戦略転換迫る外部要因
人民元 対米ドル7ドル切る 給料を人民元支給に変えるところも
人民元を米ドルに両替する為替相場に注目が集まる中、8日、ついに1ドル=7元
の水準を切り、8日の早い段階で初めて1ドル=6.9995元まで上昇したが、上昇幅は
ある程度小さくおさまり、終わり値は1ドル=7.0015元だった。
米ドルとペッグしている香港ドルは8日、100元=90香港ドルの大台を割り、仲値
は1香港ドル=0.89884元、つまり100香港ドルで90元未満の人民元しか両替できな
くなった。
人民元の米ドルに対するレートの仲値は年内で既に30回の史上最高を記録してい
る。2007年末のデータで計算すると、2008年以降人民元の累計上昇幅は既に4.33%
に近づいている。
香港の市場取引従事者は、人民元は引き続き上昇するものと見ており、今回の仲
値もしくはまた7の大台を突破すると考えている。恒生銀行の馮孝忠総経理は取材
に対し、人民元の上昇幅は現状から見ると依然として市場の需給問題いかんだとし
ている。目下、人民元上昇が特に加速するという兆しはない。
〈中国大陸部の香港の高齢者専門サービス老人ホームは人民元決済に〉
人民元上昇に伴って、多くの香港人から各日用品の値上がりの早さに苦情が漏れ、
また、トイレットペーパー、おむつ等の中国大陸で生産されている日用品も値上が
りの中に含まれるなど、値上がり範囲が非常に広範になっている。
そして、中国大陸での、香港の高齢者の老人ホーム専門サービスにも経営問題が
発生している。
東莞のある老人ホームの経営者は記者の取材に対し、当該老人ホームは主に香港
の高齢者のサービスを行っているため、香港ドルでの支払いを受けているが、人民
元高と中国大陸の物価上昇という二重の圧力に直面し、老人ホームの日常的な支出
が増加しているとしている。
先週、老人ホームは人民元での料金徴収、つまり約1割り増しに改めた。担当者
は、「高齢者にさらなる圧力を与えるように感じるが、やむを得ない事情もある。
もし料金を上げなければ、老人ホームは閉めざるを得なくなるかもしれない。そし
て、老人ホームが閉鎖されれば、これらの香港の高齢者は居場所を失うかもしれな
い」と述べている。
目下数名の香港人が中国大陸の老人ホームが閉鎖されたために香港に戻ってきて
おり、香港の社会福利署が暫定的にこれらの香港に戻ってきた高齢者を収容している。
為替レートは香港の慈善事業にも影響を与えている。
あるボランティア団体によれば、昨年の中国大陸での災害支援、貧困扶助の支出
は予算より1割増になり、組織の経費の中で補う必要が出てきて、その後の業務に
影響が出たと指摘する。
紹興にある老人ホーム伸手助人協会の黄炳財副総幹事も、昨年は料金徴収基準を
調整しなかったが、今後数カ月後には、人民元による料金徴収に変更し、コスト上
昇を補うかもしれないと示す。
復康会の林巧香副総裁は、深センで香港人のための老人ホームサービスを提供し
ているが、為替レート上昇に直面し、今人民元での料金支払いにするか、差額を徴
収するかを検討していると示す 。
救世軍のコミュニティーリレーション部の王国清部長は、中国大陸部の慈善業務
計画は往々にして計画を実行する数年前に賛助を受けているため、計画後に為替レ
ートが上昇してしまえばやることができなくなり、組織の慈善基金から補助するこ
とになると示す。
また、幾つかの香港企業では中国大陸部の香港人に人民元での給料支給を始めて
いる。
「為替レートについて、我々は昨年から関心を持っていた」陳さんは香港上場企
業の中国大陸部の支社で仕事をしている。昨年12月期の企業人事部の管理職層会議
が香港で開かれ、「その会議の後、会社が支給する給料の方式が調整され、現在は
一律で人民元支給になった」〔南方都市報4月9日〕
「2007年日系企業イメージ調査研究レポート」
ソニー、東芝、トヨタなどの52社の在中日系有名企業に対するレポートで、3分
の2の企業に対する尊敬度は10%以下であった。 発表されたばかりの「2007年日系
企業イメージ調査研究レポート」は、雑誌「中国日企」が北京益派世研資訊有限会
社と共同で行ったものである。
このレポートは2007年10月1日からの半月間、有効回答数が2089件のアンケート
によるもので、北京、上海、広州、成都、瀋陽などの10の都市で行われた。
北京益派世研資訊有限会社研究部の梁円総監督はこのレポート結果を意外に感じ
たという。
「在中日系企業の最新活動」と「社会貢献活動」に対して「知らない」という回
答が44.3%と30.3%であった。「企業の不祥事」について「知らない」と答えた人は
12.3%にすぎなかった」梁円総監督は、これは明らかに「好事門を出ず、悪事千里
を走る」ということわざのとおりだと言う。
〈3分の2の在中日系企業への尊敬度は10%以下〉
現在、在中日系企業数は2万社以上で、1000万人近くの従業員がいる。日系企業
の中国での投資拡大につれて、その影響力も日増しに高まっている。日系企業のシ
ェアは伝統的な家電産業以外に、自動車、IT、食品飲料、化粧品などで高まり始め
ている。
その一方、在中日系企業の知名度と尊敬度は相応の評価を受けておらず、企業イ
メージやブランドイメージは頻繁に発生する事件や不祥事報道によって被害をこう
むっている。
今回のレポートで最高の尊敬を集めたのはソニーで65%、第2位は松下の46.1%、
続いてキヤノン、トヨタ、ホンダが30%以上で、東芝と日立が20%以上であった。
また、52社の有名日系企業のうち、消費者の尊敬を10%以上集めたのは15社にす
ぎず、その他の37社は10%以下であった。
調査された企業の知名度は全般的に高く、鮮明な対比をなしている。
一方、半分以上の日系企業の知名度は50%以上で、ソニー、松下、東芝、日立な
どの知名度は90%以上であった。
「在中日系企業にとって再考すべき調査結果だ」梁円総監督は、企業の尊敬度は
企業の社会貢献に密接にかかわり、企業の知名度は企業の製品品質と広告宣伝と関
連していると分析している。
〈企業不祥事が日系企業のイメージに強い影響を〉
また、このレポートによると、企業不祥事が消費者の日系企業に対する評価に強
く影響している。
ここ数年、在中日系企業の製品で次々と品質問題が起こっている。例えば、2006
年にソニーのノートPC電池による発火爆発事件、2006年のトヨタレイズ(REIZ/日
本名マークX)の油漏れ事件、2005年のホンダの結婚用アコード事件などの不祥事
が相次いでおり、中国消費者の日本製品に対るす信頼は揺らいでいる。
アンケートで取り上げられた在中日系企業の不祥事に対して、「知らない」とい
う回答はわずか12.3%で、ほとんどの消費者は日系企業の不祥事について詳しく知
っていた。
梁円総監督は、頻繁に発生する事件は日系企業のブランドイメージに損害を与え
ており、自然と消費者の尊敬度も減っていると見ている。
それ以外にも、在中日系企業の社会貢献度は高いとは言えず、そのことも企業イ
メージや名誉に影響している。
15項目の代表的な社会貢献活動において、日系企業が社会活動に貢献しているこ
とを「知らない」という回答は30.3%に上っている。
「松下が2008年北京オリンピックを協賛している」ことを「知っている」という
回答した割合は36.5%で最も多く、その次は富士通杯の囲碁競技会で認知度は33%。
「東京三菱UFJ銀行国際財団育英奨学金制度」の知名度は最低で、わずか2%にすぎ
なかった。
この結果でわかるように、日系企業のブランドと企業イメージ関連の広報活動は
よい効果を挙げているとは言えない。
レポートによると、在中日系企業の社会貢献活動と知名度は比例しており、一般
大衆の在中日系企業の不祥事に対する認知度はとても高くなっている。このことは
不祥事を起こした企業のイメージだけでなく、すべての在中日系企業に対するイメ
ージにかなり大きなダメージを与えている。
〈どうすれば消費者の尊敬を得ることができるのか?〉
外資系企業の大量中国参入と中国企業の実力上昇に伴い、中国での市場競争は日
増しに激化している。企業は技術上の優位性だけでは消費者の十分な信用を得るこ
とができず、長期的な発展は困難だと言える。
欧米企業や中国企業と比較して、日系企業の不祥事が消費者に強い影響を与えて
いることは軽視できない。
在中日本有名企業の尊敬度が低いのは、日中関係が敏感なことと関係があるという。
レポートでは、日本を「どちらかというと好き」または「好き」と回答したのは
わずか19.2%にすぎない。
「調査対象者は日本製品を基本的には認めているが、社会貢献や環境保護などの
企業の外部交流に対する評価はかなり低い」梁円総監督は言う。
企業イメージを高めるために、日系企業は市場調査に力を注ぐべきだと梁円総監
督は提案している。
広告効果、マーケティング効果、特殊事件などをリアルタイムで調査し、事件発
生後即座に予測される最大範囲での消費者への影響を把握する。そのことが不祥事
に対する評価、予測となり、企業がとるべき解決策と実施計画プランを決定するた
めの直接的な根拠になるという。
最近では、大規模な広告宣伝や積極的な広報活動、多種多様な社会貢献活動など
でイメージアップを図る日系企業がだんだんふえている。「どのようにして中国で
良好な企業イメージを確立し、中国一般大衆の信頼を得たらいいのか。このことは
在中日系企業が直面している1つの重要な課題」梁円総監督は言う。
〔中国青年報3月31日〕
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―――――――――――――――――――――――――――― 李 年古 著 ―
日本人には言えない
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―――――――――――ISBN 4311603290 四六判 216頁 本体1680円 学生社
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