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第3回 役人と一緒に旅行をする

岡田 章一

これまでの当連載の中で、中国のお役人たちとのお付き合いのコツということで、彼らとの会食とか、おみやげなどの体験話を思い出すまヽお伝えしてきた。そこで今回は大サービスとして、中でも飛び切り有効な方法というのを一つご推薦することにしよう。ただし予めお断りしておくが、これはあくまで自分の場合は成功したということで、いつでも誰でもうまくいくというものではないかもしれない。

その方法というのは、彼らと一緒に旅行をすることである。簡単にいえば、どこでもよろしいから、仕事に関連づけて出張に引っ張り出す。一口に出張とは言っても大小いろいろあって、大きなのは外国で開催される世界規模の展示会等に招待または同行し、自社関係のブースにご案内するというのもあるが、これはあくまで公式的なもの。だいたいこうした海外出張には大物幹部しか行けないし、彼らはいろんな招待に慣れていて、ライバル会社も同じような対応をするから、お金がかかる割にはあまり点数稼ぎにはならない。現地に駐在する我々が本当に仲良くしたいのは、役人の中でも下位の担当レベルの人たちである。ふだんお世話になっている、こういう人たちこそ大切にするという考え方が大事だと思う。さきの上位役職者にはその職務柄いろいろと外へ出る機会があるが、なかなか庁内からも出られないのが、この担当クラスの役人たちなのである。

ではどういう方法がよいか。中国には中国人でもなかなか行けない名所というのが沢山ある。そこへ一緒に行くのである。例えば、敦煌や西蔵(チベット)や桂林、昆明。このような場所に一緒に行こうと持ちかけた時から、自然に相手との間に親しみが湧いてくる。まるでその昔小学校の遠足に行く前のような雰囲気が何ともいえず良い。それがたとえ数日間の旅であっても、親密さはいやましに深くなってくる。旅先での地方料理なども捨てがたい味わいと共に思い出の中に残る。遠く敦煌やチベットでも彼らに関係する地方官庁はあるし、仕事のタネはちょっと考えればできるものだ。こちらで旅費や宿泊代くらい負担しても大したことはない。私がチベットに「出張」した時には、総勢11人のうち 7人までが酸欠の高山病で倒れてしまうという壮烈な旅行だったが、それはそれで各自には一生忘れがたい思い出を残したものだった。「旅は道連れ、世は情け」とか、「旅は情け、人は心」とか、日本には旅に関する人との交流の名言があるが、異国の地で仕事を進めながら、人情の機微に触れる機会を持つことくらい楽しいことはない。

中国人幹部との付き合い方