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中国国内の地域経済圏構想

行政区画改革 直轄市と都市の経済圏争い

▽杜鋼建教授:今後10年間で、少なくとも8つの直轄市を増設し、一級行政区を
       50前後に拡大する。
▽王建副秘書長:現行の行政区画を変えずに、「9大都市圏区画」をつくり、中
        央直轄にする。
▽肖金成副所長:現行の行政区画を変えずに、県と省の力を弱め、行政の段階レ
        ベルを簡略化して「中央―市―鎮」とする。

 中華人民共和国の建国50年来初めての行政区画改革に対し、さまざまな構想が
練られている。
 全国人民代表大会研究室の特約研究員で、国家行政学院の杜鋼建教授は最近、
雑誌「中国企業家」の中で、「構想は既に定まっている。しかし、幾つにするの
か、どの都市なのか、いつ改革するのかなどを含む具体的な方策はまだ明確にな
っていない」「このことはすべて一部の部門が推進している」と述べている。最
高政策決定層が「この問題を子細に考慮する段階にない」かもしれないと語って
いる。
 2003年9月にこのニュースが流れたとき、世論は激しく反応した。
 このニュースでは、既に「基本決定」された改革案に基づき、国家は直轄市の
増設を考えており、「経済の比較的発達した都市が申請した」と報じられており、
「候補都市」には蘇州、広州、青島が挙げられていた。

 2004年4月初めに至り、具体的な「枠組み」が香港メディアから暴露された。
このメディアは民政部官吏の話を引用し、まず増設される直轄市は4つで、地域
では華北、東北、華中、華南であると報道した。

 雑誌「中国企業家」によると、現在各方面での調査研究は、徐々に一歩一歩ハ
イレベルに上がっているという。
 最新のニュースでは、国家発展改革委員会の「第11次五カ年計画」に関する若
干の重大問題の研究プロジェクトに「地域経済の一体化問題研究」というテーマ
があり、その核心内容は中国の行政区画の改革に関連するものだと報じられてい
る。このテーマの調査研究は6月に終了する。
 この「第11次五カ年計画」の中の一つのテーマが示していることは、過去一貫
して省単位で考えられていたこの種計画が、初めて省ではなくさらに一歩踏み込
んだ、地域区画の構想として進められているということである。

〈急激な改革 長江デルタを例に〉
 杜鋼建教授によると、中国の現在の行政区画には2つの核心的な問題が存在す
るという。
 1つ目は、行政の段階レベルが多過ぎ、政令がうまく伝達されておらず、機構
が肥大化している。2つ目は、省レベルの行政区画が大き過ぎ、地方を強大にし、
中央の指揮が行き届かない。つまり、行政区画改革の構想はこの核心問題に対応
しなければならないということである。

 中国は世界で8か国しかない、地方レベルが4段階ある国家である。
 2003年10月現在の中国行政区画は、中国大陸部全部で31省(自治区、直轄市)、
333市(地区、州、盟)、2861県(県レベルの市)、38464の郷(鎮)である。
 圧倒的多数の国家では、2段階制あるいは3段階制を採用している。

 世界諸国の比較的フラットな行政区画と比較すると、中国はピラミッド型で、
このシステムにはっきりと疲弊が見られている。上の指示が下まで届いておらず、
政策は「差しとめ」られ、官僚機構が肥大化し、国家財政から給与をもらってい
る人が多過ぎる現状を生んでいる。
 「行政の段階レベルが多過ぎる」という弊害だけでなく、中国市場で広範囲に
存在する行政の壁、さらに行政区画の不合理さも見られている。
 長江デルタは中国行政区画が経済発展に影響を与えている最も典型的な例である。

 2003年4月、上海は正式に「投資環境のさらなる改善のための若干意見」(「173
計画」)を実施している。嘉定、青浦、松江に総面積173平方キロメートルのビ
ジネスコストを低くする「経済特別区」をつくった。これは、上海では「173で、
昆山に追いつく」と言われている。
 その昆山は蘇州市にある県レベルの市であり、現在、中国最大の台湾資本の密
集区である。
 上海市経済貿易委員会研究室の陳兆忠主任によると、2002年に上海市は89.6億
ドルの外資が投入されたが、隣の江蘇省蘇州市だけで80億ドルを上回っている。
(江蘇省全省で196.5億ドル)
 また、上海「173」の目標である昆山は、契約ベースでの外資投入金額は22.5
億ドル、実際ベースでも10.18億ドル投入されている。

 「173」は上海市区内の、浦東に近い地域にあり、ビジネスコストが安く、全
体的な強みを持っている。建設後は、周辺の都市、特に江蘇省の蘇州、昆山、ま
た浙江省の寧波、嘉興へ影響が波及することは容易に想像がつく。

 そこで、江蘇省は2003年6月に「沿川地域の開発戦略」を打ち出した。
 沿川地域の開発について、世界的な経済構造の大調整と資本移転の傾向に順応
するために長江の優位性を十分に利用し、生産力の配置重点を上海―南京ライン
から北の長江沿岸、特に長江北岸へと進めるというものである。上海側から見る
と、この戦略は実際にはまさに「173計画」に対応する。

 同様に、浙江省は10月にも「173計画」に対抗すべく「杭州湾嘉興経済開発区
の投資環境の改善に関する実施意見」を公表した。これは、浙江省が上海嘉興に
現在の嘉興経済開発区と乍浦経済開発区を統合して「杭州湾嘉興経済開発区」を
建設するという計画である。
 この文書では、「政策支援では、省政府全体が上海「173計画」が付与してい
る優遇政策のほか、土地収用、税収返還と財政補助などの方面を参照し大きな力
を注ぐべきであると提案している」と強調している。

 「現状の条件では、大多数の資源はやはり政府にコントロールされており、市
場は十分なコントロール力がなく、行政区画の境界が壁となっている」国家発展
改革委員会区域経済研究所の肖金成副所長は分析している。「それによって、地
方保護主義、地方同士による資源争奪、数え切れないほどの重複建設、行政区画
間の経済上の分断が発生している」
 それに対し、杜鋼建教授は「中央の指揮は一部方面ではコントロールが困難で、
統一市場秩序の形成が難しいが、それは省クラス行政が災いしている」と述べて
いる。
 しかし、行政区画を研究する専門家や学者のほとんどは、同じような改革意見
を「出発点」としているが、その後の考え方にはそれぞれの別の主張を持っている。

〈主流派 直轄市の増設〉
 杜鋼建教授の「直轄市の増設」構想はメディアで最も多く見られる構想である。
 今後10年間に、少なくとも8カ所の直轄市増設という構想は、多くの地方にと
って「かゆいところに手が届く」構想である。
 経済が比較的発達した多くの都市は、省行政の束縛から抜け出したいと考えて
おり、さらに大きな自主的な空間と周辺地域をも動かす発展を求めている。
 杜鋼建教授の「直轄市の増設」構想は、直轄市の増設により、省レベル行政区
を小さく区画し、そして徐々に中国一級行政区を比較的合理的な50前後にふやす
という構想である。
 これは、当局側意見の色彩の濃い民政部区画司の戴均良司長とほぼ同じ考えで
ある。

 中国の最も経済発展している地域の長江デルタ、珠江デルタを例に挙げると、
杜鋼建教授は、蘇州及び周囲の無錫、常州(蘇錫常)は経済的には1つの新しい
直轄市を設立できると考えている。
 また、深センは広東省の中にあるという位置づけでは既に発展を制限されてい
るため、将来的には香港「姉妹都市」することを考えている。
 この2地域が直轄市に昇格した後には、さらに速く、さらに良好に経済活力を
解き放つことができるという。

〈「省の弱体化と県の廃止」あるいは「都市圏区画」の設立〉
 肖金成副所長と王建氏は明確に、直轄市の増設に反対している。
 肖金成副所長は国家発展改革委員会地域経済研究所の副所長で、王建氏は中国
マクロ経済学会の副秘書長で、「地域経済一体化問題研究」の先頭に立っている。

 肖金成副所長は、行政区画分割は経済分割となり、直轄市の増設は「さらに大
きな分割」となると考えている。
 肖金成副所長は、「蘇錫常」に直轄市を設立することは、この地域で日に日に
深刻になっている資源の争奪戦を一層激化させ、そしてさらに多くの重複建設が
行われることになるかもしれないと指摘している。
 また、深センの「昇格」については、広州、深セン間の競争を省地域の競争に
昇格させることになり、中央もさらにコントロールが困難になると指摘している。

 肖金成副所長の改革構想は「現行行政改革の枠組みを変えない」ことを核心と
している。
 すなわち、省レベルの行政機関は中央の出先機関としての役割を薄くし、公共
事務の管理権は都市にゆだね、市の経済実体としての地位を強化する。同時に、
県制度を廃止し、市、鎮の2レベルの行政区画を核心として、経済発展に適応し、
今後の都市化ニーズに適した行政区画に再構築するということである。

 王建副秘書長の構想は、EUのような経済区画組織をつくり上げることである。
 中国全国範囲で、北京・天津・河北、瀋陽・大同、吉林・黒龍江、済南・青島、
湖南・湖北・江西、成都・重慶、珠江デルタ、長江デルタの中下流、大上海(最
終の枠組みは確定していない)などの9前後の「都市経済圏」を設立する。
 中央から省より上レベルとなる経済権限を設置し、省・区を超えた「都市圏区
画」を組織し、管轄区域内の経済事務の企画権と管理権を統一的に行使する。省
レベルでは地方の公共事務だけを管理する。同時に、財税制度の改革を通じ、中
央に納税し、地方の事務経費はすべて中央から地方に交付するという方法を採用
する。
 山東を例に挙げると、「済(南)青(島)都市圏区画」を設置し、圏内の済南、
青島、煙台、〓坊のなど都市の経済企画権はこの区画によって決め、山東省は地
方の公共事務だけに責任を負う。省内のその他の都市の経済事務は、県の管理で
行うということだ。

 実際、行政障壁をひどく受けている長江デルタでは、類似の提案が以前から盛
んに行われている。
 全国政協委員の陳守義委員は、2003年の「両会」で、「国務院は長江デルタの
指導調和の専門機関を設立し、経済運営全体から、地域経済の優位性構築に着目
し、長江デルタの経済発展に対し計画的な調節とコントロールを行うべきである」
という案を提出している。

〈はっきりと廃止・こっそりと廃止〉
 3人の専門家の主張は大いに異なるが、一級行政区の廃止の出発点では一致し
ている。
 異なるのは、杜鋼建教授が「はっきりと廃止する」(直接に一級行政区の増加、
現行の一級行政区規模の縮小)、王建氏と肖金成副所長が「こっそりと廃止」(
省レベル区画の経済管理権あるいは公共の事務権を剥奪する)点にある。
 「こっそりと廃止」では、肖金成副所長と王建副秘書長の間には相違点がある。
王建副秘書長の主張では「都市圏」を通じて中央のコントロールを強化するとし
ているが、肖金成副所長の構想は、市レベルの行政区画の経済運営の地位を強化
することである。

 しかし、同時に3人の専門家は、どの案であっても現行の行政利益構造を改革
することになると認めている。したがって、改革は決して簡単なことではなく、
行政区画改革は今後さらに紆余曲折することが予想される。

 「フランスはもともと96省あり、ドゴール大統領はこの96省を合併して22区に
するとした。このことは結局各方面の対立を触発し、ついには大統領をやめるこ
とになってしまった」
 肖金成によると、「彼が亡くなって14年後の1982年、ミッテラン大統領はやっ
とこの懸案を達成した」。中国の今直面する局面では、当時のフランスほど簡単
ではないと考えているようだ。〔中国企業家5月19日〕
注)〓は、さんずいに「維」

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