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TPP交渉大筋合意に身構える中国

 10月5日、米国等12カ国の首脳が共同で「環太平洋戦略的経済連携協定」(TPP)
の交渉が大筋合意したと発表し、国内外の世論の注目を集めている。商務部の高虎
城部長は目下社会で関心を集めているTPPの争点について中央の主要メディアの取
材を受けた。
 高虎城部長は、第18次全国代表大会、第18期中央委員会第3次、第4次全体会議以
降、中国は改革開放を着実に進めている、「全世界を対象にした高水準の自由貿易
圏ネットワークを形成する」は第3次全体会議で決まった重大措置であると語る。
 現在、中国は既に、ASEAN、チリ、スイス、ニュージーランド、韓国、オースト
ラリア等22カ国・地域と14件のFTPを締結しており、さらに周辺諸国と東アジア地
域包括的経済連携(RCEP)を共同で推進し、日中韓FTA、ASEAN・中国FTAの改定等
の交渉で、世界をカバーする高水準な自由貿易圏ネットワークを徐々につくり上げ
ている。
 例えばRCEPでは、交渉締結後、世界で最も人口が多く、構成国が最も多く、経済
成長水準の差が最も大きく、成長が最も活発な自由貿易圏となる。RCEP交渉はTPP
の7カ国を含み、透明度、開放度、許容度が高いことが大きな特徴である。
 「現在、各交渉は積極的な進展を得ている。ASEANは地域経済一体化の主要な推
進者の一つとしても、RCEP交渉の重要な一翼としても、交渉において重要な役割を
果たしている。中国は米国を含む各国とともに、アジア太平洋地域貿易、投資協力
と世界経済発展の促進に積極的な貢献をする」(高虎城部長)
〔中国新聞網2015年10月8日〕

統計局回答「TPP未加入の影響」 中国は既に対応措置済み

 19日午前、国家統計局スポークスマンである国民経済総合統計司の盛来運司長は
国務院新聞弁公室の記者会見にて「中国のTPP未加入が中国経済成長の足かせにな
る」との見方に対して、中国のTPP未加入が与え得る影響は短期間では余り大きく
ないものの、中国は既に一定の対応措置を講じていると説明した。
 これより前、中国人民銀行研究局のシニアエコノミストの馬駿氏、上海発展研究
基金会研究員の肖明智氏はモデルによるシミュレーションをしている。
 それによると、中国がTPPに加入する「大TPP」の場合と比較し、中国が未加入で
あればGDPの2.2%を損失する。例えばTPPの移行期間が4年だった場合、この間の年
平均機会コストはGDPの0.5%を超過する。
 盛来運司長によると、中国がTPP未加入であることは中国に影響を与えはするが、
短期的な影響は大きくないと見ている。TPPを締結するという第1歩が最終的に実施
されるまでまだある程度のプロセスがあり、一定の不確実性がある。
 中国は既に一定の対応措置を講じており、例えば2国間の自由貿易交渉を加速さ
せ、同時に「一帯一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)、
自由貿易圏の建設も加速させることにより、一定程度は影響を相殺できる。
 さらに重要な点は、中国市場は巨大であり、最終的な貿易はやはり市場のニーズ
により決定される、途上国であろうと先進国であろうと、中国市場進出にはやはり
深い興味があるということだ。
 盛来運司長は影響に対しても非常に重要視している。TPPは多国間貿易制度建設
の規定であり、関係12カ国の経済力は世界の40%近くを占める。仮に本当にこの協
議規定に従って実施されるのであれば、2万近い品目で関税ゼロが実現されること
となり、中国の貿易に一定の圧力がかかることになる。
 したがって、中国はこのような機会に乗じて、国内での産業高度化を進め、受動
から能動に切りかえ、挑戦をチャンスとすることで、産業高度化を推進させること
である。〔中国経済網2015年10月19日〕

データが示す TPP 中国への影響は軽微!

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は10月5日、交渉に参加した日米を初めとす
る12カ国間で大筋合意に達した。TPPは当初ニュージーランド、シンガポール、チ
リ、ブルネイの4カ国によって提唱され、現在は米国主導のもと、日本、カナダ、
オーストラリア、メキシコ、ベトナム、ペルー、マレーシアが加盟している。この
12カ国連携後のGDPは世界の4割以上を占める。
 中国はいまだこれに加盟していないが、貿易大国として、非加盟国であること自
体が中国の輸出入に多大な悪影響をもたらすのか否か、各方面で激しい議論がなさ
れ、その見解もさまざまである。
 以下、2009―2013年における、中国、米国、日本、ベトナム、ニュージーランド
5カ国の、繊維産業、自動車産業、乳製品産業における輸出入総額の変化を示し、
自動車産業及び繊維産業関連国家における具体的な輸出種目の比率に対してデータ
分析を行う。
 繊維産業、自動車産業、乳製品産業を選択したのは、これら3つの産業が中国の
輸出入にとって重要な構成要素であるとともに、対米国、日本、ベトナム、ニュー
ジーランドとの競争が最も盛んであるためである。日米は自動車製造大国、ベトナ
ムは繊維業において廉価な労働力を有し、TPP締結後は繊維業において最大の収益
国となる。また、ニュージーランドの乳製品輸出量は世界第1位である。
 TPP関税の減免は主に特恵措置であり、これら3つの産業が中国に最も打撃を与え
る可能性があるものと目されている。
〈自動車産業貿易額データ分析〉
 自動車関連輸出には、トラクター、バス、乗用車、バン、特殊車両、シャーシ、
車体、自動車部品、トラック、ドーリーが含まれる。
 輸出入総額から見れば、自動車分野の貿易大国は中国、日本、米国である。中国
と米国の輸入総額が輸出額を上回る一方、日本は輸出が輸入を上回っている。2009
―2013年自動車貿易の成長速度が最も早かったのは中国であり、この間中国は工業
製造レベルと国民生活レベルを急激に向上させた。中国の自動車関連輸出総額は
2012―2013年著しく増加したものの、輸出の面では日米に及ばなかった。
 自動車部品が中国の自動車関連輸出総額の59%を占めている。乗用車、バンはそ
れぞれ10%。一方、日本の自動車関連輸出において最も多いのは小型乗用車で自動
車関連輸出総額の64%を占め、米国も日本と同様、小型乗用車が最多の45%を占めて
いる。
▽まとめ:自動車輸出大国である日米がTPP協定の勝者である。中国の自動車関連
製造は主に国内需要を原動力としており、輸出に頼ってはいない。また、中国の自
動車製造におけるサプライチェーンも日米とは異なっており、直接的な競争関係は
ない。東南アジアの自動車部品はコスト面で優位性を持っており、一部中国の自動
車企業は部品の生産ラインを東南アジアに移すと見られる。安価なコストに引かれ
移転の魅力に駆られるものの、目下中国は世界最大の自動車市場として、国内需要
も大きく、サプライチェーンも整っている。企業が運送コストや市場ニーズ等を総
合的に考慮すると、部品の国内製造に前向きとなり、よって自動車部品工場の大規
模移転の可能性は低い。
〈繊維産業輸出貿易額データ分析〉
 繊維関連輸出には、シルク、羊毛、木綿糸、植物性繊維、レーヨン、合成繊維、
特殊織物、織物、既製服、半既製服が含まれる。
 TPP締結後、加盟国の繊維製品輸出入関税は撤廃され、中国の繊維・ファッショ
ン産業がマイナスの影響を受けることは避けられないだろう。繊維製品の輸出にお
いては、中国の国際市場に占めるシェアは大きく、米国やベトナムをはるかに上回
る。中国、日本、ベトナムの2009―2013年における繊維製品輸出総額ははっきりと
増加しており、中国の2013年の輸出の伸びは特に顕著であった。世界経済の復調に
伴い、中国の繊維産業輸出は2013年度、はっきりと復調の兆しがあらわれた。
 中国とベトナムを比較すると、中国の繊維製品輸出総額に占める既製服と半既製
服の割合は37%、36%である一方、ベトナムは半既製服の輸出を主体としており、繊
維製品輸出総額の46%を占めるが、既製服は第2位で38%を占める。これから対比す
ると、中国とベトナムの繊維製品輸出構造は似通っており、互いに直接的な競争関
係にある。
▽まとめ:ここ数年、中国国内の人件費が上昇し続け、輸入綿花の割り当て額制限
等の問題が中国の繊維製品輸出上の優位性を徐々に失わさせている。TPPによって、
中国の繊維・ファッション企業の一部は、人件費が安く、ゼロ関税の貿易協定を享
受できるベトナムへと工場を移転し始めている。しかし、中国の繊維製品関連輸出
総額は2013年末ではベトナムをはるかにしのいでいる。中国の繊維製品輸出トップ
の地位が揺らぐことがあるかどうか、今後の観察がまたれる。
〈乳製品産業輸出貿易額データ分析〉
 乳製品関連の輸出は、生乳、練乳、ヨーグルト、乳清、バター、チーズが含まれる。
 ニュージーランドは乳製品出口大国である。中国、ベトナム、日本は乳製品を輸
入に頼っており、しかも中国は乳製品輸入のトップにある。
▽まとめ:多くの人は中国がTPPに加盟しないことで乳製品輸入に大きな影響が出
ることは疑問かもしれない。ニュージーランド乳製品の大半は中国向けに輸出され
ている。2008年4月7日、中国はニュージーランドとの間でFTAを締結している。ニ
ュージーランドがこのFTAを遵守すれば、中国にそれほど大きなマイナスの打撃は
ないはずである。
〈TPPに加盟しなくても、中国は積極的に対応する〉
 TPPにより関税障壁がなくなり、対外投資が促進されれば、短期間的には中国に
対する輸出に一定の阻害要因となるが、本文のデータ分析で明らかにしたように、
「TPPが中国に壊滅的な災難をもたらす」という言論は恐らく根拠がないだろう。
 中国経済と貿易規模は持続的に急速に成長していることに加えて、中国は既に多
くの国と2国間自由貿易協定を締結しており、中国の世界貿易における影響力は過
小評価できないものになっている。したがって、TPPが中国のマイナスな影響を与
えるという見方は誇張である。
 一方、中国はTPPに加入せずとも、アジアインフラ投資銀行、一帯一路の発展を
通じて、アジア太平洋地域の貿易秩序の建設に参画しており、この地域の貿易投資
や経済発展に貢献をしている。
〔無界新聞2015年10月16日〕
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