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第6回 中国人の商売スタイル

李 年古

上手に儲けるよりも確実に儲ける方が得

中国には「好得不如現得」(上手に儲けるよりも確実に儲ける方が得だ)という熟語がある。商売人にとって、動乱の社会に生きる最大の不確実さは、次の瞬間に何が起きるか分からないことだ。「煮熟的鴨子也会飛走」(煮込んだアヒルもいつか飛んでいってしまうかもしれない)。だから、確実に金をポケットに入れていない限り、すべてが水泡に化しても不思議ではない。このような考えに基づいて、彼らは現金での商売を好んでいる。つまり、確実に儲かる商売が一番魅力的だと思っているのだ。

こうした商売スタイルに馴染んでいるから、中国人は相手の話にいくら魅力があっても、現金をパッと出されたほうが説得力があると思っている。そのため、中国で現金支払い、しかも現金を即座に一括払いしてくれる相手に弱い。直ちに現金で支払う人間が交渉の場合でも圧倒的に優位に立つ。

「人無横財不富」の儲け方

これは、「人間は変な商売によって一晩で儲ける機運がやってこない限り、金持ちになるのは無理だ」との意味だ。商人気質の中国人の中には、この考え方に同調する人が実に多い。筆者もいくつかの国の有名な賭博場を見回ってきたが、どこでも大金を惜しまず賭けている中国人が一番目立っているのを目の当たりにした。中国人がなぜこんなに博打好きなのか、実際のところ理解に苦しむ。「人生が賭けだ」とする人生観を持つ中国人の国民性にあると思わざるを得ない。動乱の時代を体験してきた中華民族の先祖の血が流れており、明日はどうなるか分からないから、今勝負するべきだと考えるのではないかと推測できる。

「斤斤計较」~一円の抜けも許さない中国人との価格交渉術

日本人は、中国人の商売人が金にかなりこだわっているように見えるとよく言う。一円の抜けも許さない中国人の価格交渉は、非常に厳しいものだとよく言われている。
私は『中国人との交渉術』の中で、ある中国人の商売人の話を次のように引用している。

「自分が、その交渉に勝っているかどうかは、最終合意となった時点で相手の表情を見れば分かる。もし相手が憎しみのこもった眼差しで自分をにらみ、自分をそのまま食い殺してしまいそうな様子ならば、その交渉は成功だったと満足する。つまり、相手が損害を被るということは、そのまま自分の得になるはずだからだ」

まさに「斤斤計较」(一円でも勘定高く計算すること)をしないと、相手から見て失格の商人になりかねない。ダブル損害を負うことになってしまう。これは商売人が騙されないための自己防衛手段とも言えよう。

中国人の商売観