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第6回 金銭観の地域差:合理性を重んじる上海人

李 年古

中国人の金銭観を語る場合は、地域別の金銭観の違いをよく知っておかないと、大きな誤解が生じてくる。ここで簡単にまとめてみよう。

合理性を重んじる上海人

上海人の金銭意識を聞かれると、他の地域出身の者は真っ先に「ケチ」と「精明」との二文字を思い浮かべるに違いない。ここでいう「ケチ」は、他人の金遣いに対して「ケチ」だという意味である。金遣いには細かい。「精明」と言えば、やはり計算が細かく、一円の損もしたくないというのが、上海人に対する一般的な印象だ。

筆者も日本に来て、ある上海人と付き合ってから、その「精明さ」にショックを受けたことがある。留学生時代、アパートの隣に住んでいるのは上海人だった。そのアパートには公用トイレしかなく、しかもそのトイレはトイレットペーパーが詰まることが何度もあり、大家さんがいくら注意しても一向に改善されなかった。

ある日、上海人が私の部屋に食事に来て、数杯の酒で喉を潤した後、こんなことを教え
てくれた。自分はトイレットペーパーを一切買わない。替わりにティッシュペーパーを使っている。「良く調べてみたんだ。ティッシュペーパーは1箱400枚。一回に4枚使ったら、100回用が足せるはずだ。トイレペーパーだと、いくら頑張ってもその3分の2にもならない」。この計算を聞いて、私はなぜトイレの水が詰まるのか、ようやく分かってきた。

ちなみに、上海人はお金を使う際、合理性をもっとも重視すると言われている。彼らにしてみれば、使う必要のないお金はたとえ一円でも許さない。

一方、上海人は、合理性に欠けた金儲けにも抵抗がある。彼らがビジネス交渉する場合は、自分の取り分以上を相手に求めることはまずしない。金銭の計算に長けているから、自分の取り分を一円も譲らず取ろうとすると同時に、相手にもそのような気持ちがあって当然だと思っているからだ。そのため、上海人と商売することは、ある意味では安心できる。他の地域の商人は保証できないが、上海人なら相手を騙してまで自分が得しようとする行為はしない。

中国人の金銭観