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中国に迫り来る高齢化社会の波

上海の高齢化は「世界レベル」 上

 上海は現代化の最前線にあり、高齢化の波が現代化ともにやってきた。
 上海市の周太〓副市長は「現在の上海の高齢化は、先進国家レベルにありま
す」と言う。
 現在、中国の高齢者人口は総人口の7%前後だが、上海では19.58%にも上る。こ
の数字は上海の5人に1人が高齢者であることを意味する。そして、この割合は今
後さらに上昇すると見られている。
 19.58%が高齢者という数字は、世界でも高齢社会の「先行」国である日本の22%
と肩を並べたことになる。
 しかし、近年の上海経済は急速発展にあり高齢化問題に注目が行かなかった。
豊かにならずに高齢者となったり、高齢者福祉システムが未成熟であるというふ
うに個人や社会による原因もあり、経済的発達都市である上海はこの新しい問題
に挑戦しなければならなくなっている。
 現在、上海市政府は既に高齢者事業を「第11次5カ年計画」の社会経済的発展
の全体枠に組み入れている。上海は率先して「ロマンスグレー経済」をはぐくみ、
新しい市場の開発と商業チャンスを誘発し、さらに中国が高齢化問題を解決する
ための参考となる模範を示そうとしている。
〈高齢化した上海〉
 「幼いころに走り回った街角はなくなり、近代的で快適な大きな家に最近引っ
越しましたが、かえって老け込んだような気がします」上海静安区の王沙花苑に
住む張秋芳さんは、自宅の前庭の椅子に座って、のんびりとした顔つきで淡い感
傷に浸っていた。
 張さんは1940年生まれ。幼少期は「石庫門(1920―30年頃の市民の共同住宅で、
古き良き時代をしのばせる上海独特の建物)」で過ごし、青春時代は「上山下郷
(文化大革命の後期に、中国共産党が組織的に大量の都市在住の「知識青年」を
都市から農村へ移住させた政治運動)」、壮年期は「大返城(「上山下郷の結果、
必然的に大量の知識青年が都市へと帰った」)、それぞれ時代の世の中の移り変
わりや世の中の大きな変化が彼女の人生に大きな痕跡を残している。
 「国際的には65歳からが「高齢者」、今年66歳の張秋芳さんは、高齢者になっ
たばかりです」上海理工大学社会学の王波教授はこの取材者に特別な配慮が必要
だという。「張秋芳さん、あなたと一緒に上海も世界レベルの高齢者社会になっ
たんですよ」
 張秋芳さんの近くに住む黄浦区山北居住者委員会の周暁路さんの息子と娘は外
国に住んでいる。一昨年夫を亡くし、典型的な「独居老人」である。周さんは今
年71歳で、髪に白いものが多くなっているものの、地区の事務をしており、地区
の高齢者への日常生活の手配が彼女の仕事の最も重要な部分を占めている。
 アルビン・トフラー(Alvin Toffler)の著書「未来の衝撃」にある「情勢は
どんどん悪化している。はっきりとわかる前に手おくれになってしまうだろう」
という言葉は、人を驚かせるためだけのものではない。今の上海は、目には見え
ていないけれども、どんどん重くなっている人口の高齢化という負担を背負って
いるのだ。
〈上海の高齢化は「世界レベル」に〉
 上海は経済の急激な発展により、既に世間の注目を集める結果を残している。
しかし、この都市の建築者は「毎日どんどん高齢化している」ことには無頓着だ
った。20年以上の高齢化の累積により、10年間の人口マイナス成長をもたらし、
上海の高齢化速度は毎年どんどん進んでいる。
〈5人のうち1人が高齢者〉
 4月3日、上海市は上海高齢者人口情報を発表し、初めて上海市高齢者の各般の
経済生活データを公表した。
 今回発表されたのは、2005年の上海市高齢者人口状況の基本的データで、2005
年末に行われた追跡調査を基礎とし、上海市公安局が上海市全体の戸籍から高齢
者人口のデータを体系化し、分析したものだという。
 発表された情報では、2005年末までの上海市の総人口は1360万2600人で、その
うち60歳以上の高齢者人口は266万3700人で、前年度より5万5900人増加している。
また、総人口の19.58%を占めており、前年度より0.3%増加している。
 4月11日に王波教授は取材に対し「このデータは、上海市民の5人に1人が高齢
者、その上毎年増加傾向にあり、上海市の高齢者化は全国平均よりかなり高いで
す」「国家統計局の統計によると、現在の中国高齢者人口は総人口の約7%でし
た」と答えている。
 国連が今年2月に発表したデータによれば、世界の高齢化が「先行」国である
日本の高齢化率は22%としていたが、上海の高齢化は既に日本の水準と並んだこ
とになる。
 「中国で最も早く高齢化が進む都市として、上海は人口の高齢化問題に直面し
ており、現在上海の人口高齢化は先進国のレベルにあります」4月19日、上海市
周太〓副市長は取材に対し、率直に答えている。
 2002年、国連は高齢者人口基準を65歳まで上げており、人口学では65歳以上の
人口が総人口の7%以上を占めると高齢社会と呼ぶ。上海は早くも1979年に65歳以
上の高齢者が既に7.2%を占め、中国で最も早く高齢社会へと歩みを進めていた都
市であった。
 同時に、上海は10年連続人口がマイナス成長を続けており、上海地区の高齢化
をさらに加速させる原因となっている。
〈市中心街は新市街地より高年齢化している〉
 上海市高齢委員会は上海市人口及び計画出産委員会の直属にあり、上海の高齢
事業の発展方針、政策、計画、高齢社会に絡む問題について調査研究し、提言を
行っている。
 この上海市高齢社会委員会から提供された最新資料では、上海市の高齢者人口
の分布は「ピラミッド」型構造になっていることがわかる。
 65歳以上の高齢者人口は203万6700人で総人口の14.97%を占め、70歳以上の高
齢者人口は151万3300人で11.13%、75歳以上の高齢者人口は89万人で6.54%、80歳
以上の高齢者人口は43万7700人で3.22%、60歳以上の高齢者のうちの16.43%を占
めている。100歳以上の高齢者は合計600人で、昨年より52人ふえている。そのう
ち男性が132人、女性が468人である。
 また、上海市高齢委員会によると、上海市中心市街地の人口高齢化は新市街地
や郊外県より高い。2005年末の上海市の人口高年齢化が高い上位3地区は、静安
区(22.89%)、盧湾区(22.43%)、崇明県(21.57%)である。
 ただ、新市街地と郊外県における人口の高齢化の速度は早く、上位3地区はワ
ースト3は、奉賢区(+0.78%)、金山区(+0.61%)崇明県(+0.51%)である。
 上海市中心市街地の人口高齢化率は郊外県より高い。2005年末のデータで、60
歳以上の高齢者人口のうち80歳以上が占める割合が高い上位3地区は、黄浦区
(21.77%)、静安区(21.40%)、盧湾区(21.36%)である。
 上海市全体では18の区県で人口の高齢化が進んでいる。増加幅が大きいのは、
黄浦区(+1.30%)、閘北区(+1.24%)盧湾区(+1.21%)である。
〈高齢者の生活状況 郊外地区は市街地ほどよくない〉
 高齢者の生活状況から見ると、市内と郊外の差はかなり大きい。市内の高齢者
は比較的密集しており、生活条件も同様に比較的成熟している。しかし、郊外の
高齢化率は市内より低いが、生活のレベルは低い。
 調査を行った結果、市街地と郊外高齢者の生活レベルに差があることがわかっ
た。
 3月17日、上海郊城区嘉定区(嘉定県)で74歳の季さんに取材をしたところ、
年収を教えてくれた。
 季さんと70歳の妻は2人とも退職しており、2005年の季さんの年金は合計1万95
10元、李さんの妻は年金とパート収入で2万6900元、原稿料と利子が2110元、そ
の他に投資収入が1200元で、世帯収入合計は6万1684元であった。
 上海の2005年の労働者の月平均賃金は2万6820元で、3人家族の1人当たり収入
は9075元であった。季さんの家の家族1人当たり収入は合計3万842元で、上海の
平均収入の2.5倍、中流階級の経済状態と言える。
 しかし、浦東開発区での調査は全く違うものであった。
 3月21日、浦東開発区機場鎮の望三村党支部と村の高齢者支部の協力で、この
村の70歳以上高齢者の現況について調査した。
 この調査はアンケート調査、面談調査、座談会などの方法で実施し、アンケー
トは100件のうち、97件を回収している。専業農家が59人で全体の60.8%を占めた。
97人のうち夫婦2人暮らしが35人、ひとり暮らしが25人、2世代同居が1人、3世代
同居が23人、4世代同居が13人であった。80―89歳が38人で全体の39.1%を占め、
90―99歳が5人で1%を占めた。
 年間経済収支状況によると、余裕があると答えた人が15人、ぎりぎりと答えた
人が16人、足りないと答えた人が22人、無回答が44人であった。
 高齢者福祉保障体制は100%に達していた。97人のうち、農業保険は59人で60.8%、
社会保険が25人で25.8%、征田労働保険が12人で12.4%、鎮保険が1人で1%であっ
た。また、合作医療加入者が59人で60.8%、社会保険加入者が38人で39.2%占めた。
 農業保険を受けている高齢者は2005年7月から毎月年金として190元を受け取っ
ており、最低水準の生活を維持している。8人が社会救済と医療援助を受けてお
り、22人は年齢からくる体の衰え、医療費、付き合いなどが原因で赤字となり、
程度はさまざまであるが生活は困難だという。子供などから経済上の援助を受け
ているのは10人にすぎない。
 ここ数年、望三村の経済成長は急速で、農村の高齢者への関心も高く、党支部
の議事日程に入っている。この村の党支部では、2002年から高齢者のために誕生
日ケーキを贈っている。また旧正月、敬老の日、酷暑期には、専業農家の高齢者
に見舞い金などが贈られている。
(次号に続く)
〔中国経済週刊5月12日〕
注)〓は、「丹」にさんづくり