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中国人の交渉心理

李 年古

「求大同、存小異」―まず大ざっぱに原則論から

中国人がその交渉スタイルで、欧米人とよく似ているとされるのは、交渉の最初の段階から、自分の主張点、とくに絶対に譲れない点をうちあけ、相手をそれに同調させるべく強く働きかける手段を用いることである。そして、相手が合意をしてくれさえすれば、細かな点についてはほとんど気にしない。たとえ「小異」つまり小さな点で合意にいたらずとも、しばらく棚上げにしておけばよいくらいに構えている。この考え方および交渉のスタイルは、日本人のそれとはまったく反対である。日本人はまず交渉相手との共通点を見出すことに神経を集中し、小さな共通項を積み重ねることによって大きな合意にいたると考える傾向が強い。

「好事多磨」―時間をかけて辛抱強く物事をこなす

「好事多磨」というのを中国流に解釈すれば、良い結果を求めるならば、その願う結果にたどりつくには多くの時間と手間をかけなければならない、これが世間の常識であるということになる。欧米人はしばしば、中国人との交渉を指して「時間延ばしの名人」の交渉などと揶揄する。しかし、もともと中国人の頭には西欧風の無駄がない交渉法といった効率的な考え方がない。いやそれ以上に、非効率的な交渉こそ良い結果に結びつくとさえ考えている傾向がうかがえる。

「和気生財」―当事者に面子をたてる

中国における交渉というゲームのルールとして、絶対に守らなくてはならないことは、相手の面子をつぶさないようにすることである。たとえば、相手を叩くときでも、相手が代表する組織と自分が代表する組織との戦いという点は強調するが、相手との個人的な対抗の構えになるのは避けるようにする。こうした交渉スタイルの特徴を表現する中国語として、「論事不論人」(交渉の対象は物事であって人間ではない)という。交渉をする双方にとっては、攻撃しあうことは多々あり避けられないことだが、個人攻撃は絶対やってはならないことなのだ。

「中国人との交渉術」より抜粋