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電子マガジン・中国最新情報
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教育・文化ウオッチ@中国最新情報 No.757 2021年6月3週号
発行:《中国最新情報》編集部 http://www.bizchina.jp/
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━【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏【特集:大都市の土地価格上昇による高コストな消費生活】
●墓地の値段を見て、私は生きることを選択する
●あえて外食しない 知られざる中産階級の不安

┏【李年古の日中異文化交流術】
●中国の世間百態(中国万華鏡) 2
◆国有企業の魅力とは何か?

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……【特集:大都市土地価格上昇による高コストな消費生活】……………………
●墓地の値段を見て、私は生きることを選択する
 生まれること、老いること、病気になること、死ぬことは、一生において誰もが
経験することである。しかし、いつのころから、これらは銀行のローンビジネスに
なってしまった。
 墓地ローンは、銀行の最新のビジネス開拓分野である。報道によると、雲南・昆
明の一陵園と現地銀行が協力し、頭金ゼロ、ローン限度額最大20万元、ローン期間
最大10年、固定金利9%で墓地を購入できる「墓地消費者ローン」を始めた。
 この墓地ローンビジネスはすぐに中止されたが、葬儀をするためにこんな多額の
お金を借りる必要があるということに、多くのネットユーザーは死ねないと悲鳴を
上げ、銀行は死ぬ金を持たない人の不安につけ込んでいると言う人もいた。
 では、葬儀代は一体どれだけ高いのだろうか。

〈亡くなった人を弔うのに幾らかかるのか〉
 八宝山葬儀社といえば北京最大の葬儀会社で、北京市の火葬業務の3分の2を担っ
ている。この葬儀サービスの典型的なコースで葬儀をすると幾らかかるのかと言え
ば、答えは950元。
 そう、これは桁が少ないわけではない。八宝山葬儀社サービスセンターの周衛華
主任はメディアに請求書内訳を示したことがある。それによると、遺体の運搬250
元、遺体の保存90元、通常の死に化粧150元、小さなお別れの場200元、遺体の火葬
380元、棺桶の運搬80元、紙製の棺桶280元、遺骨の保管50元、その他110元。
 合計1590元だが、実際の料金は950元である。4割引なのは、政府からの補助金が
あるからである。

 実際には、北京だけでなく、中国のどこの葬儀会社でも、遺体の搬送、遺体の冷
蔵、遺体の火葬等の大部分の葬儀サービス価格は厳格に管理されている。
 葬儀サービス市場が最大規模の上海で見ても、主要な葬儀サービス価格は高くない。
 例えば、火葬サービス一つを見ても、上海の葬儀会社は20年以上も値上げしてお
らず、180元のままである。
 宝山区葬儀管理所の姚建明所長は取材に対し、火葬は国民に優しい政策になって
いるという。
 「従業員の賃金や燃料価格の上昇、2―3万元だった火葬設備が、今は30万元以上、
さらに減価償却費も含めていない。1人の遺体を火葬するコストは少なくとも600元
以上かかる」

 上記の選択肢は最も安い方法である。しかし、周衛華主任によると、中間レベル
の葬儀サービスでも3500元だという。
 つまり、ちゃんとした葬儀をしてもお金はそれほどかからないのである。
 しかし、違うものがあるとすれば、それは墓地である。土葬や墓地販売を含む墓
地サービスは、より市場原理に基づいて価格が動いている。そのため、葬儀会社の
多くは、墓地を売ってお金を稼いでいる。

 中国の「葬儀銘柄トップ」福寿園の、発表されたばかりの2020年決算報告書で株
主向けに開示した2020年の収益構成によると、年間18.9億元の収益のうち、14.08
億元が墓地販売によるものである。つまり、福寿園の収益の4分の3は墓地販売によ
るものである。
 福寿園が過去1年間で販売した墓地は1万3083基で、平均すると、1基当たりの販
売価格は10.8万元だった。

〈なぜ墓地はこんなに高いのか〉
 それは、墓地用地の土地供給が厳格に規制されていたことと関係するかもしれない。
 葬儀のための土地使用はあらゆる申請においても承認手続が必要があることから、
土地資源が乏しくなり、墓地用地の供給が限られる。供給が限られ、需要が高騰す
れば、墓地価格は自然と低く抑えられない。
 特に都市では、土地が貴重な場所であるほど、墓地の価格も高くなる。上海、広
州は同じ一線都市だが、上海の墓地の一番安い価格は住宅価格と同じで、広州より
も数段高い。
 しかも、これは最高額ではない。あるメディアの報道によれば、2016年には、上
海の高級墓地の平均価格は9万元を超え、その単価は当時の上海内環エリアの新築
住宅価格を超えていた。

 そして、業界リーダーを豪語する福寿園の自信がここにある。2020年、福寿園は
葬儀ビジネスを全国18省45都市で展開しているが、収益の46.9%は上海一カ所から
得ている。
 福寿園の強みはほかにもあり、それは墓地の収益性が非常に高いことである。
 福寿園2020年の決算報告書によると、連結粗利益率は88.2%、一方、同じ「土地
で食べている」不動産会社の2020年の連結粗利益率は、碧桂園34.0%、万科29.3%、
恒大24.2%と見劣りする。金を稼ぐ効率では、白酒業が葬儀業を圧倒するかもしれ
ないが。

 そして、非常に高い収益率の背景には、葬儀産業の非常に低い土地コストがある。
 2012年だけでも、福寿園の上海のプロジェクト用地は40.2万平方メートルで、土
地購入時のコストは1平方メートル当たり190元だった。葬儀会社にとっては、これ
らの土地は後になって売れば売るほど、利益が出ることになる。

〈死後は大都市から脱出〉
 墓地の土地が乏しく、需要が高どまりする現状では、それに伴って墓地価格が上
昇するのは当然のことである。
 2015年当時、福寿園の墓地の平均販売価格は8万元で、2020年には11万元まで上
昇するとされていた。
 しかし、ローンで墓を買う多くの人にとってこのことに現実性はないので、より
現実的な選択は、販売価格がより安い場所で親族を埋葬することである。

 大都市では、このような選択をする人がふえてきている。北京人は河北にお墓参
りに行き、上海人は蘇州にお墓参りに行く。清明節になると、蘇州の墓地に向かう
道路には上海ナンバーの自動車が見られる。
 近さを捨てて遠くを選んでいるように見えるが、実は、蘇州の墓地は上海市内か
らそれほど遠くなく、上海の墓地よりも価格が庶民的である。
 同様に、上海の市街地から35キロにある蘇州・太倉の楽遥園は最低価格が4万だ
が、上海・松江にある華夏墓地は少なくとも7万はかかる。
 しかし、蘇州の墓地数も逼迫してきたため、近年、蘇州では現地戸籍でないと蘇
州の墓地が買えなくなっている。蘇州は全国で初めて墓地の購入制限政策を打ち出
した都市であるが、多くの人がこの政策は妥当だと思っている。

〈埋葬観念の転換にはまだ時間がかかる〉
 つまるところ、墓地を高くするかどうかの選択は、遺族にある。海葬、樹木葬、
芝生葬のような土地節約型のエコロジー葬を選べば、基本的に何万もかからない。
しかも、上海のような大都市は、埋葬のための土地は余り多くはないと政府が呼び
かけている。
 上海の葬儀管理部門の統計によると、仮に、現在選ばれている埋葬方法の割合に
基づけば、上海の既存の利用可能な墓地資源は15年以内に枯渇する可能性がある。

 しかし、問題は、「入土為安」(死んで土に戻って心が和らぐ)という観念のも
とで、他の埋葬方法を受け入れることが難しいと考える人が多いことである。遺骨
が残らない海葬は言うに及ばず、現在、中国人で火葬を受け入れる割合は一貫して
50%前後を行き来している。
 火葬率100%追求のため、南部地域のある場所では、棺桶の流通を統制し、土葬し
ようとする人を阻止したり掘り出すやり方を広めようとしたが、各界からの批判を
受け、取りやめになった。

 埋葬観念を変えるには時間がかかる。もともと人生最後は解放されることなのに、
現在は決して簡単にはいかないように見える。特に、十数万を墓地に払っても、そ
れは20年足らずの賃借料にすぎないとわかった後ではなおさらである。
〔澎湃新聞2021年4月4日〕

●あえて外食しない 知られざる中産階級の不安
 最近、深センの年収約40万元のエンジニアが自分の家計状況を公開したが、それ
によると、外食しておいしいものを食べていないということが多くのネットユーザ
ーの注目を集めた。
 深センでは、月給3万元以上が基本的に中流階級とされている。その道理で言え
ば、生活は非常にリラックスして快適であるはずだ。しかし、彼が提供した基本的
な支出の状況は人々を不安にさせた。

 彼の基本的な支出を見てみよう。具体的な指標は次のとおりだ。
・住宅ローン――1万2000×12=14万4000元
・自動車ローン――4000×12=4万8000元
・幼稚園――6800×2=1万3600元
・生活費――2000×12=2万4000元
・衣類、靴、化粧品――2000×12=2万4000元
・不動産維持費――300×12=3600元
・電話料金――200×12=2400元
・光熱費――115×12=1380元
・旅行――2000×3=6000元
・合計――26万6980元

 このような基礎的な支出で家計は逼迫していて、結局、これらの費用には、基本
的な医療費、交友関係、車の維持、親のための支出などは含まれていない。上記の
支出項目は、深センで生きることを維持するだけであり、生活するためのものでは
ない。
 中でも、住宅ローンが年間支出の半分以上を占めている。そして、月額2000元の
生活費は、3人家族の割にそれほど高くない。彼が毎日弁当を持っていくと言った
のも不思議ではなく、レストランでおいしいものを食べるのさえけちっているのだ。
 深センの住宅価格の高騰はまさに一部の中流階級の人々の生活の質を低下させて
いる。住宅ローンや自動車ローンといった生活の負担を背負う深センの中流階級に
は一般の人々には理解しがたい不安が浸透している。〔新浪網2021年4月10日〕

……【李年古の日中異文化交流術】……………………………………………………
●中国の世間百態(中国万華鏡) 2
(749号(2021年1月2週号)より続く)
◆国有企業の魅力とは何か?
 「あなたの会社は、何を魅力として民営企業と人材を奪い合っているでしょう
か」。僕は少し話題を変えて聞いてみた。
 「まずわかってほしいのは、うちの会社でも社員の流動率は年間13%に上ってい
ます。そんな魅力があるとは言えないでしょう」。彼はずばり答えた。
 「確かに金融・インフラ建設にかかわる国有企業は給与などの魅力があって、民
営企業より人気が高い。だけれども、弊社は給料は民営の同業他社と比べても中ク
ラスだから、人材確保には限界があります」。

 僕は、突っ込んで聞いた。「しかし、給料以外の収入、例えばいろいろな手当を
社員に与えているのは、国有企業の伝統ではないのか?……例えば、僕たちの昔の
職場のように」。
 その話を出た瞬間、2人とも目を合わせて理解したかのように一笑した。

 恐らく彼の頭に浮かんできたのは、僕と同じく30年も前の情景だった――祭日に
近づくと職場は騒然となり、社員らは会社から配られたいろいろな生活用品を受け
取ることに夢中になる。活魚や干した海鮮物、高級な果物、どれも当時の庶民にと
ってめったに入手できないものばかり。だから、その時の職場は、まるで自由市場
のようにいろいろな肉と野菜のにおいがまざり合い、それらを持ち帰る際、周りの
隣人からうらやましげな目線を浴びることは、僕たちが国有企業に勤める最大の誇
りであった。
 ちなみに、そのころ、課長の僕の月給は72元、日本円にして1100円だった。しか
し、そのような会社の手当をいっぱいもらえるので、生活に多大の潤いが得られた。

 「あなたの頭に描いた昔の国有企業は、ここ十数年の間にイメージが急速に変わ
ってきたよ」Lさんは過去の記憶に浸っている僕を現実に戻らせた。
 「今は、グレーゾーン収入は中央政府から禁止されています。例えば、私のよう
な高層の経営層も、数年前までは年間3万元のガソリン代を手当として会社からも
らっていましたが、今はそれもなくなりました。過去は会社の車を公私混同で使っ
てきましたが、今は政府が車につけたカメラの録画を細かくチェックされています。
疑いがあるなら直ちに調べられ、追及されることもあるんですよ」。

 彼はさらに話を続けた。「昔の国有企業は終身雇用が当たり前でしたが、今は、
営業などの部門では下位淘汰の人事制度も設けられています。3カ月連続で業績が
達成できなかった社員はみずから会社をやめるということです」。

 「じゃ、今の国有企業は、何を魅力として民営企業との人材競争を勝ち取ろうと
しているのですか」と僕は質問した。
 「人材育成です。当社の親会社は大学も設けられているから、毎年、中層幹部が
定期的に研修を受けています。又は、当社に社内研修講師の認証制があり、全社員
を対象にそれを取得することができます。今30人ほどが講師免許を持っています。
 私のような経営層5人は最低年に2回、部門責任者は年に1回、講壇に立って部下
の業務研修を担当することが必須です。それと昇進とが連動しています」。

 そのほかの魅力を挙げようとしたLさんは急に、僕に会社のいろいろな現場を案
内しながら、目で確かめてみようと提案してくれた。
 彼が、真っすぐ案内してくれたのは作業場ではなく、会社の社員食堂であった。
食堂の運営に委託されている外部会社の責任者が僕に自慢そうに紹介してくれたの
は、1日3食のメニュー数だった。僕の想像をはるかに超えた話であった。
 「朝食だけでも毎日15の種類を確保しています。その1種類の料理の中にさらに
豊富なバリエーションが用意されています。例えば、麺とビーフンのスープと味つ
けは9つほどあります……」。

 やれやれと、僕はよだれを必死にのみ込みながらいると、昔の会社食堂の光景が
頭に思い浮かんできた。今の社員食堂に負けないほどの料理の数々を思い起こしな
がら、当時の幸せの気分がひそかによみがえった。
 中国人にとって、舌の幸せが仕事の大きな動機づけとなるのは今も昔と変わって
いないのだなと思った。まさにそれが国有会社の魅力として挙げられるとは、意外
な結果であった。
 僕はそう思いながら、Lさんの一言がぼんやりと聞こえていた。
 「もちろん、食堂の1日3食は、全て無料なんです」。
(見学写真をツイッターに投稿しますので、ごらんください)

(このコーナーは、日中異文化コミュニケーションの経験を中心テーマとした文章
を紹介していきます。)
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●「ビジネス企業研修@中国」 http://www.bizchina.jp/
●バッグナンバーの入手
(83号以降 2000/9/25―) http://www.bizchina.jp/ja/nweek/
●《中国最新情報――編集者コラム》http://ameblo.jp/jckc-colum/
●ツイッター https://twitter.com/bizchina_jckc
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編集長:李年古/副編集長:前野貴子 特別協力:劉莉生
翻訳:竹内はる菜 澤田裕子 楊桃
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