CI Image
第1回 役人たちとの会食

岡田 章一

まず手っとり早い手段として考えられるのは、その役人たちと会食をすることであろう。中国というところは、メシを食うことから全てが始まると言われている。だが問題は、この会食という方法は誰にもできる以上、招待される方もそれに慣れていて、こちらだけが簡単に点を稼ぐというわけにはいかないことだ。ここが肝心なところであって、多くの知り合いを作ろうとして、やたらに数多くの人々と宴会ばかりこなしても効果は少ない、と心得べし。日本人の中には、会食の多さで、「顔が広くなった」と勘違いをしている人も多いが、意外に深みのないお付き合いに終わっているように見受けられる。「一度の食事では他人、二度目で知人、三度目で友人」と言われるように、少なくとも同じ人物と三回以上は食事をしたいものだ。いや三回でも少ない。一応の目安として五回以上としておこう。相手が五回も受けてくれたら、それは脈があるということになるのだろう。中国人は、人間を見分ける能力に優れているから、本当のお付き合いと形だけのお付き合いとは、冷静な目できちんと区分しているのだ。

泣く子と地頭には勝てない、という諺があるように、とかく日本人は上に弱いところがあり、役人を特別扱いする傾向がある。役人のほうもそれを良いことにして、さらに特別扱いをさせようとする。だから決して好かれる存在ではなく、民間の方も不承不承そうしている感がある。その点、中国の役人の方は日本人と比べて入りやすさはある。そこでよく、どこそこの局長クラスとすぐ知り合えたと言っては喜んでいる日本人もいるが、これはちょっとちがう。中国人との付き合いは、入り口は入りやすいかもしれないが、問題はその後の交際が深くなるかどうかが肝心なのである。受け取った名刺の数の多さではなく、心と心とが触れ合う付き合いを、頭ではなくハートの中から、ケースバイケースでよく考えて積み上げていくことが大切である。ごく当たり前のことだが、こういう点に関しては、さすがに人治の国の民だけあって、人間のあり方の本質を見抜く目は日本人よりも鋭い。

中国人幹部との付き合い方