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電子マガジン・中国最新情報
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教育・文化ウオッチ@中国最新情報 No.759 2021年7月3週号
発行:《中国最新情報》編集部 http://www.bizchina.jp/
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━【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏【特集:中国児童書市場急成長と日本の絵本】
●中国児童書市場で絵本の売り上げ&ジャンルシェアが年々増加
●飲食業が居酒屋経営 90後が主要消費者に

┏【李年古の日中異文化交流術】
●なぜ、日本人の管理手法は不評を買ってしまうのか 2

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……【特集:中国児童書市場急成長と日本の絵本】…………………………………
●中国児童書市場で絵本の売り上げ&ジャンルシェアが年々増加
 ティラノサウルスシリーズは中国でヒットした絵本だが、それはこのテーマ自身
にIP価値があったこともある。
 2008年、ティラノサウルスシリーズの「おまえうまそうだな」は児童向けの劇と
なり、国立大劇場で上演された。2年後、同シリーズはアニメ映画化された。
 2019年以降、絵本会社の蒲蒲蘭は、作家の「原画」にインタラクティブなシーン
を加えた展覧会をプロデュースし、各地の会場にライセンスを与え、ミニ展覧会や
親子セミナーを開催した。また、人形、食器、雑貨等のIP周辺商品の制作にライセ
ンスを与えた。

 絵本がテーマにしているIPセンス、作家本人のインタラクティブマーケティング
能力、コンテンツの機能性はヒットした絵本が持つものだが、実は、なかなかない
チャンスだった。
 保護者のマストバイリストに入れるために、裏では、出版社が何年も努力していた。
 絵本会社の愛心樹は、2013年には日本の絵本作家のヨシタケシンスケ氏に関心を
持っていたが、作品の著作権について交渉し、出版し人気が出るまで6、7年かかった。

 ヨシタケシンスケ氏は「MOE絵本屋さん大賞」1位を5回受賞し、日本ではここ10
年近くのトップ絵本作家の一人である。ブロンズ新社がヨシタケシンスケ氏の多く
の児童絵本作品の著作権を持っているが、これまで中国の出版社と著作権の提携を
したことはなかった。
 愛心樹は、当初は中国ブックフェア、ボローニャブックフェア等、ブロンズ新社
と会えるあらゆる機会をつかむしかなく、何度も日本側の編集者とやりとりをした。
 「向こうの関心は、どれだけ印税がもらえて稼げるかではなく、私たち編集者が
これらの本をどう理解しているか、私たちがどんな理念で本をつくっているかだっ
た」白佳麗氏によると、この著作権の提携の交渉は5年に及び、最終的に愛心樹は
ブロンズ新社から直接5冊の著作権を手に入れた。
 図書を翻訳、制作する過程における日本の出版社の品質管理は厳格で、両者は印
刷技術について多く議論した。ブロンズ新社と作家が確認するため、愛心樹はサン
プルを制作し日本に送った。

 国内出版社よりも本の選定段階での感度が敏感なのは、文化著作権代理企業であ
る。春と秋の年2回、各出版社の特徴を踏まえ推薦図書リストを作成する。このよ
うな仲介サービスは、中国国内の出版社が海外で良質な著作権を探す時間の短縮に
つながる。
 本を選んだら、国内の出版社は印刷を始めるための前払金を先に支払う必要があ
る。本が出版されると、前払金を超えた収入部分について、6―10%の割合で代理会
社に印税を払うことになる。
 数年前、絵本1冊の前払金は約3000米ドルだったが、現在、有名作家の前払金は10
倍になっている。最近、中信出版社が10万米ドルの前払金を払った、8歳以上の子
供向け金融啓蒙絵本「Puppy Money」(小狗銭銭)の著作権で著作権取引額を更新
した。2021年1月に発売されたばかりの新刊で、現在、当当網で9万件以上のユーザ
ーレビューを得ている。

 書籍全体の売り上げから見ると、絵本は出版業界で最も価格の高いジャンルであ
るはずだが、実際の販売で絵本の利益は余り高くない。
 著作権コストでは、ヒット作家の印税率は通常10%に達する。しかも、児童書の
現在の最も主要なルートであるネット通販プラットフォームでは終わりがない価格
競争がある。書籍は大きな割合を占めるため、年じゅう「100元購入すれば50元キ
ャッシュバック」との値引き施策をとっており、絵本の利益率を制約している。
 ある絵本編集者によると、現在の通常の絵本の価格はコストが定価の25%を占め
ており、ネット通販の5割引きセールで損失が出ないようにしているという。

 絵本の販売は、当初から実体店を重視しておらず、ここ数年、書籍販売から起業
した当当網が成果を上げている。
 ウエブサイトでもアプリでも、最も上位に来る商品カテゴリーは、図書、児童書
である。2011年ごろから、当当網とアマゾンでは、児童書が社会科学・経営図書を
逆転し、売上高最大のカテゴリーとなった。2020年、開巻のデータによると、ネッ
ト書店の児童書総売り上げは、図書全体の30.25%を占めた。

 多くの出版社は、絵本は市場形成段階で、当当網は切り離せないコアルートであ
るとしている。しかし、ここ数年、京東の書籍チャネルが徐々に当当のライバルと
して価値あるルートになってきた。
 この2つのプラットフォームが自動生成するベストセラーリストは、保護者が書
籍を購入する際の最も重要な参考資料となっている。
 これらオンラインルートは、2020年の蒲蒲蘭の6割近い売り上げシェアを支えて
おり、絵本はますますオンラインルートに依存傾向にある。

 新商品の販売増のため、京東図書は事前に出版社の新刊選定計画を把握しようと
している。プラットフォームの販売データを分析することによって、積極的に出版
社に選定協力を提案している。
 2016年に出版された絵本「やまねこせんせい」は、児童のEQを高め、よい生活習
慣を身につけるための機能的絵本である。
 「私たちはこの本がヒットする可能性があると判断し、出版社と組んで、2019年
に新装丁で発売した」京東図書自営児童書部の担当者の万峰氏によると、翻訳、組
版、装丁、デザイン、価格設定等の各段階で出版社に提案し、再版販売見込みを年
間5万冊とした。
 結果は、新版「やまねこせんせい」は発売5カ月で5万冊の販売目標を達成した。
この「旧製品の復活」路線で、京東は2020年に更に約20種類の制作を続け、平均年
間販売量はどれも4万部以上となった。

 蒲蒲蘭は、2006年に中国オリジナル絵本「ヤンヤンいちばへいく」を中国と日本
の両国で同時に出版、発行した。
 しかし、オリジナル絵本のブレークスルーとなった作品は2014年に出版された
「妖怪山」で、初年に7回増刷され、計約6万部を売り上げた。この作品は、児童向
けファンタジー小説作家である彭懿氏の短編小説「妖怪山と5人の子供たち」が原
作で、挿絵作者の九児氏は下絵から完成まで20カ月かけて描いた。
〔北京開巻2021年3月24日〕

●飲食業が居酒屋経営 90後が主要消費者に
▽飲食業がこぞって同じ時流に乗るのは初めて
 今年、飲食業で最も人気のある業態は居酒屋(小酒館)である。飲食業は、自営
業でも大手でも、ほぼ全ての業態で居酒屋を展開している。しかも、今回の居酒屋
ブームでは、外食企業がこぞって出店しており、飲食業全体が初めて同じ時流に乗
ろうとしている。

 上海の先啓半歩顛小酒館は1年足らずで5店舗を展開する。同店は「上海四川料理
必食ランキング」1位であり、毎日、開店前には店の前に座り、4時間以上待つ客が
いる。
 同じく、「上海四川料理必食ランキング」にランクインした天辣小酒館は、四川
江湖料理、ホットカクテルを提供するだけでなく、カラオケもあり、毎晩プロの歌
手が歌う。

 このようなレストランは、従来のフォーマルな食事の印象を大きく変え、「若者
向けの夜のカジュアルな集まりでのちょい飲み」の消費シーンにフォーカスしてい
る。商品も店内のインテリアも、若い人が写真を撮りたいと思わせる。提供するア
ルコールも、花酒や果実酒といった低アルコール度数の酒がふえている。

 一部のチェーン飲食店は、外観は変えずに「居酒屋」という消費シーンをふやし
ている。
 例えば、800店の直営店を持つ老郷鶏は、「昼間はファストフード、夜は居酒
屋」となっている。ファストフードをメーンにしてきたこれまでの老郷鶏とは異な
り、午後5時30分からカクテルやビールを販売する「居酒屋」となり、午前2時まで
営業する。

▽90後が飲酒世代になり、居酒屋業態に火がつく
 2018年ごろから、居酒屋モデルは、四川、重慶地域から全国へと広がり、一線、
二線都市にはインフルエンサーの居酒屋が出現し、若者が注目する人気スポットと
なった。
 互いに酒を勧め合う従来の飲酒文化とは異なり、若者が好むのは、3―5人の友人
とリラックスした中で短い時間で軽く飲むことである。
 彼らは低アルコール度数の酒を好んで飲む。「2020低アルコール度数酒業界の市
場展望と現状分析」によると、2019年、国内の果実酒業界の市場規模は約2315億元
で2018年比6.24%増だった。
 同時に、若者の飲酒量も増加している。「2020若者のアルコール消費洞察報告」
によると、90後の10%が毎日飲酒する習慣がある。

▽日本の居酒屋文化
 居酒屋が、今後若者の主な消費シーンになる可能性が高いのはなぜだろうか。お
隣の日本の居酒屋文化に目を向ければ、その関連性が見えてくるかもしれない。
 村上春樹は、居酒屋を開こうとする人がいない街は、その街が豊かでも、中身は
空っぽだろうと書いている。
 毎日を生活のために奔走する若者にとって、居酒屋は会社生活の延長線上にあり、
平凡な生活のつかの間の逃避場所である。
 「居酒屋」の本質は、日本の居酒屋と同様、人情がある街の一角で、労働者が憂
さを晴らす場所である。今後、都市化が加速するにつれ、中国の居酒屋は若者の主
流の消費シーンになっていく可能性が高い。
〔職業餐飲網2021年4月24日〕

……【李年古の日中異文化交流術】……………………………………………………
●なぜ、日本人の管理手法は不評を買ってしまうのか 2
(前号より続く)
◆台湾経営者の共感を呼んだ中国ビジネスの成功法則とは
 前回の記事で、深セン市で出会った日本人経営者の苦い体験を述べた。一体なぜ
入院した女性社員は、毎日見舞いに来た日本人上司を裏切る形で、夜逃げ同然に会
社をやめてしまったのだろうか。僕もすぐには回答できなかった。しばらく考えて
から、僕は慎重に質問を投げかけてみた。
 「病院にお見舞いに行ったとき、社長はどのような言葉をかけて彼女を慰めたの
ですか?」
 「『心配要らないよ。会社はいつでも君の復帰を待っているから』とか、あるい
は『一刻でも職場に早く職場に戻ってくることを皆が望んでいるんだよ』と、励ま
す言葉ばかりを使ったんですよ」。
 なるほど。その返答を聞いた僕は一瞬、嫌な予感がした。そんな僕の様子に気づ
いたのか、社長は慌ててつけ加えた。「本当に、彼女を傷つけるようなことは一切
言いませんでしたよ」。

 僕はうなずきながら返答の言葉を選んだ。「もし中国人上司なら、そのような状
況で彼女にかける言葉は違ってくるかもしれません。例えば、『安心して治療しな
さい。どんなに時間がかかっても気にしないでいいよ』とか、『会社のことは一切
忘れてくれ。回復に専念しなさい』とか。つまり、病気で落ち込んでいるときに、
その社員に早く帰って来いという言い方は、違った受けとめ方もあり得るからで
す」。
 「どのような受けとめ方がありますか?」
 「まあ、社長は会社の都合ばかり考えて、一刻も早く部下を職場に戻させたいか
ら、毎日のように催促しにきたのだと思ってしまったかもしれません」。
 社長は茫然としてつぶやいた。
 「まさか!……日本人ならば励ます言葉を当たり前のように受けとめてくれるは
ずなのに。なぜこのような常識も通じなかったのですか?」「いいえ。“常識”こ
そ文化なんですよ。社長は『常識』や『当たり前』という言葉を使っていますが、
それは海外では必ずしも常識とは言えないですが」。
 僕はさらに言い続けた。
 「時に、伝えたいメッセージは、受けとめる側の解釈によって意味が決まります。
彼女は、社長は彼女のことを心配して快復を願っているのではなく、会社の業務に
障害をもたらしたことを心配しているのだと解釈したのでしょう」。このようなコ
ミュニケーションの失敗例が、仕事の現場ではさまざまな形で起きていることは、
僕の研修に参加したビジネスマンの体験談からもよく聞いていた。

 数年前、台湾のある有名なビジネス雑誌が、中国大陸に進出している会社の経営
者を集め、成功と失敗の経験を語らせ、最後にある共通した中国ビジネス法則をま
とめた。
 その法則は、
 「(台湾で築かれた成功経験+マネジメント力)×中国文化の理解力=中国ビジネス
の成功」
 この法則をよく吟味してみると、中国文化への理解力は仮に「ゼロ」であれば、
他の成功要因がどんなに優れたものであっても、結果が「ゼロ」に戻してしまうの
が分かる。逆に、中国文化の理解力は掛け算の対象となっているので、その力を伸
ばせば、全ての成功要因が倍となる力が発揮できるのだ。
 文化を共有している台湾経営者だからこそ、このようなすばらしい法則を見出し
たわけだ。残念なことに、日系企業の経営者が欠けているのは、この「中国文化へ
の理解力」であろう。
(次号以降に続く)

(このコーナーは、日中異文化コミュニケーションの経験を中心テーマとした文章
を紹介していきます。)
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●「ビジネス企業研修@中国」 http://www.bizchina.jp/
●バッグナンバーの入手
(83号以降 2000/9/25―) http://www.bizchina.jp/ja/nweek/
●《中国最新情報――編集者コラム》http://ameblo.jp/jckc-colum/
●ツイッター https://twitter.com/bizchina_jckc
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編集長:李年古/副編集長:前野貴子 特別協力:劉莉生
翻訳:竹内はる菜 澤田裕子 楊桃
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