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農民工を市民にするためのコスト

1人の農民工の市民化に必要なコストは約8万元 上

 「中国農民工市民化――社会コスト視点での研究」著者の張国勝博士は、「目下、
農民工市民化の進展が緩慢なのは、表面的には戸籍制度、雇用制度、社会保障制度、
都市・農村土地制度等二元体制改革の停滞であるが、根本的な原因は、やはりこれ
らの制度を改革するのに支払う相当な社会コストにある」と見ている。
 国務院発展研究センター「農民工市民化のコスト試算」プロジェクト報告には、
以下のように書かれている。
 「重慶、武漢、鄭州、嘉興の4都市の実地調査研究に基づき、1人の典型的な農民
工の市民化(相応の扶養人口を含む)に必要な公共支出コスト総額は計8万元前後
である。そのうち、長期的な養老保険補助額は平均約3.5万元、住宅及び義務教育
等の一度限りのコストが約2.4万元、毎年の民生援護等社会保障及び公共管理コス
トが平均で560元である。市民化コストはとてつもない高さではなく、きちんと準
備すれば、農民工市民化推進の主要な障害にはならない」
〈農民工市民化の主要な障害とは何か〉
 改革開放から30年、第一世代農民工の子女が成人し、新世代農民工となった。父
世代の農民工と同じ、家は農村にあり、人は都市の生活という新世代農民工は、市
民となって、都市に引っ越し、子女を都市の学校で教育させることを渇望している。
 しかし、彼らが一家そろって都市に入るためのハードルは余りにも高く、住宅、
教育、医療が行く手を阻み、一般的な農民工の家庭には乗り越えることが難しい。
 2011年初め、三農問題専門家の李昌平氏は北京メディアの取材に対し、次のよう
に述べていた。
 「農民工は都市で仕事をしているが、医療、住宅等はない、都市はただ農民工の
仕事をする場所であって、生活の場所ではないし、退職後の老後を過ごす場所では
ないし、家族団らんをする場所でもない。農民工が都市に住むには、妻、子供も一
緒に呼び寄せ、教育、医療、住宅の問題も全て解決しなければならない。現在の都
市化、工業化には、農民工の労働力は必要でも、農民工という人が必要なわけでは
ない。農民工の土地は必要でも、土地を失った農民は必要ではない」
〈農民工市民化の主要な障害はどこにあるか〉
 「中国農民工市民化――社会コスト視点での研究」著者の張国勝博士は、「目下、
農民工市民化の進展が緩慢なのは、表面的には戸籍制度、雇用制度、社会保障制度、
都市・農村土地制度等二元体制改革の停滞であるが、根本的な原因は、やはりこれ
らの制度を改革するのに支払う相当な社会コストにある」と見ている。
 「農民工市民化の最終的な実現には、関連制度の刷新を進め、農民工市民化の制
度的障害を徐々に取り除く必要があるほか、さらに関連投入を強化する必要があり、
農民工市民化プロセスにおける基本的な権利保障や都市公共サービスを享受させる
ための資金需要の解決、つまり、農民工市民化の社会コストを引き受ける必要がある」
 張国勝博士によると、長年、政府は中国を一つの巨大な発展途上国、転換期にあ
る国家としており、現段階で、生産力発展水準と発展効率から見れば、まだ制度改
革プロセスの資金需要にたえる能力はなく、農民工市民化は現実的な目標にできない。
 農民工市民化の最も核心的な課題とは、市民化プロセスにおける社会コスト問題
である。
 農民工市民化のコストはどれだけ高いのだろうか。
 2005年、中国科学院の推計では、農民工1人の都市進出に必要な公共支払いコス
トは1.5万元であった。
 2006年、建設部調査研究チームによると、都市人口が新規に1人増加するのにつ
き、地方政府の公共施設関連経費は、小都市で2万元、中等都市で3万元、大都市で
6万元で、特大都市で10万元増加する(運営及び管理コストは含まない)。
 2009年、張国勝博士は、東部沿海地域の第一世代農民工と新世代農民工の市民化
の社会コストはそれぞれ10万元、9万元で、内陸部ではそれぞれ6万元、5万元とした。
 その後、中国発展研究基金会(2010)は、中国の現在の農民工市民化の平均コス
トは10万元前後とした。
 国務院発展研究センター「農民工市民化のコスト試算」プロジェクト報告では、
都市化推進で、1人の農民工市民化のコストは8万元と指摘している。
〈農民工市民化のコストをどのように理解するか〉
 農民工市民化をどのように定義するか。また、農民工市民化のコストをどのよう
に理解するか。
 国務院発展研究センターの「農民工市民化のコスト試算」プロジェクト報告では
以下のように書かれている。
 「農民工市民化とは、労働や商売に従事する農民工が、仕事をしている場所に定
住し、かつ最終的に都市の公共サービス体系に溶け込むことを指す。現地市民とな
ることは長期的なプロセスである」
 「農民工市民化のコストとは、農民工の都市定住に要する各種経済投入の実現を
指し、すなわち、農民工に現地住民と同等な各種権利や公共サービスに要する公共
投入を享受させることである」
 「市民化プロセス中の政府、企業、農民工個人は一定の投入が必要であり、その
うち政府部門の投入の主要なものは、各種公共サービス提供の支出で、例えば、都
市公共インフラ、各種社会保障提供の費用である。
 企業の投入は相対的に少なく、主に、市民化した農民工にさらに安定的な仕事の
条件やさらに普遍的な福利を提供することである。
 農民工個人が都市に定住するには、負担が最も高い生存及び発展費用の支出も負
担しなければならない」
 この報告では、農民工市民化プロセスにおける必要な政府投入のコストを主に論
じている。
 これによってわかることは、ここでいうところの「農民工市民化のコスト」とは、
政府が支払うべき支出であり、農民工の都市内における日常生活の消費のことでは
ない。
 「農民工市民化のコスト試算」プロジェクト報告の執筆者・金三林氏(国務院発
展研究センター農村経済研究部研究員)、許召元氏(国務院発展研究センター企業
研究所副研究員)は北京メディアの取材に対し、以下のように述べた。
 「基本的公共サービスの内容に基づいて、我々は試算時に主に6種類のコストに
分けた。
1) 都市に呼び寄せた農民工の子供の教育コスト
2) 医療保障コスト
3) 養老保険コスト
4) 民政部門のその他の社会保障支出
5) 社会管理費用
6) 低価格の公共住宅支出。
 そのほか、さらに幾つかの公共サービスの内容があるが、この6つは最も主要な
構成部分である」
 「具体的には、都市に呼び寄せた農民工の子供の教育コストを例にとると、国家
の義務教育経費に対する投入には、教師人件費、授業料・雑費、教科書費用、通常
経費、教育設備、校舎の改造等各種費用支出が含まれていて、具体的に「学生当た
り事業費」と表示して使えるが、小中学段階の学生当たり事業費には違いがある。
 例えば、嘉興の小学生の学生当たり事業費は年間5000元、中学生は8000である」
 「大中都市において、特に農民工が比較的多い都市は教育資源に限りがあり、児
童の増加につれて相応に新規学校建設をする必要があり、これは重要な支出の一つ
になっている。
 例えば、武漢市は、2008年に840人の小学生を収容できる小学校を新規に建設す
るのに計2500万元を投入した。中学であればもっと多い投入である。ここでは、教
育を受ける児童が増加することで、相応に校舎をふやす必要があると単純に仮定す
る。しかし、校舎新設以後、毎年同様の数の児童の入学を受け入れられれば、児童
受け入れ費用は著しく低下する。
 都市の不動産は高く、農民工が都市で朝早くから夜遅くまで仕事をしていたとし
ても、都市の住宅を買うことはできないのだから、彼らの「市民の夢」は往々にし
て高い不動産価格に阻まれ、その夢をかなえるのは難しい。
 多くの農民工は十分なお金を稼いだ後に、都市で家を買って定住し、妻や子供と
都市で一緒に生活したいと考えている。実際には、農民工市民化には、政府の支出
が必要で、住宅でさえ非常に市場化の問題であり、政府の支援も必要である。
 これについて、金三林氏、許召元氏の農民工の住宅問題についての見方は、以下
のとおり。
 「事実上、多くの現地の市民にとって、住宅はとても重要な問題である。しかし、
農民工の居住ニーズを満たすのは、市民化を実現する重要条件である。農民工の所
得水準が低いことによって、農民工の中の低所得者のために一定の低価格の公共住
宅を提供する必要がある。
 あるいは、住宅問題において、農民工が現地の住民とともに現地の住宅政策を享
受できるようにして、戸籍をハードルとして農民工を都市の外に排斥しないように
する」
 「したがって、我々の報告の中では、農民工の10%に一人当たり30平方メートル
の低廉な賃貸住宅を提供すると仮定して、低価格の公共住宅建設コストは1平方メ
ートル当たり3000元(地域によって異なる。都市の建設コストは計算に含まない)
として、低価格の公共住宅の支出を計算した」
(次号に続く)
〔燕趙都市報2013年4月14日〕

中国の所得格差のほとんどが都市・農村間によるもの

 中南財政法大学中国所得分配研究センターが発表した調査研究によると、中国の
都市・農村間、地域間、業種間での所得格差が異常な広がりを見せており、しかも、
その所得格差の半分近くが都市・農村間によるものである。
 都市、農村とも所得格差はますます広がりを見せているが、農村の所得格差は都
市より大きい。また、所得が高いほど所得増加スピードが早く、その反対は遅い。
 13日に行われた中国所得分配理論と政策シンポジウムの席上で、中国所得分配研
究センター「模範所得分配秩序研究」プロジェクトチームがこの研究成果を公表した。
 プロジェクトチームの3回の全国住民所得のサンプリングアンケート調査研究に
よると、都市・農村住民間の平均所得の差はますます広がっている。国民総所得に
占める割合でも、農村住民の所得はどんどん下がり、都市住民の所得がどんどん上
がっている。
 都市・農村の所得格差の分析結果によると、中国の所得格差の半分近くが都市・
農村間によるものである。
 地域の分析結果によると、東部地域の都市・農村間の所得格差が最も小さく、中
部地域が次で、西部地域が最も大きかった。
 すなわち、地域経済が発達するほど、平均所得が高くなるほど、都市・農村間の
所得格差が小さくなる。逆に、発展がおくれている地域では、平均所得がより低く
なり、都市・農村間の所得格差が大きくなっている。
 業種の分析結果によると、中国では、社会サービス業と農林水産に携わる職員の
平均賃金が最も低く、電力、通信、金融保険などの独占業種の所得が最も高く、し
かも、異業種間の平均最高賃金と最低賃金の差はますます広がっている。独占業種
と競争業種の所得格差のうち、不合理な部分は50%を超えている。
 プロジェクトチームではこの結果について、中国の所得分配制度改革の要求に対
し、住民、企業、政府部門の所得配分の枠組みが妥当ではなく、政府による所得再
分配調整力が足りず、効果がはっきりしていないと見ている。
〔中国青年報2013年4月14日〕
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