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第3回 広東人の性格と交渉スタイル

李 年古

「東西南北中、財を成すには広東」

広東には長い貿易の歴史があり、香港・マカオなどの国外資本との関係が特に深い。世界の華僑のうち約7割が広東出身者で、600万人の香港人・マカオ人のうち約8割が広東出身者で占めている。広東人の商売に対する情熱は、どの省の人々より強い。「商売せずに冨は得られず」という意識が一般の市民にまで浸透している。ある広東人は自らの民族を「永遠に金銭を追いかけている人種である」と言い切る。まさに、「東西南北中、財を成すには広東」といわれる所以である。

チャレンジ精神旺盛な広東人

広東人は競争心理が非常に高く、「弱肉強食」の規律を自然に信奉している。彼らのチャレンジ精神は、職業選択の様子からもその一端がうかがえる。彼らは職への定着意識はかなり薄く、新しい転職先が見つかれば迷わず転職してしまう。よって、広東の会社経営者は、常に人材の流失に頭を悩ませている。こういった現象は、国有企業の中でゆりかごから墓場までの終身雇用に身を置いていた中国人の多くに衝撃を与えている。広東人はあくまでも安定を求めずに、常に新しいものにその関心を注いでいるのである。

広東人の交渉スタイル

相手と利益を分かちあう姿勢

広東人は、ビジネス交渉に際しては相手に一定の利益を与えないと交渉はうまくなりたたないとの理念を持っており、この点が他地域の人々の考え方と大きく違う。彼らはまず相手の条件に一定の理解を示し、相手の取り分にも気を配る姿勢を見せる。例えば、相手が値引きを要請する際、彼らがよく使う手段は、まとめて発注するよう勧めることである。つまり発注する量に応じて大幅な価格のダウンを示し、相手のマージンが最大限になるような提案をする。したがって、広東人と商売する場合には、とにかくまとめて発注すればメリットが大きいのである。他の省ではこのように利益を相手に譲ることは殆どないため、全国各省から中国人のバイヤーが広州に集まり、広東の製品を求める現象がおきているのである。

「冒険心」が旺盛の広東人

広東人のビジネスの大きな特徴と言えば、新しい商機に敏感で大きなリスクも恐れず速やかに動くことだろう。もともと中国人には賭博的な心理が生まれつき強く備わっているが、広東人はそれに輪をかけていると思えばいい。彼らは、人一倍のチャレンジ精神を持って絶えず刺激的な人生を送ろうとする人種なのである。彼らのこうした性格を背景に、広東では若手経営者が早く成長し、またその絶対数も群を抜いて多いという傾向がある。

先手を打つものが勝つ

広東人のビジネスマンは競争意識が非常に強く、常にビジネスチャンスを狙っている。彼らは商売成功の秘訣を、「先手を打つものが勝つ」にありとの信念を持っているので、チャンスを逃がさずにすかさず行動に移す。

【事例】

中国にCDの生産ラインを輸出している日本商社は、このプロジェクトを立ち上げる当初、北京の輸入会社と接触してみた。北京側は設備に大きな関心を示したものの、外貨不足が原因で価格交渉は暗礁に乗り上げた。そこで日本商社は、広州市のとあるメーカーと接触しはじめた。この交渉も最初の内は価格の交渉で時間を費やしたが、日本商社が北京と同時に交渉をしていることを知った広州の会社は態度が一変した。
あの日、広州の会社社長が日本側の交渉団を呼び出してこういった。「設備の価格は貴社のいう通りで結構です。かわりに我々の条件を2つ申し上げる。1つ、設備は三ヶ月以内に納入。それが守れない場合がペナルティを請求する。2つ、半年以内は中国の他の会社にその設備を売らないことを約束する。半年の時間があれば、こちらは市場のシェアを一気に伸ばす自信があるからです」

上記の例から見て分かるとおり、広東人にとって交渉が長引くことは他社との競争で優位を失うことに直結する。せっかくの新しい設備の導入も時期が遅れてはそのタイミングを逃がしかねないと認識したわけだ。

地域別に見た中国人のビジネススタイル