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第5回 中国人の商売ルールと商習慣

李 年古

中国の商売人は、儒教の伝統的価値観の影響を深く受けているから、商売スタイルや手法や考え方には、一定の共通した価値観と暗黙のルールがある。ここで、いくつかを探ってみる。

血縁・地縁関係優先の経営資源

中国人にとって、血縁関係や地縁関係は伝統的な儒教文化の倫理基盤であり、一番信頼できる人的なネットワークでもある。逆に血のつながっていない他人はいつでも裏切られる位置に据える存在で、警戒すべき対象となる。商売の世界でもその価値観に根づいた行動様式が良く見られる。

各国の華人企業の多くに、創業当初まず兄弟や親子で会社を立ち上げるケースが非常に多いことも、その一例だ。いわゆる「一族会社」の経営形態をとっている会社である。また、華人は社員が増えても、社内で最も重要なポジション、例えば財務経理部や人事部のトップにはできるだけ親戚にその権力を握らせている。血のつながりがあってこそ
完全な信頼が可能だと考えているからだ。

例えば、20世紀の初頭、中国の有名な資本家である栄宗敬氏、宗徳生氏両兄弟が創立した企業集団は19の子会社が設立した。1928年の統計では、その集団には社長やマネージャーなどの高層経営者のポストが54あり、そのうち栄氏兄弟と血縁関係にある高層経営者が32人、婚姻で結ばれた家族メンバーが14人、全体の83.5%を占めている(出所:『商人と中国近世社会』p208 著者:唐力行)。

人脈を「経営」する経営者の役割

中国社会が「コネの社会」と言われていることは周知の事実だ。商売人にとっても、中国で金持ちになりたければまず「人間持ち」にならなければならない。人脈に投資することこそぼろ儲けの近道だ、と多くの商売人がそれを経営の哲学として信じている。

大金持ちになるために必要な人脈とは?

商売人にとって、人脈の中で最も高い価値があるのは、政府官僚との人脈である。その価値がどれほどのものか、計り知れないと言うしかない。特にその中で二種類の官僚との人脈ができれば大金持ちのパスポートを手に入れたと言ってよい。つまり、国土の開発権を握る地方の高官と銀行の実権を握る者だ。もし、その両者との人脈を掴むことができたら、あなたは一円の投資もせずに世界最速コースで大資産家になることも、決して夢ではない。

中国人の商売観