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電子マガジン・中国最新情報
中国国内各紙の報道をもとに編集部が独自のセンスで選んだ、中国経済全般、政策動 向、産業一般、社会などホットな中国情報満載。日本の報道では物足りない、今の中 国を日本語で読みたい方は必見!
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電子マガジン《中国最新情報》  No.304 2005年5月3日
発行:《中国最新情報》編集部 http://www.bizchina.jp/
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━【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏【特集:旺盛な観光消費と観光の多様化の波】
●「純粋観光ツアー」2年で3割に 上海
●昨年の中国人の海外の観光消費は160億ドル
●中国は観光で世界で最も活力を持つ
●国内主要観光地値上げ暫定停止

┏【国内経済】
●今不動産を買わない10の理由

┏【国内政策】
●中国税務システム A級納税者計5万9211戸を評定
●中国死刑廃止論争 制度改革は国情を考慮

┏【経済データ】
●外国為替(4月30日)

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……【特集:旺盛な観光消費と観光多様化の波】……………………………………
●「純粋観光ツアー」2年で3割に 上海
 謝瑞麟氏が逮捕されたことに端を発する観光業のショッピングのリベート問題
で、「純粋観光ツアー」といったような旅行形態のシェア増加を推し進めること
ができるのだろうか?
 上海観光業協会の専門家によると、無秩序なショッピングのリベートは、多く
の観光客を「純粋観光ツアー」に向かわせているという。上海の「純粋観光ツア
ー」は今年と来年の2年で市場全体の3割を占めることになるだろう。

 数年前、「純粋観光ツアー」が市場に出たとき、価格が高くて量が少なかった。
 上海の幾つかの旅行会社の海南島ツアーの募集価格を例にすると、「純粋観光
ツアー」の四ツ星ランク往復航空機利用の価格は2890元が一般的だった。しかし、
一般的な三ツ星ランクの特価往復航空機利用の6日間ツアーはわずか799元で、6
日間のバケーション豪華ツアーは1790元だった。
 観光客にしてみれば、団体ツアーでのショッピングは買うことを脅迫されるこ
とはないし、買わなくても済む。ショッピングのために浪費する時間も大したこ
とがないから、そんな多くのお金を使って「純粋観光ツアー」に参加する必要も
ないと考えるのだ。

 しかし、上海観光業協会の専門家は24日、ショッピングのリベートはますます
激しさを増し、多くの観光客を、いかなる強制的なショッピングスケジュールも
ない「純粋観光ツアー」に向かわせていると指摘する。
 2002年1月5日に「純粋観光ツアー」が発売されて以降、春秋上海旅行社の「純
粋観光ツアー」の観光客が海南行きの観光客に占める割合は、もともと10%にも
満たなかったのが、現在は50%にまで上昇している。

 海外旅行客のショッピング消費は香港観光旅行総費用の半分以上を占めている。
 上海旅行業協会の専門家は、「純粋観光ツアー」は、リベート問題を回避でき
るものの、観光客が行きたいと思っているショッピングスポットに行くことがで
きなくしており、観光客の買いたいと思っているものを買えなくしているという。
 したがって、ショッピングを回避することは根本的に問題を解決するわけでは
なく、目下最も重要なことは、ショッピングの規範化の問題を解決することであ
ると提案している。〔毎日経済新聞4月25日〕

●昨年の中国人の海外の観光消費は160億ドル
 第1回中国国際休暇観光展覧会が、三十数国家、115社の国際観光企業を集めて、
3日間の日程で開催された。

 現在までで中国の観光客の観光目的地の国家は既に90以上になっている。
 関連市場調査報告の概算によると、昨年の中国の海外観光出国者数は延べ2850
万人に達し、海外における観光消費は160億米ドルを超えた。
 また、今年上半期における海外観光出国者数の概算は延べ1740人に達している
という。〔解放日報4月21日〕

●中国は観光で世界で最も活力を持つ
 国家観光局の顧朝曦局長は19日、PATA第50回年次総会「中国の窓」討論会の席
上で、中国は既に世界において最も成長速度が速く、最も活力のある観光先であ
ると述べた。
 中国海外観光業は一昨年のSARSの影響から全面的に回復した。昨年の入国者数
は述べ1.09億人であり、1978年の60倍となり、旅行外貨収入は257億米ドルに達
する。
 以前、TTG Asia誌が中国を2004年度世界最良観光先に選んでいる。

 また、顧朝曦局長は、中国は目下世界で最も規模の大きい国内観光市場を持っ
ていると述べた。
 2004年、中国国内観光者数は述べ11億人、国内観光収入は567億米ドル、国内
観光収入は中国観光総収入の67%を占めている。国内観光業が振興し、有効需要
が動き出し、消費を促進し、関連企業の発展をもたらしている。

 さらに、顧朝曦局長は、中国はまた世界において最も急速に振興している新興
観光客供給国であると述べた。
 中国が正式に国民の海外観光を開始したのは1997年で、当時の出国者数は述べ
532万人で、正式に出国観光が開放された旅行先は、タイ、シンガポール、マレ
ーシア、フィリピン、香港、アモイだけだった。
 今年の4月1日現在、正式に中国国民の海外団体旅行を行っている国及び地域は
64にも達し、アジアだけでなく、アフリカ、欧米、アメリカ、オセアニア地域に
も及ぶ。

 顧朝曦局長は、2008年北京オリンピックは中国観光業の千載一遇の発展のチャ
ンスであると考えている。
 2005年、中国国家観光局は引き続き「オリンピック―観光」宣伝活動を大がか
りに展開し、観光を通じてオリンピックを宣伝し、オリンピックを通じて、観光
を促進する。
 今後数年、「環境、文化、科学技術」といったオリンピックの3大理念をもと
に、観光資源を統合し、観光商品を開発して、多方面、多分野な展示ができるよ
うに、中国にある自然文化観光、民族、リゾート、特定の旅行といった豊富な観
光資源と膨大な観光文化といった各種の有名な観光商品を国際市場に紹介してい
くという。〔中国網旅遊4月21日〕

●国内主要観光地値上げ暫定停止
 4月24日、記者が広州旅行社に取材をしたところによると、張家界の入場券が
値上げされたほかは、北京、九寨溝、武当山、鼓浪嶋、少林寺などの幾つかの値
上げがうわさされていた観光地は、いずれも現在の入場料金を維持しており、値
上げすることはあり得ないという。

 旅行会社によると、以前値上げがうわさされた幾つかの観光地は、ゴールデン
ウイークの人出が激しい場所で、入場料金がツアー費用に占める割合は大きくな
く、平均で値上げはほんの5%にすぎない。しかし、多かれ少なかれ、ゴールデン
ウイーク中のそのコース利用者にはマイナスの影響がある。
 旅行会社のコース別価格の中では、16日に張家界の入場料金が値上げされ、コ
ース価格は既に調整に入っている。入場料の値上げ幅は、直接観光客の旅行費用
に反映される。

 業界関係者によると、例年4月中旬は、珠江デルタ国内旅行申し込みのピーク
であるが、今年の動向は緩慢である。「広州市民が申し込みをおくらせているム
ードが珠江デルタに影響したようだ」。
 ゴールデンウイーク旅行は春節旅行、夏期休暇とも近接しており、多くの旅行
会社は今年のゴールデンウイーク旅行をそれほどよく見ていない。
〔新快報4月25日〕

……【国内経済】…………………………………………………………………………
●今不動産を買わない10の理由
▼理由1 政府が不動産価格抑制政策を打ち出しているため
 政策の見通しがまだ明るくならないうちは、不動産購入を提案する人は軽々し
く行動してはならない。今後の状況を知らず、そそくさといいかげんに不動産選
びをするべきでない。

▼理由2 不動産価格は下落するので、購入するとコスト割れする
 現在多くのディベロッパーが価格上昇を抑えている。バブルだということをあ
えて言わないのだが、不動産購入者からすれば、不動産購入に多くのコストがか
かることは明らかである。
 その原因は、現在の不動産は比較的よく売れ、供給が需要に追いつかない局面
を形成しているからだ。
 もし、不動産購入者がお金を持っていても静観するようになれば、買い手市場
になり、不動産価格は自然と下落する。

▼理由3 不動産価格が下落して、負の資産になる
 現在政府はマクロコントロール政策を実施して、不動産価格の上昇を抑制調整
している。
 もし、不動産価格を抑えることになると、現在高額で購入した不動産も後に負
の遺産を形成することになる。

▼理由4 不動産税が正式に公布されていない
 不動産税導入への呼び声が高く、やらざるを得ないのであるが、いまだに公布
されておらず、多くの細目が未画定である。
 ワンルームは徴税するのかしないのか、2つ、3つの部屋をどのように区分する
のかといった問題がある。そのことは、不動産購入者の不動産支出に直接関係す
る。

▼理由5 利子が不動産購入コストを増加させる
 不動産購入は、利子のリスクを考慮しなければならない。
 中央銀行の公定歩合引き上げは、不動産価格の過度な上昇を抑制を主な目的と
してなされるが、個人の不動産ローン支払い比率が上昇することを意味する。
 これは、中央銀行が市場に発する明確なシグナルの一つで、国民は不動産市場
に参加するときには、利率のリスクを考慮しなければならない。それは、利子が
加算される可能性が依然としてあるという情報もあるからだ。

▼理由6 空き家になるかもしれず、投資回収ができなくなるかもしれない
 中国社会化学院が発表した「中国不動産発展報告」では、目下、北京の不動産
の2割は空き家であると指摘されている。
 多くの不動産購入者が購入後に空き家にしている率が高い。これは、主に不動
産購入者が購入した後に賃貸や転売をしていないためである。仮に賃貸や転売を
しなければ、投資を回収したとは言えない。

▼理由7 供給が多いのに、不動産価格が高い
 目下、不動産ディベロッパーの土地は、基本的には2003年8月31日の期限前に
得たものである。
 資料によると、2003年の1―8月の期間中、北京市では1.1億平方メートル分の
譲渡協議がなされたが、これらの土地が北京市のここ10年間の不動産用途の土地
の相和に相当している。
 つまり、これらの不動産業者は、廉価な土地を得た後、ムードを高めて民衆の
注目が移ることを望んでおり、不動産価格を高額にし、暴利を得ている。

▼理由8 市場情報が不透明で、不動産購入はだまされやすい
 市場情報が不透明であることから、消費者は不動産を購入するプロセスにおい
て絶えず受動的な立場に置かれる。
 ディベロッパーが販売する不動産はないと言えば、たとえ自分がまだ大半が空
室で価格が上昇してから再販売するということを知ってとしても、ただ見ている
だけしかできない。
 また、販売情報がインターネット上で発表されたとしても、ディベロッパーは
うその制約やうその実績を発表できる。
 しかし、仮に不動産購入者がお金を持って静観していれば、焦るのはディベロ
ッパーの方で、不動産価格は自然と下落する。

▼理由9 賃貸価格上昇は不動産価格高騰の半分にすぎない
 不動産の価格が持続的に上昇すると、賃貸価格もまた不動産価格の上昇割合と
同様に上昇するということであれば、投資回収は安定的に増加することを意味す
る。不動産価格が高騰し、賃貸価格の増加幅が緩慢であれば、投資が求める回収
率は下落する。
 北京市の状況は、不動産状況の速度は賃貸価格上昇の速度の2倍になっている。
 そのほか、不動産でお金が稼げるかどうかについては、賃貸で稼ぐお金に、さ
らに、家賃、雑費、暖房費、水道ガス費だけでなく、まだ余剰があるかを見なけ
ればならない。

▼理由10 不動産購入は容易であるが、運営管理が難しい
 多くの不動産購入者の主要な購入目的は不動産を運営管理することであるが、
それまで普通には運営管理コストを検討していない。
 現在は利子は上昇し、仮に不動産税を徴収されるということを考えざるを得ず、
不動産の運営管理はそれができるかどうかよく考えなければならない。
〔北京娯楽信報4月14日〕

……【国内政策】…………………………………………………………………………
●中国税務システム A級納税者計5万9211戸を評定
 国家税務総局の責任者は14日、近年、中国税務機関は税収信用システムの建設
を加速するために、納税信用等級管理を積極的に推進し、今まで、全国税務シス
テムはA級(最高レベル)の納税者計5万9211戸を評定したことを示した。

 税収信用システムの建設を強化し、市場経済秩序を規範化し、税金の徴収者と
納付者間の良好な相互連携を促進するという新しいコンセプトに基づき、1999年、
国家税務総局は税収信用システム建設の探索と実践を始めた。

 2001年に新しい「税収徴収管理法」が公布、施行された後、国家税務総局は
「納税信用等級評定管理試行弁法」の起草を始め、一部地域でテストを行った。
 また、全国税務機関は法律に基づき、公正、公平、公開の原則のもと、科学的
に納税信用等級を評定することを核心とし、統一の基準、方法、秩序に基づき、
積極的に納税者の納税信用に対し等級評定を展開した。

 税法規、行政法規の規定に基づき、税務登記手続きされた納税者は評定をされ
なければならない。納税信用がよければ、法に基づき多くの管理上の優遇、利便
を享受することができ、納税信用が悪ければ、税務機関はさらなる厳格の管理と
監督調整措置を講じることになる。
 評定過程において、中国国税局、地税部門は、A級納税者に公示制度を実施し、
評定結果を公告し、または相談に応じている。
 信用等級の実施に関する管理は、原則上2年度に1回評定されるものとする。

 評定は納税者の合法的権益の維持を重視し、納税者が納税機関の納税信用等級
評定に異議があれば、申し立てできるほか、法律に基づき税務行政再評定申請を
することができる。〔新華網4月14日〕

●中国死刑廃止論争 制度改革は国情を考慮
 「李久明」事件、「杜培武」事件、「聶樹斌」事件は、学界に死刑廃止論争を
誘発し、社会の広い範囲で関心が持たれている。
 2005年3月14日、温家宝首相は記者会見で「国情から見て、中国は死刑廃止は
できないが、制度を整備し、死刑判決に慎重と公正を期さなければならない」と
質問に答えている。
 これが、激論されている死刑廃止に対する、政府の最も権威ある回答となった。

 無罪判決が出たばかりの「余祥林」事件は、メディアと社会に冤罪事件の原因
についての再考を促したり、また一方では、少し前に激論された死刑廃止論争が、
学会の範囲を超えて、社会全体で再度沸き上がったりしている。

 2005年1月16日、「現代刑法と人権保障」という全国優秀青年刑法律学者フォ
ーラム上で、湘潭大学法学院の邱興隆院長が提出した死刑全面廃止の考えについ
て、司法部副部長で中国法学会刑法学研究会の張軍副会長は、中国が当面重点的
に解決しなければならないのは、刑罰制度の改革であり、20年、30年以上の長期
の刑をつくり、これによって次第に死刑判決を減少させることだと発表している。

 かつて2003年1月9日「南方週末」が発行した「死刑制度 維持?廃止?」は、
ネットでの死刑大討論を誘発した。
 一部の法律学者による死刑を制限し最終的には死刑廃止を目指す「エリート専
門家の共通認識」とはっきり異なる点は、圧倒的多数のインターネット利用者に
とっては、「人を殺したら自分の命をもって償わなければならない」ということ
は絶対の真理であり、その他の凶悪犯罪に対しても、死刑の適用は当然であると
考えられていることである。

 しかし、2003年8月15日に劉湧が第2審で死刑執行猶予に判決が変更されたこと
で、メディアや世論は、裁判官、弁護士、学者を攻撃し、再度一般大衆の死刑に
対する考え方がはっきりした。
 それ以降、人民ネットがネット上で行った今年4月11日現在のアンケートでは、
58.8%の人が「死刑廃止に反対で、刑罰を重くする必要がある」と答えている。
「直ちに全面的に死刑を廃止し、生存権を尊重するべきである」という回答はた
った9.6%であった。

〈中国歴史上の死刑廃止論争〉
 賛成支持者:刑は繁栄の時代には必要ではないが、繁栄の時代でも廃止はでき
ない。
 反対支持者:殺人者は死ぬべきである。殺されないと民衆は満足できない。

 実際には、中国はずっと死刑が存在している。しかし、死刑と中国文化の間に
は、微妙で矛盾した関係がある。

 一方では、「法を厳しく、罰を厳しく」という思想は、中国の歴史上でずっと
主導的地位を占めてきた。歴史上の各種の厳しい刑罰は一貫していることだ。中
国の刑法の中には多くの残酷な刑罰があり、「殺人者は死ぬべきである」「殺さ
れないと、怒りを静めることができない」とされる。
 つまり、これが中国の法制上で死刑が執行されている基本思想であるだけでは
なく、中国国民の普遍的な民意でもある。

 しかし一方では、戦国時代に形成された「徳を明らかにし、罰を慎む」という
思想が、死刑に対する抑制にもなっている。孔子の「争わない」思想は、2000年
以上の中国の主導的な法律上の思想となっている。
 「殺すという残酷なことをするのは、それが残酷であることがわからないから
だ」。伝統的な中国の刑事政策は更生教育を重視する。つまり、習慣をただし、
矯正させる。
 つまり、死刑があったとしても、殺人犯が殺されれば殺人したくなる人がいな
くなり、殺人事件がなくなり、刑罰することで犯罪をしたくなる人がいなくなり、
犯罪事件を起こす人がなくなり、刑罰をすることがなくなる。

 したがって、古代の繁栄した時代に対する最高評価は「使わないで放置する」
ことである。その意味は、犯罪者に対する死刑執行が少なくなれば、死刑が必要
とされなくなるということである。
 「文景の治」、「貞観の治」では繁栄の時代を築いている。もし、人々が仲よ
く暮せば、刑罰さえ要らなくなる。ましてや、死刑はなおさらである。
 しかし、死刑は「放置」しておくものとしての必要条件であり、昔の人が言う
には「刑は繁栄の時代には必要ではないが、繁栄の時代でも廃止はできない」の
である。

 中国で最も早く死刑について考えた人は沈家本である。清末期に法律修正を担
当した際、「死刑廃止説が現在世論を沸かせているが、結局廃止できないのが政
治の現実だ」と悟っていた。
 中国のその当時の「国情」をかんがみると、沈家本は死刑の統一の可能性につ
いて、理論研究と実際の遂行を行っている。沈家本の努力により、中国の法律上
の死刑は、通常法規での2種類から1種類に統一され、死刑執行は、公開の場所か
ら刑務所内で行われるようになった。

 1930年代に民国司法界でも死刑廃止に関して論争が起こっている。
 しかし、中国の政治が流動的な局面であったため、実質的には進展していない。
 本当に討論が起こり始めたのは1990年代以降で、主に死刑廃止を吹聴する「エ
リート学者」の一部によるものである。

 中国での死刑廃止は論文や民意から出たものではない。西洋諸国の死刑廃止は
ほとんどがキリスト教思想の影響があり、ベッカリア(C.B.Beccaria)はルソー
の社会契約論を理論の基礎としている。
 しかし、中国の一般民衆や政治家には、死刑廃止は人権保護であるという漠然
とした意見は受け入れにくい。
 この考えが人道的考慮に基づくとしても、中国というこの異なった社会、文化、
伝統、歴史の背景のもとでは、犯罪者の人権だけを保護し、被害者の人権を保護
していないと考えられがちである。「人民の怒り」が積もって、そして死刑廃止
に対する民意の反発が激しく沸き立つのだ。

〈中国現代の死刑廃止論争〉
 湘潭大学法学院の邱興隆院長は、犯人も人であるのだから、国家や法律がみだ
りに犯人の生命権を剥奪してはならない、したがって死刑は全面的に廃止するべ
きだと考えている。その代替として長期刑を設置すべきだという。
 しかし、人民大学の謝望原教授はこれとは異なる意見を持っている。各国の法
律制度と歴史習慣は違うので、死刑廃止は歴史の趨勢ではないと考えている。

 たとえその言うとおりだと考えたとしても、死刑廃止論者の考えには多くの疑
問がある。
 先進国にあるものが我々にもあるのかどうか?、このことは先進国に学ぶべき
なのだろうか?それとも中途半端に学んでどっちつかずになってしまうのではな
いか?。
 国際的趨勢を考慮するのは、模倣やコピーにすぎないのではないのだろうか?。
人道に基づいて殺人者の人権を考慮するならば、それでは殺された人の人権はど
うなるのだろうか、殺された人の身内の感情は考慮されるのだろうか?

 人々が死刑廃止に反対するのは、実はそんなに奥深い哲学に基づくものである
わけではなく、もっと現実に即しているのである。それは、自衛である!
 減刑、仮釈放、重病のための仮出所の制度は万全でなく、司法の腐敗が極めて
深刻であるという現状を改善せずに、権力や金銭やコネで正常な法執行がねじ曲
げられることはないと保証できるのだろうか?
 死刑廃止するのであれば、だれが殺人者が本当に監禁状態にあり、法の網を逃
れて悠然としていないと保証できるのだろうか?

 実際に、犯罪者の中には、服役中にもかかわらず自由に刑務所を出入りし、甚
だしきに至っては累犯にさえ至っているのだ。
 しかし、弱い存在である犯罪者の中には、刑務所の中でさえ合法的権利の保障
がない。「妻殺しの冤罪事件」の余祥林は、刑務所に服役中に視力を失い、指も
なくした。
 刑務所の制度と施設が健全にならないのであれば、「人道的」待遇を監禁中の
犯人に適用することはできない。死刑廃止は「人道的」と言えるのだろうか?

 実際に、現在の中国法律学会は死刑廃止するべきもう1つの原因として、聶樹
斌、余祥林といった冤罪の存在を主張している。
 分析すると、どの冤罪事件にもすべて拷問による自白の強要が存在しているこ
とがわかる。
 拷問による自白の強要や暴力による証拠取得を防止し、厳格に罪刑法定主義を
履行し、疑わしきは罰せずを原則とする。厳格に法定手順を履行し、厳格な証拠
制度と死刑再審制度を確立すれば、聶樹斌のような冤罪事件の発生を効果的に根
絶することができる。

 つまり、今しなければならないことは、温家宝首相の言うように、「死刑判決
に対する慎重と公正を保証する制度をつくること」である。小さな失敗でくじけ
ず、いいかげんな死刑制度を「死刑に処す」ことである。
 一言で言えば、私たちが今しなければならないのは、死刑制度の正しい運営を
維持するということである。

〈死刑廃止がその国家の社会レベルなのか?〉
 いずれにしても、EU各国の政治家は依然として、全面的な死刑廃止を推進する
ことに力を尽くしている。さらに、欧米各国の国際的に影響により、死刑廃止を
することが文明的か野蛮か、先進国か後進国か、人権を擁護しているかどうかの
物差しにまでしている。

 しかし、問題は決してこれだけにとどまらない。
 死刑廃止は、大部分の西側先進国が言うように、その国の社会レベルをあらわ
しているのだろうか?。死刑という抑止作用がなくなったら、だれが一国家の凶
悪犯罪率の上昇(可能性にすぎないが)の責任をとるのだろうか?。長期刑を死刑
のかわりに行うとして、納税者に犯罪者の監禁費用を負担させる理由はどこにあ
るのだろうか?

 法律制度がまだ健全ではない国家では、死刑廃止によって、権力者が理不尽に
庶民を虐げ、汚職できないと保証できるのだろうか?。司法の腐敗によって、法
執行に不公平要素が存在していたら、だれが犯罪者を公平に処分できるのだろう
か?。そして、権力者が投獄されると、まるでホテルに泊まっているような状況
で、弱者が監禁されると、合法な権利さえ侵害されてしまうような状況がなくな
ると保障できるのだろうか?

 一言で言えば、各国の社会、文化、経済、政治、伝統、さらには人口も異なっ
ており、死刑廃止を画一的に処理していいのだろうか?。
 これらの問題に回答が出なければ、死刑廃止は現実になることはなく、絵にか
いたもちになってしまうだろう。
〔法制早報4月19日〕

……【経済データ】………………………………………………………………………
●中国の外国為替レート(仲値)
                        (中国人民銀行4月30日発表)
外貨名  100日本円  100米ドル  100香港ドル  100ユーロ
     7.8489  827.65  106.11   1069.55
関連ページ:http://www.bank-of-china.com/
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《編集者コラム――レジャー》
 結局、何も考えずに気がついたらゴールデンウイークとなってしまいました。
 ゴールデンウイークまでもメールマガジンを出すこともなかろうとは思うので
すが、発行できる陣容はあったので、メールマガジンを発行することにしてしま
いました。せめて量を減らそうと思ったのですが、結局いつもとさほど変わらな
くなってしまいました。
 普段の週末とさほど変わらず、テレビで野球ばかり見ているのでは不健康な気
がするので、きょうは野球を見に行きました。しかし、こともあろうにごひいき
のチームは、ホームラン、満塁ホームランまで打たれてぼこぼこに負け、精神衛
生上かえって家にいた方がよかったかなと思うほどでした。
 連休ももう後半――もしかしたら、このメールマガジンを連休中に読まれる読
者様は仕事中かもしれないのですが――、せっかくの休みなので、楽しい思い出
をつくれたらいいなと思います。(ま)
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●バックナンバーの入手(記事検索も行えます)
(200号以降 2003/2/18―)
 http://www.bizchina.jp/modules/nweek/
(199号まで)
 http://www.jckc.com/nweek/view.php?no=1
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編集長:李年古/副編集長:前野貴子 特別協力:劉莉生
翻 訳:劉志軍 杉下薫 戴小芳 アヤ
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