CI Image
 
電子マガジン・中国最新情報
中国国内各紙の報道をもとに編集部が独自のセンスで選んだ、中国経済全般、政策動 向、産業一般、社会などホットな中国情報満載。日本の報道では物足りない、今の中 国を日本語で読みたい方は必見!
登録  解除    メールアドレス  

特集内容一覧へ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
教育・文化ウオッチ@中国最新情報 No.792 2023年4月3週号
発行:《中国最新情報》編集部 http://www.bizchina.jp/
登録/解除:http://www.bizchina.jp/modules/nweek/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎ツイッター https://twitter.com/bizchina_jckc

━【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏【特集:中国人学生の就職と留学最新情勢】
●16―24歳の失業率が19.6%に
●中国人学生の海外留学目的の変化

┏【李年古の日中異文化交流術】
●海の向こうにぬくもりを伝える 1

┏【国際】
●「世界倫理」の文明基盤とは何か

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回

      編集長・李年古の新著 ■2022年3月10日発売■

―――  中国人コンサルタントが伝授する
―――         「カルチャー・ギャップ・マネジメント」  ―――

https://www.amazon.co.jp/dp/4834402878/ref=cm_sw_r_oth_api_glt_i_X0JNHG3H7E5KR83X4ZT8

回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
……【特集:中国人学生の就職と留学最新情勢】………………………………………………
●16―24歳の失業率が19.6%に
 4月18日午前、国務院新聞弁公室の記者会見で2023年第1四半期の国民経済運営状
況が発表された際、就業状況についての言及があった。
 現在、16―24歳、25―59歳の労働者の調査失業率はそれぞれ19.6%、4.3%だった。
25―59歳の労働者のうち、中卒以下、高卒学歴、短大卒、四大卒以上の学歴別の労
働者の調査失業率はそれぞれ4.8%、4.8%、4.0%、3.1%だった。31大都市の都市調査
失業率は5.5%で、前月比0.2ポイント減だった。

 記者から、今年の就職シーズンで注目されている2つのデータ、2023年の全国の
大学卒業生が1158万人に達する見込みであることと、今年の北京の修士取得者が初
めて四大卒を上回ることについて、1―3月のデータを見て今年の就職市場の見通し
をどう評価するかとの質問があり、それに対する国家統計局の報道官から回答があ
った。

 今年の状況から見ると、就業情勢は全体的に改善されている。モニタリングの状
況から見ると、今年以降の就業市場の労働参加率は着実に上昇し、失業率は3月に
おいては大きく減少し、総就業者数が前年同期比で増加している。
 ある分析では、ここ数年、大学卒業生の数が年々増加しているが、大学生は低収
入あるいは低技能の仕事にはつくことを望まないことが少なくなく、安定的な仕事、
福利厚生やキャリアアップなどの要素をより重視している。
 一方で、卒業生の中には職業技能と経験が足りず、現在の就業市場の需要に適応
することが難しい人もいるので、一時的には、自身の技能や経験に合った仕事が見
つからず、これが若者の失業率を高める重要な要素ともなっている。
〔毎日経済新聞2023年4月18日〕

●中国人学生の海外留学目的の変化
 2023年4月12日、中国&グローバル化センター(CCG)とETS中国が主催する2023国
際人材育成・発展フォーラムが北京で開催された。
 ETSグローバル発展・言語業務副総裁のMohammad Kousha氏は「国際協力が世界の
青年人材の学び合いを後押しする」をテーマにした講演で以下の考え方を発表した。

 国際学生についての3つのトレンドがある。
 1つ目は、中国でも世界でも国際教育に対するニーズが依然として高いことである。
 啓徳教育が発表した2023中国留学白書によると、2023年の留学申請者数は前年比
23%増だった。中でも、オーストラリアへの申請が85%増、カナダが33%増だった。
ユネスコのデータによると、コロナ期間中の2020年にも世界には630万人の留学生
がいた。

 2つ目は、過去3年間、複数国を希望する人が多くなってきていることである。
 中国は、アメリカ、ドイツ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、日
本、イタリアなどの留学先で、依然として留学生の送り出し国のトップとなってい
るが、留学先としてアジアとヨーロッパの選択も大きく増加している。

 3つ目は、中国人学生が海外留学を選択する目的が変化しつつあることである。
 海外の学歴を得るだけではなく、学生がこの機会に新しいスキルを学び、多様な
文化の体験を得るとともに、国際的な人脈を築くことがより重要になっている。
〔中国&グローバル化センター(CCG)2023年4月20日〕
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
……【李年古の日中異文化交流術】……………………………………………………
●海の向こうにぬくもりを伝える 1
◆数字の裏に隠されていた爆弾
 「黔驢技窮」(チェンルージーチョン)。これは、自分の技量を出し切ったのに、
全く勝てず恥をかくという意味の成語だ。
 東京の大手製造会社、B社の一室。筆者は下田社長を前に、この言葉を痛感した。
自分の置かれた状況がぴったり当てはまったのだ。
 B社は1年ほど前から、事務関連の業務を中国・大連の企業C社にアウトソーシン
グしている。日中双方の社員は面識がないまま、毎日のようにメールや電話でやり
取りをしていた。トラブルが起きると、電話会議を行うか、さもなくば日本から人
を派遣して解決に当たる。下田社長には、頻繁な現地出張のコストが悩みの種だっ
た。相談を受けた筆者は、トラブルを未然に防げば出張も減るからと、まず日中異
文化コミュニケーションの研修を提案してみた。しかし、幾ら力を尽くして説得し
ても、下田社長はかたくなだった。
 「お断りです。確かに手をやくトラブルが続発してきたが、中国側はこちらの要
請に合わせてくれている。実績も上がっている。研修の必要はありませんね」
 コンサルタントの筆者も形なしだが、同社の教育担当者の粘り強い説得もあり、
結局はまずヒアリング調査をしてみようということになった。筆者が日中双方の関
係者に向けて、提携関係の満足度を調べ、その結果を見て研修実施の有無を決める
のだ。
 1カ月の調査を経て、筆者は再び下田社長の前に座る。現地調査レポートを手渡
すと、社長はそれをぱらぱらめくり、眺めるうちに、表情がだんだんゆがんでくる。
日中双方ともに、今にも爆発しそうな不満が充満していたからだ。中国人側のコメ
ントには、「仕事をしているのに、どうしてこんなにひどい目に遭わなければなら
ないのか。その理由が全く理解できない」といった憤慨が散見されるではないか。
 「ショックだ。これが本音か」と下田社長はつぶやく。数字にあらわれる輝かし
い実績やデータの裏には、惨敗後の烏合の衆のような姿が隠されていたのだ。
 通常、このような結果を受け入れるのには勇気が必要だ。下田社長は幸い、君子
豹変の精神を持ち合わせており、態度を反転させ、「直ちに双方の誤解を解くため
の対策を打ち出せ」と、固い決意を見せてくれた。

◆会ったこともない“親しい人”
 これをきっかけに、東京と大連のそれぞれで、異文化コミュニケーション研修を
実施した。研修後のアンケートから如実にわかるのは、彼らのメンタルの変化だ。
双方ともに開始時には「なぜ?どうして?」というショックを受け、それが文化や価
値観の“違い”を意識化するにつれて、「そうなんだ」という理解へたどり着くの
である。
 喜ばしい結果だが、筆者には一点、どうしても不安を払拭できないことが残った。
“違い”は理解したものの、東京のB社と大連のC社は海を挟み、オンラインのみで
仕事上のコミュニケーションを強いられている。これでは真の理解と信頼が得がた
いのではないのか。
 殊に中国文化は、「人情」というキーワードをベースにしており、互いの「ぬく
もり」を感じられないと、コミュニケーションの一体感が生まれにくい。その“違
い”を理解しても、実際に文化のギャップを解消するにはどうしたらよいのか、そ
れが筆者の不安として残ったのである。
(著書「中国人コンサルタントが伝授する――カルチャー・ギャップ・マネジメン
ト」より)

……【国際】………………………………………………………………………………
●「世界倫理」の文明基盤とは何か
 著名な中国学研究者ハンス・キュング氏は、かつて「世界倫理」理論を提唱し、
「世界倫理基準に基づく国際関係の新しいパラダイムなくして、世界の平和と正義
はあり得ない」と主張した。2021年、キュング氏の逝去により、「世界倫理の文明
基盤は何か」「中国の儒教は世界にどんな知恵を届けるのか」など、世界倫理の議
論は新たな変化と転換の局面に入った。

 先日、ドイツ・シーリード財団の中国プロジェクトディレクターのジョナサン・
キアー氏が中新社の独占インタビューに応じ、キリスト教、イスラム教、ヒンズー
教などの文化伝統に基づく世界倫理は存在せず、儒教に基づく世界倫理も存在せず、
対等な対話のみが「世界倫理」の文明基盤となるという考えを示した。

 インタビューの概要は以下のとおり。

中新社記者:中国でスピリチュアルヒューマニズムを学ばれたわけですが、中国の
儒教にどのようにして興味を持たれたのですか。キアーさんを含め、欧米の中国学
研究者は、中国の儒教を研究し広める上で母語の壁を感じますか。
ジョナサン・キアー:ニュージーランドのオークランド大学哲学科を卒業しました。
中国哲学の講義を受けたことがありますが、表面的な翻訳のせいで、深みがなくて
味気なく、中国の精神的伝統は現代的な価値がないと勘違いするようになりました
 その後、ヨーロッパで比較文学を学び、博士課程に進む前に、ヨーロッパ以外の
言語を学ぶことにしました。当時(2008年)、ニュージーランドの友人がちょうど
台北で働いていたので、台北に行くことにしました。2年後に自力で中国語が読め
るようになり、中国文化関連の比較文学の博士研究を行いたいと思ったのです。
 留学中、台北の台湾国立政治大学哲学科のドイツ人准教授のカイ・マルシャル先
生と出会いました。先生から牟宗三の『中国哲学の特質』を渡され、それまでの中
国哲学に対する深みがないという印象が打ち砕かれました。それから中国哲学の本
質をつかみ始め、中国学を正面から見つめ、尊重し、現代儒教思想を軽視していた
ことを反省するようになったのです。
 この軽視の原因の一つに母語の壁があります。中国哲学の翻訳によいものが余り
なく、後に私自身が現代新儒家の代表である唐君毅の著作を翻訳したときもそうで
したが、翻訳するのは難しいと思いました。
 2016年、北京大学高等人文研究院の杜維明院長とお目にかかったとき、先生は自
著の翻訳はせず、直接中国語で書いたり、英語で書いたりしていることがわかりま
した。私が「儒教世界」に足を踏み入れたのは、杜先生の英文の文体が、英語の読
者に儒教精神の貢献を理解させるものだったからです。

中新社記者:言語以外に、儒教の普及を阻むものは何でしょうか。
ジョナサン・キアー:大きな障害が二つあります。一つは、中国国内のことです。
文明の対話とは、相手に自分の態度を尊重するように強要することではなく、まず
自己批判をする勇気を持つことです。欧米諸国は、200年近くこの精神を体現して
こなかったのは真実です。彼らは中国文化を軽蔑し続け、しばしば中国民族をも軽
蔑し、欧米の文化こそが全人類の未来であると考えていました。しかし、21世紀の
中国の経済発展は、全世界から注目、尊重されています。同じ道理で中国も公にみ
ずからを批判する勇気を持つべきです。
 そして、さらなる大きな問題は中国以外からもたらされることです。東南アジア
以外の外国人の多くは、中国の伝統文化という概念がほとんどないことです。欧米
の超一流大学でさえ、孟子を聞いたことがある人は5%未満で、朱子や王陽明などの
朱子学者や陽明学者を知る人は更に少なく、中国学科を卒業した人だけが知識を持
っているのではないかと思うほどです。
 中国の世界に対する態度はこれとは違います、ソクラテス、シェイクスピア、レ
オナルド・ダ・ビンチなどの西欧ルネサンスの重要人物については、世界のみなら
ず中国でもよく知られています。これは100年以上にわたり、中国の儒教思想を基
盤として、欧米の科学技術を導入するという「中体西用」の文化政策がもたらした
間接的な結果です。
 儒教の伝統は、中国の未来のみならず、世界にとっても有益です。国益に基づい
て、欧米の思想に中国の技術を取り入れるという「西体中用」が遅かれ早かれあら
われるはずですが、それは決して個人の精神的成長のためという訳ではなく、真の
意味での文明の対話とは言えません。
 インターネット時代には、原則として、文化間のコミュニケーションの困難さは
徐々に克服することができます。儒教の伝統的な対話精神を体現するのは中国政府
と中国国民の責任です。欧米諸国の責任はさらに大きく、ゼロから中国の伝統文化
を吸収しなければなりませんが、このプロセスはまだ始まっていません。米国が主
導する欧米諸国では、人々が中国文化を取り入れるというのは想像しがたいことで
す。早晩選択の余地なく、次の世代に中国語と中国思想史を学ばせなければならな
いことに気づくでしょう。

中新社記者:中国と欧米の文化間の多元性はどのように理解していますか。真の文
明対話を実現するために克服しなければならない問題は何ですか。
ジョナサン・キアー:言語のほかに、最大の障害は「レーニン」問題です。
 欧米人の多くは、中国をヒューマニティーを持った「ポスト・レーニン時代」の
国家とみなしていません。新冷戦の思考のもとでは、多くの外国人は、中国の「国
学」ブームは新しい文化分野のレーニン主義であり、ツール化、武器化されるので
はないかと疑っています。
 欧米は、韓国や日本とは基本的に問題なく対話ができるので、東西問題でも儒教
文化圏の問題でもなく、レーニン主義の問題なのです。多くの欧米人が無知のまま
中国を攻撃するのは、中国に反対するからでも、中国の改革開放後の包括的な発展
を評価していないからでもなく、レーニン主義に代表される「一党独裁体制」を根
本的に信用していないからです。世界は孔子と対話できるが、レーニンとはいかな
る対話の可能性もない、そこには国益と疑念だけしかないのです。
 同様に、欧米のいわゆる「民主主義」諸国の植民地主義や帝国主義の歴史を見て
きている中国人にはなおさら信じがたいかもしれないが、少なくともここ10年ほど、
西側は真剣に反省を始めています。いわゆる「ウォーク(woke)運動」と呼ばれる
人種的平等や社会的平等の実現を図る社会正義運動には、誇張や危険な特徴はあり
ますが、みずからの特権や文化的犯罪を反省することは悪いことではありません。

中新社記者:著名な中国学研究者であるハンス・キュング氏がかつて「世界倫理」
理論を提唱し、「世界倫理基準に基づく国際関係の新しいパラダイムなくして、世
界の平和と正義はあり得ない」と主張しましたが、世界倫理の基準をどのように定
義しますか。
ジョナサン・キアー:世界倫理は国を超え、数千年の歴史を有する中国文明を含む
さまざまな文明を基盤とした多元的文化の概念です。厳密に言えば、キリスト教、
イスラム教、ヒンズー教などの文化伝統に基づく世界倫理は存在せず、儒教に基づ
く世界倫理も存在せず、対等な対話のみが、「世界倫理」の文明基盤となるのです。
それぞれの文化伝統には暗い時代もあれば、個人の精神的成長を啓発する偉大な瞬
間もあり、全てが世界倫理、世界文化や世界の精神性にとってかけがえのない貢献
をしてきたのです。
 世界は広大で、異なる文化伝統は、それぞれの特定の出発点から世界文化という
大河に流れ入ることができます。しかし、みずからの起源を忘れたり、みずからの
起源が世界文化という大河より偉大であると装ったりしてはなりません。一人一人
が唯一無二の文化教育的背景を基盤として世界と真剣に対話していくことだけが、
世界文化に対するかけがえのない貢献になるのです。

中新社記者:将来の東西対話、文明の相互評価において、中国の儒教は世界の問題
を解決するためにどのような知恵を届けることできるでしょうか。
ジョナサン・キアー:産業革命、フランス革命やマルクス主義などの欧米の啓蒙文
化がもたらした成果は、過去200年間の発展と進歩を推進してきましたが、それら
全てが100%歓迎されたわけではありません。
 産業革命、フランス革命やマルクス主義などの啓蒙文化はそれ自体の欠点があり
ます。それは、現代欧米文化における多くの重要な批評家によって強調されてきま
したが、儒教の伝統は全人類がそれらを異なる観点から考察する一助となります。
道具的合理性を超越した人文主義的伝統は現代欧米文明を含むどの文明にも存在し
ますが、中国の伝統に見られる知恵にかわるものはありません。漢字が読めなけれ
ば、翻訳だけでその特殊性を把握するのは確かに難しいですが、少なくとも『論
語』などの重要な文献のよい翻訳を読んで、儒教思想史の重要な節目を理解するこ
とは世界中の人々がすべきことです。
 世界は、中国について余り理解していないことをいまだ気づいていません。この
ような状況下では、現代の中国文明と対話するのは簡単ではありません。
〔中国新聞網2022年4月11日〕
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●「ビジネス企業研修@中国」 http://www.bizchina.jp/
●バッグナンバーの入手
(83号以降 2000/9/25―) http://www.bizchina.jp/ja/nweek/
●《中国最新情報――編集者コラム》http://ameblo.jp/jckc-colum/
●ツイッター https://twitter.com/bizchina_jckc
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集長:李年古/副編集長:前野貴子 特別協力:劉莉生
翻訳:竹内はる菜 澤田裕子 楊桃 村井好子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

改頁:(1) 2 »