李 年古
上海は商業精神にあふれていることで有名な移民都市であり、世界50ケ国から住民が集まっている国際都市でもある。上海人の特徴をある中国人学者は次のように指摘した。「彼らはきめ細かであるが、聡明ではない。また能力はあるのだが、迫力はない」(楊東平 『城市季風』)
前述の北京人の「大きい」と対照的に、上海人は「小さい」という言葉がぴったりの性格である。つまり、小さな利益を求めることに関しては知恵を遺憾なく発揮してみせるが、大所高所からの広い視野に欠けている。優れた能力を持ち合わせているのにもかかわらず、それに伴う迫力と度胸がない。このようなことから、他地域の人々から見ると上海人は「小市民」といった印象に映るのだろう。
北京人とは対照的に、ビジネスでは上海人は感情的な要素を排除し、ことに商売に関しては合理的且つ冷静に進めるタイプである。現実離れしたことにかんしては本能的に反感を示すところがあり、実用性を最優先し名よりも実をとる傾向が強い。彼らは利益を冷徹に計算し、相手のどんな欺瞞も見落とさない。情けやしがらみに流されることは絶対にない。
上海人を描写するときに「精明」という言葉がよく使われる。この言葉のなかには、最小の投資で最大の利益を得ようとする考え方がいかんなく発揮されている。上海人が「中国のユダヤ人」と言われるのはそんな理由からであろう。上海人の計算高さに悩まされた企業例をあげてみよう。
【事例1】
上海人は、頭脳明晰で決して騙されないというイメージが中国人の中で定着している。加えて、計画性があって先見性にも優れているといわれている。よって彼らを相手にして商談の主導権を握るのは、中国の他の地域よりはるかにむずかしいことである。その反面、上海人はビジネス交渉に関する国際的なルールや知識を、他地域よりはるかに詳しく且つ常識的に理解しているため、交渉をスムーズにすすめられる長所もある。
【事例2】
上海人は自分たちの損失に対して極度に神経質である。どんな提言にも懐疑的な態度を示してくるし、それにたいする十分な説明と現実的な理由がなければなかなか譲らない。
【事例3】
一般的に、上海人は慎重かつ保守的な性格と言われているため、リスクの高い事業のパートナーとには向いていない。よく「商売人の上海人」と言われるが、それはあくまでも計算の面であり、むしろ他地域の中国人に比べると「商人」らしくない。どちらかといえば、商売よりは物作りに長け、日常用品、工業製品の製造と販売に強く、中国国内でもその製品が市場で高く評価されている。
“広東人は、政府の規則条文で「やってはいけない」と定めていないものは、「すべてやってよし」と解釈し行動する。上海人は「やってもよい」と定めていないものは「すべてやってはいけない」と解釈し行動する”これは、上海人と広東人のビジネス・スタイルの違いを語るときによく使う言葉である。
世間一般の評判では、中国人は規則や法規に対して無頓着であるという風に言われているが、上海人だけは例外的にそれらを遵守しようという姿勢が見られる。よって、上海人との交渉は非常に難しいが、いったん交渉が成立したら契約通りに実行してくれる。上海で交わした契約は中国ではもっともフォローしやすいものであるといえる。
上海人に対して、「自分の家が燃えていても気にしないが、自分がぬかるみで転んだときは大騒ぎ」という揶揄があるとように、彼らは身につけている財力を気にする傾向がある。
したがってビジネス交渉などの場合には、相手の企業の実力や個人の社会的地位などを、服装や風采によって推し量ることが大いにありえる。こちら側としても、とくに上海ではみなりはきちんと心配りをしておこう。