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電子マガジン・中国最新情報
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教育・文化ウオッチ@中国最新情報 No.803 2023年11月2週号
発行:《中国最新情報》編集部 http://www.bizchina.jp/
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━【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏【特集:ネットワーク時代のメディアの利用】
●がっかりさせられる親が、中国の子供に精神的なダメージを与える
●中国が人気輸入ゲームを認可

┏【国際】
●中国文明の相互学習の伝統は、現代の人権運動の発展にどのように貢献しているか
●「人類最古のインテリア工事」とは

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……【特集:ネットワーク時代のメディアの利用】…………………………………
●がっかりさせられる親が、中国の子供に精神的なダメージを与える
 ちょっと前に、SNS上にびっくりする投稿があった。
 「母親に合格通知書を盗まれた」と題する文章によると、17歳の女の子・佳佳は、
この夏休み、願いかなって中央戯劇学院の合格通知書を手に入れた。しかし、入学
手続まであと十一日のところで、彼女の合格通知書、身分証明書、戸籍簿等の重要
な証明書がなくなってしまったのだった。無断でこれらの書類を持ち去ったのは彼
女の母親で、佳佳の入学を妨害するためにしたのだった。佳佳は抵抗することにし、
彼女の入学資格と、自分自身が決める自由と人生を取り戻したいと思っている。
 この文章についているコメントには、「多くの親からは、子供の独立思想は病気
の一種だと見られている」という投稿があった。

 同じころ、別の動画にも注目が集まった。14歳の江西の女の子が夏休みに母親の
ために食事をつくったというもので、テーブルの上には料理4皿とトウモロコシと
ポークリブスープ、食後のフルーツとしてグレープフルーツも用意されていた。母
親は抖音で撮影しながら、「私はこれを褒めないといけないの?」と言って、娘が
たくさん料理をつくり過ぎたことを厳しく叱っているのだった。
 ネットユーザーの怒りの投稿がなされても、この母親は反省せず、逆にライブ配
信中に娘に質問した。「ネットで多くの人が、あなたを叱る私をたたくことを言っ
たり、私が悪いと言ったり、母親としてふさわしくないと言ったりしているが、あ
なたは私があなたのお母さんとしてふさわしくないと思っている?」

 以上2つの話に、多くの若いネットユーザーは、自分がかつてあるいは現在経験
したことがあるような、親が子供自身の選択した進路を制限するという圧迫感を感
じていたのだった。これらの話題になった親に批判が向くのは、多くの中国人にと
って他人事ではなく、中国の子供が小さいころから大人になるまでの最も共通の記
憶として持っている精神的なダメージでもある。がっかりさせられる親は、中国の
親に共通する特徴とされている。
 「親は害悪」というグループの登録者数は一次は十数万に達したされ、ここから
も中国的な親子関係の緊張感がうかがえる。

 有名な心理学者の武志紅氏は、「中国では、皇帝になる感覚を体験するのはとて
も簡単で、子供を産めばよい。殴りたいだけ殴り、叱りたいだけ叱り、搾取したい
だけ搾取し、好きにできる。そして、社会道徳、文化からも、親は子を愛している
からしたことだと言えるのである」と指摘する。〔中国慈善家2023年8月28日〕

●中国が人気輸入ゲームを認可
 中国電子ゲーム監督当局は先日、人気大作アバターやロード・オブ・ザ・リング
をもとにしたゲームを初めとする31種類の外国開発ゲームの中国市場進出を認可し
た。輸入ゲームの認可は今年2回目。
 輸入ゲームの認可を発行する国家新聞出版署は8月29日、モバイルゲーム21種類、
クライアントゲーム7種類、任天堂スイッチのゲーム2種類、モバイル・クライアン
トゲーム1種類の新たなゲーム輸入認可リストを発表した。2023年の総数は昨年を
上回った。

 テンセントと網易は中国最大の2大ビデオゲーム発行元であり、この2社のゲーム
は少なくとも1種類はリストに掲載された。テンセントには、ワンピースをもとに
したモバイルゲームが認可された。網易は「ロード・オブ・ザ・リング 戦いの幕
開け」が認可された。同ゲームは網易とワーナー・ブラザーズ・インタラクティ
ブ・エンターテインメントが2021年に海外市場で発売したものである。

 中国政府はゲーム市場に対して厳格な許可審査制度を設けている。外国ゲームは
現地化が求められ、中国で合法的に収益を上げるには中国パートナーを通じて許可
証を申請しなければならない。
 中国音像デジタル出版協会の下部組織であるゲーム出版工作委員会の報告による
と、2023年上半期、中国の電子ゲーム市場の売上高は前年同期比2.4%減の1443億元
だが、下半期には回復が見込まれる。〔和訊網2023年9月1日〕
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……【国際】………………………………………………………………………………
●中国文明の相互学習の伝統は、現代の人権運動の発展にどのように貢献しているか
 中国文明は、中国の大地で誕生した文明であり、他の文明との絶え間ない交流と
相互学習によって形成された文明でもある。古代から中国文明は、世界のさまざま
な文明との交流や対話を非常に重視してきた。
 中国文明が5000年以上にわたって続いてきた大きな理由の一つは、中国が長い歴
史的発展において、開放的で寛容であり、世界の他の文明から学び、受け入れるこ
とにたけていると同時に、自国のすぐれた文化を世界に広めてきたからである。

 中国の伝統文化に基づいて形成された相互尊重、相互信頼、相互評価、相互学習
という人権概念は、今日の中国とその国際的な人権運動の発展にとって、気づきと
参考となるものである。
 この伝統的な知恵を十分に吸収し、国際人権発展の普遍的なルールに従うことを
基礎として、中国は自国の実情に照らして、自国の国内及び国際人権運動の発展を
推進し続け、目覚ましい成果を挙げてきたのである。

 中国の伝統文化には文明間の相互学習の豊かな知恵が含まれている。この伝統的
知恵は今日の中国人権文明発展の強固な思想的基礎を築いたものであり、国際人権
運動に対する中国文明の独特な貢献なのである。
 中国の伝統文化における文明間の相互学習に関する知恵は、3つの文に要約する
ことができる。

 第一に、和して同ぜず。異なる文明が違いを留保しながらも共通点を探し、調和
して生きることができるというのは、中国の文明交流と融和の歴史的過程全体を通
して貫かれてきた文化的立場であり、数千年にわたって連綿と続いてきた中国文化
の遺伝子である。

 第二に、万物並び育いきて相害せず、道並び行われて相悖らず。この言葉は、
「万物は互いに干渉することなく同時に成長し、太陽や月の運行、四季の移り変わ
りも矛盾なく進む」という意味である。文化の分野では、文化は多様であり、その
多様性は尊重されるべきものであることを強調している。

 第三に、我に投ずる桃を以ってすれば、之に報ゆるに李を以ってす。異なる文明
との交流において、中国文化は礼儀をたっとび、恩に報いることを重んじ、寛大で
包容力がある文化である。

 著名な人類学者である費孝通氏は、上述のような中国文明間の交流と相互学習の
伝統を、「各美其美、美人之美、美美与共」(自国の文化を尊重し、他国の文化を
尊重し、文化的多様性を尊重する)と要約しており、これは文明間の相互学習とい
う中国の知恵である。

 人権は現代人類文明の中核をなすカテゴリーであり、人間の価値の主体性を守り、
人類の政治的共同体の正当性を探求する鍵である。他の文明と同様、人権文明にも
多様性と多元性がある。

 中国は長い間、人民中心の人権理念を堅持し、中国式の近代化を進める過程で、
人権保護の水準を絶えず向上させ、人間の自由で全面的な発展を促進してきた。政
治的権利を重視するだけでなく、生存権や発展権も人権運動にとって重要であると
考えており、時代の流れと我が国の国情に適合した人権発展の道を堅持してきた。

 文明間の交流と相互学習という中国の伝統と知恵に基づいて、主に4つの側面か
ら成る人民中心の核となる人権観と中国の特色ある人権理念を形成している。

 一つは相互尊重である。国際的な人権運動の発展を促進する過程において、相互
尊重が前提条件となる。
 長い歴史の中で、人類は多彩な文明を創造、発展させてきた。それぞれの国や民
族の文明は、それぞれの存在の土壌に根差したものであり、人類の並外れた知恵と
精神的探求の結晶である。強国と弱国、大国と小国の区別はなく、異なる文明は等
しい価値を持っている。文明と野蛮、先進と後進、優等と劣等の区別はなく、全て
尊重され大切にされるべきものである。
 いわゆる「各美其美」とは、自国の文化を肯定し認識しつつ、他国の文化を尊重
し寛容することである。ほかの国や民族の文明について偏狭な認識を持つのは間違
っている。したがって、傲慢や偏見、あらゆる形の文化中心主義を捨て去ることが、
文明の相互学習、共同進歩の基礎となる。

 第二に、相互信頼である。
 地理的環境、社会的発展、言語や文字、歴史的過程の違いにより、文明はそれぞ
れ異なる価値基準を持っている。そのため、異なる文明間に相違や対立があるのは
自然なことだ。文明間の相違は、生物学的多様性と同様に、世界にとって本来の姿
である。
 孔子は「己の欲せざる所は人に施すなかれ」と述べ、自分の立場に立って他人の
気持ちを思いやるべきであり、自分がしてほしくないことは、他人にもすべきでは
ないと提唱した。文明的な交流の過程において、寛容と理解を基礎に、他の文明に
対する基本的な信頼と理解を提唱した。このように矛盾や対立は対話と交渉によっ
て解決できる。
 相違点に加え、人類の文明は、真理、善、美の追求、幸福な生活へのあこがれな
ど、共通の基盤や目的も共有している。相互尊重と相互信頼は、異なる国、民族、
文明間の交流と対話の基本原則であり、国際人権運動の発展の基礎でもある。

 第三に、相互評価である。
 今日の世界には、200以上の国と地域、2500以上の民族、6000以上の言語が存在
し、それらが一体となって人類文明の華麗で色彩豊かな地図を構成している。さま
ざまな文明は、百花園のさまざまな花のように、それぞれの香りと美しさを持って
いる。
 相互尊重に基づいて、お互いを認め、寛容することを学ぶことは非常に重要であ
る。自分自身が生み出した「美」を評価するだけでなく、他者が創造した「美」、
すなわち「他者の文化」を尊重し評価しなければならない。例えば、音楽、ダンス、
ファッションといった芸術形態は、異なる文化、国、民族の人々の心に最も響きや
すい。

 他の文明を理解するためには、「文化中心主義」や「民族中心主義」を克服する
必要がある。国際人権の普遍的な原則やルールに従うだけでなく、それぞれの国が
置かれた状況によって、人権文明を構築するためのアプローチは異なる。人権文明
の多様性を理解し、それぞれの国の実情に照らして、人権運動の発展へ貢献するこ
とは極めて重要である。

 第四に、相互学習である。相互学習とは、人権文明の相互理解を通じて、相互協
力と共同発展を達成することである。
 現在、人権問題、地球規模の気候・環境問題、貧困問題、パンデミックなど、地
球規模の問題の多くは人類の協力によって解決、対処しなければならない。

 文明の相互学習とは、文化的多様性を尊重することだ。異なる文明は人類共通の
精神的財産であり、人権文明と同様に大切にされ、保護されるべきものである。お
互いから学び、教訓とすることによってのみ、国際人権運動は前進し続けることが
できる。これは古代文明の相互学習と同じ原理である。
 例えば、古代シルクロードを経て、アラブ世界のイスラム文明の天文学、暦、医
学、人文科学などが中国に伝わり、中国の四大発明や農業、養蚕、陶磁器の技術も
世界に伝わった。仏教はインドで生まれ、中国に伝わってチベット仏教や禅宗とな
り、さらに禅宗は韓国や日本に伝わった。中国で最初に使われた箸は、日本、韓国、
東南アジア等に広まり、広く受け入れられた。

 人権の概念は西洋で生まれたが、そこにはさまざまな古代文明における豊かな人
権の考え方や概念が含まれている。歴史、伝統、地理、現実などの違いにより、世
界各国における人権運動の展開も大きく異なる。成功した経験や実践を吸収し、失
敗や困難を回避し、互いに学び合うことによってのみ、私たちは国際人権運動の継
続的な発展を共同で促進することができる。

 文明間の相互学習は、人類運命共同体を構築するための人文的基盤であり、あら
ゆる国の人々の友情を高める架け橋であり、人類社会の進歩の原動力であり、世界
平和を維持する絆である。
 文明間の相互学習という伝統的な知恵に基づく中国の人権観と人権理念は、今日
の国際的な人権運動の発展にとって重要な価値がある。伝統文化の知恵を十分に吸
収した上で、中国はみずからの人権への取り組みにおいて大きな前進を遂げ、世界
の人権運動の発展に積極的な貢献をしてきたのである。(作者:蘇発祥氏)
〔中国新聞網2023年9月25日〕

●「人類最古のインテリア工事」とは
 北に周口店、南に万寿岩がある。
 北京市房山区にある周口店は、北京原人遺跡の発見で世界的に有名で、人類化石
の宝庫であり、世界文化遺産となっている。万寿岩は「南の周口店」と呼ばれてい
る。福建省三明市に位置し、現在までに中国南部で発見された最古の旧石器時代の
洞窟型遺跡である。

 万寿岩遺跡で発見された人工の石畳が「人類最古のインテリア工事」である理由
は何なのか。先ごろ、中新社の「東西問」は、福建省文化観光庁副庁長、福建省文
化財局長、福建省博物院院長で研究者の傅漆生氏に独占インタビューを行い、解説
してもらった。
 インタビューの概要は以下のとおり。

中新社記者:万寿岩遺跡とはどのような先史時代の人類文化遺跡ですか。

傅漆生:万寿岩遺跡は、三明市中心部から30キロ離れた、三明市三元区岩前鎮岩前
村にあり、現在は国の重要文化財保護単位になっています。20万年前から2万年以
上前までの前期、中期、後期旧石器時代を網羅する先史時代の洞窟遺跡で、複数の
年代の洞窟遺跡があり、出土した4つの時代の文化層は、いずれも典型的な南方の
礫岩文化の伝統に属しています。
 万寿岩遺跡は、福建省及び中国南部で発見された最古で、最も重要な先史時代の
洞窟遺跡の一つです。保存状態は良好で、はるか昔の人類の生活に関する重要な情
報が大量に含まれています。

中新社記者:万寿岩遺跡は、どのように発見され、保存されたのですか。その発見
の重要な価値とは何ですか。

傅漆生:万寿岩はもともと三明製鉄所の石灰石採掘場で、石灰石の埋蔵量が豊富な
だけでなく、品質もすぐれた露天掘りの鉱山でした。しかし、岩前村の人々にとっ
て万寿岩ははるか昔のふるさとです。万寿岩には霊峰洞と呼ばれる洞窟があり、宋
代までさかのぼれる観音堂の跡が残されています。1999年以降、後に「岩前の五
老」と呼ばれた岩前村の5人の老人が連名で、当局に万寿岩の保護を求めました。
 当時は文化財保存の意識も今ほどは浸透していませんでした。万寿岩は鉱物資源
が豊富で、現地の大企業が生産するためには、大量の鉱石を採掘する必要がありま
した。万寿岩遺跡の「開発か保存か」をめぐる論争の中で、2000年1月、当時福建
省の代理省長であった習近平国家主席は、科学的保存のために2つの重要な指示を
出しました。この決断が、万寿岩遺跡のタイムリーな救出と全体的な保護につなが
ったのです。
 国家文物局の認可を受けて、福建省博物館を中心とする共同考古学チームが1999
年から緊急考古学調査と発掘調査を開始し、万寿岩遺跡の科学的価値がまず明らか
にされることになりました。その後すぐに、関連する省・市当局は、文化財の保護
と経済発展の両方を考慮して、採掘作業を停止し、三鋼集団の生産に必要な鉱石の
移行供給を調整する一連の保護措置を講じました。
 4段階の緊急保存プログラムを作成し実施することにより、万寿岩遺跡の危険な
岩石と洪水の初期管理を可能にしました。遺跡保護計画及び遺跡公園計画の作成に
より、計画どおりに遺跡保存作業を行うことができました。遺跡保存活動の推進を
強化することにより、万寿岩遺跡の知名度と影響力を拡大させました。
 1999年から2004年にかけて3回の発掘調査が行われました。多数の石器や動物化
石が出土し、人工の石畳や排水溝などの重要な遺構が発見されました。万寿岩遺跡
は2000年度の全国十大考古学新発見に選ばれ、重要文化財保護単位に指定されまし
た。2006年には、福建省初の旧石器時代をテーマとした博物館が建設されました。

 20年以上にわたって保存プロジェクトを実施してきた結果、万寿岩遺跡では、石
畳のカビや微生物の繁殖、船帆洞の水のしみ出しやしたたり、地すべりや落石など
の安全上の問題が基本的に解消されました。万寿岩遺跡は、2017年12月に国家文物
局から第3弾国家考古遺跡公園として選ばれた福建省初の国家考古遺跡公園であり、
2021年には「百年考古百大発見遺跡保護計画プロジェクト」に選ばれました。

 万寿岩遺跡の発見と保存過程は、貴重な歴史文化遺産の保存という意味でも、そ
の典型的な模範的効果という意味でも、非常に大きな意義があるのです。
 第一に、万寿岩遺跡は、福建省の人類活動の歴史を20万年近くもさかのぼり、学
術的価値と重要な意義を持っています。船帆洞の下の文化層にある約4万年前の人
工の石畳は世界的にも珍しいです。人類が洞窟の居住環境を改造したこれまでの発
見の中では、最古の建設プロジェクトであり、人類の最古の建設例として知られて
います。ここで出土した剥片石器の制作工程と種類が台湾の長浜八仙洞遺跡で出土
されたものと似ており、福建省と台湾は同じルーツと祖先を持つ文化的な関係があ
ることが裏づけられました。
 第二に、発掘された遺跡や遺物を保管庫から出して一般公開し、訪れた全ての人
々に向け遺跡のすばらしい物語をどのように伝えるかという万寿岩遺跡の活性化利
用実践がモデルを提示しています。
 第三に、万寿岩遺跡の保存は、人々に満足感や幸福感をもたらしました。福建省
唯一の国家級遺跡公園として、長年にわたって建設された万寿岩遺跡公園は、万寿
岩遺跡の文化的意味合いを農村振興計画に組み込み、周辺の生態系農業やアグリツ
ーリズムと相乗的に発展し、年々増加する観光客によりその効果が顕著になってい
ます。万寿岩考古遺跡公園は、地域の人々の文化財保護に対する意識を高めると同
時に、青い空、澄んだ水、美しい景色を身近に感じることができる場所でもあるの
です。

中新社記者:万寿岩遺跡で発見された人工の石畳が、なぜ「人類最古のインテリア
工事」と呼ばれているのですか。

傅漆生:万寿岩遺跡の考古学的発掘調査の最も重要な成果の1つは、船帆洞の文化
層の底で約4万年前の人工の石畳が発見されたことです。

 船帆洞窟の考古学調査の過程で、考古学者たちは、南北の長さ22メートル、東西
の幅4.8メートルから8メートル、面積約120平方メートルのほぼ「凸」型の石畳を
発見しました。これらの石畳はほとんどが石灰岩で、大きさはさまざまで、最大の
もので縦5.5センチメートル、横3.8センチメートル、小さいものでは縦2センチメ
ートル、横2.6センチメートルのです。
 石畳は単層で、表面はやや起伏があるがおおむね平坦であり、旧石器時代後期の
破壊部分に見られるように、ほとんどの石畳が本来の洞窟底部にある石灰質の層に
直接敷かれています。これは、古人類が防湿のために敷いた石製の人工床であるこ
とが、権威ある専門家によって確認されています。

 船帆洞内では、人工の石畳のほか、排水溝や踏面が発見されました。この溝は長
さ約8メートルで、地形に沿って洞内の漏水が集められます。これは、石畳が水に
よって直接浸食されないように、古人類が掘ったもののはずです。一方、踏面は、
船帆洞に住んでいた人たちが定期的に活動していた場所であったはずです。

 船帆洞窟遺跡の石畳の発見は、早期人類が自然に適応し、生活環境を変化させる
能力を研究する上で極めて貴重な実物資料を提供してくれました。中国の文化財保
存と古代建築の専門家である羅哲文氏は「人類最古の建築物」と賞賛し、「我が国
で大規模な人工の石畳が発見されたのは初めてで、世界でも珍しい」と話しました。

 2019年12月に行われた万寿岩遺跡の国際学術交流会では、韓国先史時代の専門家
である李隆助(イ・ユンジョ)教授が「ほかに類をみない考古学的発見と展示で、
夢のような遺跡である」と語りました。ポーランドのウッチ大学考古学研究所のル
ジナ・ドマンスカ教授は、石畳の地面を指差し「こんな作品、今まで見たことがな
い」と言いました。マレーシアのグローバル考古学研究センターの研究者であるモ
フド・サイディン氏は、人類の活動が20万年近く前までさかのぼることができ、こ
の遺跡により中国が全世界に貢献していると称賛しました。

中新社記者:万寿岩遺跡が「海峡両岸の故郷」と呼ばれるのはなぜですか。

傅漆生:1986年、台湾の考古学者が、台東県長浜郷の八仙洞で3万年から1万5千年
前の剥片石器や石核石器を大量に発見しました。万寿岩遺跡の霊峰洞で出土した剥
片石器は18万5000年前のもの、船帆洞で出土した石核石器や剥片石器は3万年前の
もので、台湾で出土した剥片石器や石核石器と技術や種類において似ており、いず
れも典型的な南方礫石文化の伝統に属することが確認されました。

 福建省と台湾は地縁的に似ています。2万5000年から1万5000年前の氷河期の末期
には、海面の大幅な低下により台湾海峡のほとんどが陸地として露出し、台湾島と
大陸がつながっていたため、古動物群や古人類が台湾と大陸を自由に行き来でき、
古人類の移動とその文化の伝播に好条件を与えていたのです。万寿岩遺跡の発見は、
台湾の先史文化が大陸から時間的・空間的に移動してきたことを示しており、福建
省と台湾の先史文化が同じルーツを持つことを示す有力な証拠となり、大陸の先史
文化が台湾に移動した経路をより明確に説明するのに役立っています。

中新社記者:現在、対外交流と協力を強化し、考古学的成果の発掘、研究、普及を
深め、万寿岩遺跡の保護を促進するにはどうすればよいでしょうか。

傅漆生:万寿岩遺跡は中国の先史文化の重要な遺跡であります。都市と農村の建設
における歴史文化の保護と継承を強化するためのサンプルとなり、考古学的成果の
研究、保護、普及を引き続き深めていく必要があります。

 一つ目は、学術研究を強化し、ブランドの影響力を拡大することです。中国科学
院古脊椎動物古人類学研究所の万寿岩科学研究・科学普及基地を拠点として、科学
研究を強化し、新たに「万寿岩遺跡考古学作業計画」を策定します。中国科学院脊
椎動物古人類研究所と省の考古研究所とが協力して、共同考古学チームを立ち上げ
て龍井洞などの洞窟で発掘調査を行い、古人類の化石の探索、洞窟文化遺跡の埋蔵
状況と年代・性質をさらに明らかにします。

 二つ目は、保護計画を見直し、文化財の保護を強化することです。時代の変化に
対応し、事実に即して問題を解決するという姿勢に従って、「三明万寿岩旧石器遺
跡保存計画」が改定されました。遺跡保護と遺跡公園建設が科学的かつ正確に整理
され、短期、中期及び長期の計画目標とタスクが明確になり、その後の保護とプロ
ジェクト申請の重要な根拠が提供されました。

 三つ目は、関連する資源を統合し、統合的な開発を推進することです。万寿岩を
主な空間媒体として、古人類の生産・生活風景を創造的に再現し、良質な山林環境
を利用して、先史文化の学習・体験・遊びを特色とする良質な文化体験・レジャー
観光区を構築します。「万寿岩文化観光融合発展マスタープラン」を作成・実施す
ることにより、考古・文化資源を地元の民俗文化と結びつけ、さらに遺跡保護と農
村の活性化を結びつけて、文化的信頼と文明交流と相互学習を継続的に促進します。
〔中国新聞網2022年11月22日〕
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編集長:李年古/副編集長:前野貴子 特別協力:劉莉生
翻訳:竹内はる菜 澤田裕子 楊桃 村井好子
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