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第14回 日本人は通訳会話がへた

岡田 章一

「日本人は話をする時に、なぜ顔をそむけてしまうのかしら?」。ある時北京の役所に勤める女性のY処長(課長)から聞かれたことがある。「そんな人がいるのですか。顔をそむけるとは、どういうことですか?」。私は、まず自分のことではないだろうなと思いながらも、よく理解できずにそう質問した。するとYさんが答えた。「我々中国人が日本人と話をする時に、いくつか気になる仕種があります。中でも良くないのは、日本人は対話の相手と正面から向き合わないことね」。それを聞いて、私は、あヽ外国人からよく指摘される「日本人にはアイコンタクトがない」ということだろうかなと思った。だがYさんの話はちょっと違っていた。彼女が話したかったのは、次のようなことだったのである。「日本人との会話で、とくに気になるのは、通訳を介して話をする時です」。私は予想と違ったので、いったい何のことだろうと思った。「それは、通訳者と議論してしまう日本人ビジネスマンが結構多いことなのです。この傾向はとくに技術部門の人に見られるようですね。会議の場でも話題がだんだんと細かな部分に入っていき、議論に熱中する余りに、自分と話をしているのが通訳という仲介役であることを忘れてしまう。その時に問題となるのは、メインの話し手(主として上役だが)が、対話の脇に置かれてしまうことです。そして、その不快さに輪をかけるのが、目線をメインの相手に合わせないで、通訳者に向けて話し込んでしまうことですね。これはどの中国人に聞いても評判が悪い」。要するに、日本人が中国人と会談をする時には、会話の主人公はどの誰なのか、という「本質」の部分を認識しているかどうか、疑問だということである。この原因の一つは、確かに日本の会社ではふだん会議は多いが、それらがたぶんに形式に流れていて、発言も決まったスタイルが多く、心と心を通わせる対話などには慣れていないことがあるのだろうと思う。その点中国人、例えば(前回紹介した)A司長などは、日本語は分からないながらも、日本人が話している時などは、ちゃんと聞いている表情を示し、時には笑顔を作ったりもする。従って話している方も話しやすい。A氏はお喋りだが、このように聞き方も上手なのである。ただご自分が話される時間の方がやたらに多いのが欠点ではあるが。

上述のように日本人がぽろっと見せる欠陥は、対話のコツをしっかり身に付けている中国人には未熟者にに見えてしまう。要は言葉のやりとりだけではないということなのだ。「こんな小さなミスでも日本人にとって損ですよね」。Yさんは笑いながらそう言った。

中国人との会議