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電子マガジン・中国最新情報
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電子マガジン《中国最新情報》  No.307 2005年5月24日
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━【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏【特集:国産化を目指す自動車産業】
●個人購買力 自動車市場の中心的原動力に
●昨年に比べて大幅に下落 輸入車が下降をたどる
●国有大手企業が自動車の自主開発の主力を目指す

┏【国内政策】
●国有企業の破産・閉鎖作業は大詰めに
●国有企業は2008年以降政策性破産・閉鎖せず

┏【教育】
●中国の教育はウガンダに及ばない? 教育公平改革への叫び 下

┏【経済データ】
●外国為替(5月24日)

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……【特集:国産化を目指す自動車産業】……………………………………………
●個人購買力 自動車市場の中心的原動力に
 ACニールセンが行った最新調査で、中国の自動車市場は総体的な低迷が続いて
おり、2005年中も回復の兆しはないが、自動車保有率や購買意欲の増加に伴い、
セダン市況が上昇傾向にあることがわかった。
 当該調査は、北京、上海、広州の3都市で3000名の消費者を対象に行われたオ
ンライン調査で、中国消費者の自動車保有率や購買意欲が示されている。

〈全体的な市場低落〉
 今回の調査によると、昨今の自動車市場での供給過多や国産自動車ブランドの
価格下落により、購入意識調査回答者の購入予算は昨年の16.5万元から13.5万元
に低下、18%減少している。
 上海の回答者の購入予算は15万元と高目で、次いで広州の回答者の購入予算が
14.5万元と僅差で続き、北京は12万元だった。
 全回答者25歳から34歳までのうち、平均月収5000元以上の回答者の購入予算は
比較的高く、14.5万元だった。

 また、車所有者の76%が買いかえを考えていないと回答、5年以内の買いかえを
考えているのはわずか8%であることがわかった。
 中国の消費者には、ローンで耐久消費財を購入することにまだ抵抗があること
に加え、現在の複雑なローン申請が二の足を踏ませているようだ。
 購入意識回答者のうち、銀行ローンによる車の購入を検討しているとの答えは
12%にすぎず、2003年比で8%減少した。70%以上の回答者が一括払いで購入すると
答えている。

〈セダン市場は上昇気配〉
 自動車市場全体としては回復基調にないが、2005年の自動車保有率は15%に達
し、前年同期比で8%の増加となった。
 相変わらず北京はセダンの中心市場で、回答者のセダン所有率は22%を上回り、
前年同期より11%高くなっている。北京に次ぎ、広州のセダン所有率は14%で前年
同期比9%増、上海は8%で前年同期比4%増だった。
 
 また、調査は、消費者の自動車の性能を重視する傾向が強まっていることを示
している。
 「物に価値を求める」というのが潜在購入者に最も影響を与える要素の一つで
あったが、この要素の重要性は既に36%から18%に低下している。また、「ブラン
ド」要素も17%から10%に減少。市場にはますます多くの自動車ブランド、モデル、
バージョンが登場するようになり、購買者の評価は厳しさを増し、自動車の性能
に対する要求も一層高くなっている。
 自動車の性能、安全性、デザインなどは、購買者が考慮する要素としてますま
す重要になっている。自動車の性能への注目度、期待値が高くなり、中国の消費
者はより時間をかけて比較、選択を行いたいと考えている。

 インターネットが消費者の自動車購入に与える影響の重要性は日々高まってい
る。購入意識調査の回答者のうち24%がネット上で情報を検索すると答えており、
昨年に比べ8%増加した。
 なお、従来のメディアを通じ情報収集するとの回答が27%、友人の紹介が21%、
広告による情報収集が14%を占めている。
 自動車ディーラーの役割は希薄で、車の購入時にディーラーに相談すると答え
た回答者は、わずか5%だった。他の先進国に比べ、中国のディーラーは消費者の
購入決定に影響を与える存在として活用されておらず、ディーラーは消費者の購
入決定に対する影響面で、まだ大きな潜在力がある。

〈リーディングブランド挑戦に直面〉
 上海フォルクスワーゲンと長春第一汽車は、三大都市では依然高い位置にラン
クされているが、自動車保有率ではいずれも順位を落としている。昨年比で、上
海フォルクスワーゲンの自動車保有率は22%から17%に、長春第一汽車は15%から12%
に下落した。上海GMの自動車保有率は比較的安定しており、昨年の7%から8%に上
昇した。
 これら3大リーディングブランドに突きつけられている挑戦とは、他ブランド
の急速な勃興だ。
 例えば、広州ホンダの自動車保有率が2%から5%に、東風雪鉄竜は2%から4%に上
昇しているほか、東南汽車、北京現代、トヨタはいずれも上昇傾向にある。高級
車市場では依然アウディがリード、保有率は2%に達した。
〔和詢2005年5月18日〕

●昨年に比べて大幅に下落 輸入車が下降をたどる
 税関総署が最近発表した統計データによると、今年第1四半期の中国における
自動車の輸入状況が前年同期より大幅に下落した。

 今年第1四半期、中国の自動車輸入台数はわずか2.5万台で51.1%下落した。さ
らにここ2か月間は政策不振であったため、輸入自動車の総台数は1.4万台、60%
の下落となった。政策の回復に伴い、3月の国内の自動車輸入台数は1.1万台に増
加し、下落率は27%となった。
 業界関係者の見解では、これはここ数年見られない輸入車の大幅な下落状態だ
という。
 最近の輸入車は国内自動車市場のわずか3.37%を占めるにすぎず、2003年に比
べて0.42ポイント下落している。輸入車の大部分を占める乗用車の国内市場での
シェアも3年前の6%から現在の5%まで下落している。

 この輸入車ブランド減少と台数激減の2大要因は政策と市場にあると分析され
ている。
 政策が輸入車の販売ルートを不調にし、輸入業者が市場を楽観視できないこと
が輸入車台数の激減を生んでいる。

 一般的に輸入車は2、3か月前に製品を発注する必要があり、このため、今年の
1、2月に輸入した車は昨年の11月あたりに注文していることになる。
 昨年末の輸入車は基本的に経営損失に陥っていたにもかかわらず、当時の政策
に目立った動きがなかったことから、輸入車の仲介業者の多くは「政策不振」の
状況下で傍観状態に陥り、安易に外国のメーカーに注文しようとはしなかった。
このため、今年1、2月分の輸入車の台数が激減した。

 このほか、今年より、メーカーから権限を与えられた仲介業者だけが輸入車を
販売することができるように政策が変更されたため、メーカーから権限を与えら
れていない多くの外国ディーラーが扱う車は基本的になくなり、今年の輸入台数
の減少に影響を及ぼした。
 また一方では、国産自動車の生産台数が大幅に増加し、新型車提供がどんどん
ふえ、価格面で合理化が進んだこと等も、輸入車の減少の重要な原因となった。

 2005年新年早々、国産の高級乗用車が存在感をあらわし始めた。
 業界関係者は、輸入車市場のシェアはさらに縮小し、国産車の補充的なものに
なるだろうと見ている。

 中国の輸入車は主に2種類に分けることができる。
 第1種は、価格30万元から50万元の中級車で、代表的なものは日本や韓国の車、
トヨタカローラや日産セフィーロ等である。
 第2種は、50万元以上の高級車で、ヨーロッパのベンツ、BMW、スポーツカーや
SUV等である。

 昨年から国産自動車のレベルが上がり始め、日産ティアナ、BMW3シリーズとい
った中級新型車が次々に市場に出され、第1種の市場を分割し始めている。
 また、今年はキャデラックの「中国版」、国産ベンツも市場に出される予定で
ある。高級車の「中国版」は外国車と同じ最新のボディーを採用しているが、価
格は大きく下がる。

 このほか、国内自動車部品の供給能力が引き続き増加しており、輸入部品の需
要が減少している。国産車市場における輸入自動車完成品とその部品の全体的な
需要の減少は、輸入車市場をさらに縮小させる原因になっている。
 これらの変化は、今年の輸入自動車の構成と方向性に深刻な影響を与えるだろ
う。

 業界関係者は、自動車税制の動きが依然として見えないことから、輸入業者は
海外メーカーからの注文に慎重になり、一定量で発注することになるだろうと予
測する。
 また、もし自動車税制がうわさどおり6月に発表された場合、保税政策を実行
することはないため、輸入車は税金を納める必要が出てくる。
 これは輸入業者に対して資金的問題が大きい。もともと2台輸入できた車が1台
しか輸入できなくなる。そのため、時期が来たとしても輸入車の台数は突然ふえ
ることはなく、市場の状況を見ながら輸入台数を確定することになると見られる。

 業界関係者は、輸入への影響の2大要因のうち、政策の影響は一時的、短期的
で、第3四半期には解決されると考えている。
 しかし、今年の下半期は、輸入車ネットワークが次第に整うにつれて輸入車の
販売台数もそれなりに上がってきても、今年の総販売数は昨年よりは減少するだ
ろうと指摘している。〔国際金融報5月17日〕

●国有大手企業が自動車の自主開発の主力を目指す
 4月29日に開催された中央企業全国労働模範代表の座談会で、国家資産委員会
の王瑞祥副主任が「自動車業界の自主開発は依然として国有大企業を頼りにして
いる」との意向を表明した。

 第一汽車集団と東風公司から労働模範が数名、国家資産委員会が開催した座談
会に参加した。
 第一汽車技術センターの李駿主任は、労働模範の代表として発言をし、第一汽
車の自主研究開発の経験と知識を紹介した。
 それに対し王瑞祥副主任は「李駿主任の発言には、革命、開発、イノベーショ
ンという3つのキーワードがある。中国自動車業界にとってはこれらのキーワー
ドが非常に必要である。中国のWTO加盟後、中国人が一番心配しているのは自動
車工業だ。ただし、これらの精神があれば、我々は何も怖くない」と評価をした。
 また、王瑞祥副主任は、第一汽車と東風のような国有大手自動車企業はさらに
このような自主開発精神を培わなければならない。将来、皆がよく知っている広
告のように、「道路があれば、きっとそこに中国車がある」というふうにしてほ
しいとの希望を寄せた。

 目下、国家資産委員会が管理を行う国有重点自動車企業は合わせて13社。その
うち、中央に直属する自動車会社は第一汽車と東風の2社である。
 これに関連して、王瑞祥副主任は記者に対し、「今年表彰を得た労働模範と先
進従業員の中では第一汽車と東風のような大手国有自動車企業の代表がおり、と
てもうれしく感じる。これらの労働模範は、多国籍会社と市場競争の圧力に直面
している際に、勇敢に挑戦に立ち向かい、前向きな精神を持っている」と述べた。

 また、中国自動車業界の大手国有企業の未来の発展に懐疑的な人が存在するこ
とに関して、王瑞祥副主任は「大手国有自動車企業は、技術の優位性、人材の優
位性、規模の優位性があり、競争力を持ち、中国自動車業の発展では重要な力に
なっている。また、総合競争力での優位性は明らかで、自主開発は彼らを頼りに
している」と指摘した。
 また、これらの企業の発展過程において、旧体制がもたらした弊害に遭遇して
いるが、それについては「私たちがまさに今国有企業体制の改革を行っているの
は、これらの問題を解決するためだ」と述べた。〔中国汽車報5月13日〕

……【国内政策】…………………………………………………………………………
●国有企業の破産・閉鎖作業は大詰めに
 先日、国有企業の破産・閉鎖に関する4カ年総合計画の編集作業が完了し、国
務院常務会議の審査を通過した。このことは、国有企業の破産・閉鎖作業が大詰
め段階に入ったことを意味する。
 これは、国務院国有資産監督管理委員会の李栄融主任が11日に開催された全国
国有企業体制改革及び財産権移転工作会議の席上で明らかにしたものである。
 李栄融主任によると、4カ年計画終了後、国有企業は市場経済から撤退し、法
律に基いて破産する方式に変わるという。

 李栄融主任によると、国有企業の破産・閉鎖作業はこの数年最も困難な作業で
あったという。
 しかし、破産・閉鎖作業を通して、経営難の国有企業を市場から退出させ、従
業員の配置整理を行うことは、過去蓄積してきた構造的な矛盾を解消し、国有経
済の構造の優位化、市場経済の弱肉強食メカニズムの作用の発揮に重大な意義を
持っている。
 今後4年間に依然として2167社、366万人従業員の再就職問題を解決しなければ
ならず、作業量はかなり大きい。特に中央企業と地方企業の破産、閉鎖作業に注
目する必要がある。〔中国経済時報5月12日〕

●国有企業は2008年以降政策性破産・閉鎖せず
 国務院国有資産監督管理委員会の邵寧副主任は、12日に開催した全国国有企業
破産・閉鎖工作会議の席で、中国国有企業を対象に行う政策性破産・閉鎖作業の
実施期間は2005年―2008年で、2008年以降は政策性破産・閉鎖作業を行わないと
話した。

 今後4年間、国有企業破産・閉鎖作業は国務院が審査、許可した総合計画に基
づいている。
1) 東北地域の旧工業基地の振興と中西部地区の発展を重点的に支持する。
2) 軍需産業、石炭、非鉄金属産業の構造調整を重点的に行う。
3) 国有経済に占める割合が大きく、従業員の再就職が難しく、地方財政が比較
 的困難な地域を重点的に支援する。

 また、今後4年間で国有企業は法律に基いて積極的破産作業を進め、多ルート、
多方式で経営困難な国有企業の市場退出と債務リストラを進める。
 長期損失、債務超過、黒字に転換することができない大中型国有工業企業に対
しては、国家規定に基づいて政策性破産をさせるという。〔鞍山日報5月15日〕

……【教育】…………………………………………………………………………
●中国の教育はウガンダに及ばない? 教育公平改革への叫び 下
〈計画経済の最後のとりで 教育の二重構造〉
 聞かずにはいられないことがある。それは、制度のどこに欠陥があって、高等
教育を不公平にしているのかということだ。
 農家の子供は大学に入りにくく、「外省人」の青年は名門校に入りにくい。そ
の反面、裕福な家の子弟はいろんな方法を使って、努力もせずに卒業証書を手に
入れている。

 多くの研究者は、中国の現在このような「教育不公平」体制は、計画経済体制
下における「都市優先志向」構想の残滓が大きな影響を及ぼしていると指摘して
いる。
 中国社会科学院の「現代中国社会の構造変遷研究プロジェクトチーム」の調査
では、2002年における社会全体の教育予算は5800数億元であるが、総人口の40%
に満たない都市への投資が77%を占めており、総人口の60%以上を占める農村への
投資は23%にしかすぎないと指摘している。
 関連資料によると、都市と農村に分かれた学校制度は、初めから農村の児童に
不利である。これによって農村の約80%の大学入試適齢人口は大学入試と全く縁
がなくなっている。

 それ以外にも、不可解なのは、高等教育に投資されている公共費用が、意外に
も基礎教育よりはるかに多いことである。
 いわゆる「一流大学」にするために、億を超える財政支出が学校運営条件がよ
い大学に投資されており、農村の小中学校の危険な教室を改造するための経費は
農民の資金を集めて賄っているのだ。
 つまり、立派で見てくれのよい大学を育成するために、その副産物として田舎
の小中学校の困窮を招いているのではないだろうか。データ上から見ると、中国
の小学生、中高校生、大学生の平均公共教育費は1:1:23で、アメリカは1:3:2
である。

 あるウオッチャーは、長年、中国の教育と財政官吏にはある種の偏見があり、
それが原因で人為的に「重点」校をつくったと言うのだが、これはでたらめなの
だと指摘する。
 普通中学校1校は、130万元の正常な運営費用が必要であるのに対して、10万
元の経費しか使えない。しかし、この普通中学の付近にある重点中学校は千数万
元の「教育現代化プロジェクト」予算が割り当てられる。
 したがって、同一都市でも、重点中学校の教員、事務員の収入は、付近の普通
中学校の5、6倍以上にもなり得る。
 農村地域も同様で、県の大部分の高校教育費は通常1校か2校の高校に投入され
ており、わずか少数のエリートの育成に努めているのだ。その結果、農村地域の
教育は都市との不公正だけでなく、この種の不公正な図式で地域内でも再生産さ
れているのである。

 このロジックは何だろうか?。容易に予測できることは、教育資源を掌握する
者が、自己の子女を名門校、重点校に入学させる傾向にあり、「強者保護」の習
慣がますます激しくなっているということだ。
 ある省では、財政部門が重点中学校1校に毎年50万元の資金を余分に支給し、
その交換条件で子弟を優先的に入学させていたという。

 市場経済時代に突入し、農村労働力の広範囲の移動と都市化加速に伴い、この
ような都市住民優遇、わざわざ学校ランクを創設するような教育政策は既に現実
的合理性を失ったことは明らかである。
 中国政府は既にある程度このことを意識している。教育部は、教育投資の増加
分を主に農村に回すこととし、根本的に教育の公平を促進すると先日発表してい
る。
 高等教育の段階で国家教育援助システム確立に努める――これは一つのよい兆
しだと言えるが、公正問題の解決まではまだかなり遥か遠い距離があると言える
だろう。

 ウオッチャーの指摘によると、中国大学入試の制度改革は20年近く叫ばれてお
り、1998年末に、教育部はやっと「3年で基本的な中国独自の入試制度をつくり
上げる」と大学入試の改革案を公表している。
 それ以後、全国では続々と「3+2」、「3+総合」及び推薦学生「総合能力テス
ト」などの多種の入試が生まれている。しかし、改革では、非難が最も集中して
いる不公平な地域枠という重大問題に触れていない。

 武漢大学の洪可柱教授によると、中国の現行の大学入試制度は形式上の公平を
保っているにすぎないという。
 実際には省ごとに定数が存在し合格ラインが決まることから、各省の合格率と
合格ラインに極めて大きな差があらわれる。地域間に既に存在している教育不平
等をさらに激化させ、昨今の調和のとれた社会建設と中西部の飛躍という国家戦
略には役立たない。
 洪教授は、国立大学は国民全体の納税による政府財政で維持されているもので
あり、当然国民全体に対し平等に開放されるべきだと鋭く指摘している。
 現在、一部の大学ではおくれた地域の人材育成支援を口実に合格ラインの操作
を行っているが、「その本当の目的は、多くは大都市の既得権益の維持とある階
層の特殊な利益を守るためだ」と指摘する。

 教育体制を計画経済の最後の「とりで」だと言う人がいる。しかし、既にある
亀裂を覆い隠すことはできず、噴出する疑問と非難を阻止することはできないこ
とははっきりしている。

〈システムの末端のまで拡散している教育腐敗〉
 制度の欠陥は長期にわたり是正されていないので、自然に大量の腐敗行為が繁
殖している。
 中国教育の腐敗の発見はおくれ、規模はすこぶる大きくなってしまった。さま
ざまな教育の腐敗で教育の不公平は蓄積はたえがたい程度にまでなっている。か
つて尊敬されていたあの上品な長い中国服を着た教師像は打ち壊されてしまった
のだ。
 2004年、教育業界も含まれている中央紀律検査委員会の調査レポートの中には
「五大腐敗地域」として、河南濮陽県の大学入試不正事件、中国音楽学院器楽科
不正入学事件、北航南寧の入試「スキャンダル」などなど、中国教育の公正性を
懸念させる事件が取り上げられている。

 歴史的経緯により、50年代からずっと中国教育は絶対的独占状態にあり、学校
の設立・運営体制、管理体制だけではなく、教育思想、教育内容はすべて厳格に
コントロールされてきたと研究者は指摘している。
 同時にまた、財政支出が多元化したことは、資金を相対的に不足させ、次第に
特権階級に配分が偏り、平等な教育という国家教育の目標からますます遠ざかっ
てしまった。
 小中学校の乱収費、不正な学校経営といった社会の荒廃、いわゆる「お好み自
由クラス」、「特別クラス」、「有名校による私立学校経営」、「2流学校」す
べてが公共の利益をむしばんでいる。
 大学について見ると、最近、大学の大学入試の合格ライン、学科の設置、物資
の調達、インフラプロジェクト、幹部任命などで、秘密がだんだん多くなってい
る。

 中国教育は既に昔のような「清廉な事業機関」ではないことは明らかである。
教育機関の監督、制約措置は全く追いついていない。
 教育界が権力で制約を受け、中国全体の社会改革プロセスよりおくれてしまっ
ていることは、ちょっとしたデータからもわかる。中国の多くの大学の教員以外
の後方勤務人員の割合は、何と60%以上を上回っている。

 そのほかにも、大多数の人が軽視しているが、教育腐敗はとっくにインフラ、
入試などで明らかになっている。教育界の内部関係者によると、腐敗は教材や補
助教材にまで達していて、利益を追求するものにとってはまるで超特大の金鉱だ
と指摘している。

 南洋教育集団の元理事局主席の任靖璽氏の推計によると、全国の小中学生の教
材、補助教材に使われる毎年の費用は1000億元以上である。
 2004年8月の四川省の教材リベート事件では、教材と補助教材のリベート率は
約30%であった。仮にこの割合で計算すると、毎年各レベルの教育行政部門と学
校責任者に流れ込むリベートは何と300数億元に上る。
 報道によると、ここ10年間で教育界の乱収費は2000億人民元を上回る。しかし、
これらの乱収費には指定教材や補助教材のリベートは含まれていない。仮にこの
金額を加算すると、10年間の教育乱収費金は5000億元にもなるのである。
 これは巨大な利益分配集団を太らせるのに十分な数字で、本当の教育改革の実
行を妨害している。このことは、5000億人民元の着服より恐ろしいことかもしれ
ない。

〈教育腐敗回復への提言〉
 「暸望」週刊は最近、「陝西省では3年で7人の庁レベル校長が辞職」したとい
う問題について取材し、以下のように結論づけている。
 上述した教材のリベート問題関連で、さらに注意しなければならないことがあ
る。高官の腐敗は驚くべきことであるが、さらに恐ろしいことは、ある種の腐敗
している雰囲気がすべての組織で充満し、最終的には形骸化しており、すべて黙
認されて運営されていることにある。
 クラス担任、授業担当教師がすべて「書物をお金にかえている」状況で、教室
は「金もうけの場所」になっている。利益を享受しているならば、いわゆる「師
の尊厳」は成り立つのだろうか。腐敗はすべての教育の血管と末梢神経にまで行
き渡ってしまったのだろうかと。

 教育腐敗の阻止に対して、最も重要なのは個人腐敗を阻止することではなく、
変幻自在な規則本体の腐敗を阻止することかもしれない。
 教育腐敗を阻止する目的は、教育の公正性を回復するだけではなく、古来から
の「教師と学生の関係」を回復することにもある。
 教師の給料は指導、授業、質疑応答への努力から来るべきで、教材と文房具販
売の「営業による給料」ではない。こんなことで金をもうけるのは全く嘆かわし
いことで、教育を重視した時代に戻るべきである。

 教育の公平改革への叫びは急を要している。広く民間から、良識と責任感のあ
る人々の心からの呼び声に耳を傾け、その声に尊重し熟慮しなければならない。

 我々は、4年前のあの大学入試学生が教育部を訴えた事件を忘れてならない。
この事件が国民が国家の教育改革へ参加する発端となったのである。
 2001年8月、山東省青島のその年の高校卒業生であった〓倩さん外2人は、教育
部に対し合格基準が違憲だとして起訴した。
 憲法が国民に与えている平等権や教育を受ける権利、そして地域枠の不透明性
などによる教育部の一連の行政措置が、原告を含める多くの受験生の平等に教育
を受ける権利を直接侵害したという。
 この訴訟は〓倩さんたちによる訴訟撤回で終わっているが、全国的に極めて大
きな波紋を投げかけた。その後、山東省は省内各地でばらばらだった合格ライン
の廃止を宣言している。これが中国の入試の合格基準があいまいになる発端とな
った。

 この訴訟から4年がたち、武漢大学の洪可柱教授外31名の全国人民代表大会代
表が「大学入試の制度改善」に関する提案を提出した。
 この提案は、「地域枠の廃止、重点大学での統一試験、全国統一の合格ライ
ン」などを含む一連の内容である。提案は公表後、多くの民衆の支持を受け、一
時は各地の新聞から次から次へと討論特別版を出された。

 春先から、穏やかなあるいは急進的な改革の呼び声は集まり、こだましている。

 湖南の「教育界の五長老」は、国家予算法において、国家の毎年の財政性教育
費をGNPの4%以上、農村の義務教育への教育費として厳格に定めるべきだと提案
している。

 全国政協委員の崔琳委員は、今春の「両会」で、農民工の子女の学費は、現地
学生と平等であるべきだとし、公営の小中学校は、できるだけ早く農村からの臨
時就労者子女の受け皿になるべきだと提案している。

 有名な教育学者である楊東平氏は、大学は国立、省立、市立に分けられるが、
国立大学は全国に公平に学生を募集し、地方大学は現地の進学予定者を重視する
方法を提案している。
 さらに、小中学校の「重点学校」制度は入試競争に拍車をかけており、完全に
義務教育法に違反していると考えられ、廃止するべきだという。推薦入学、一芸
入学、単願生、国防生、三好生などへの合格ラインを下げる政策も、同じくすべ
て廃止しなければならないと提案している。

 ネット上の政治討論で有名な全国人民代表大会代表の周洪宇氏は、農村で始ま
っている9年制義務教育の完全無料化実施を指摘している。

 広東の私立教育家である信力建氏は、少なくとも省レベルの以上の予算の投入
ができれば、財政の全体のバランスがとれた教育を実現でき、本当の意味での国
民教育、国民教育になると考えている。

〈高等教育改革に対する叫びとは〉
1) 中央財政による、経済困窮地区での義務教育に対する補助制度。
2) 行政部門は「憲法」と「教育法」に照らし、学校の投資と規範化に対する政
 策に干渉したり利益を得られないようにする。
3) 大学は政治と教育の分離を図り、自由でイノベーションのある学術研究を奨
 励しなければならない。
4) 大学入試方式と内容を改革し、試験科目、点数を減らし、大学入試の回数を
 ふやし、能力試験を推進して、学生の負担を軽減させる。試験は民間機関で組
 織し、学生入学基準を大学の自主性に任せる。
5) できるだけ公的資金で大学を経営し、大学入試、政策補助などの私学教育に
 対する差別を取り消す。
6) 都市で就労している農民の子女は、都市で平等に入学するべきである
7) 法律でコミュニティーが義務教育の学校の管理、監督に参加することを定める

 つまり、人々の教育制度に対する叫びは、新しい「公共性」である。公平な供
給、公正な選択、公開的な管理のできる新しい国民教育システムを求めているの
だ。
 「教育改革は国家利益に深く関係しており、広く社会の力によって教育改革が
できる。多くの人の道徳的な情熱、聡明な知恵を吸収して、透明で法治的な公共
教育制度とともにつくり上げる。そして調和がとれた社会の理想がその中に宿
る」洪可柱教授は強い口調で呼びかけている。
 「誰にでも公平に教える」。我々は「教育の公正」運動の展開を期待し、平等
な教育を受ける権利を時代の重要なテーマにしなければならない。
〔南風窓4月26日〕
(〓は、「亦」の下に「木」)

……【経済データ】………………………………………………………………………
●中国の外国為替レート(仲値)
                        (中国人民銀行5月23日発表)
外貨名  100日本円  100米ドル  100香港ドル  100ユーロ
     7.6919  827.65  106.18   1046.22
関連ページ:http://www.bank-of-china.com/
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《編集者コラム――三社祭》
 週末は三社祭を見に行ってきました。予想はしていましたが、物すごい人出で
した。
 とりあえず地図をもらって巡回している3つの本社神輿のうちのどれか近い御
神輿が見られればいいと思って気楽に考えていたのが、一緒に行った浅草好きの
友人が全部見ようと言い出したことから私の楽観的な状況は一変しました。
 それもそのはず、お昼過ぎに浅草に着いたために本社神輿は浅草神社よりはる
か遠方に散らばっており、それを一つ一つ探して見に行くことになったからです。
地図が読めない私はただただ友人についていくだけでした。
 地図をたどり、遠方まで歩いたために、幸いなことに観光客は比較的少な目で
本社神輿自体はすぐ近くで見ることはできたのですが、日ごろの運動不足がたた
り、今でも体ががくがくとしています。(ま)
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(200号以降 2003/2/18―)
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編集長:李年古/副編集長:前野貴子 特別協力:劉莉生
翻 訳:劉志軍 杉下薫 戴小芳 アヤ 平井玲子
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