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迷走する不良債権処理

1970億元の不良債権を再処理 中国銀行と建設銀行

 すべては突然で、しかしすべてはまた計画どおりであった。
 5月18日、中国銀行、建設銀行が1970億元の不良債権再処理を行うというニュ
ースを、財政部と中国銀行、建設銀行は正式に認めた。

 建設銀行資産保全部の上層部は、建設銀行は約569億元の不良債権を信達資産
管理会社に譲渡しており、この処理は6月末までかかるだろうと語っている。
 ほかにも、財政部金融司、中国銀行頭取事務室などからの情報では、中国銀行
は簿価にして約1400億元の不良債権を切り離し、東方資産管理会社に譲渡する。

 国有商業銀行の中国銀行、建設銀行の2行の制度改革実験は中盤に差しかかっ
ている。そして、それはさらに人々の想像を超える状況になっている。
 権威あるルートからの情報では、2回の切り離し以外にも、解決には「奥の手」
が使われるかもしれないし、もしかすると、さらに想像を超える方法を使わざる
を得ないかもしれない……。

〈「破綻先」債権の処理〉
 信達資産管理会社の内部情報では、不良債権の移転は5月初めごろにスタート
しており、この資産譲渡は債権部が慎重に各種関連手続を行っている。
 今回切り離された不良債権は、債務者区分5分類では「破綻先」債権に当たる
と前述の建設銀行資産保全部の上層部は語っている。

 建設銀行が今回処理する不良債権額569億元という数字については、財政部の
要求に基づいて、中国銀行と建設銀行の処理すべき「破綻先」債権の不良債権処
理を合わせて、2002年12月31日までの財務諸表の数字により設定したという。
 建設銀行の2002年年報では、2002年末までの建設銀行の「破綻先」債権は569.22
億元で、つまり、この債権がすべて切り離されて信達資産管理会社に移転される
ことになる。
 同時に、建設銀行の上層部は、今回の処理で建設銀行の回収不能債権がなくな
ったわけではないと強調している。債務者区分5分類は変化するものであり、2003
年以降でも、建設銀行で「破綻先」債権に転換した債権が依然としてあると語っ
ている。

 中国銀行頭取事務室は、1400億元の「破綻先」債権処理については認めたが、
しかし、さらに詳しい内容については語っていない。
 財政部要求に基づいて、東方資産管理会社も中国銀行の2002年末すべての「破
綻先」債権を接収することになっている。
 しかし、中国銀行の2002年財務諸表では、2002年2月31日までの中国銀行の「
破綻先」債権は1874.09億元であるが、中国銀行が今回処理したのは約1400億だ
けである。この差額について、中国銀行は詳しい説明をしていない。

 考えられる1つの理由は、2003年初めから中国銀行は数回の不良債権処理を行
っており、そのうちの一部の資産が既に売却されているということである。
 または、東方資産管理会社の資産処理に便宜を図るため、今回切り離された「
破綻先」債権には中国銀行の香港資産が含まれていないのかもしれない。
 しかし、これについては中国銀行と東方資産管理会社の確認をとっていない。

〈1999年との違い〉
 1999年の第1回処理と比較して、今回の計画は著しく異なっている。

 まず、今回の1970億元の不良債権処理が、中国銀行、建設銀行の2行の現時点
でのバランスシートに影響しているわけではないということである。

 財政部金融司の関係筋によると、今回切り離された資産はバランスシート外に
属している。
 2003年末に国務院が中国銀行、建設銀行に対し450億ドルの公的資金投入を決
定した後、もともと財政部が保有している中国銀行、建設銀行の株主持ち分、当
期予想利益、既に支払われた公的資金の不良債権審査を始めている。
 現在、中国銀行、建設銀行のこの「破綻先」債権部分については既に審査され
ており、これに相応する債権は譲渡されバランスシートには入っていない。
 つまり、現在公表されている第1四半期の建設銀行の不良債権比率は8.77%、中
国銀行が14.84%というのは、今回の切り離しで変化するわけではない。

 今回は1999年の第1回処理と明確に異なっている。
 1999年の中国銀行の不良債権処理金額は2674億元、建設銀行は2730億元であっ
た。処理計画では、中国銀行と建設銀行の不良債権を簿価で東方資産管理会社と
信達資産管理会社に譲渡し、中国銀行と建設銀行は東方と信達に2674億と2730億
の債権を持ち、東方と信達が処理する不良債権の損失は財政部から中国銀行、建
設銀行へ支払われる。
 しかし、財政部金融司の関係筋は、今回処理する一部の資産は簿価で譲渡でき
ず、財政部が適当な価格割合を定めるという。しかし、この関係筋は具体的な数
字については明らかにしなかった。

 参考にできる話としては、信達資産管理会社の1人が語った、現在簿価約60億
元の不良債権が数回に分けて信達のもとで処理されているが、これらの資産の査
定価格は簿価の約20%―30%にすぎないという話である。
 これから推測すると、仮に2000億元近くの不良債権切り離しの価格が大体間違
っていなければ、2社の資産管理会社は、中国銀行と建設銀行に約500億人民元が
支払っており、このことで非常に大きく中国銀行と建設銀行の財務状況が改善す
ることになるだろう。

 中国銀行の会計監査に参加する普華永道の会計監査人によると、今回処理され
るのはすべて「破綻先」債権で、質は比較的悪く、ほぼすべてが回収困難だと思
われるという。
 しかし、1999年の第1回処理資産は4つの分類で「回収に重大な懸念のある債権」
と「回収不能債権」であり、資産管理会社の平均回収率は約20%にすぎなかった。
これらの要素を考慮に入れると、20%―30%の価格は比較的高いかもしれない。
 この会計監査人は、財政部が資産管理会社のために一部損失を引き受けること
があり得ると推測しているが、この件については財政部の確認を得ていない。

〈中央銀行の3つの案〉
 今回の処理計画には事前に兆候があった。
 4月16日、中国人民銀行の周小川頭取は、上海国際金融協会2004年春季メンバ
ー会議」での講演で、「さらに不良債権を再処理し、上場するレベルまで持って
行くかもしれない」と述べている。

 銀監会の銀行監視管理部の関係者は、今年の初めから、銀監会、中央銀行、証
監会、財政部の4部門が既に数回の会議を行っており、中国銀行、建設銀行の株
式制への改造と株式上場について協議したと語っている。
 この乱雑な体制において順調な推進を担保するため、銀監会は2銀行のコーポ
レートガバナンス、中央銀行は資産処理策の立案、証監会は株式上場というよう
に、各部委は分業をし、責任を負った。
 中国銀行、建設銀行及び関連の資産管理会社すべてがこの会議に参加しており、
資産管理会社、中国銀行、建設銀行も不良債権処理の方策と構想を出している。

 関係者によると、この会議で討論された案は大体3種類に分けられる。
1) 不良債権の再処理は、直接資産管理会社が行う。
2) 中央銀行は手形を発行し、中国銀行、建設銀行の不良債権の置きかえを進め、
 置きかえた不良債権は資産管理会社が処理する。
3) 一括処置方式を採用し、市場化原則に沿って、中国銀行、建設銀行より内外
 投資家に売り出す。この方式では、資産管理会社は市場価格に基づいて、その
 他の機関と同じステージで競争することになる。
 具体的な方策と構想は中央銀行によって論証と評価が進められ、最終的に中央
銀行金融安定局が実施する。関係者によると、金融安定局体制処の正式文書はま
だ見ていないという。

 しかし、中央銀行が開始する前に、財政部の協力方策は既に始まっている。
 財務部金融司の関係者によると、今回の切り離し計画は早くに決まり、今年3
月始めに、資産管理会社2社に委託し、1970億元の中国銀行と建設銀行の債権を
それぞれ処理するという関連通知が発せられたという。
 この種の事象を見てみると、既に計画されていた2000億近くの処理計画は始ま
ったばかりにすぎない。

 建設銀行の関係者によると、準備中の資産処理計画はこれだけではない。
 今回計画されている不良債権は「破綻先」債権関連だけであり、すぐ後に「実
質破綻先」債権についても処理が始まり、中央銀行が手形を発行して半額で買い
付けるといううわさもあると語っている。
 「今回の処理計画は財政部が資産管理会社に切り離しを要求したものである。
中央銀行が手形を半額に置きかえるというのは、中国銀行、建設銀行の「実質破
綻先」債権のことであり、この両者は全く別のことで、バッティングすることは
ない」とさらにつけ加えた。

 建設銀行の別の関係者によると、建設銀行の2002年末までの「実質破綻先」債
権は1289億元あり、すべて中央銀行が手形形式で転換されるかもしれないという。
 もしそうなれば、手形の置きかえにより、建設銀行の不良債権は4%以下まで下
がることになる。
 また、中国銀行の同時期の「実質破綻先」債権は1554億元であり、処理後は不
良債権率が10%以下になるかもしれない。

 それから、これら置きかえられたことによって生じた資産はやはり資産管理会
社によって処理されるが、1行の銀行に1社の資産管理会社という形式ではなく、
公開入札で価格競争を行い、資産価値の最大化を実現するという。
 中央銀行はいつ手形転換計画をスタートさせるのか、関係者はこの件について
は回答していない。しかし、今回の資産処理終了後に行われるだろうと語っている。

〈株式上場の障害を点検〉
 上層部は、続けざまに起きた問題を点検して、四大行政改革を全力で推進する
決意をあらわさなければならない。
 北京師範大学金融研究センターの鐘偉主任は、不良債権の再処理の要因は多方
面にあると分析している。

 その話によると、2003年末の国が公的資金を投入する際に、中国銀行、建設銀
行に2003年の「株主持ち分+公的資金+税引後利益」が不良債権と相殺した後に
ほぼゼロになるように求めている。
 しかし、中国銀行、建設銀行の税引後利益は結局幾らあったのか、まだ完全に
計算されていない。ただ見積もっただけであり、この見積もりも楽観的である。

 一方、2003年の後に、商業銀行では新たに債務者区分5分類を導入し、さらに
入念に資産を調査し、また多くの新たな不良債権を発見している。
 このように、もとからある株主持ち分、公的資金、利潤は不良債権審査で足ら
なくなり、450億ドルの資本注入は不良債権を相殺できなくなっている。株式上
場という圧力もあり、緩和局面で再援助することしかできない。

 中国銀行の研究者は、鐘偉主任の観点を実証している。
 「株式上場の過程で、中国銀行、建設銀行はこれまでの資産に対し、入念な整
理を行った」「2003年に中国銀行は各支店から多くの人を使って内部で長年の資
産に対し調査、整理を行い、同時期に普華永道も資産に対して資産を調査した。
しかし、不良債権の最終的な数字は以前の見積もりを超えていた」
 この研究者によると、不良債権の問題は既に2行の銀行の株式上場の足かせと
なっており、「中国銀行、建設銀行は上場を既に2度延期しており、建設銀行は
もともと今年の上場、中国銀行は来年中の上場の予定であったが、今この段階で
は2006年か2007年に設定することしかできない」と語っている。

 「上場のテンポが遅い原因は、主にこれまで積み上げられてきた歴史的な問題
の解決が困難であることにある。例えばリストラ、人事改革の推進が順調でない
ことなどである」また、「資本の充足率問題については、不良債権問題の処理が
さらに困難である」
 この研究者は、銀行改革は効率を重視しなければならないと考えており、「中
国の銀行業界改革は既に多くの資源と時間を浪費しており、この時期にさらにお
くらせるわけにはいかない。改革はいずれもすべて苦痛を伴うが、肝心な点は、
一時的な苦痛か、長期的な苦痛かである」と語っている。
〔世紀経済報道5月22日〕