる疑問の声は大きくなっている。
 最も代表的なのが、重慶市の黄奇帆常務副市長が中欧国際商工業学院で行った
講演で発表した見方である。
 「蘇州の1人当たりのGDPは5000ドル以上ですが、都市住民の1人当たりの平均
収入は1万数千元がやっとでしかありません。1人当たりGDPが同程度の規模の上
海では、1人当たりの平均収入は2万数千元です。1人当たりのGDPが1000ドルしか
ない重慶でも、都市住民の1人当たりの平均収入は8000元を達成しています。蘇
州は典型的な「張子の虎」だと言えます」
 この見方は幾つかに集約することができる。
1) GDP増加と1人当たりの平均収入の不均衡
2) 一般市民と地方政府公務員の所得格差
3) 土地と環境による代償
4) 外資の中国ブランドへの割り込み
5) 世界の工場という立場
 これらから導き出される最終的な論点は、経済の高成長の背後にある「貧困」
の蘇州があるということだ。
 しかし、事実はどうであろうか?。また、蘇州現地の人々はこれについてどの
ように見ているのだろうか?。それともただ周りから見ただけの主観的な評論な
のだろうか?
 「財経文摘」は、このことについて、初めて蘇州に関する調査を行うことにし
た。
〈GDP増加は私たちには関係ない〉
 今年51歳の孫宝慶さんは4年前に下崗され、現在蘇州市のある大通りの住民委
員会の職についている。みずからの生活については比較的幸運だと思っていると
いう。以前の企業が年金に加入していたので、60歳からは毎月年金をもらえる。
 「私は比較的に幸運で、6年前に家を買って、ローンも完済しています。家を
買ったときはまだ安かったのですが、今では何十倍もの価格に膨れ上がっていま
す」
 さらに「下崗の後、仕事が見つからず、家に病人を抱えているような大変な家
もあります。ある人は区画整理のため強制的に建物を取り壊されて、立ち退きさ
せられました。多くの人が住んでいる家は古いし面積も狭く、政府の補助金では
新しい家を買うには全然足らず、郊外の隣町との境の家でさえ買えません。本当
にどうやって暮らしていっているのか想像もできません」
 蘇州の急速な発展について言及すると、孫宝慶さんは、都市の建物を見れば、
蘇州は発展しており、国際的なブランドも次から次へと上陸しているが、恩恵を
受けているのは政府の役人と外資企業の幹部だけだという。「私たちのような一
般市民は大して関係ありません」と総括している。
 「GDPは私は全く関係ありません。GDPの膨張がどうしたっていうんですか、私
の給料は全く上がっていません」蘇州に出稼ぎに来ている人はため息をついてい
る。
 1人当たりのGDPと1人当たり可処分所得に巨大な格差が存在し、現在の蘇州で
行われている工業生産によってGDPを増加させるという粗放式の経済成長モデル
では、経済を急速成長させ、住民の実質的な所得増加に結びつけることは難しい。
 蘇州の輸出志向型経済は「大家の経済」と言えるもので、良好な投資環境を提
供し、外国企業に頼る発展である。労働者は出稼ぎを主体としたものである。蘇
州が手に入れたのは「苦労」だけで、「利潤の優位性」を手に入れられなかった
だけではなく、さらに政府税収もわずかでしかないのだ。
 李応国さんは蘇州で働き始めてもうすぐ10年になる。故郷は黒龍江で、北京の
大学を卒業している。李応国さんは「蘇州の一般住民の収入がGDPより低いこと
ははっきりしています」と話す。李応国さんは「外から見た蘇州」という文章を
書いており、蘇州人の収入を一覧できるようにした。
 旧市街区域(平江、滄浪、虎丘)の住民の収入は少なく、大部分が1000―3000
元の間だ。自分で会社を経営している人も少なく、旧市街区域の小さい店舗をや
っている人の収入の同等以上から2倍程度ではあるが、基本的にそれはすべて地
元以外の人である。普通の蘇州人はやりたがらないからである。
 新区、園区、呉中区のブルーカラーの収入は約1000元、ホワイトカラーは通常
2500元以上で、4000元前後が大多数を占めている。多い人は何万元もの収入があ
るが、ブルーカラー、ホワイトカラーとも地元以外の人が多数を占めている。
 蘇州の最低収入のグループは、新区と呉中区の台湾資本企業に勤務している人
で、例えば、新区の一定規模の台湾資本の企業(数万人)では、多くのライン労
働者は16歳で、月給は600元である。残業代もとても安く、毎日12時間働いても1
カ月の給料は1000元ぐらいでしかない。
 相城区は蘇州鉄道の北にあり、交通が不便で、収入も余り高くないと考えられ
る。
〈若者にとっての蘇州の意味〉
 趙然さんと費亜軍さんは2人とも大卒で地方から蘇州に来て、蘇州で3、4年働
いている。蘇州の発展の原因は、蘇州は公園スタイルの建物でつくられている都
市で、優美な環境、清新な空気、比較的広い緑地面積にあるからだと考えている。
しかし、ここには飛躍のチャンスが少なく、職種が少ないという。
 趙然さんは「蘇州の都市としてのリズムはかなり遅く、惰性に流されやすいで
す。若くしてここでの生活の時間が長くなると、向上心が浪費されることになる
かもしれません」という。
 蘇州が若者に対してどんなチャンスを与えたかと聞くと、費亜軍さんは「外資
企業が比較的多く、特に台湾資本の企業がかなり多くあります。台湾資本の企業
の職場は低レベルで技術的な価値がない発展性の少ないものです。若者の創造力
を発揮するチャンスは限られるし、若者ではハイレベルの管理ポストで学ぶこと
ができないため、若者の国際化管理の理念や管理経験を学ぶ機会も限られていま
す」と答えている。
 若者には上昇できる余地はなく、給料もそれほど高くなく、生活もストレスが
あるが、蘇州では不動産業者や企業の高級管理者が蘇州の富裕層と言える。
 費亜軍さんは「ここ数年の住宅価格の上昇は急激で、蘇州の住宅価格は数年前
には1平方メートルで約1500元でしたが、最近では4500元以上に値上がりしてい
ます。高い物件では1平方メートルで6000―7000元にもなっています。何部屋も
ある家の場合、部屋を貸して収入を得ている人もいます。
 台湾人は、一般的には会社の上層階に住み、高い給料をもらっていて、生活は
比較的優遇されています。地元以外の人と蘇州の一般労働者の生活は大変です」
〈公務員が一番恩恵があるのか?〉
 経済の急激な発展過程において、公務員は利益を大きく享受しているグループ
だ。統計によると、蘇州の公務員の平均年収は6万から8万元で、収入水準とGDP
増加が同時に成長している。
 同時期の一般企業の従業員の年収は1万5000元から1万8000元ぐらいで、一般公
務員の年末賞与金にほぼ相当する金額で、両者の開きは4、5倍にまで達している。
 具体的な収入については、多くの人ははっきりと言えないという。蘇州のある
機関に勤務している林さんは「実際に幾らもらっているのかは言えませんが、公
務員の福利厚生は比較的よいということはよく知られています。公務員の有給休
暇は必ず取るように指導されており、私は勤続年数が8年なので、毎年7日間の有
給休暇があり、さらに休暇を取ると1日150元の補助金が支給されます」という。
なお、現在、有給休暇の強制取得制度は中止されている。
 ホームページで蘇州のネットユーザーの書き込みを見たことがある。その人は
昨年大学を卒業し、ある外資の貿易会社に就職した。毎月の給料は1300元、住宅
積立金が200元、ボーナスはない。彼の父は公務員で、月給は5464元(1000元の
交通費と1000元の手当を含む)、住宅積立金が1146元、季節ボーナスが年間で
25000元、年末ボーナスが30000元、年間の祝日手当が5000元だという。
 蘇州での所得格差は地元の人の公務員人気を誘発している。公務員試験への熱
狂はほかの都市と比べてかなりすさまじいものである。
 孫凱さんは蘇州大学の4年生で、現在公務員試験のために準備をしている。
「想像できないかもしれないけれども、今年公務員を受験する人は多過ぎです。
受験の申し込みはすべてネット上で行われているのですが、今月初めには申し込
む人が多過ぎて、2日間コンピュータのシステムがダウンしてしまったのです。
それで、2日間期日を延ばして3月7日までを期限としたのでよかったですが、も
う少しで申し込みさえできないところでした!」
 公務員への熱狂的な出願は、一般市民と公務員の間の所得格差にあると考えら
れるが、公務員たちはこの現象をどのように評価しているだろうか?
 「現在の蘇州経済発展は、主に輸出志向型経済が牽引しており、政府が行った
仕事は誰の目にも明白で、経済指標に最も如実にあらわれています。同時に、近
年、政府機関は社会治安の維持、総合的管理の強化、調和がとれた社会の建設な
どの問題でも、能力を強めています。
 私個人の見解ですが、私の収入はかなりふえていますが、同時に仕事の内容や
責任もふえ、収入に比べて仕事の内容はハードになっているかもしれません。厳
格な審査指標、明確な経済指標があり、学習も求められています」53歳の女性で、
蘇州滄浪区の公務員である鐘敏芬さんは言う。
 この数年、公務員の給料は何度も調整され、昇給は比較的に速い。蘇州の公務
員収入への非難に鐘女史は納得できないという。
 公務員の周さんもこの意見に賛成だという。周さんは「会社の社長が本当に利
益を得ているのですよ。公務員の給料は決まっています!せいぜい毎年10数万元
で、子供を海外に留学させればなくなってしまいます」という。
 鐘敏芬さんは、発展的な観点で一般市民と公務員の所得格差を評価しなければ
ならないと思っている。
 「今のような輸出志向型の経済成長モデルは、間違いなく共同富裕化と地域経
済の健全な成長を目標としています。現段階では、私たち公務員の収入増加が比
較的に際立って見えるかもしれませんが、わいろをなくすために高給にし始めた
という段階なのです。
 蘇州市の各政府の措置は一つ一つ実行され、調和がとれた社会へと着実に発展
し、蘇州の投資環境は絶えず改善されています。ですから、今後は間違いなくも
っと多くのさらにすぐれた外資を誘致することができれば、整った産業チェーン
がつくられ、ほかの業界でも大幅な収入増加が始まるだろうと考えています」
 鐘敏芬さんの同僚の胡女史も「外資企業は都市に活力を与え、都市それぞれに
発展の時期は必然的にある程度外資企業に重点が置かれることもあります。政府
が関連政策を制定することもより重要な意義があると言えます。現在、企業を誘
致し資金を導入するチャンスが来ていますから、都市経済発展のためにそれ相応
の政策支援は絶対に必要です」も話している。
(次号に続く)
〔財経文摘4月5日〕