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電子マガジン・中国最新情報
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電子マガジン《中国最新情報》  No.335 2006年1月24日
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━【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏【特集:なるか中国農民の生活向上】
●今年農民一人当たり純収入6%増 食糧生産に重大転機
●2005年中国農産物輸出265億米ドル
●中国農村の根底の矛盾は未解消 農業税撤廃は初めの一歩

┏【金融】
●個人預金残高14兆元突破 投資先不足が貯蓄率向上の要因

┏【国内経済】
●「比較優位」政策がもたらす 労働者人件費問題
●広東民営企業進化史 初期条件から構造変革、産業の高度化

┏【経済データ】
●外国為替(1月23日)

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……【特集:なるか中国農民の生活向上】……………………………………………
●今年農民一人当たり純収入6%増 食糧生産に重大転機
 農業部の予測によると、2005年、全国農民の収入はかなり速いペースで増加し、
農民一人当たり純収入は前年より300元以上ふえ、実質約6%増となる見込み。
 農業部部長杜青林は12月28日、全国農業工作会議において、「2004年は、農民
の一人当たり平均純収入は6.8%ふえ、1997年以来成長スピードが一番速い年とな
った。2005年は数字がかなり高く位置しているのでまた6%ぐらいふえ、農民収入
の長い間の停滞局面を変えられる」と披露した。

 杜青林氏は、「成果を十分上げているとはいえ、農民収入の持続的成長は難し
い。食糧の価格維持は難しく、主要の農産物価格には値下がりしているものもあ
り、農民の収入に影響している。農業資材価格は高どまりしており、農業コスト
をふやしている。農民の出稼ぎにはさらなる改善がまたれ、就業の安定にはまだ
遠い」と示した。
 また、新華社によると、農業部部長杜青林は、「今年全国の食糧総生産は9600
億斤以上に達し、2004年より291億斤増産した。中国の食糧生産に重大な転機が
来ている」と発表したという。

 最後に、「2004年米と小麦の栽培の収益は「第九次五カ年計画」以来、最高レ
ベルに達した。今年の食糧生産は2004年の基礎の上に継続的に発展しており、食
糧増産は2年間で合計1000億斤を超えた。食糧の総合生産能力は短時間のうちに
かなり回復し、これは歴史的にもそれほど多く見られないことである」と示した。
 さらに、「第九次五カ年計画」末期と比べると、耕作面積は6000万ムー近く減
少したが、今年全国の食糧総生産は「第九次五カ年計画」末期より400億斤以上
ふえており、増加幅は4%以上となった」と指摘した。〔中国青年報2005年12月29日〕

●2005年中国農産物輸出265億米ドル
 商務部スポークスマンは、2005年、中国の農産物輸出は史上最高の265億米ド
ルに達し、第十次五カ年計画初期の160億米ドルより65.5%増加する見込みである
と表明した。
 WTOの統計によると、2004年、中国の農産物の輸出は世界第5位だった。

 また、商務部スポークスマンは、農産物輸出拡大は農民収入の増加を促進し、
農業の対外開放と農業産業構造を高度化するための重要な方途であり、商務部は
一貫して農産品輸出を重要事項としていると指摘した。

 今年は、農産物輸出は口蹄疫、高病原性インフルエンザ等疫病、ヤヌスグリー
ン等の食品安全事件の影響を克服し、かなり早いスピードで上昇している。
 前11カ月間で、輸出総額は243.7億米ドルとなり、前年同期と比べて19.3%増加
した。また、農産物貿易赤字はさらに縮小し、貿易赤字の金額は15.3億米ドルと
なり、前年同期と比べて71.6%減少した。〔国際金融報2005年12月30日〕

●中国農村の根底の矛盾は未解消 農業税撤廃は初めの一歩
 中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会は12月29日、施行48年になる「農
業税条例」の廃止を可決。2006年1月1日に失効する。新しい年の訪れとともに、
中国は農業税の非課税時代を迎える。

 農業税は地方税の一種。主として農業収入に対して課税され、土地の年間生産
量を課税根拠とするため、俗に「公粮」と呼ばれている。
 「農業税条例」は1958年に施行。人口の70%を占める農民層への政府の課税根
拠でもあり、中国の都市と農村とを分かつこととなった主要制度の支柱ともなっ
た。数年前、一部の省、自治区が農業税の大規模な免税を実施したが、全人代で
1958年に可決されて以来、この条例は法律としての効力があった。
 法律上、この条例を廃止することによって、2006年に全国的に農業税は撤廃さ
れ、「農村総合改革」を全面的に推進する法的な基礎が整備される。

 現在のところ、農業税を徴収しているのは河北省、山東省、雲南省の3省のみ
で、課税額も総計で15億元にすぎない。農業税を完全廃止しても、現在の中国の
歳入が3兆億元であることからすると、実質的な影響はないと言える。
 ただ、中西部の農村については、農業税の撤廃は手始めにすぎず、解決しなけ
ればならない問題がなおも山積する。
 中国の農民は現在9億人で、中国の総人口の70%を占める。だが、2005年に農民
が創出した農業総生産値はGDPのわずかに13.2%。数億に上る農業労働力の過剰を
いかに解消するかが、中国政府の課題となるだろう。

 中国は2000年から安徽省で税制改革を試験的に実施。農民に対する各種の税制
を廃止し、農業税と付加税に統一した。税率は、耕地1ムー当たりの例年生産量
の7%、農業付加税が1.4%。農民の負担は大幅に軽減され、減税幅は40%以上、100%
に至った地方もある。
 この改革は2002年に16省で推進され、2003年には全国展開された。
 中国の温家宝総理は2004年3月、5年以内に農業税を撤廃すると宣言した。

 中国政府は2004年3月末、黒龍江省、吉林省、2省の農業税の免税を突然決定。
そのほか穀物の主要産出地である11の省に対し、農業税の税率を引き下げた。さ
らに、農業税の免税は時代の潮流となって、各省が相次いで取り入れた。
 2005年初めには、チベット省以外では農業税を徴収せず、全国28の省が相次い
で農業税の免税を宣言した。5年以内に農業税を撤廃する予定であったが、事実
上、3年も早く完了したことになる。

 専門家は、農業税の撤廃は農村管理の第一歩にすぎず、農村の下部行政区の自
治体にとっては、厳しい挑戦になるだろうと指摘する。
 事実、農業税の免税後、中西部地域の省・郷・鎮政府は軒並み運営困難に陥り、
大幅な組織、人員の整理を迫られている。農村の義務教育、公益事業、衛生投資
などへの資金の投資が減少、不足している。
 税制改革後、中央財政では毎年、数百億元の交付金が増加しており、2005年に
は664億元に達した。
 だが、中西部の大半の県、郷などの規模が膨大で、中央の交付金の多くは「人
件費」に使われている。大規模な組織改革を実施しない限り、農民の負担軽減に
よる反動の圧力は続くだろう。

 取材を通じて、湖南省は2005年に農業税を免税したが、湖南省の個別の地方で
は、一部の郷・鎮の農民から、依然として農業税を徴収していることがわかった。
また、農業税の免税後、農民から教育費を徴収するなど「手数料」徴収がふえて
いる。
 河南省では、一部の県・市で、農民が民政局で結婚証明書の処理に200元もの
手続料を支払わされる。農民は都市に出稼ぎに行く場合、故郷で各種証明の手続
をしなければならないが、支払う費用は安くない。こうした費用は現地政府の予
算外収入で、経費の不足を補てんするために使われている。

 実際、政府が実施しなければならないことは「農業税条例」の廃止だけではな
い。国務院が1991年に公布した「農民承担費用労務条例」や、1994年の農業特産
税の課税の文書は既に意義を失っており、廃止すべきだ。
 また、農業税の撤廃後も、農民に対してタバコ特産税などに姿を変えた課税が
なされており、重大な問題となっている。

 農村問題の専門家は次のように指摘する。「中国の農村の根底にある矛盾は、
農業税の撤廃だけでは到底解決できない。中国の農地の集団所有制度は依然とし
て農民の収入増加に縛りをかけ、都市部への移住の最大の障害となっている。農
村の郷鎮の財政体制改革は今もまとまっていない」
 専門家の予測によると、中国が抱える郷、村の2つの行政単位の負債は6000億
元にも上る。この負債をいかにして解消し財政リスクを抑制するのか、依然とし
て未知数だ。

 中国政府は最近、農村に対する義務教育の財政投資を強化しており、5年以内
に2182億元をふやす。
 これで当面の「免税後遺症」が和らいだとしても、都市部と農村部との公共サ
ービスの格差という問題を徹底して解決し、農村における「小康社会の全面的な
建設」を実現するには、さらに多くの制度の刷新が必要だ。〔和詢2005年12月30日〕

……【金融】………………………………………………………………………………
●個人預金残高14兆元突破 投資先不足が貯蓄率向上の要因
 中国人民銀行から得た情報によると、2005年12月末現在で中国都市部と農村部
住民の貯蓄預金残高は14兆元を突破した。これは、昨年1月に個人預金残高12兆
元突破、5月に13兆元突破した後の、2005年における3度目の兆の大台突破である。

 中央銀行のデータによると、2005年12月末、全国の人民元各種預金残高は28.72
兆元で、前年同期比18.95%増大した。そのうち、都市部と農村部住民の預金残高
は14兆1050.99億元に達した。

 さらに、中国人民銀行が四半期ごとに行う全国都市部預金者アンケート調査で
は、預金の利率が低いと思う人が次第にふえていることが明らかになった。2005
年第4四半期では62.1%に達し、第3四半期より2ポイントが高くなった。
 預金利率が「適度」と思われる住民は36.3%で、第3四半期より1.4ポイント下
がった。それにもかかわらず、住民貯蓄意欲は2004年10月29日の金利上げ以降依
然として強まりつつなり、2005年第2四半期のみやや下落したにすぎない。

 これに対して、関係専門家は、住民の預金利率水準の承諾度がある程度下がる
環境にもかかわらず依然として貯蓄される主な原因は3つあると分析している。
1) 住民の消費意欲が持続的に下落し、それによって貯蓄意欲が高くなった。
2) 人民元対外貨の為替レート改革が住民の人民元に対する自信が強めさせた。
 同時に住民の貯蓄意欲が高く刺激された。
3) 資金の投資先が不足している。近ごろの株式市場低迷が原因で、一時はブー
 ムとなった株式投資意欲が再び下がった。また、国債の発行量が住民の需要を
 満たせず、住民の投資先が不足し、結果的に貯蓄へ回すことを余儀なくされた。

 これまで、株式市場が持続的に低迷すると、不動産投資がより安全な投資先だ
と思われていた。しかし、昨年下半期以来、国の不動産に関するマクロコントロ
ール政策の影響を受けて、一部地域の住宅価格の上昇が緩やかになり、取引量も
大幅に下がった。不動産投資は、一部のもともと住宅購入意欲のある住民と投資
家が現金を持ってチャンスをねらっているにとどまるようになった。

 中央銀行の2005年第3四半期の都市部預金者アンケート調査レポートによると、
今後3カ月で住宅購入予定と答えた住民はアンケート回答者全数の19.6%に占め、
第2四半期より0.5ポイント高めたが、過去のデータから見れば依然低い比率にと
どまっている。
 さらにまた、各地で比率の差が見られ、不動産価格変動の激しい上海では、
「今後3カ月で住宅購入予定」と答えた人の割合は7.3%しかなく、第2四半期より
3.7ポイント下がり、史上最低記録を更新した。
 住民の住宅購入は動向を見守る雰囲気が濃厚だ。

 そして、中央銀行の2005年第4四半期の調査では、今後3カ月で住宅購入予定と
答える人の割合は19.2%で、第3四半期よりさらに0.4ポイント下がったことがわ
かった。
 不動産のマクロコントロール政策の影響を受け、一部都市の住宅価格の上げ幅
は鈍化し、上海ではある程度下落したことになった。しかし、不動産市場は依然
として見守る雰囲気が濃厚で、住民の住宅購入意欲は高くない。
〔中国青年報1月16日〕

……【国内経済】…………………………………………………………………………
●「比較優位」政策がもたらす 労働者人件費問題
 貧富の差が拡大する背景のもと、関係者の間では、労働者の人件費問題につい
て熱く論議されている。
 労働者に共感的な人々は、市場が自由に労働者の人件費を決めるべきではない、
政府は政策を講ずるべきだ、労働者の人件費を引き上げるべきだと言う。
 ある経済学者たちは、労働力のコストを引き上げることは、外資系企業の参入
に影響し、損失を出す企業も出てくるだろう。逆に就業の機会が減少するのでは
ないかと、論証する。

 両者の意見は相反するが、その立論する基礎は同じである。政府は法律、政策
によって労働者の人件費を引き上げたり、調整することができる。しかし、問題
はまさにこの点にあると言える。
 関係者の多くは、政府が労働者の人件費を引き上げるべきと主張するとき、沿
海加工企業が労働者の低賃金を長期にわたり維持してきたこと、大量の人々が経
済成長の恩恵を受けなかったのは、政府が故意に何も手を出さなかった結果であ
るという点にどうして気づかないのだろうか。

 この二十数年間、特に1990年代以降は、各レベル政府はGDP成長速度を最重要
の努力目標としてきた。既存の金融制度の枠内で、どの各レベル政府も強烈な投
資志向を持っていた。このため、各レベル政府は権力を利用し、各種の要素の価
格を下げ、外資、国内の企業を問わず、GDP成長を加速させるために投資を呼び
込もうとした。
 この中の要素として労働力価格の低下が含まれる。政府が追い求めているのは
あくまでもGDPであり、政府は必然的に企業の味方となる。投資家の投資環境の
好き嫌いは、政府が最も注目する点である。
 外来の労働者はその数が莫大な数になろうが、現地の政府にとっては一種の生
産要素でしかない。彼らには何も権利がなく、当然雇い主と賃金について話し合
う権利もない。

 このような労働市場の環境は、国内外の投資家には好まれる。大幅に企業のコ
ストを削減することができるからだ。多国籍企業と国際組織は、中国の投資環境
に高い評価を与えている。彼らが好むのはこのような労働市場環境であろう。
 特に、ここ数年は、中国人は常にインド人に対して変なプライドを抱いている。
国際組織と多国籍企業は、中国の投資環境はインドより勝っていると言う。
 しかし、この優勢は何であろうか。インドの劣勢がどこにあるのかを探ること
から、それが見えてくる。

 ある新聞社がインドで取材をした際に、インドでも労働者の人件費の未払い現
象が起きていた。都会に働きに出る農民は一家の経済の柱であることも多い。し
かし、中国と違う点は、人件費未払いを理由にハンガーストライキをする大学生
や労働者がいることだ。
 例えば、クマルさんと彼の労働仲間たちはデリー大学に宿舎を建てたが、人件
費は請負業者に持ち逃げされた。労働者たちは、デリー大学が人道的な考慮をし
一時的に人件費を建てかえ、逃亡している請負業者へ請求することを主張した。
 しかし、その主張が拒絶されると、デリー大学学生会が学生に働きかけ、農民
労働者にハンストを呼びかけ、メディアの注目を集めた。

 まさに中国がこの方面の「比較優位」は、関係者の議論は多くの現象を引き起
こしている。
 近年、GDPは約9%という奇跡的な成長率を保っており、各レベル政府の財政収
入も年平均20%の成長率を保持している。
 しかし、非国有企業の労働者の人件費は、全く増加しておらず、人件費はGDP
に占める比例は、1989年が16%、2003年が12%に下がっている。

 比較優位の理論は、偉大な経済学者が称した唯一推敲にたえ得る経済学の真理
である。しかし、厳格に言うと、いかなる経済理論も同じだが、比較優位理論は
経済発展を事後的に解釈した理論である。このため、率直に言えば、一つの経済
体の比較優位を事前に認定することは難しい。
 だが、政府は常に自国やその土地土地の比較優位が把握できていると認識し、
そして強制的な手段でこの比較優位を実践している。その結果、経済構造をゆが
めている。現に、労働者の人件費はGDP増加に伴って増加する傾向にはない。こ
れは一つの例となろう。

 労働者の人件費が長期的に低水準にとどまっている。それは、中国の労働力市
場は形だけで基礎がないからだ。自由に就職はできるが、権利は平等に担保され
ない。これは、当然好ましくない市場の形である。しかし、この根源は、政府が
労働主体の権利を平等に担保しないからである。

 公務員への賃金引き上げのほか、政府は合理的な方法で、非国有企業の労働者
の人件費の引き上げはしていない。本来、政府が心配することではない、市場メ
カニズムも労働者の賃金を引き上げてくれるものだ。
 したがって、唯一の制度条件は、政府が平等にすべての労働者の自由と権利を
担保することだ。これをもとに、人件費は一定の合理的なレベルを維持できる。
そして、投資のGDPにおける比率も同様に合理的なレベルを維持できよう。
 現在労働力政策は過度な投資誘導で経済のゆがみを引き起こしている。このよ
うな局面を打開するためには、書かなければならない文章がまだまだある。
〔中国経営報2005年12月31日〕

●広東民営企業進化史 初期条件から構造変革、産業の高度化
 広東民営企業はどんな印象を持たれているのだろうか?。多くの人の脳裏には、
工場が林立する光景が浮かぶだろう。あるいは、カラーテレビや電子レンジの売
り場、年配者の着る色鮮やかな広東風の服、「水は珠江、食は広東」と言われる
ようないろいろな食べ物や飲み物を思い出すかもしれない。

 北京社会科学院の社会学所の戴建中副所長の記憶を振り返れば、広東という都
市は製造業一大基地で、商品を製造し、全国各地へ売り、広東省産の商品は中国
全国に行き渡らせていた。そして、浙江人は全国さらには世界各地にまで投資を
するのが好きだ。
 「改革開放以降、広東人の商売は「つむじ風」と呼ばれていました。それは、
ブームを起こすけれども、そのブームは短期間で終わってしまい、すぐに新しい
ことを始めるからです」と戴建中副所長は総括している。
 外資企業が模範的役割となり、広東の民営企業は比較的早い時期に海外の科学
技術やマネジメント手法を取り入れてはいるが、自身の革新はおくれており、浙
江人のように地方製品や地方ブランドを重視してはいなかった。

 最近、広東省は変わろうとしている。
 広東省の「第十一次五カ年計画」では産業革新が重点となっているが、その目
的は広東全体の産業構造の高度化にある。ハイテク技術を取り入れ、広東経済、
特に民営企業の高付加価値産業へのモデルチェンジを推進する。

 実際、こういった変化は4年前から芽生え始めていた。2001年以降、広東は一
貫して全国トップだった私営企業の総数、売上高、生産総額はそれぞれ江蘇と浙
江に抜かれ、新規開業数と新規開業資本金総額も上海に追い越された。
 強烈な危機感から、広東省は4年前から一貫して民営経済の発展に努力してき
た。

〈どこから始まったのか?〉
 現在、広東の民営経済が最初どのように誕生したのかはよくわからない。人々
の記憶をたどってみると、広東には華僑が多く、海外へ出て行く伝統があり、華
僑たちは金をもうけて帰国し、郷里に多くの立派な建物を建てたことからだろう
か。
 広東民営経済の真の飛躍は改革開放の初めからである。改革開放のモデルケー
スとしての特殊な政策背景と香港とマカオに隣接しているという有利な地理的条
件によって、広東は東アジア地域から2度の大規模な産業移転を受けたのである。

 2度の産業移転は1980年代と1990年代に発生している。
 1980年代の産業移転は、香港の製造業が大量に中国大陸に移転したことによる。
珠江デルタは少なくとも790億ドルの香港資本によって産業移転が推進され、労
働集約型の製造業へと発展して初歩的な工業化を実現している。
 1990年代の産業移転は台湾IT産業の移転で、珠江東岸の深セン、東莞、恵州が
輸出志向型のIT産業の製造及び加工基地となった。
 香港と台湾の企業が大挙して珠江デルタへ移転した後、広東民営企業はその影
響を受けて移転を余儀なくされた。しかし、このような流れは民営企業を小資本、
労働集約型の小規模製造業に集中させることも運命づけたのである。

 1990年代から、広東民営経済に新しいパワーが登場した。それはつまり「順徳
モデル」を代表とする家電メーカーである。
 数年前、広東の家電ブランドは40種類近くあり、家電の市場シェアは全国の3
分の1を超えていた。TCL、康佳、創維、科龍、美的、格蘭仕、万家楽など有名ブ
ランドばかりである。
 しかし、1990年代後半には、これらの民営家電メーカーで全国的な家電業の利
益危機が発生し、その影響で、愛多、小覇王などの幾つかの有名企業で相次いで
問題が顕在化した。
 その原因は、これらの民営企業には核心的な競争力が不足しており、研究開発
を軽視していたためである。競争に直面し、価格以外には対策がなかったのであ
る。
 さらに、多くの民営企業にとってみれば、国内外の競争激化、絶え間ない技術
向上、貿易障壁への挑戦に遭遇するに従って、OEM、低コスト志向で輸出志向型
の競争優位に頼るが、このメリットもなくなり、かえってマイナスになっている
ものさえある。

 少し前、馬北北氏は四十数人の工場を閉鎖し、経理担当者1名が残るだけとな
ってしまった。もともとは中山市張家辺に会社があり、広東金正電子集団にライ
ンを供給していた。
 電子業界は忘れっぽい業界で、馬北北氏も無数の企業と同じように、一瞬だけ
あらわれ、また一瞬のうちに消えていった。
 「零細企業はとてもやっていけません。ラジカセ、VCD、DVD、翻訳機から、今
ではMP3、MP4、電磁調理器へと、産業は常に変わっており、方向転換する時期を
間違えば、業界から放り出されてしまうのです」
 馬北北氏の友達は今MP3をつくっている。MP3製造のハードルはきわめて低く、
DVDの悪質な競争の失敗を繰り返さないため、馬北北氏の友達は既にMP4を見つめ
ている。「1年もたたないうちに、MP4の天下となり、MP3企業のほとんどが消え
てなくなるでしょう」と馬北北氏は言う。

 珠江デルタは、かつて何万もの加工業を主とする零細企業があった。規模は小
さく、マネジメントレベルは低く、品質管理の意識は不十分で、技術力も低く、
長期計画もなかった。
 「新規参入は容易で、付加価値は低く、まねされやすいものでした」と中山大
学の嶺南学院の王〓副院長は言う。

 広東民営企業の経済発展のプロセスに存在するこれらの問題は、政府と研究機
構の関心事項となった。
 広東省社会科学院が最近発表した調査研究報告では、広東のほとんどの民営企
業の寿命は短く、年間の淘汰率は10%に達していることが明らかになっている。
 淘汰率がかなり高い原因は、多数の民営企業が互いに競争し合い、自社ブラン
ドがなく、自社の市場もないものさえあるためで、そのことで商売が立ち行かず、
長くは続かないのだ。

〈どこへ向かっているのか?〉
 1993年、広州五山華工科学技術街にある十数平方メートルにすぎない粗末な店
舗の中を、作業着を着た4人が出入りしていた。
 多くの人がこの会社を運送会社と誤解していた。それは、この店の4人がある
晩に駅で60トンの品物を列車に積んでいたからである。実はそれは120元の運送
費を節約するためにやっていたのである。
 12年後、この熱可塑性プラスチックを専門とする小さな会社は、金発科技股ブ
ン有限会公司となり、中国の熱可塑性プラスチック業界最大の研究開発と産業化
の基地になったのである。会社の総括的資産は19億にまでなっている。
 金発は広東民営企業界では絶対的な「挑戦者」と見られている。第2次産業で
あるが汚れていないのだ。エネルギーが逼迫している華南で省エネルギー企業に
認定されている。
 労働集約型企業を主体とする広東民営企業の中では技術性の高い成長企業で、
零細企業が目立つ中で一歩リードした企業である。
 金発の成功は広東の民営経済発展に良好な方向を示した。広東に必要なのはま
さにこのような民営の科学技術型企業である。以前大量に見られた労働集約型企
業が多かった局面からまさに変化が発生しているのである。

 広東省科技庁によると、2004年、広東のハイテク製品全体の生産額は8300億を
突破しており、前年比約28%増加し、広東省の工業生産総額の約25%を占めた。ハ
イテク製品の輸出額は630億ドルで全国の40%を占め、引き続き全国第1位である。
 中でも民営の科学技術経済の規模の増加は目覚ましい。広東民営科学技術企業
は既に6500社に上り、2004年の技術、工業、貿易の総収入は2500億元を上回って
いる。年間生産額が1億元以上の民営企業は400数社以上で、2003年に比べて120
社増加している。
 民営科学技術企業は既に広東のハイテク産業の急速発展の主力軍になっており、
広東省のハイテク企業と製品数で民営科学技術企業が半分以上を占めている。

 昨年、広東省社会科学院が出版した「民営経済発展青書」の中でも、広東の民
営経済産業の集積効果は明らかにされており、専門集積地が牽引する産業集積は、
広東の珠江デルタ地区から東西へと広がっており、この地域の経済成長を牽引す
る新しい流れとなっている。
 珠江両岸を例として、それぞれ電子情報産業回廊と電器機械産業集積群を形成
している。東岸は、深セン、東莞、恵州を主に、経済規模は4000億元近くで、規
模は全国最大である。西岸は、佛山、中山、江門、珠海、広州を主に、経済規模
は1300数億元である。
 この基盤をもとに、広東民営ハイテク企業は既に国際市場に目を向けている。
深セン華為を例に挙げると、海外業務は毎年100%近くのスピードで増加しており、
2005年の上半期だけでも海外売上高は24.7億ドルで、販売総額の62%を占めてい
る。

 多くの人は、1990年代の中後期の外資北上の波は長江デルタを育成し「珠江デ
ルタ経済の牽引エンジンを減速」させたと思っているのではないだろうか。しか
し、実際にはこのような変化は珠江デルタの産業高度化の好機となった。
 事実、広東の経済は全く停滞していない。最近、国家統計局が新しい全国GDP
総量を公表し、その後すぐに広東省統計局も調整後の2004年広東省GDPデータを1
兆8864.62億元だと公表した。
 調整後の新しい基数により、広東省は2005年のGDPは初めて2兆元を超え、2.15
兆元にまでなると見られており、全国第1位を引き続き維持している。
 2001年に広東省が初めてGDPの1兆元の大台を突破した後、たった4年で倍増し
ており、これは予想よりも1年間も早く達成している。

 「生産要素の流動は経済グローバル化後には避けられない現象です」浙江大学
の経済学部の史晋川教授は言う。「労働力、土地価格などの生産コストは上昇し
ており、労働集約型企業の構造変革を促しています。現地政府はこの流れに乗っ
て、無理に引きとめるべきではなく、産業高度化の動力とすべきです」
 広東が率先して行った「珠江デルタ」の戦略構想はこの意見と一致している。
このようなフレームワークのもと、広東は今までの労働集約型産業を外部移転さ
せ、同時に資本集約型、技術集約型の産業を誘致し、地域で共同発展させるとい
う新構造をつくった。
 まさに香港の製造業が1980年代に内陸の広東に移動したのと同じ現象だが、香
港経済は落ち込むことはなく「高度化によってアジア物流の中心となり、金融サ
ービス、科学技術の研究開発の中心になりました」広東社会科学院の企業管理及
び政策決定科学研究所の林平凡所長は言う。「広東も同様なチャンスに直面して
います」

 外国の資本、技術集約型産業を誘致するほか、広東省も「内在的」な民営経済
の創造に力を入れている。
 2003年、広東は省中小企業局を設立し、新しく省委員会、省政府は「省委員会、
省政府の民営経済発展の加速に関する決定」を出している。この決定で、民営科
学技術企業は広東が重点的に支援する4種類の民営企業のトップとされている。
 さきの広東省民営経済工作会議上においても、広東省委員会の張徳江書記が強
く指摘していることは、科学技術型、輸出志向型、一時帰休者の就業と農産物加
工型の企業を重点にして、民営企業を支援し発展を加速させるということである。

 経営分野、市場進出許可、土地使用、人材登用、資金支援、税収優遇、対外交
流、イメージアップなど、政府は民営企業のために細かい制度を用意している。
5年間で、省財政は総額20億元を支出して民営の経済発展を支援する。
 民営企業への融資では、積極的に中小企業を発展させるために担保保証機関を
設置している。2002年末にこのような担保保証機関はまだ18カ所だけであった。
浙江には既に200カ所以上あった。
 しかし、2005年6月には、広東で正常に運営されている保証機関は112カ所にな
り、登録されている資本金は90.2億元で、全国平均水準の約3倍となった。累計
総額でも429.1億元を保証しており、この発展速度は他のすべての省を上回って
いる。

 昨年、広東民営企業数は再度全国のトップに躍り出た。2005年の民営経済の増
加額は6000億元を突破すると予想されており、広東省のGDPの38%を占め、国有企
業、外資企業で天下を三分する。
 しかし、昨年3月に行われた第一回民営企業表彰会で、広東省委員会の欧広源
副書記は、広東の民営経済発展の加速を強めており、5―7年で広東の民営経済は
「天下を三分」から「二分」にまで発展するだろうと語っている。
〔南方週末1月5日〕
注)〓は、「興」の下に「月」

……【経済データ】………………………………………………………………………
●中国の外国為替レート(仲値)
                        (中国人民銀行1月16日発表)
外貨名  100日本円  100米ドル  100香港ドル  100ユーロ
     6.9807  806.48  103.99   974.83
関連ページ:http://www.bank-of-china.com/
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《編集者コラム――2本の映画》
 冒頭、原稿を並べて初めて気づいたのですが、「最新情報」とは呼べそうもな
い記事を並べてしまいまして済みませんでした。休刊期間が長かったことも原因
なので、この現象は徐々に緩和されていくと思います。

 ところで、意外にこのコラムは見られているような気がするので、読者様のお
力をかりて、今、どうしても見たいけれども、そのタイトルがわからない映画の
タイトルを聞きたいと思っています。
 一つは、欧米の映画です。特殊な現象に遭遇した男女がそれぞれ特殊能力を持
つようになることが物語の発端です。例えば、自分の体から火がつくようになっ
たり、体が透明になったり、体がゴムのように伸びるようになったり、体が岩の
ようになります。その特殊能力を持った男女がその状態からもとの体に戻ろうと
いろいろ苦心して、その糸口をつかみかかったところで、同様な経緯で電気を帯
びる特殊能力を持つようになった男性との戦いに巻き込まれるという筋書きです。
トルコ旅行中のバスの中で見たのですが、途中までしか見られなかった上に吹き
かえがトルコ語だったため、もう一度見たいなと思っています。
 もう一つは、恐らく中国の映画です。社会モラルがなく性格も悪くかかあ天下
の横暴な女性が、公園で犬の散歩中に犬のフンを振りまいたりしたことから警察
に犬を没収され、その犬を自分の子供のようにかわいがっていた女性の配偶者が
没収された犬を取り戻そうと奮闘する映画です。この粗筋を説明を受けた上で、
その女性が私に似ていると言われたので、どこがどう似ているのか自分でチェッ
クしたいと思っています。
 この映画のタイトルを御存じの方、ぜひ御連絡&教えてください。(ま)
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(200号以降 2003/2/18―)
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(199号まで)
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編集長:李年古/副編集長:前野貴子 特別協力:劉莉生
翻 訳:劉志軍 戴小芳 アヤ 郭暁楠 奥谷道弘 リン
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