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第3回 私営企業の共通点

李 年古

中国の私営企業には、はっきりと見てとれる特徴点がいくつかある。

投機性の高い分野で急速に成長

次の一例から見てみよう。

李暁華氏。私も取材したことのある青年実業家である。北京の恵まれない家庭の出で、最初の稼ぎはカキ氷を作る中古の機械を一台購入し、夏の海辺で海水浴客に氷を売って細々と小銭を稼ぐことにあった。後に日本に私費留学する。アルバイトで学費を一生懸命に稼ぎ貯めている時に、ちょうど中国製の「発毛剤101」が爆発に売れていることが分かった。これがチャンスだと思い、彼はさっそく北京にある「101 」の製造元の会社に飛び込んだのである。もちろん、この会社にはすでに貿易会社の仕入れ担当者がハエのように群れたかり、彼の如き一介の貧乏留学生は門前払いとなった。

しかし彼は決して諦めることなく、何度も同社に足を運ぶ。そしてそのうちに一つ意外なことに気付いたのである。それは同社が郊外にあるにもかかわらず社員送迎用のバスが見当たらないことであった。そこで、彼は自分の商売資金を出し切り、中古バスを一台買い、これをすぐに同社に贈呈したのである。この義挙的な行為はすぐに会社の上層部と従業員たちの好感を呼び起こし、やがて同社は日本市場向けの101の独占販売権を彼に与えることになったという。

使用者する日本人の頭に毛が生えようと生えなかろうと、とにかく彼は爆発的に大儲けをすることになる。そして彼はその資金を持って、香港で投資会社を設立、東南アジアの某国で値上がりしそうな大きな土地を手に入れた。後に銀行からの借金の返済期限がわずか三日を残すだけとなり、その土地を高く売り出せなければ無一文になる寸前の彼に、またもや幸運の女神が微笑んだ。それは突然その国で新しい高速道路の建設計画が発表され、彼の土地がこの道路の沿線にあるために一気に値を上げたからである。

以上のことは彼本人が記者たちの質問に対して答えた模範回答である。素直に言うが、中国の億万長者というのは、だいたい皆このような神話的な成長史を自分かまたは彼の取り巻きによって編み出していると考えていてよい。だから筆者の私は、決して彼の‘神話’を全てそのまヽ信用しているわけではないのだが、彼が創業者として発揮した個性や、会社の創業史とそのビジネス展開ぶりの中に、急成長した中国の私営企業が共通して持つ特徴が伺えることに興味を引かれる。

下記にそれらの要素を列挙してみると、

  • 商人の魂がある。そしてむしろ物作りよりも物を売ることが得意である。
  • ビジネスリスクを恐れず、反対にそれを得難いチャンスとして挑戦していく精神が強い。特にハイリスクと高収益性が混在する商売には人一倍の関心を示す。
  • 何事に対しても自信と迫力に溢れている。
  • 商売のため、また自分が前に身を置いていた社会的に低い地位から脱け出すために、派手な社交を繰り広げ、特に上流社会や権力者との人脈作りに熱心である。

こうした特徴については、後で「私営企業とのビジネス展開上でよく注意すべき問題点」の中で詳細に検討することにして、ここでは簡単に触れる程度に止める。

中国民間企業とのビジネス交渉