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電子マガジン・中国最新情報
中国国内各紙の報道をもとに編集部が独自のセンスで選んだ、中国経済全般、政策動 向、産業一般、社会などホットな中国情報満載。日本の報道では物足りない、今の中 国を日本語で読みたい方は必見!
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電子マガジン《中国最新情報》  No.435 2008年3月11日
発行:《中国最新情報》編集部 http://www.bizchina.jp/
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★今週の読者数合計:6,900名(2008年3月10日現在)

━【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏【特集:所得格差と政策調整努力】
●2007年都市・農村エンゲル係数が珍しい上昇 所得格差引き続き拡大
●2007年 四川都市住民のエンゲル係数は41.2%
●昨年の個人所得税収3186億元で3割増 急増に3要因
●発展改革委員会 財政収入の多くは地方に振り向けられる

┏【国内政策】
●人民大学 中国革新指数報告発表
●中国 一人っ子政策調整検討

┏【労働】
●「労働契約法」マイナスの影響はっきりと 中国では失業のピーク

┏【国内政策:日本の対中援助の30年】
●日本の対中援助の30年 3 「面倒」な円借款
●日本の対中援助の30年 4 技術導入
●日本の対中援助の30年 5 まだこれからだ

┏【連載:日本人には言えない―中国人の価値観】
●〔第21回〕仕事・就職観3 「体面」を求める仕事観

┏【経済データ】
●外国為替(3月10日)

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……【特集:所得格差と政策調整努力】………………………………………………
●2007年都市・農村エンゲル係数が珍しい上昇 所得格差引き続き拡大
 2007年、所得、生活水準はどのようになったのか?
 2月28日、国家統計局が発表した公報によると、2007年、農産品価格の上昇が激
しかったものの、都市住民の所得の増加は農民よりも依然として高い。つまり、農
民が農産品価格上昇から得た利益ははっきりしたものにならず、都市と農村の所得
格差は引き続き拡大し、3.32:1に達した。

 公報のデータによると、2007年の都市家庭の食品消費支出の家庭消費総支出に占
める割合、つまりエンゲル係数は、2006年以降で珍しく上昇している。2007年の農
村住民の家庭のエンゲル係数は43.1%で、2006年に比べて0.1ポイント上昇している。
都市住民家庭のエンゲル係数は36.3%で、2006年に比べて0.5ポイント上昇している。

 エンゲル係数はドイツ統計学者エルンスト・エンゲルがつくったもので、ある国
家及び地域の住民の生活水準と発展段階を示すことを目的にしている。一般的には、
家庭及び個人所得が増加するに伴って、所得に占める食品関係の支出割合が徐々に
減少する。
 国連食糧農業機関(FAO)の基準によると、エンゲル係数が59%以上は貧困、50%
―59%は温飽、40%―50%は小康、30%―40%は富裕、30%以下は最富裕である。
 したがって、中国は現在、小康から富裕に向かう段階に来ているが、エンゲル係
数が上昇しているということは、生活レベルが下がっていることを意味する。

 国家統計局農村司農産品価格処の李永強処長によると、長期的に見れば、エンゲ
ル係数は下落傾向を見せるが、農産品価格の上昇が急速で、住民の支出が増加する
ことになれば、個別の年においてエンゲル係数がまれに上昇するという反動が起こ
ることになるという。
 また、住民の所得の増加が幾つかの農産品価格上昇を下回れば、農産品価格上昇
後に住民の消費量が安定しても費用は増加するはずで、このような状況では比較的
上昇がはっきりとあらわれる。

 統計データでは、2007年の住民消費価格は前年比4.8%増で、食品価格は12.3%増
となっている。そのうち、食糧価格は6.3%増、肉類及び加工品価格は31.7%増、食
用油価格は26.7%増、鶏卵価格は22.9%増となっている。肉類及び加工品、食用油、
鶏卵価格の上昇は都市・農村住民の所得の増加を上回っている。
 公報では、2007年年間農村住民一人当たり純収入は4140元で、物価上昇要素を差
し引くと前年比実質ベースで9.5%増、また都市住民の一人当たり可処分所得は1万
3786元で、実質ベースで12.2%増となっている。

 なお、これより前の2004年にもエンゲル係数が上昇する珍しい状況があらわれた。
 当時、このような事態になった重要な要因は、農産品価格上昇が激しく、食糧価
格が36.4%増、農産品価格が13.1%増となったことである。

 2004年、食糧価格の上昇が激しく、農民所得の増加速度と都市住民所得の増加の
格差が減少し、年間の都市・農村の所得格差は3.2:1に達し、初めて下降状態があ
らわれた。
 しかし、2007年、農産品価格の上昇が激しかったものの、都市住民の所得の増加
は農民よりも依然として高く、つまり、農民が農産品価格の上昇から得た利益はは
っきりあらわれず、都市と農村の所得格差は引き続き拡大する結果となった。

 ある専門家は、エンゲル係数の上昇とは、住民が経済成長の利益を何も受けてい
ないことを意味する。したがって、所得を増加させる必要があると指摘している。
 労働部門はまさに賃金の増加と支払いが正常に行われるようなメカニズムを構築
しようとしており、「賃金条例」を起草中である。

 2004年以降、労働社会保障部が改訂した「最低賃金規定」によって、最低賃金基
準は少なくとも2年に1回の調整が行われている。実情では、各地で目下最低賃金上
昇は激しく、2008年にも、北京、上海、広州の最低賃金は再び大幅上昇する。
 しかし、物価が一貫して上昇に向かうに従って、消費者物価指数(CPI)と連動
する賃金が増加するメカニズムの創設が提案され、各方面で取り上げられ、広範に
議論されている。

 しかし、あるアナリストは、違う意見を持っている。
 北京大学中国研究センターの周其仁氏は、2月24日のある経済観察報告会の席上、
創業を奨励し、企業をふやし、就業機会をふやすことで住民所得を増加させること
が、最低賃金を上昇させるよりもはるかにいいと指摘している。
〔21世紀経済報道2月29日〕

●2007年 四川都市住民のエンゲル係数は41.2%
 3日、四川省統計局、四川調査総隊は「2007年国民経済社会発展統計公報」を発
表した。
 この統計公報によると、2007年、四川都市住民のエンゲル係数は41.2%、小康レ
ベルで、農村住民のエンゲル係数は52.3%であった。
 四川省全体の年間都市住民の一人当たり可処分所得は1万1098元で18.7%増だった。
しかし、2007年、住民の食品、衣服、医療・保健、家庭設備用品、サービスにおけ
る費用はやや増加した。〔四川オンライン3月4日〕

●昨年の個人所得税収3186億元で3割増 急増に3要因
 中国財政部が5日発表した2007年財政収入増構造分析によると、2007年の中国個
人所得税収は3186億元で、前年比29.8%増となった。

 個人所得税は、個人収入所得に対して課税される。個人所得の課税分類は、賃金
給与所得、個体工商戸生産経営所得、請負経営・リース経営所得、労務報酬所得、
原稿料所得、特許権使用費所得、利子配当所得、財産賃貸所得、財産譲渡所得、一
時所得、その他の所得という11項目で、かつまたそれぞれの項目に応じた税率、費
用控除基準及び算定方法が規定されている。

 個人所得税の基本は個人(主に都市住民)所得であり、そのうち賃金収入の納税
は比較的規範的であり、個人所得税の主な税収源である。
 賃金収入は2種類に分けられており、一つが国家機関、事業単位から得る賃金収
入、これは税収から来るものであり、国家の賃金制度と直接関連性がある。もう一
つは企業から得る賃金収入で、その多寡は労働市場の需給状況、企業経営状況、国
家の最低賃金基準が決めるものである。

 2007年の財政収入増構造分析によると、2007年の中国個人所得税収は3186億元で、
前年比29.8%増、税収全体の7%を占めた。
 そのうち、賃金給与個人所得税は1749億元で38.4%増、個人所得税総収入に占め
る割合は55%だった。預金利息所得税は519億元で13%増、個人所得税総収入に占め
る割合は16%だった。個体工商高生産経営所得税は389億元で16.5%増、個人所得税
総収入に占める割合は12%だった。
 特に目を引くのが財産譲渡所得税で、個人所得税総収入に占める割合は少ないが、
増加速度は激しく、前年比119.4%増だった。そのうち、不動産譲渡所得税に関して
は、前年同期の2倍増となった。

 2007年財政収入増構造分析によると、個人所得税収の急増要因として3つ挙げら
れている。
1) 住民収入が引き続き増加
 2007年の都市住民の一人当たり可処分所得は1万3786元で、前年比17.2%前後増加
している。

2) 個人所得税に採用された累進課税制度
 住民(主に都市住民)の収入増に伴って、税率が上がり、課税額も段階的に増加
し、高収入者の納税額が多くなっている。

3) 税務機関が個人所得税の徴税管理を強化
 2007年、各地の税務機関は所得12万元以上には個人所得税を申告するよう業務を
展開しており、全員の全額の源泉徴収申告管理を整え、同時に、中古不動産等財産
譲渡所得税の徴税管理を強化した。これらの措置が税収の漏れを有効にふさぎ、申
告漏れや脱税を抑制し、個人所得税収の向上を促進している。
〔中国新聞網3月5日〕

●発展改革委員会 財政収入の多くは地方に振り向けられる
 中国国家発展改革委員会のホームページの情報によると、2007年の中国の財政支
出のうち、中央レベルの支出は23.1%、地方レベルの支出は76.9%を占め、財政収入
のうちのますます多くを地方に振り向けている。

 2007年、全国財政収入は再び新しい段階に入った。一挙に5.1万億元という大台
に乗ったのだ。これほど大きなパイをどうやって地方に配分するのだろうか?
 2007年の財政支出のうち、中央レベルの支出は23.1%、地方レベルの支出は76.9%
を占めた。財政支出のうち中央財政の占める割合は地方財政のそれに遠く及ばない。
中央財政は分税制改革で増加した収入をますます地方に補助しており、その補助額
も年々増大している。
 2007年、中央の地方に対する移転支出は1兆3991.2億元で、地方財政支出のおよ
そ36.7%を占めた。そのうち、財力性移転支出は7092.9億元(50.7%)、専項移転支
出は6898.3億元(49.3%)だった。

 全国財政収入の中で中央財政収入の占める割合が徐々に上昇すると同時に、中央
財政は主に税収返還及び移転支出の2方式で地方に資金補助を進めている。
 統計によると、1994―2007年、中央の地方に対する税収返還及び移転支出は2389
億元から1兆8112.5億元へと6.6倍増、年平均16.9%増となった。
 2007年、地方レベルの支出のうち約48%の資金は、中央財政の税収返還と移転支
出から来ている。〔中国新聞網3月3日〕
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―――――――――――――――――――――――――――― 李 年古 著 ―
 日本人には言えない
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……【国内政策】…………………………………………………………………………
●人民大学 中国革新指数報告発表
 中国革新指数研究報告(2007)が29日、中国人民大学において発表された。
 2007年省市区革新総合指数では、上海、北京、江蘇、広東が第一グループにあり、
強い地域は発展レベルをリードし保持している。
 天津、浙江、山東、湖北、遼寧、四川、陝西、福建が第二グループで、中国革新
能力の優良地域である。そのほか19省市区は革新が弱い第三グループである。

 革新指数研究の責任者であり、中国人民大学応用統計科学研究センターの趙彦雲
主任によると、2001―2007年、中国の地域革新指数全体は持続的に成長傾向にある
が、3つの地域の革新グループは、7年の発展を経て、さらに明確に区分けされるよ
うになったとしている。

 革新が強い上位4省市の平均上昇幅は最も大きく、4省市間の格差は明らかに縮小
している。上海を追いかける傾向で、江蘇は広東を上回る第3位である。優良8省区
の平均上昇幅は上位グループに近づき、革新が弱い省区を引き離している。
 省区別に見てみると、革新能力の上昇幅が最も高いのは江蘇、浙江、山東で、総
合指数の上昇幅はどれも25ポイントを超えていた。

 報告によると、2007年の中国各省区の製造業の革新総合指数については、北京、
広東、天津、浙江、上海、江蘇、四川、山東、吉林、重慶が製造業の革新能力の高
い上位10位であり、指数は55ポイント以上である。
 河南、湖南、遼寧、福建等15省区の指数は41―53である。
 革新指数は最も低かったのは内モンゴル、チベット、甘粛等6省区である。

 趙彦雲主任によると、中国の製造業の革新能力の「東高西低」が非常にはっきり
している。上位10位のうち、70%の省は東部地域にあり、東部地域では、革新にお
ける良好な環境及びインフラがあり、資源が集積し、製造業の革新能力ではるかに
リードするという要因になっている。

 この研究報告ではさらに、BRICs、つまり中国、インド、ロシア、ブラジルとい
った国家の革新指数の国際比較を発表している。
 中国の国家革新指数はBRICsにおいてトップである。革新における資源、実行着
手能力、技術実現能力、価値実現能力は優位にあり、革新への投入増大及び実行着
手能力の高まりが中国の革新型国家建設を推進している。〔中国新聞網2月29日〕

●中国 一人っ子政策調整検討
 中国は、一人っ子政策調整の必要性について検討する。
 政協スポークスマンの呉建民氏は2日、記者会見の席上このように述べた。また、
1970年代に打ち出された一人っ子政策によって、1970年から1990年代末まで、中国
では3―4億人少なく産むという大きな成果を得たとした。

 呉建民氏は、「一人っ子政策は中国の当時の状況に照らせば選択肢はなく、ただ
これを選択するしかなかった」と強調しながらも、「いかなる政策であっても、実
際に実行し、多くの状況の変化を経ているし、幾らかの政策調整が必要性があるか
どうか、関連部門はまさに検討しているところだ」と述べた。

 以前の報道では、人口の高齢化問題への懸念から、中国は一人っ子政策廃止につ
いて研究しているところであり、計画出産政策を完全廃止できなくても、段階的に
一人っ子政策を変更するだろうとしていた。

〈計画生育委員会 一人っ子政策廃止報道を否定〉
 ロイター社の報道では、さらに現在、確実なタイムテーブルあるいは具体的な施
策はないが、「意思決定者はこれがとても重要課題であることを意識している」と
している。
 また、これに関連する研究者は、中国の人口と資源の逼迫の関連性、社会の主流
である意見、「もし多くの家庭で伝統的な高齢者介護方式を頼りにできなければ、
中国の社会保障システムでフォローできるのか」等テーマを研究している。

 国家人口計画生育委員会宣教司は2月29日、一人っ子政策廃止に関する報道は不
正確で、内容も事実に反していると回答している。その後、政府のウエブサイトで
発表された声明では、中国の既存の人口計画性育成策をさらに一層推進するとしている。

 現在の政策下において、中国の大部分の都市の夫婦は子供1人のみを育てること
ができ、農村の夫妻は2人まで育てることが可能である。しかし、評論家によれば、
この政策は強制流産、強制女性性器切除といった行為につながり、そしてある地域
では性別比のバランスを悪化させており、専門家は人口の高齢化がもたらす影響を
心配している。

 中国では、60歳以上の人口が、2015年には2億人、2025年には2億8000万人に達す
る。〔聯合早報3月3日〕

……【労働】………………………………………………………………………………
●「労働契約法」マイナスの影響はっきりと 中国では失業のピーク
 中国「労働契約法」が正式に実施されて2カ月余りの今、マイナスの影響がはっ
きりとあらわれている。企業では労働者の数を減らし、コストを圧縮している。今
年の求職者の就業圧力は例年より大きくなる。

 春節後、重慶で開催された第1回大型求人説明会では、仕事を探す人は前年同期
に比べて倍増し、逆に就職先を提供する側は半減している。

 業界関係者は、「労働契約法」は市場経済における自由契約に反しており、労使
関係が調和しなくなり、中国就業市場に強大な衝撃をもたらしている。今年、数百
万人の大学生が就業市場に入るとき、中国には失業のピークがあらわれるとしてい
る。

 毎年、春節後は中国の求人市場が最も盛んな時期であり、今年も例外ではない。
目下、重慶市主城区の7大人的資本市場において大型求人説明会が開催されており、
企業千社が参加し、万の就職先を提供している。しかし、前年と比べ、今年の企業
の求人数は大幅に下落している。

 重慶市の飲食業は発展していて、レストランもたくさん建ち、大量の雇用を吸収
している。しかし、「労働契約法」実施後、労働集約型レストランは空前の圧力に
直面している。
 多くのレストランでは契約法実施前に大がかりなリストラが行われた。今年の春
節期間、多くの重慶人がレストランで食事をするとき、初めて従業員が足りないと
いうことを感じただろう。

 重慶〓江豆花餐館の劉秀栄オーナーは2日、本紙取材に対し、以前はレストラン
には10人の従業員がいるが、今は5人しか残っていないと述べた。
 「人手減少はやむを得ない、新しい契約法では従業員への各種保険加入が義務づ
けられているが、従業員コストは一気に30―40%増加した。我々のような小規模レ
ストランでは、頼るあてもないのだから、リストラをして維持するしかない。現在
1人で2人分のことをし、お金を節約して、彼らの保険加入に充てなければならない」

 重慶聯英人材網の金欽総裁は本紙取材に対し、「労働契約法」実施以降、企業経
営者は悲鳴を上げており、多くの中小企業が廃業したとしている。「いつも我々の
ところに求人広告を出してくれている社長さんは、契約法は我々を悲惨にさせてい
ると訴えている」

 金欽総裁は、「契約法」とは「善意的な悪法」だという。これは、「契約法の制
定の出発点は労働者の保護であるけれども、労使関係が調和しなくなった。なぜな
ら、中国は人口が多く、就業圧力ももともととても大きいからだ。現在、しわ寄せ
は「弱者」に向かい、労使関係をアンバランスにさせ、最終的には高失業率をもた
らしている」

 金欽総裁は、今年、中国には失業の大波が押し寄せると予想している。
 「数百万の大学生が就業市場に入ったとき、もともと逼迫していた就業市場はさ
らに悪化して、結果として多くの大学生が失業する。企業は現在、求職者の能力や
経験を求めているが、この2つのことはちょうど大学生には足りないことである」
〔聯合早報3月3日〕
注)〓は、「執」の下に「土」

……【国内政策:日本の対中援助の30年】……………………………………………
●日本の対中援助の30年 3 「面倒」な円借款
(前号より続く)
 1997年から2001年まで、日本の対中借款はピーク期に突入し、2001年には2144億
円(約142億元)の頂点に達した。
 このとき、円借款も一つの新しい時代に突入した。中里太治氏によると、日本の
対中借款は、2001年から主に環境保護、人材育成の方面への支援となった。それよ
り前の20年で支援されてきた鉄道、都市インフラ施設は減少していった。そして、
円借款の支給方法も、これまでの5年に1回から、1年に1回に改められた。

 北京正東電力集団が円借款を申請した熱電併給プロジェクトも、国際協力機構の
審査を得たものである。熱電併給プロジェクトは一種の伝統的な火力発電をさらに
環境に配慮したものにするプロジェクトである。黄世高氏はこのプロジェクトの責
任者で、円借款と7年のつき合いがある。

 総額7.4億元の総投資額のうち80%が円借款で、年利わずか0.75%、償還期限40年、
最初の10年は利息のみを支払う。「40年後に償還する、商業銀行では全く想像でき
ないことだ」黄世高氏は言う。
 しかし、「面倒」なことがどんどんついてくる。黄世高氏は、国際協力銀行の規
則に照らして、この借款には手続に長い時間がかかること、その間に国際入札をし
て、調達指導規則に従わなければならないことに気づいた。「競争入札の資格審査
から契約調印にこぎつけるのに17カ月かかった」

 さらに大きな「面倒」は、日本政府に不協和音が発生したことで、ある国会議員
よる、円借款の支給をするかどうかについてまでの激しい議論があったことである。
中国の首都にはお金がないわけじゃないのに、なぜ日本人の血税で支援する必要が
あるのかという。このために、国際協力銀行の専門家は日本の政治家を伴い、北京
でこのプロジェクトを視察した。
 2002年、財政部と日本政府は2001年度の円借款を調印し、2004年5月、正東電力
集団は初めての施設発注協議に調印した。工事には7つの設備発注があった。しか
し、「中国国内の商業銀行であれば、手続はとても簡単だ」

 交渉で一致点が見出せないことは避けがたいことだ。だが、日中双方の具体的な
工期の進展、技術基準、プロジェクトのコスト等においては多くの議論があっても、
日本側の厳格な姿勢は中国側にとっては大いに勉強になった。
 日本側は毎回工事のコンサルタントを雇い、毎回競争入札、交渉を行う。このよ
うなコンサルティングは中国側と一緒に行うので、中国側の技術、ビジネスのため
に寄与するものになった。〔南方週末2月21日〕

●日本の対中援助の30年 4 技術導入
 2004年以降、中国経済が振興していくに伴い、中国の対中投資が増加し、円借款
も2001年のピーク期を境に徐々に減少し、2007年には463億円までになった。

 国際協力機構中国事務所の藤本正也副所長は回想する。1990年代末、中国側は日
本側のさらなる資金提供を希望していたが、技術支援には決して興味を持たなかっ
た、しかし現在、中国側がことあるごとに言うことは、お金は自分たちで解決する、
我々により必要なものは技術と経験であると。
 このような経験、技術は、日本が中国へと派遣した専門家が引き受けている。こ
れは国際協力機関が担当する対中開発援助の主要な任務の一つである。

 衛坂和隆氏は国家環境総局中日友好環境センター日本専門家チームのプロジェク
ト調整を担当している。彼は1987年に青年海外協力隊員として中国に来た若者で、
中国の国情を熟知している。
 1998年、妻を伴い中国で仕事をしに来た衛坂和隆氏は、中日友好環境センターの
日本専門家が中国に企業向けの公害防止管理員制度を推薦していることを初めて聞
いた。この制度は日本で既に40年実施されているものである。7年後、この制度は
中国の特色に合致した企業監督管理員制度に変わり、国務院の報告の中にも組み込
まれた。

 衛坂和隆氏によると、日本専門家チームは、まず、紹介、訓練養成といった方法
で、中国環境保護総局指導者に企業監督員の役割をはっきり理解させた。1998年か
ら2003年までの5年間で、日本側は中国側の各指導者への訪日研修の機会を通じて、
中国の幹部と日本政府との専門のハイレベル対話を行い、企業環境監督員制度を推
薦したのだ。

 一般の中国人の日本研修は国際協力機関の任務の一つであり、中国側の20歳から
35歳までの青年がその対象である。日本で日本のエネルギー、工業、農林水産、商
業、行政、医療・保健等の分野の研修を行う。
 衛坂和隆氏によると、初期における日本研修は共青団より派遣されていたが、国
際協力機構と中国側との対話の後、徐々に公開公募へと変わっているという。喜ば
しいことは、「現在中国の指導者層の中で過去の日本研修への参加経験者がいるこ
とだ」
 このような重要な人物が日本研修に参加したことは、日中両国の技術移転等の協
力をさらに推進する。そして、企業環境監督員制度の推進も、まさに第二回の日本
研修に参加した環境保護総局環境監察局の副局長が帰国後に進言したものである。

 目下、国際協力機構は既に公共、公益事業、農林水産、鉱工業、商業旅行、人的
資源等の分野でシニアボランティア専門家を派遣している。これらの専門家の年齢
は40歳から69歳までの間である。
 これらのシニアボランティア専門家のほか、中国に興味・関心を持つ青年海外協
力隊員もいる。彼らは幾たびの選抜を経て、各種訓練を行い、その後に中国の各地
に派遣されてボランティア活動を行う。その分野は日本語、教育、文化、保健衛生、
農林水産等に及ぶ。
 藤本正也氏は、日本国内にはさまざまな世論が存在し、対中援助について中国が
「わかっていない、感謝しない」と考える日本人もいるが、このようなボランティ
ア活動をする者はやはり中国にボランティアに行くことを希望していること、さら
に、彼らは日本に戻ってきた後、学校現場に行ってボランティアの活動について宣
伝するはずであると話す。

 国際協力機構北京事務所事務室にある中国地図には、従業員がそれぞれのボラン
ティアや専門家の所在地を色分けして表示している。
 想像しがたいが、中国の国土に、かつて歴史問題で相入れない両国が、援助のた
めに、貧困扶助、伝染病予防、水資源利用等の分野で交流の土台をつくっているの
である。〔南方週末2月21日〕

●日本の対中援助の30年 5 まだこれからだ
 3月から、日本の対中借款は終結する。しかし、藤本正也氏が言うように、円借
款が終わった後も、日本の対中援助は存在し続けるだろう。
 目下、ハード分野における無償援助は既に基本的になくなり、技術協力予算も毎
年わずか40億元程度である。この数字は1997年のピーク期には100億元に達してい
た。しかし、このような援助のメカニズムは依然として存在している。

 在中国日本大使館の経済部局の山本恭司参事官は、今後、対中援助は環境保護、
省エネルギー、伝染病予防を含む技術協力に主に集中し、さらに日中両国間の相互
理解促進プロジェクト、及び既に展開されている分野のさらなる経済協力があるだ
ろうとしている。
 彼は楽観的で、日中両国が対外援助においても手を携え、「例えばアフリカにお
いても、日中両国で援助すること」もできるとしている。

 30年間、国際協力銀行北京代表所は既に代表が10人交代している。しかし、中里
太治氏は、まだこれからだという。まだ大型円借款が投入された後の事後評価、考
察は続くからである。
 中里太治氏は、いつも自分の応接室の来客に円借款の輝かしい成果を紹介してい
る。国際協力銀行応接室の壁には、黒龍江省高速道路建設局が2000年に贈った扁額
が飾られ、そこには「日中友好世代相傳」と書いてある。

 山本恭司参事官が今でも覚えていることは、中国に任務に来たばかりのころ、海
外協力隊員に会い、このような若者が直接中国の友人と触れ合うことで相互理解が
深まると確信したことだ。

 今後数週間以内にはまた新しいボランティアが全国を駆けめぐる。そしてまた、
黄世高氏も、国際協力銀行の求めに応じて、次なる工場の熱電併用プロジェクトの
建設を積極的に行う。彼がかかわった国際協力銀行の次席代表も既に3人目となった。

 日中関係の激動の中、日本の対中援助もかつては激動に揺さぶられていた。しか
し、こうは言えないだろうか。そのような中国の大地に広がる対中援助プロジェク
トというのは、さらに何代もの人たちの手を経て完成するものであるかもしれない
のだ。〔南方週末2月21日〕

……【連載:日本人には言えない―中国人の価値観】………………………………
 現在、日系企業の日中異文化理解の企業研修の第一線で活躍している、当メー
ルマガジンの編集長・李年古による「中国人の価値観」をテーマにした連載をお
おむね月2回の頻度で掲載します。
 大好評をいただいた著書『中国人との交渉術』からはや6年、この連載のベー
スにもなっています著書『日本人には言えない―中国人の価値観』もあわせてご
らんください。

●〔第21回〕仕事・就職観3 「体面」を求める仕事観
 中国人の仕事にたいする考え方で「志」を達成するため管理職になる以外といえ
ば、仕事が「体面」であることだ。「体面」とは、その仕事の社会的な地位が高く、
勤める本人が羨望の的になる職業のことだ。
 たとえば、中国社会科学院が全国六三の都市で、一六歳以上の住民二五九九名に、
「憧れの職業」についてのアンケートをとった結果、第一位に輝いた職業は、なん
と「市長」だった!それにつぐのは政府部長、大学教授、ネットワークエンジニア、
裁判官、検察官、弁護士、ハイテク企業技師、党・政府幹部、自然科学者であった。

 才能のある優秀な若者は、官僚という狭い道でひたすら厳しい競争を繰り広げて
きた。しかしここ二〇数年の間、市場開放と改革開放の進展にともなって、中国人
の就職にたいする考え方にいろいろな変化が生じ始めた。とくに若者の価値観には、
多様化、多元化の様相があらわれ、官僚の人気度が急速にさがり始めた。
 さきほどの調査でも、一六歳から三〇歳までのもっとも若いグループは、第1位
に「コンピューターエンジニア」をえらんだ。彼らには、政治権力の職業、たとえ
ば市長、政府部長、政府機関幹部などはそんなによくはみえないらしい。

 「体面」の職業は、数千年を経て、ようやく異変が起き、多様化になりつつある
時代に入ったようである。
 このように、中国人の仕事観をよく理解するには、まず職業にたいする考え方観
を理解しておく必要がある。中国人にとって、どのような職業に就くかは重大事で
あり、「体面」にかかわる最大のポイントでもあるといえるからだ。

……【経済データ】………………………………………………………………………
●中国の外国為替レート(仲値)
                       (中国人民銀行3月10日17:32)
外貨名  100日本円  100米ドル  100香港ドル  100ユーロ
     6.9472   710.8    91.31  1093.6
関連ページ:http://www.boc.cn/
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《編集者コラム――エンゲル係数》
 以前「温飽」「小康」なる言葉を「衣食が充足する」「いくらかゆとりがある」
などというふうにした方がいいのかなと思ったことがあるのですが、「充足」とい
うのはどういう基準の充足なのか、「いくらか」「ゆとり」というと、どういうレ
ベルの幾らかで、それがどういう意味でのゆとりなのかがわからなくなり、そのほ
か、「まずまずの状態」などという翻訳に至っては「温飽」「小康」どちらでもと
らえられるような気がしてきて、今は結局、専ら「温飽」「小康」というふうにし
ています。
 これらの発達レベルについて、言辞を工夫してもなかなかわかりにくいのですが、
エンゲル係数と所得水準などを加味していけば、中国の発展レベルがよりわかるよ
うになるかなと思います。
 今回のメールマガジンにエンゲル係数についても紹介があったのですが、それに
よると、FAOのデータを引用して「59%以上は貧困、50%―59%は温飽、40%―50%は小
康」ですね。しかし、安直にFAOのホームページやインターネットを検索しただけ
では、データの出どころに行き当たりません。インターネット上でこのようなエン
ゲル係数の区分例を示しているのは中国に関係するホームページばかりなのです。
 中国語のメディアはこのデータを一体どこからとってきたのでしょうか。もし、
どなたか、エンゲル係数の数値と中国の発展レベルについて書かれた大もとのFAO
の手による資料を御存じでしたら、教えてください。(ま)
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●「ビジネス企業研修@中国」 http://www.bizchina.jp/
●バックナンバーの入手(記事検索も行えます)
(200号以降 2003/2/18―) http://www.bizchina.jp/modules/nweek/
(199号まで) http://www.jckc.com/nweek/view.php?no=1
●《中国最新情報――編集者コラム》http://ameblo.jp/jckc-colum/
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編集長:李年古/副編集長:前野貴子 特別協力:劉莉生
翻 訳:リン 神谷輝雄 呂君 澤田裕子
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