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電子マガジン・中国最新情報
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教育・文化ウオッチ@中国最新情報 No.797 2023年6月5週号
発行:《中国最新情報》編集部 http://www.bizchina.jp/
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━【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏【特集:伝統から離れていく中国の若者】
●中国の若者のホットな話題 絶縁
●TikTokで若者たちは一味違った図書館に夢中

┏【国際】
●中国と中央アジアの協力関係の特徴とは
●「人間の苦悩」から「人間の価値」まで、なぜ「人世間」は中国人を感動させたのか

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……【特集:伝統から離れていく中国の若者】………………………………………
●中国の若者のホットな話題 絶縁
 学者による解釈では、「絶縁」とは主に2親等以内の親戚とのコミュニケーショ
ンや往来を怠り、おろそかにし軽蔑する一種の現象である。簡単に言うと、親戚と
の往来を放棄することであり、親戚関係の断絶を正式に表明することではない。
 「南方都市報」の評論によると、絶縁現象の背後にある若者による「家庭」の放
棄を懸念するより、むしろ、この世代の若者の自己意識の奮起、現代の人間関係の
一種の新たな観察であると見た方がよいとしている。

 南京大学社会学院の胡小武副教授は2022年に発表した論文「青年の「絶縁」 な
ぜ発生したか、どのような態度をとるか」において、年齢の低い中国人ほど親戚と
の連絡が少なくなっており、特に90後と00後の世代によく見られる。絶縁は既に一
種の社会常態となっており、インターネットと都市化の発展に伴い、この傾向は依
然として強くなっていると指摘している。

 「三聯生活周刊」もマイクロブログ上でアンケートを行った。若者の親戚つき合
い離れをどう見るかとの質問に対し、29日午後までに投票に参加した11.6万のユー
ザー中、5万人が「賛成、親戚の中にはつき合う価値のない人も確かにいる」を選
択し、5.7万人が「正常、つき合いが少なければ自然とどんな感情もなくなる」を
選択した。
 その他2万人は「本当の身内は関係維持に懸命になる必要はない」を選択し、そ
して「やはり親戚つき合いはした方がよい、親戚は多ければ多いほど頼ることがで
きる」を選択したのは3924人であり、3%を占めるのみとなった。

 鳳凰網評論は5月29日、「若者はなぜ絶縁を始めたのか」とのテーマで評論文を
発表し、1時間以内に290万回の閲覧を引きつけた。
 親戚関係の中でネットユーザーから大きな批判があったのは、長らく会わなかっ
た後の「気まずい会話」に加え、別の主要原因として、親戚の間での境界感のない
行為があることである。若者たちは誰に従えばよいのかわからず、これにより逃避
が発生し、ひいては嫌悪感をもたらしている。

 しかし、より多くの人たちは、口では「絶縁」をわめき、不満は絶えないが、行
動は逆に誠実でもある。現実としては、毎年の春節大移動はやはりチケットが手配
困難になっている。離れた場所で苦労して1年働いた後、故郷に帰って両親ととも
に食事をすることは、絶対的大多数の中国人が内心で強烈に求めているものであり、
「家族愛」は依然として多くの人々の心の中の最も柔らかい場所である。
〔察客2023年5月29日 〕

●TikTokで若者たちは一味違った図書館に夢中
 アメリカでは、図書館が若者の新たな注目を集めている。
 アメリカのメディア報道によると、TikTokのコンテンツの影響で、図書館は以前
のような静かでちょっと退屈な場所ではなくなっている。
 「私たちは既に21世紀の図書館に発展していることを皆さんに知っていただきた
い」アメリカ・シンシナティ・ハミルトン郡図書館の係員ポール・ウェリントンさ
んは言う。
 ウェリントンさんの言う変化とは、図書館をTikTokへ「移転」させたことだ。

 TikTok上では、「LibraryTok」という新たなテーマがあり、世界各地の図書館係
員が動画撮影をしたり、図書館の読み物やおもしろいことを展示したりしている。
現時点までに、LibraryTok関連のテーマの再生回数は既に800億回近くとなっている。
 しかし、2022年6月にTikTokにアップされてから1年足らずの間に、ミルウォーキ
ー図書館は約10万のフォロワーと350万の「いいね」を有している。
 創立初期、図書館は一連のユーモラスな「妄想」動画をアップしていた。例えば、
「管理員はどのようにして読者の嗜好を観察しているか」、「休暇閉館の前に図書
館へラストスパートする私」など、図書館には実はすばらしく興味深い物語が意外
とあるということに驚いた人は少なくない。
 「私が回収される本だったら」の動画には50数万人が「いいね」した。ある人は
「本を投げ入れた後のドスンという音が一番おもしろい」と深く同感し、また、あ
る人は「まさか図書館のアカウントだとは思わなかった、好き!」と評価し、舞台
裏の編集者の給料を上げるべきだと主張するユーザーもいる。
 ミルウォーキー図書館は145年の歴史があり、TikTokフォロワーの約半数は地元
民である。
〔参考消息網2023年5月25日〕
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……【国際】………………………………………………………………………………
●中国と中央アジアの協力関係の特徴とは
 中国陝西省西安市での中国・中央アジア首脳会議の開催は、中国と中央アジア地
域が相互関係を非常に重要視していることをあらわしているだけでなく、地域協力
が大きく発展する傾向にあることを示している。

〈中央アジア地域との協力がなぜ大きく発展しているのか〉
 数年来、この100年で経験したことのない変局の加速化、新型コロナの流行の長
期化やウクライナ危機等の出来事が、ユーラシア地域の安定に多大なる影響を及ぼ
している。
 ユーラシア大陸の内陸に位置する中央アジア5カ国は、似通った地理的条件と開
発ニーズを有している。衝突を減らし、地域の平和と安定を維持するだけでなく、
地域全体の発展と繁栄を促進するために相互協力を強化する必要がある。目標やニ
ーズの相似性が、中央アジアにおける協力の継続的発展にとって最も重要な原動力
になっている。
 2018年に第1回中国・中央アジア首脳会議が開催され、これまで4回開催された。
中国・中央アジア首脳会議の仕組みが基本的に形成され、中央アジア地域協力の中
核となっている。
 中央アジア5カ国との協力関係と同時に進展したのは、中央アジア問題への関与
の高まりと「中央アジア5カ国+X」の協力関係の発展である。中央アジア地域は、
広大な国土、一部地域での資源の優位性、重要な交通網を持つことから、その重要
性が増している。また、ウクライナ危機を契機に、中央アジア地域の安定は近隣諸
国にとって特に重要であり、多くの国が中央アジア地域協力に積極的に参加する重
要な理由となっている。このことは、中央アジア地域協力により多くの公共財を提
供し、中央アジア地域協力を繁栄させる重要な原動力となっている。

〈中国と中央アジアの協力関係の特徴とは〉
 他国に比べて、「中国と中央アジア5カ国」の枠組みにおける協力関係には、以
下のような特徴がある。

 一つ目は、相互尊重と運命共同体。
 中央アジアは中国の隣接地域であり、中国と中央アジア5カ国はテロ対策や国境
警備などの問題で共通の目標を持っている。中国と中央アジア諸国は、パートナー
シップの確立に基づいて、互いを尊重し、互いの発展路線及び発展モデルを支持し
ている。地域的及び国際的な重要問題についても協力し、互いの地域協力の取り組
みを支援している。習近平国家主席は2013年のカザフスタン訪問時に「シルクロー
ド経済ベルト」(一帯)共同構築構想を提案し、中央アジア諸国から好意的な反応
を得た。
 中国と中央アジア諸国はともに発展途上国である。その規模や直面する問題の違
いはあっても、地域の平和を維持し、国家の発展を促進することは各国の共通の目
標である。したがって、人類運命共同体という概念を全ての国が認識するとともに、
相互尊重、平等、相互利益を基礎として、中国と中央アジアが手を携えてより緊密
な運命共同体を構築することは、中国と中央アジアの善隣友好協力を正確に位置づ
けるだけでなく、全ての国が支持する発展目標でもある。

 二つ目は、確かな基礎と一歩一歩の積み重ね。
 中国と中央アジア諸国の協力はソビエト連邦崩壊後に始まった。当初は国境問題
の交渉を通じて相互理解と信頼の基盤を築き、徐々に「上海ファイブ」が構築され、
2001年の上海協力機構(SCO)へと発展した。上海協力機構の枠組みの下で、中国
と中央アジア諸国との協力は急速に発展している。
 2013年に中国は「一帯一路」構想を提唱し、これにより中国と中央アジア諸国と
の協力関係がさらに促進された。2022年には、中国と中央アジア5カ国の外交関係
樹立30周年を記念してオンラインによる首脳会議が開催され、中国と中央アジア諸
国の国家元首が初めて一堂に会した。2023年に開催される中国・中央アジア首脳会
議では、中国・中央アジア首脳会議の枠組みが正式に確立され、中国と中央アジア
5カ国の将来の協力の青写真が描かれることになる。
 以上の経緯から、中国と中央アジア諸国との協力は強固な基盤に基づいており、
一つの枠組みが熟した後に、新たな協力が推進されることになる。オンラインによ
る首脳会議から1年後というタイムリーな時期に首脳会議を開催することも、段階
的かつ継続的な発展の当然の結果である。

 三つ目は、包括的な協力とレベルごとの完全性。
 中国と中央アジア諸国の協力は、国境警備を維持するための共同努力から始まり、
その後、三悪(テロリズム、分離主義、宗教上の急進主義)に対抗するための協力
など、非伝統的安全保障分野でも積極的な進展を遂げている。経済発展と共同繁栄
は中国と中央アジア諸国にとって共通したニーズであり、双方は貿易、金融、イン
フラ、通信ネットワークなどの分野で協力レベルを高めるとともに、デジタル経済
や電子商取引などの新分野でも協力している。内陸に位置し、一部資源の不足して
いる中央アジア諸国にとって、水資源、砂漠化防止、グリーントランスフォーメー
ションなどの分野での中国との協力は、長期的視野に立った地域の持続可能な発展
の促進につながる。中国と中央アジア諸国は常に協力分野の拡大に前向きな姿勢を
持ち、実践的な協力のための新たなテーマを追加しながら、時代の変化と相互発展
のニーズに適応してきた。
 2020年7月、中国と中央アジア5カ国はオンラインによる初の外相会議を開催し、
定例外相会議の枠組みの構築が全会一致で決定された。2021年の第2回同外相会議
では、各国が外務次官によるコンタクトグループの設置や定期的な専門家対話など
の関連する枠組みの構築を推進することを決定した。2022年1月に中国と中央アジ
ア5カ国との外交関係樹立30周年を迎えた後、オンラインによる首脳会議が開催さ
れた。枠組みづくりを推進することが各国の間で明確に合意され、同年6月の第3回
中国・中央アジア外相会議では首脳会談の枠組みづくりがさらに進展した。2023年
4月、第1回中国・中央アジア5カ国経済貿易大臣会議及び第1回同税関局長会議が開
催され、第4回同外相会議も開催された。
 中国と中央アジア諸国は、あらゆるレベル、あらゆる分野における包括的な協力
の枠組みを確立しただけでなく、第1回中国・中央アジア首脳会議に向けた強固な
基盤を築いた。

 四つ目は、幅広い余地と柔軟性。
 中国と中央アジア諸国が協力できる範囲は非常に広い。一方では、中国の継続的
な発展と他国との多分野協力関係は、自国の発展ニーズを満たすだけでなく、他国
の発展ニーズにも応えるものである。分野やテーマの拡大は、より深く、より実践
的な国家間の協力関係を促進することに資する。また一方では、中国は引き続き
「一帯一路」構想などの協力プログラムの実施を推進し、ロシア、ASEAN諸国や中
東諸国との良好な協力関係を維持しており、中国と中央アジア5カ国との協力拡大
に幅広い余地を提供するものである。中国との協力を基礎に、中央アジア諸国は
「一帯一路」構想や上海協力機構(SCO)枠組みの中で、他の国や地域との関係を
発展させるだけでなく、三者協力の展開など、協力形態のさらなる充実や協力規模
の拡大を図ることができる。

〈中国と中央アジアとの協力の未来図とは〉
 2022年1月、中国と中央アジア5カ国の外交関係樹立30周年を記念したオンライン
による首脳会議において、中国と中央アジア5カ国の首脳が初めて会談を行った。
さらに、今回の中国・中央アジア首脳会議は、中国と中央アジア地域の協力を推進
する上で重要なマイルストーンとなった。
 今回の首脳会議の開催地が古都西安であることは、古代シルクロードの文明交流
の精神を受け継ぐだけでなく、中国と中央アジアの協力の新時代の幕開けとなる。
中国・中央アジア首脳会議は、外交関係を結んでから31年の中で、6カ国の首脳が
対面での首脳会議を開催するのは初めてであり、中国にとっても今年初めての多国
間大型外交イベントである。積極的なデモンストレーション効果を期待できるもの
である。

 中国と中央アジア諸国は互いに尊重し合い、人類運命共同体という概念を共有し
ている。過去30年余りの協力関係において、双方は基礎を強化し、段階的に協力分
野を前進、拡大させ続けてきた。国家指導者や閣僚会議のレベルで包括的な協力の
枠組みを確立し、多国間の枠組みの下で協力範囲を拡大してきた。
 中国と中央アジア諸国は、地域の安定と平和の重要な価値を互いに深く理解し、
良好な協力関係を大切にして維持するために努力している。この百年で経験したこ
とのない変局の加速化を背景に、中国と中央アジア諸国の協力関係は安定の錨とな
り、地域の発展に積極的に貢献し、洋々たる前途をもたらす。
(執筆者 顧〓(ひへんに「韋」) 中国上海社会科学院国際問題研究所副研究員)
〔中国新聞網2023年5月18日〕

●「人間の苦悩」から「人間の価値」まで、なぜ「人世間」は中国人を感動させたのか
 茅盾文学賞受賞作品を脚色したテレビドラマ「人世間」(A Lifelong Journey)
は、2022年1月末から中国中央電視台(CCTV)で放送され、8年ぶりに最高視聴率を
更新した。ドラマのヒットにより原作も注目を浴びている。

 小説「人世間」(全3巻)は、中国の作家梁暁声が8年の歳月をかけて書き上げた
もので、新中国建国以後の東北地方の庶民の生活の軌跡を115万字でつづり、時代
と家族と国の関係を反映させながら、無名の人々の人生の浮き沈みの中で中国人の
「心情」や「希望」を語っている。
 「人世間」の著者梁暁声氏が中新社の独占インタビューに応じ、「人間の苦悩」
から「人間の価値」まで、なぜ「人世間」は中国人の心を動かしたのかについて語
ってくれた。

インタビューの内容は以下のとおり

中新社記者:「人世間」がこれほど注目され熱狂的に受け入れられると思いましたか。

梁暁声:思いませんでした。小説を書いたとき、テレビドラマになる日が来るとは
思ってもいませんでした。長い間、このような内容の作品は、テレビでも映画でも
めったになかったので、視聴者に受け入れられるかどうか確信はありませんでした。
結果的には評判がよかったので、「人世間」という作品を気に入ってもらえたこと
は、とてもうれしくてほっとしています。

中新社記者:「人世間」の中で、どの登場人物が好きでしたか。理由は?

梁暁声:私が自分で登場人物一人一人に名前、性格そしてストーリーを授けたので、
どの人物も好きです。でも一番好きな人物を選べと言われたら、周三兄妹でしょうね。
 周秉坤の友情に厚く義理堅いところが好きです。黒竜江省の北大荒での私の知識
青年時代のように、友情を大切にする性格の持ち主です。これが友人のあるべき姿
だと思います。
 秉義の人物像が好きなんです。秉義は、実は、さまざまな文学の影響を受けた人
間味あふれた80年代の新しい知識人であり、現在大学に入学してくる知識人とは全
く違います。豊かな文化的素養によって、物事を大局的に考えることができるキャ
ラクターです。
 周蓉は女性として自立しているところと国家の命運を案じるところも好きです。

中新社記者:先生の多くの作品が脚色されて映像化されています。「年輪」から
「人世間」まで中国社会と人情の機微を描いた著作が読者から高い評価を得ている
理由は何でしょうか。30年前と現在の視聴者の違いは何でしょうか。

梁暁声:これには3つの側面が含まれています。
 まず、原作と映像化の関係です。個人的には、テレビドラマ自体は、原作を尊重
した上で大きく再創作されているので、原作とは別の作品として見てほしいと思っ
ています。原作の内容をさまざまな素材に分解して、それらの素材を新たに織り込
んで独立した作品に仕上げているのです。
 小説の創作は、テレビドラマづくりに比べてゆとりがあります。「人世間」この
作品については、もっと詳しく書いて、4巻本にしてもよかったと思っています。
しかし、テレビドラマのエピソード数には制限があります。
 御指摘の視聴者の変化についてですが、たくさんの若者たちが追っかけて視聴し
てくれるとは本当に思いませんでした。小説が出版されたとき、編集者に「この作
品を読んでくれる人はいるだろうか」と何度も尋ねました。年齢を重ねて、多くの
ことを経験したせいか、逆にかえって余りにも保守的になったのかもしれません。

 「人世間」のヒットは、今の中国で時代の変化を描いた作品が求められているこ
とを実証しています。これほど多くの若い視聴者や読者がこの作品を見てくれるこ
とは、「文化への自信」において目覚ましい進歩を遂げていることを証明していま
す。年齢を問わず、冷静に時代の変化に向き合える、このような「文化への自信」
を持ちたいものです。

中新社記者:先生の作品に登場する人物は、かつて先生が知識青年時代に経験され
たことを思い起こさせますね。これらの登場人物と先生の人生は、何らかの形で交
差しているのでしょうか。御自身の青春時代はなつかしいですか。

梁暁声:まず強調しておきたいのは、作品はフィクションだということです。
 当然原作の中で、私の経験と重なる部分はあります。例えば、周秉坤の知識青年
の生活と私の人生が重なっている部分があります。父も「大三線建設」(1960から
1970年代の工業体制建設)に参加し、弟は醤油工場で働いたことを含めて、創作の
源になっています。
 知識青年時代を描いた作品は、現実主義の創作です。これは、失われた歴史を取
り戻すためのものです。なつかしさというより一種の回想です。

中新社記者:「人世間」は、人間の苦悩を感じさせると同時に人間の価値も感じさ
せます。苦難と生活の関係についてどのように考えますか。苦難の後に楽な生活が
やってくることを信じますか。

梁暁声:著作という意味では、ほぼ二千数百万字書いてきましたが、「苦難」の2
字についてはほとんど使いませんし、この2つの文字の使い方については非常に慎
重になっています。
 「人世間」この作品では、苦難がずっと生活の中につきまとっていると考えます。
例えば、〓冬梅の家族も馬守常と彼の妻の曲秀貞も苦難を経験しました。1980年代
以降、彼らの家族は次第に苦難を脱していきました。しかし、リストラや転職等の
問題に伴ってこの長屋住まいの人々に苦難は再び訪れ、生存にかかわる大きな問題
となっていきます。時を経て、この長屋住まいの大多数の人々は、自分なりの方法
で苦難を抜け出したのです。
 私はよく苦難を経験したことのない民族や国はあるのだろうかと考えます。人類
の歴史を300年ごとに切り取って観察してみると、そこには全て困難、戦争や災害
が伴っています。文明と進歩の程度の違いにより、ある時期には富が少数の人々に
集中していたと考えられます。それで「朱門には酒肉臭れるに、路には凍死の骨あ
り」という詩が詠まれたのでしょう。
 しかし、再び歴史を結びつけて対比してみると、人類社会は、確かに進歩してい
ます。したがって、「困難の後に楽な生活がやってくる」というのは民族や国家が
すばらしい生活の未来図に思いをはせることと合致しています。これも私が最初に
本を書き、そして監督がそれをテレビドラマにしたいと考えた理由です。
 先ほど触れた作品中の苦難は、現代生活との対比です。対比がなければ、今日の
中国の発展がもたらした変化について人々は無関心でしょう。このようにリアリズ
ム風の文学を通じて、過去の一部が再現されると、私たちは過去のことをより深く
理解することができます。誰の人生もそうであるように、その浮き沈みの中に希望
が満ちているのです。

中新社記者:「人世間」には、時代の大きな変化の中での中国の普通の家庭の生活
史が描かれています。「家国文化」(家族は国の基盤である)は一人一人の血に流
れていると感じています。海外の華僑や華人はこのドラマの中に自分の家族の姿を
見ることができます。東洋と西洋、世代によって、「核家族」と「大家族」の認識
の違いがあると考える人もいます。これについてはどのように考えますか。

梁暁声:家族と国の関係については、個人的には世界中どこも同じだと思いますし、
このような関係を強調しているのは中国だけではありません。いわゆる、「国がな
ければ家族も存在しない」「ひっくり返った巣の下には無傷の卵はない」というこ
とです。
 しかし、中国文化は、家族と国の関係について比較的はっきり述べられているの
は確かです。これは家族と国の関係について考えている偉大な賢人たちによるもの
です。このような「家国文化」は私たちだけのもののように思えますが、実は全世
界にも当てはまるものです。
 同様に、西洋でも、英国のオスカー・ワイルドやギリシャのソクラテス、プラト
ン、アリストテレスの「哲学の三賢人」までもが、家族と国の関係を語った論考が
多くあります。

中新社記者:先生の考えでは、「家国文化」は共通しているとのことですが、中国
と西洋の文化には多くの違いがあります。文化の違いをどのように理解しています
か。また、文化の交流や融合をどのように促進すべきでしょうか。

梁暁声:西洋文化における文学の創作は、当初個人を研究することから始まり、心
理学的観点から個人が直面する現実的な心理活動を分析しました。例えば、ギリシ
ャ神話のメディア、新約聖書の中のサロメ、後にシェイクスピアによって書かれた
「ハムレット」も全て人間の内面を研究しているのです。
 一方、中国文化の影響下にある文学作品は、かなりの期間、道徳的範疇から人物
を描いてきました。作品の多くは人と人の関係、人と社会の関係などの関係性を描
写しています。これは、中国と西洋の文化の影響下における初期の文学作品の最大
の違いです。
 この点からも、文化の融合は簡単なことではないことがわかります。難しいけれ
ど、おのずと起こります。中国と西洋の文化が融合するとき、「文化への自信」が
重要だと考えています。なぜなら、文化は実は自国の中で民族の時代に合わせた発
展の促進に重要な役割を果たしているからです。
 自国の文化を守りつつ、いかに互いに交流融合を実現するか、その最も中核にな
るのは、異文化の異なる声について「気にする」「気にしない」のバランスをとる
ことです。これには知恵が必要だと考えています。
注)げたは、「赤」におおざと
〔中国新聞網2022年4月24日〕
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●「ビジネス企業研修@中国」 http://www.bizchina.jp/
●バッグナンバーの入手
(83号以降 2000/9/25―) http://www.bizchina.jp/ja/nweek/
●《中国最新情報――編集者コラム》http://ameblo.jp/jckc-colum/
●ツイッター https://twitter.com/bizchina_jckc
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編集長:李年古/副編集長:前野貴子 特別協力:劉莉生
翻訳:竹内はる菜 澤田裕子 楊桃 村井好子
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