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電子マガジン・中国最新情報
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教育・文化ウオッチ@中国最新情報 No.761 2021年9月3週号
発行:《中国最新情報》編集部 http://www.bizchina.jp/
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━【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏【特集:中国絵本市場の外国絵本の存在感】
●絵本の「超人気商品」をつくっているのは誰か?

┏【李年古の日中異文化交流術】
●コーチングマネジメントの魔法 1
◆なぜ中国人はコーチングマネジメントになじめないのか

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……【特集:中国絵本市場の外国絵本の存在感】……………………………………
●絵本の「超人気商品」をつくっているのは誰か?
 十数年前、絵本が中国本土の市場に参入したとき、親たちはまだ、児童書の価格
が妥当であるかを評価するのに文字量を使っていた。
 児童書出版ブランド「ププラン絵本館」(蒲蒲蘭)の李波編集長がそのころ受け
た親からの反響は、「本1冊で20ページ、数十文字なのに、数十元で売るのは高過
ぎるのではないか」だった。

 中国国内児童書市場では、絵本が登場する前、幼児のための最も主流な読み物は、
伝統的な漫画や、物の名前や文字を覚えるための啓蒙的壁かけ製品だった。
 2003年、民営の出版社の新経典は、「愛の木」(The Giving Tree)という翻訳
版の米国の児童絵本を導入し、これが中国の絵本業界で最初に出版された作品の一
つだった。それ以来、海外のすぐれた絵画を翻訳編集することは、中国国内の出版
社の最も主流な方法となっている。2015年の当当網の統計によると、輸入版絵本は
この垂直市場の総額の約7割を占める。

 「これは、求められれば必ず応えるリンゴの木と、求めて飽くことのない子供に
よって、ともにつくられた暖かく、少し悲しい感動的な物語です……」、中国語版
「愛の木」の物語の紹介にはこのように書かれている。この本は、その後10年間で
70万部を販売し、新経典社の児童書分野における重要な代表作となった。さらには、
新経典社は「愛の木」をみずからの児童書事業の事業名とした。

 2020年、京東図書の絵本販売の取引額は、このeコマースプラットフォームで最
大の児童書カテゴリーとして、初めて児童文学を上回った。
 京東図書自営児童書部担当者の万峰氏は「その理由は、主に2020年の新型コロナ
の流行に関連している。幼児が自宅にいる時間が長くなり、多くの父兄が、子供の
家での生活を充実させるために絵本を購入した」とした。

 しかし、2020年は、中国絵本市場が10年の急速な成長サイクルを終了させる転換
点となる可能性がある。
 北京開巻の統計データによると、絵本製品の売上規模は、前年同期比で2019年の
25.47%から1.91%まで下落した。2020年の国内書籍小売市場で出版された新しい絵
本種類も、毎年の増加傾向を終了し、2019年前年同期比で800種類余り減少し、3713
種類を記録した。2018年の新刊出版と比べると4割近く減っている。

 実は、ププラン、愛の木に代表される幾つかの大きな児童書出版ブランドは、毎
年、新刊図書の生産量が相対的に固定されている。ププランの2020年の実際収入
(書籍販売収入)は、前年同期比で15%増加した。しかし、2015年以来、絵本ビジネ
スに高望みをした大手出版社がこの新市場に殺到し、絵本の新刊出品量を爆発的に
増加させた。
 「父兄の絵本に対する需要が前倒しして満たされ、ここ1―2年で新たなプレーヤ
ーはほぼ参入していないので、市場の増長は2020年に停滞があらわれた」ある絵本
業界関係者はこう指摘している。

 絵本は、なぜ数年のうちに一種の児童書ベストセラー商品となったのか?。答え
は絵本市場のベストセラーリストに隠されている。
 2020年のベストセラーリストのトップ10のうち、ほとんどの書籍は2010年以前に
中国国内で初めて出版され、細分化された絵本市場のベストセラーリストに長年ラ
ンクインしている。これらの「人気商品」は、若い父兄に絵本の特別な価値を徐々
に認識させてきている。

 2004年、日本の老舗出版社であるポプラ社は、中国で書籍発行会社「北京ププラ
ン文化展有限公司」を設立した。ポプラ社は、宮西達也のティラノサウルス・シリ
ーズ、ねずみくんシリーズ、こぐまちゃんシリーズなど、多くの高品質の児童書資
源を有する。
 宮西達也のティラノサウルス・シリーズは、2005年にププランが中国に初めて導
入した作品に選ばれた。

 この絵本は、同時期の日本では特に「人気商品」ではなかったが、ププラン編集
者は、著者の宮西氏はお話がうまく、小さな読者との良好なやりとりをすることに
注目した。そのため、ププランは、中国での絵本巡回講演に宮西氏を招待した。
 李波編集長は「言葉が通じなくても、彼は表情やボディーランゲージを通して、
小さな読者と父兄に特別な感覚を与えることができる」と言う。

 この絵本巡回講演は、書籍の販売に大きな役割を果たした。ププランは、参加者
数が数十人から数百人にふえ、さらには2000人の講演会さえ開催されるようになっ
た過程を目の当たりにした。宮西氏自身も、この活動に熱心に参加し、時には、1
日に2つの都市を巡り、3つの講演会・サイン販売会を開き、メディアのインタビュ
ーを受けることもあった。

▽2020年、中国児童書市場の主なカテゴリーと割合
 児童文学 23.71%
 児童科学 21.42%
 児童絵本 18.56%
 識字啓蒙 10.22%
 その他 26.09%
〔第一財経2021年3月17日〕

……【李年古の日中異文化交流術】……………………………………………………
●コーチングマネジメントの魔法 1
◆なぜ中国人はコーチングマネジメントになじめないのか
 現地の日系会社にとって最大の経営課題は、人材の現地化を加速させることだろう。
 「中国人部下を育てるために最も効果的な管理手法は何ですか?」と問う新規駐
在員に、僕は「コーチングマネジメント」と答え、「それでは、中国人部下が最も
受け入れがたい管理手法は何ですか?」との質問に「コーチングマネジメント」と
同じ言葉を繰り返した。
 その回答に確信を持てるのは、僕自身が母国で受けた教育の環境と失敗の教訓が
あるからだ。

 19年ほど前、人生初の企業研修を実施した2日間の体験は忘れられないものだっ
た。それは、富士通で海外向けのビジネス事業に携わる部長クラスの方々を対象に
した研修だった。
 講壇に立った僕は、合計13時間余りをかけて一方通行の講義を続けた。話の途中
で数秒でも間があいたら、受講者に無駄な時間を過ごさせたと罪悪感を覚え、更に
言葉のシャワーを浴びせていた。
 やっと終わったその日の夜、僕は研修の場所に近い喫茶店の椅子に倒れ込み、目
が覚めた時に、自分がまだ生きていることが奇跡だと本気に思った。

 当時、中国では「研修」というジャンルの学習法はなく、講壇に立つ先生はまる
で神様のような存在として、何でも知り尽くしたかのように生徒にティーチングす
る教え方しか知らなかったのである。
 中国人にとって、立派な指導者のイメージとは、豊富な知識と表現力を持ち、弁
舌と説教にたけ、カリスマ的なパワーあふれる人間。指導を受ける側は、困ったら
そのような先生に解決策を仰ぐだけでよいのである。
 このような教育スタイルに子供時代からなじんできた人間は、社会人になっても
常に受け身で、上の人間の指示を待つことを当たり前に考えてしまう。

 一方、指導者を目指す人間は、まず人を説得する力を身につけようとする。人と
のコミュニケーションにおいて、いかに主導権を握り、相手を黙らせるほど説得で
きるかは、リーダーとしての基本素質とみなされている。
 僕も、小学校1年生のときに文化大革命の洗礼を受けたことがあった。その時代、
自分の最も輝いた「戦績」といえば、学校全員参加の集会場でスピーチしている校
長先生の手に握られたマイクを奪い取って、熱を込めた「反革命の先生たちとの闘
い」を宣言したことであった。その弁舌ぶりは、小学卒までに同窓の間に美談とな
り、後ほど何人かのクラスメンバーの女の子の心をとりこにすることに成功したこ
とを覚えている。
 今になって、その少年時代の愚かな行動を思い出すたびに汗をかくのである。

 今の時代、子供を育てる環境は大きく変わってきたが、余り変わっていないのは
指導者たちのその指導法である。
 職場の上司と部下の関係は、どこか小学校の先生と生徒に似ている。全ての決定
事項については上司が指示を出す。部下は駒のように指示に従って実行するのみ。
このようなタイプの上司は、中国の文化的土壌によって量産されている。
 部下にみずから考える機会を与えていないし、権限移譲の気もない。なのに、な
ぜ自分の部下が主体性もなく、仕事に取り組むときに植物人間みたいに思考停止し
ているのかと、そればかりにため息を吐く上司が多い。加害者なのに、被害者の妄
想にとらわれてしまうことも少なくない。
(次号以降に続く)

(このコーナーは、日中異文化コミュニケーションの経験を中心テーマとした文章
を紹介していきます。)
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編集長:李年古/副編集長:前野貴子 特別協力:劉莉生
翻訳:竹内はる菜 澤田裕子 楊桃
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