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第9回 商売の鉄則

李 年古

「機不可失、時不再来」の商売鉄則

「チャンスは二度と来ない」――これは中国人の商売人にとって死活に関わる商売の哲学だ。筆者も、中国人の商売人が商売のチャンスに対しどの国民よりも敏感で即断即決に長けていると断言したい。多くの外国人がそれを理解できず、中国人との商談は「決定が遅い、まるで時間延ばしの名人だ」と揶揄する人さえいる。しかし、これは大きな誤解だと指摘しておきたい。こんな印象を与えるとしたら、国有企業を交渉相手にした場合のみだと言ってよい。社会主義一元管理体制により、一企業の経済行為、例えば国際商談を行う場合でも、縦割りによる複数の政府管理部門の許可を経なくては、なかなか決められないという理不尽な事情があるために、こうした印象を海外に与えているだけの話で、中国人の伝統的商売意識とは無縁だと思うのが正解だ。

このような商売では、買いと売りのタイミングをいかに的確に掴んでいくかが成功の最大のポイントである。株投資とも似ていることだ。現在中国で株投資に熱中する市民の数が何百万人にも上っているのも、まさにこのような伝統的な商売方法が継続しているためだと考えられる。彼らの投資家としての大きな特徴は、その絶対的多数がどのような優良株でもそれを長期的に取って置くことをしない点にあるのだ。いくらその成長株が将来大きく値上がりする可能性があろうとも、今売れば少しでも確実に儲かるならば、それがどんな優良株であろうとも、さっさと手放してしまう。このように中国人の株投資は極端に投機的な傾向が強い。「低買貴売」の伝統的な商売方法を見事に活用しようとした好例だ。中国人の商人的なメンタリティを表している実例とも言える。

ちなみに、「時機」をうかがう重要性は商売の世界だけの話ではない。あらゆる行動の原則とも考えられる。例えば、中国では「君子が復讐するためには、十年かかっても遅くない」との熟語がある。日本の「石の上にも三年」の考え方よりも長く、相手を破るタイミングをうかがうためには、壮大なスケールで時間の軸を捉えるのである。

中国人の商売観