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違法労働行為と採用差別問題

富士康は強制残業等違法行為のオンパレード 調査報告

 「富士康調査総報告」によれば、富士康は法律を遵守するイメージを一貫して
公衆の面前で出してきたが、実際には、一連の法規・規則違反を行っていた。
 富士康は重大な法令違反、すなわち中華人民共和国労働契約法、中華人民共和
国職業病予防法、中華人民共和国労災保険条例、広東省高等教育機学生実習見習
条例などの法令法規違反を犯していた。
〈強制残業、違法残業――労働契約法違反〉
 労働契約法41条によると、工場における一月当たりの残業時間は累計で36時間
を超えてはならない。
 しかし、富士康作業員1人当たりの1カ月の残業時間は「飛び降り事件」が発生
した時点で優に100時間を超えており、事件後でもなお80時間以上であった。労
働契約法規定を極めて大幅に超えていたことになる。
 名目上は自主的残業としているが、実際は月初に作業員に「自主残業協議書」
への署名を求めており、実質的には強制残業であった。もし作業員が署名を拒め
ば、丸々一月の残業機会を失うこととなり、かつさまざまな懲罰を受けることと
なる。
〈残業手当から天引き――労働契約法違反〉
 飛び降り事件後、富士康は80時間までの残業時間に対し手当を支給し、それを
超える残業時間には手当を支給しないことを厳格に定めた。
 しかし、毎日10時間の作業時間内に生産額を達成できない場合には、管理者は
全生産ラインに対して残業を命じることもあり得るとある作業員は言う。
 労働契約法第44条第1項では、会社が労働者の就業時間を延長する場合、100分
の150を下回らない額を支給しなければならないとされている。富士康は労働契
約法の残業時間の規定に違反するばかりか、さらに得られるべく残業手当を天引
きしていたことにもなる。
〈学生工の酷使――実習見習条例違反〉
 富士康は多くの工場でひとしく学生工を大量に酷使し、ある職場では学生工が
50%にも達したことがわかった。
 例えば、深セン龍華CMMSG事業群では、一職場の2600人中700―1000人が夏休み
の学生工であった。昆山廠区外仲介所によれば、夏休み中のアルバイト学生1万
人が工場で働いたという。この廠区の全体の労働者数は6万人であった。廊坊工
業区には3万人余りの作業員が働くが、そのうち5000人が学生工であった。
 若年の実習生並びに未成年作業員に対して、富士康は一般の作業員と同様に扱
い、月80時間を超える残業を課し、かつ夜勤勤務を強いて、3週間もしくは1カ月
ごとの交代勤務とした。
 広東省高等学校学生実習見習条例第22条第5項によると、学生の実習は週40時
間を超えてはならないとされている。富士康はこの種の厳しい残業を学生に強い
ており、同条例違反の程度は甚大である。
〈職業安全危険を無視――労働契約法、職業病予防法違反〉
 労働契約法第54条によると、危険作業に従事する労働者は定期的に健康診断を
受けなければならない。
 また、職業病予防法第32条によると、職業病の危険のある業務に従事する労働
者に対して、会社は国務院衛生行政部の規定に基づいて、当該職場に従事する前、
従事する間、当該職場から離職時に健康診断を受けさせなければならない。
 富士康のある電気メッキ工は16年にわたり当該職場に従事し、長期にわたり鉛、
ニッケル、シアン、アンモニア等の有害物質に接してきた。
 しかし、就業期間中、規定に従った定期健康診断を受けることはなかった。ほ
んの2度ほど職業予防スクリーニングを受けたのみで、血液中の重金属項目検査
すら実施していなかった。
 富士康は、この種の作業員の健康、生命、安全に係る行為を無視し、重大な法
律違反を犯していた。
〈労災事故の隠ぺい――労災保険条例違反〉
 労働災害処理では、生産工程における3級管理者が共同して労災事故を隠ぺい
したばかりか、けがをした作業員には私的な事故であることを強いた。このため、
損害賠償は不十分で、労災保険条例の保護を受けることができなかった。
 病院への取材でも、けがをした多くの作業員は管理者から労災認定を許されず、
医薬費用を立てかえる必要があったり、中には立てかえ能力がないために傷が悪
化したケースもあったと話した。法定の労災補償が得られなかったことは言うま
でもない。
〔漢網―長江日報2010年10月8日〕

大学生は求職時に多くの構造的差別に直面 下

(前号より続く)
〈凌肖さんの不遇〉
 健康差別というのは、就職者が出くわす最も一般的で最も深刻な差別観念である。
 中国人のうち、約1.3億人はB型肝炎ウイルス保有者で、彼らと健康な人のグル
ープとは余り大きな違いはない。B型肝炎ウイルスは血液や母子、性行為を通じ
て広まるだけで、日常の接触で感染することはない。
 しかし、「調査報告」によると、20.45%の採用部門は大学生求職者が非ウイル
ス保有者であることを要求している。
 凌肖さんは健康なB型肝炎のウイルス保有者の一人である。
 彼は大学入試の1カ月前、B型肝炎の「小三陽」(HBsAg、HBeAb、HBcAbが陽
性)であると診断された。
 凌肖さんの高校のクラス担任は、B型肝炎ウイルス保有者について何も知らな
いのに、凌肖さんに2つの全く科学的根拠のない話をした。一つは「あなたは長
くは生きられない」。もう一つは「たとえあなたが大学に合格しても、彼らはあ
なたを必要としないだろう」。
 クラス担任の話を聞いて、凌肖さんは意気消沈し、そのとき、自分は本当にも
うすぐ死ぬのだと思った。その後、凌肖さんは大学入試に合格し、河南の地方大
学に入ったが、入学半年後も彼の心は「死んだと同じ」だった。
 たまたまチャンスがあって、凌肖さんは病院で検査することとなった。「医者
は、私が正常な人と同じように生活していくことができると話した」
 このときになって、凌肖さんはようやくB型肝炎ウイルスを保有していること
は割と一般的な現象だと知った。
 真相を知った凌肖さんは引き続き苦学したが、各方面での成績はずば抜けてい
た。しかし、大学4回生で卒業間近になり、彼の心配が再びあらわれた。採用部
門の入社健康診断でB型肝炎項目を検査するかもしれないからだ。
 人民保険部と衛生部はかつて以下のように規定を明文していた。「国家の法律、
行政法規、衛生部規定が従事を禁止する職業以外は、B型肝炎ウイルスの血清指
標を健康診断の標準とすることを強行してはならない」しかし、現実には、この
規定の実行は実現からほど遠かった。
 凌肖さんは、上海へ仕事の機会を探しに行くことに決めた。かつて、勇気を奮
い起こして人材募集市場に行き、自分がB型肝炎保有者であると採用部門に伝え
たことがあったが、先方はこれを知るとあっさり断ってきた。
 凌肖さんは上海である民営企業の販売職務を探し当てた。2009年12月末になっ
て、新しい仕事のチャンスが目の前にあらわれた。
 欧陸検測技術サービス(上海)有限会社(欧陸会社)は外資の検査認証会社で、
本部はベルギーのブリュッセルに位置し、年間売上高は約8億米ドルである。欧
陸公司は2009年11月に中国に進出し、大規模な人員募集を行った。
 凌肖さんが欧陸グループに略歴を送り、高級販売エンジニアに応募したところ、
先方から面接試験通知を受け取った。3回の面接試験の後、欧陸グループは電話
で凌肖さんを採用することを告げ、電子メールで確認をしてきた。
 確認メールの中で、欧陸公司は、凌肖さんに入社健康診断を行うことを求めた。
 2月4日、凌肖さんは欧陸会社が指定する病院、上海市閘北区市北病院(市北病
院)に行き、健康診断を行った。
 病院の健康診断リストには「B型肝炎表面抗原」(HBsAg)の検査項目があり、
凌肖さんの検査結果は陽性であった。
 病院はこの状況を凌肖さんの入社健康診断報告に記入し、欧陸公司の採用部門
に報告した。
 欧陸公司の採用部門は、凌肖さんの健康診断結果を知った後、凌肖さんの出勤
到着報告日時をおくらせた。
 2月9日に凌肖さんに送られたメールで、欧陸公司は次のように表明している。
「近く会社組織が構造的調整を行う予定で、弊社はある職に対する募集を取り消
しており、その中にこの販売職も含まれます。弊社は販売員の採用を一時停止し
ます」
 皮肉なことに、凌肖さんが友達に頼んで電話をかけ、欧陸公司に同一職務の募
集情報を問い合せたところ、先方は「販売員の採用を一時停止」しておらず、引
き続き募集していた。
 凌肖さんは、欧陸会社は彼がB型肝炎ウイルス保有者であるという事実を知っ
た後、採用を許可しないことに決めたと考えている。これは典型的なB型肝炎の
差別行為であり、彼は裁判所に対し、欧陸会社と健康診断を担当した市北病院を
起訴することに決めた。
 凌肖さんの代理弁護士の説明によると、市北病院は凌肖さんの個人プライバシ
ーを採用部門に知らせ、原告のプライバシー権を侵害し、また、欧陸公司の採用
部門は原告の就職平等権と一般人格権を侵害した。記者も欧陸公司に電話したが、
先方はコメントを拒否した。
 「中華人民共和国就業促進法」第30条特別規定には「採用部門は人員を募集す
る際、伝染ウイルスの保有者であることをもって採用を拒絶することはできな
い」とある。
 凌肖さんが3カ月間調整に奔走した後、上海市閘北区人民法院はついにこの案
件を受理し、8月に正式に開廷して審理することになった。
 しかし、凌肖さんの弁護士は「差別を受けた大学生はとても多いが、本当に望
んで、あえて法的手段を通してでも権益を保護する大学生は大変少ない」とコメ
ントしている。
 通常、仕事を探す過程で、大学生には就職差別の証拠を収集するという意識は
なく、このことが裁判所が案件を受理し、最終的に勝訴する確率を大きく下げて
いる。
〔21世紀経済報道2010年9月26日〕
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