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電子マガジン・中国最新情報
中国国内各紙の報道をもとに編集部が独自のセンスで選んだ、中国経済全般、政策動 向、産業一般、社会などホットな中国情報満載。日本の報道では物足りない、今の中 国を日本語で読みたい方は必見!
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教育・文化ウオッチ@中国最新情報 No.801 2023年10月1週号
発行:《中国最新情報》編集部 http://www.bizchina.jp/
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━【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏【特集:新しい消費の着眼点と消費刺激策】
●意味不明なな気持ち商品はなぜヒットするのか
●有給休暇消化で消費刺激推進

┏【国際】
●バーベキュー、馬面裙、紙翻花――海を渡るクールな中国文化
●西洋から東洋へ、文化的魅力をどう感じて「理解」するか

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……【特集:新しい消費の着眼点と消費刺激策】……………………………………
●意味不明な気持ち商品はなぜヒットするのか
 「気持ち売買」という言葉を聞いたことのある人は少なくないと思うが、「気持
ち売買」をした経験はないのではないだろうか。ネット通販プラットフォームを開
くと、多くの若者がネット上での「気持ち」の購入に熱中している。おもしろそう
でもあるが、「荒唐無稽」な感じもする。

 例えば「クラウド現場監督」を買う人がいるが、自分の学力向上をリマインドす
る専門員を雇うということである。また、ある人は「強運のデリバリー」を買い求
め、職業選択の前、テスト前に「苦しいときの神頼み」をする。お休みのあいさつ
のショートメッセージを購入する人もいて、毎晩知らない誰かからの温かいあいさ
つを受け取っている。

 「気持ち」のネット購入は奇々怪々であり、往々にして「思いつかない」だけで、
「買えない」ことはない。ネット上で「バーチャルモスキート」を購入すると、そ
の売り手が蚊に扮して、不定期に「プーン」と邪魔しに来る。恋人と別れた後「恋
愛脳の覚醒」を買うと、知らない誰かが「おしゃべり相手」となって、情であなた
を納得させ、道理をもってあなたの心を動かしてくれる。

 「意味不明」な気持ち商品のインターネットプラットフォームでの取引量は少な
くないようであり、月の売上高が1000元を超える店も少なくない。「買い手」がい
て、「売り手」がいるという「気持ち」市場は気持ちそのもののように、捉えどこ
ろがないものである。

 これらを「でたらめ」だと言う人もいる。実際には、表面的にはつかみどころが
ないバーチャルサービスに見えるが、人々の気持ちに対するニーズを実際に満たす
ことができる。寄り添う感じ、又は求める感じ、それとも満足感かもしれない。い
ずれにせよ、ユーモアによって生活のストレスを緩和し、笑いの中で承認欲求を満
たすのである。

 今日、気持ち、特に気持ちの価値を重視しリスペクトする人がますます多くなっ
てきている。「気持ちを消耗させない」が多くの若者が社会へ踏み出すときの信条
となり、MBTIが若者世代の自己認識、他人との交流のツールとなり、明るくカラフ
ルでポップなファッションが自分と周りの人を愉快にさせる、そんなときには「気
持ちを十分に伝える」ことは、既に多くの人々の生活理念となっている。
〔半月談2023年08月17日〕

●有給休暇消化で消費刺激推進
 香港「南華早報」サイト8月19日の報道によると、休暇支出の奨励による消費刺
激の努力において、中国東部のある省では最近、企業による社員の有給休暇取得を
奨励するようになった。
 先日発表されたある消費刺激計画によると、山東省政府は有給休暇制度の全面実
行を承諾し、オフピーク休暇、フレックス休暇を奨励し、休暇による消費促進を図る。

 先月末、中央政府は同様の、休暇やレジャー時の消費奨励を含む20項目の目標の
措置を公布した。法律では、中国の社員は勤続1年以上でありさえすれば有給休暇
を享受することができ、勤続満20年の社員は最長で15日間の有給休暇を享受するこ
とができると規定している。
 一方、人力資源・社会保障部サイトの2020年9月のある公告によると、実際には
約60%の労働者しか有給休暇を享受していない。当該公告は中国の60都市に対する
調査を引用している。

 近年、家計支出増加のため、少なくとも十数の地方政府が有給休暇の奨励を指示
している。外部需要が弱い状況において、中国は国内消費に期待を寄せている。
 ここ数カ月、消費者と投資者のマインドのぐらつき、不動産市場の不景気と輸出
の下落に伴い、中国のアフターコロナの回復力の弱さが明らかとなっている。
 国家統計局のデータによると、夏は旅行のオンシーズンであるにもかかわらず、
7月の社会消費品小売総額は同期比2.5%増と予測を下回った。前月の増加幅は3.1%
であった。
〔参考消息2023年8月21日〕

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……【国際】………………………………………………………………………………
●バーベキュー、馬面裙、紙翻花――海を渡るクールな中国文化
 「8D(8次元)魔幻都市」重慶から、ネットで人気のグルメの街長沙、シ博のバ
ーベキューまで、近年中国では、それぞれの特色を生かして急速に人気を集める都
市がふえている。さらに、海外にも知られるようになり、外国人が中国を知るため
の新たなチャネルとなっている。
 中国の都市の活力と影響力はどこから来るのか。中国の都市で若者文化を築くチ
ャンスと課題は何か。都市文化を「輸出」するにはどうすればいいのか。

 このほど、中新社の「東西問・中外対話」では、オランダの若手中国研究者で
「北京週報」編集顧問であるエルスベス・ファン・パリドン氏と、中国伝媒大学文
化産業管理学部副学部長で博士課程指導教授の劉江紅氏を招いて対談を行った。
 パリドン氏は、中国の都市における若者文化の発展と変化は、実は中国全体の成
長物語でもある、急速な経済発展に伴って中間所得層がふえ、都市部の若者はエネ
ルギーに満ちあふれていると述べた。
 一方、劉江紅氏は、中国の新世代の若者は好奇心旺盛で、オープンで協調性があ
り、彼らの個人的な消費の追求が都市イノベーションの源泉の一つであるとした。
今後も都市を「トレンディー」で「クール」にし、より多くの若者が落ち着いて楽
しく暮らし、外国人の若者に中国文化の魅力を感じてもらいたいと語った。
 対談の概要は以下のとおり

中新社記者:2023年のメーデー連休中に、シ博市は中国国内のインターネットで最
も注目された都市になりました。パリドンさんは、シ博の人気についてどう思いま
すか。ヨーロッパに似たような都市がありましたか。

パリドン:西側諸国では政治が多くのことに影を落としており、政治化された物語
が何よりも優先されています。中国のこととなると、彼らは中国の14億の人々を忘
れているようです。しかし、私の「ミレニアル世代」の友人たちは、中国の同年代
の人が何をしているのかを見るのが大好きです。
 ちょうど、シ博が今や大人気で、地元のバーベキューを食べようと「ミレニアル
世代」の若者たちがシ博に押し寄せ、国際的なニュースになっています。シ博の人
気は、ファッショントレンドやカンフー、あるいはシ博のバーベキューのような食
文化など、伝統的な中国文化が現代文化の中でも健在であることを示しています。
 一夜にして人が一カ所にどっと集まる現象は、ヨーロッパではほとんど見たこと
がありません。これは中国におけるソーシャルメディア(SNS)の飛躍的な成長と
パワーアップがもたらしたプラスの効果の一部だと思います。

中新社記者:劉先生、外国の友人にシ博をどのように紹介しますか。外国人が中国
のネットで注目される都市に引きつけられるポイントは何だと思いますか。

劉江紅:シ博の「海外へアピールする」3つの特徴をまとめると、「炊煙で癒して
くれる千年の都」という言葉になるかもしれません。
 シ博は千年の古都です。バーベキュー以外にも、シ博には悠久の歴史や文化があ
り、蒲松齢などの著名人の故郷でもあります。
 「炊煙」という言葉は、シ博のバーベキュー人気の特徴を示しています。
 「世界中の食べ物や飲み物は、実際は家の炊煙の立つかまどでつくった一椀の食
べ物そのものである」。これは、私たちが「炊煙」と呼んでいるのが単なる食べる
ことではなく、人々がコミュニケーションを通じてリラックスして、自由に語り合
い、人生を味わうということなのです。
 汪曾祺が「風習は民族がつくり上げた人生の抒情詩だと思う」と述べたように、
シ博バーベキューは中国人がホスピタリティーをもってつくり上げた人生の抒情詩
であり、人々の心を癒してくれるのです。

中新社記者:中国のスマートフォンアプリがドイツのある都市をネットで有名なス
ポットに変えたという話を伝える英語メディアの報道がありました。劉先生、中国
のポップカルチャーは世界に広まっていると思いますか。

劉江紅:現在、ショートビデオやその他の新しいメディアを通じて世界に広がって
いる中国のポップカルチャーは、大きく5つのカテゴリーに分類することができます。
 1つ目は、日常的な文化エンターテインメントです。現在、海外の人々は、万里
の長城やパンダなどの典型的なイメージや、中国人の日常生活における麻雀や武術
などを通して、中国について多くのことを知っています。
 2つ目は、映画、テレビ、文学作品です。例えば、劉慈欣に代表されるSF作家の
作品は多くの海外の文学愛好家に愛されています。
 3つ目は、「中国風」の文化クリエーティブです。例えば、今話題の「馬面裙」
(馬面プリーツスカートとも呼ばれ、漢服の一種)やその他日常生活に組み込まれ
た文化的クリエーティブ製品が数多くあります。
 4つ目は、インターネットから生まれた文化的コンテンツです。中国の伝統文化
に根差したゲーム「原神」は150カ国以上でリリースされ、海外でも大人気です。
 5つ目は、インターネット文化です。例えば、無形文化遺産であやとりのように
形が変わるペーパーフラワー「紙翻花」は、海外ブロガーによるラップのアフレコ
を通じて、海外のソーシャルメディア(SNS)で人気を博しています。

中新社記者:スケートボードからキャンプ、カフェからアート地区に至るまで、若
者の活動やコミュニティーは中国の都市における美しい観光スポットとなり、都市
の活力の源となっています。お二人は、最近の中国の都市における若者の特徴は何
だと思いますか。近年の中国都市における若者文化の新たな傾向と変化は何でしょ
うか。

パリドン:中国における都市若者文化の発展と変化については、実は中国全体の成
長物語だと考えています。経済発展によって中間所得層が増加し日常生活が満たさ
れると、人々は自分だけのニーズに注目するようになったのです。
 若者文化の発展は、その国の成長を反映するものです。このプロセスにおける画
期的な出来事は、「中国スタイル」の出現です。「中国スタイル」とは、中国が対
外的なグローバルブランド重視から対内的なブランド重視へとシフトしたことを意
味します。

劉江紅:実際、中国の若者は個性的な文化をより追求し、革新的な意識も持ってい
ます。
 中国のこの世代の都市部の若者には、「好奇心」、「開放性」、「協調性」とい
う3つの特徴があります。
 このうち「好奇心」とは、若者がいつでもどこでもさまざまな方法で学び、世界
中に対して好奇心や探求心に満ちていることを意味します。
 「開放性」とは、中国の対外的開放が進むにつれて、都市の若者たちが中国と外
国の文化を融合させながら、徐々に独自の思考体系を形成していることを意味します。
 「協調性」とは、チームワークを通じてプロジェクトを推進しようとする若者の
意欲をあらわします。
 このような特徴から、都市部の若者の「趣縁」に基づく消費の傾向はますます顕
著になってきています。つまり、若者はほかでもなく何かへの興味から消費し、社
会活動に参加しているのです。

中新社記者:パリドンさん、海外の若者がエアゾールアートなどを通じて自己表現
し、都市文化に参加することを好むとしたら、中国の若者はどのようにして独自の
コミュニティーや文化を築いていると思いますか。欧米の若者との共通点や相違点
は何ですか。

パリドン:2022年、中国の若者特にZ世代は、屋外に出て自然を楽しみ、新鮮な空
気を吸うファッションスタイルを追求する「アウトドアスタイル」に注目しました。
 2023年には、「アウトドアスタイル」とスポーティーな雰囲気を組み合わせたア
ーバンスタイルが流行しています。これは、自然やアウトドアを身近に感じたいと
いうニーズや、劉先生が挙げた若者の新たな興味と密接に関係しています。
 さらに、ここ数カ月、ソーシャルメディア(SNS)上では「搭子(〇〇友)」と
いう興味深い現象が起きています。これは、一緒に旅行したり、食事をしたり、噂
話をしたり、麻雀をしたりする相手「搭子(〇〇友)」をネット上で探すことを指
しています。これも人とつながるための一つの試みであり、中国の若者がトレンド
を追いかけて、自分たちの文化を築くための手段だと思います。
 都市文化の構築という観点から見ると、ヨーロッパと中国の状況は似ています。
若者はソーシャルメディア(SNS)を通じて新しい文化トレンドを築いていますが、
中国の都市文化はより革新的で若々しいです。

中新社記者:パリドンさんは、外国人の友人がたくさんいらっしゃいますが、外国
人の若者は中国の都市で生活することをどのように感じているのでしょうか。彼ら
は中国の都市の文化的発展についてどう考えているでしょうか。

パリドン:中国に住む外国人として、私たちが最初に適応しなければならないのは、
中国のスピード感です。中国は速過ぎます。ヨーロッパで3カ月かかることが、中
国では3日でやり遂げます。
 例えば、毎日自転車に乗って通勤していると、明らかな変化を感じます。友人の
多くも私と同じような感覚を持っています。北京を例に挙げると、私たちは毎日、
自転車や徒歩などで歴史の流れの中を通り抜けることができるのです。
 ときどき、私は立ちどまって、ここは本当にすばらしい場所と思わずにいられま
せん。それは全てのものが進化し、変化しているからです。ファッション、グルメ、
言語、「シ博現象」、そしてインターネット上で爆発的に広がっているあらゆるこ
とが、ここでの生活をとてもエキサイティングなものにしているのです。そんな生
活を望まない人はいないでしょう。私はここでの生活が大好きですし、友人たちも
同じです。

中新社記者:都市文化の構築はトレンドだけでなく、都市の歴史や遺産を広めるこ
とにもつながります。都市文化の構築を通じて外国人の若者に中国の伝統文化を味
わってもらい、愛してもらうにはどうすればいいでしょうか。

劉江紅:中国の伝統文化は創造的に変容し、革新的に発展しなければならないとい
う二つの点が重要なポイントです。
 創造的な変容とは、都市を「トレンディー」で若者に人気のあるものにすること
です。例えば、多くの都市では現在、都市型コンサートや工業団地のリノベーショ
ンが行われており、若者たちの社交や憩いの場となっています。
 革新的な開発とは、都市を「クール」にすることです。これはデジタル技術を使
えば実現できると思います。若者の間で博物館「萌え」が新たなトレンドとなって
います。多くの博物館が「オンライン・ミュージアム」を開設しており、これも外
国人の若者が中国の伝統文化に親しむのに役立っています。

パリドン:都市建設は、作り物ではなく、本物で自然だと感じられるようでなけれ
ばなりません。本物の自然を保ち、訪問しやすいようにすることが最優先事項です。
都市建設は成功を急ぐべきではなく、綿密に計画を立てる必要があります。
〔中国新聞網2023年7月28日〕

●西洋から東洋へ、文化的魅力をどう感じて「理解」するか
 デンマークのコペンハーゲン大学北欧アジア研究所(NIAS)の上級研究員である
易徳波(ヴィベケ・ボルダール)博士は、20歳からパリ大学で中国文学を学んだ中
国学者であり、数十年にわたって北欧諸国と中国の文化交流を積極的に推進してきた。
 80歳近い高齢のボルタール博士は、中国文化の研究、調査、普及のためにデンマ
ークと中国の間を幾度となく行き来し、揚州評話などの民俗口承芸術に特に関心を
示してきた。
 博士がどのようにして遠い東洋の文化とつながったのか。東洋と西洋の文学と芸
術の表現と継承についてどう考えているのか。異文化は本当の意味で相互に「理
解」できるのか。
 中新社の「東西問」は先ごろ、ボルタール博士への独占インタビューを行い、経
験や考えについて詳しく聞いた。
 インタビューの概要は以下のとおり。

中新社記者:ボルタール博士が中国文化に興味を持ち始めたのはいつごろで、最初
のきっかけは何でしたか。中国語名「易徳波」にはどのような意味がありますか。

ボルタール:コペンハーゲンとパリで中国語を学び始めました。言語、主に古代ギ
リシャ語とラテン語に強い関心を持っていましたが、1964年、パリ滞在中にソルボ
ンヌ大学で中国語を教えていることを知りました。この全くなじみのない言語と文
字体系は、その長い歴史と現代世界で広く使用されていることから、すぐに気持ち
が揺れました。その後、母国デンマークのコペンハーゲン大学でも中国語が教えら
れ始めました。そこで、コペンハーゲンで中国語の勉強を始めて、2年後にはパリ
に渡り、そこで勉強を続けました。
 幼少期から青年期にかけて、特に中国文化に興味があったわけではありませんが、
特別な家庭で育ちました。父は探検家で、1947年から1949年にかけてアフガニスタ
ンを旅しました。それ以来、我が家にはいつも来客があり、その中にはアジアに強
い関心を持つ学者がいて、いつもアジアについて議論していました。そのため、中
国語を学ぶという考えはいわば自然に私の中に入ってきました。
 「易徳波」という中国名は、コペンハーゲンで最初に中国語を習った先生がつけ
てくれました。先生はもともと道教の信者でした。私の父の名前であるエーデルベ
ルクの発音から「Yi Debo(易徳波)」という名前をつくりました。この音節には
「徳波」(美徳に富む)という意味もあり、私に幸運が訪れるようにとの願いが込
められています。

中新社記者:中国には何度も行かれていますが、揚州に特に興味を持ち、揚州方言
を話せるようになったのはなぜですか。異なる地域の中国人にとって方言は難しい
のですが、学習で苦労されたことはありますか。

ボルタール:私は中国語を勉強し始めたときから中国の方言に興味があり、揚州方
言に関する論文で修士号(1968年)を取得しました。パリ留学中(1967―68年)、
私はパリで揚州出身の人々が多く住む地区の中国人移民と出会い、この研究に多く
の情報を提供してもらいました。当時、揚州方言の発音は大分理解していましたが、
完全に揚州方言で話すことはできず、北京語と自分の知っている限られた揚州方言
で表現することしかできませんでした。
 それから何年も経った1986年から中国式講談の揚州説書(揚州評話)の研究を始
めました。この研究に取り組んだのは、既に揚州方言の経験があったからです。そ
れから30年間、私は主に揚州評話の研究に没頭しました。ノルウェーの自宅にいる
ときは、昼夜を問わず、テープを聞きながら必死に勉強しました。揚州を訪れたと
きは、毎日公演を見ました。
 しかし、私にとって揚州方言は決して理解しやすい言語ではありませんでした。
揚州評話をテープレコーダーに録音して、何度も聞いてはまねをし、毎日聞き続け
ました。それらの公演をいろいろと分析しました。しかしこれは、私に語学の特別
な才能があったからではなく、むしろ努力の成果だったのです。

中新社記者:方言はその国の伝統文化を研究する上でどのような位置づけにあると
思いますか。揚州方言を例にとって、その文化的価値を分析していただけますか。

ボルタール:私は、その国の方言は言語現象の宝庫だと考えています。標準語のよ
うなその国の一般的な言語しか知らなければ、これらの現象はよくわからないでし
ょう。それぞれの方言は、それが話される場所の文化の担い手です。方言の発音も、
各地域の口承芸術の真の背景を伝える上で非常に重要です。
 揚州評話には、非常に特殊な高低の言語レベルの特徴があります。これらの特徴
は、方言で演じられるときに初めて発揮されます。これについては多くの記事や本
で触れてきました。

中新社記者:芸術としての揚州評話の独特の特徴は何でしょうか。このような古い
歴史を持つ芸術形式が今日まで生き残っている理由は何でしょうか。

ボルタール:口承芸術の存続と消滅については、誰も答えられないと思います。し
かし、私の印象では、400年以上もの間、揚州評話は非常に重要かつ社会現象を統
合した産物でした。
 演者は公演や伝承に誇りを持ち、先祖の芸をとても大切にしています。観客もま
た芸の存続に重要な役割を果たしています。1930年代には揚州には20以上の「書
場」があり、毎日公演が行われていました。このような伝統があるのは揚州市だけ
でなく、南北の大運河沿いの広大な地域でも揚州評話が定期的に上演されていまし
た。このような背景から、私たちはこの芸術の存続と伝承を見なければなりません。

中新社記者:長年の研究の中で、先生を引きつける中国の伝統文化の最も魅力的な
点は何ですか。中国の伝統文化が世界に広がっていることをどう思いますか。中国
文化というと、外国人の中には、チャイナドレス、赤いランタン、十二支、京劇の
隈取りなど、象徴的なイメージを持つ人が多くいます。東洋と西洋の文化はお互い
に真の「理解」ができると思いますか。

ボルタール:個人的に、私にとって中国文化の最も興味深く魅力的な部分は、明清
代の小説と説書(評話)の伝統です。小説という卓上の書物と演者の口承による演
目は密接に結びついていますが、影響の方向は複雑で、一方向ではありません。
 私の研究活動は主に「水滸伝」と「金瓶梅」の2冊の小説と揚州評話の特に王少
堂派の「水滸」に焦点を当てており、1992年から2013年にかけて、このテーマに関
する中国語と英語の論文を数多く発表しました。2010年から2020年にかけて、「金
瓶梅詞話」のデンマーク語翻訳に多くの時間を費やしました。私の研究はこれらの
中国文化に焦点を当てているため、当然のことながら特別な愛情と敬意を抱いてい
ます。
 私が中国語の勉強を始めたのは1964年です。当時、中国学は主に中国の哲学、歴
史、言語学を学ぶもので、言語学と文学がカリキュラムの主軸でした。半世紀以上
が経過した現在、中国語の大学教育は世界規模で大きな変化を遂げています。言語
学と文学の割合は大幅に減少し、社会学とビジネス関連の研究がほぼ独占していま
す。これは非常に残念な現象だと思います。中国の人文学的研究が軽視されている
と考えています。
 中国の伝統文化の普及は、それに値するほどの注目を集めてきませんでした。記
者が言及した幾つかの象徴的なラベルを通じて中国の社会と文化をマーケティング
する傾向は余りにも単純過ぎます。古代であれ現代であれ、それらは中国文化の豊
かさを反映していないのです。
 私は、東洋文化と西洋文化の人々は真に理解し合えると強く信じています。これ
は教育と自由な思想の問題です。
〔中国新聞網2023年8月25日〕
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(83号以降 2000/9/25―) http://www.bizchina.jp/ja/nweek/
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編集長:李年古/副編集長:前野貴子 特別協力:劉莉生
翻訳:竹内はる菜 澤田裕子 楊桃 村井好子
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