CI Image
 
電子マガジン・中国最新情報
中国国内各紙の報道をもとに編集部が独自のセンスで選んだ、中国経済全般、政策動 向、産業一般、社会などホットな中国情報満載。日本の報道では物足りない、今の中 国を日本語で読みたい方は必見!
登録  解除    メールアドレス  

特集内容一覧へ

格差拡大と発展成果享受の矛盾

「第十一次五カ年計画」 貧富の差縮小に重点

 中国の都市住民と農村住民の所得格差は、1995年の2.5倍から2003年に3.23倍
に拡大した。都市住民が受け取った各種の交付金、補助金などを加味すると、実
際の所得格差は約5倍に上る。
 急速に拡大する貧富の差は、将来の中国の経済成長、社会調和を脅かしかねな
い。
 中国共産党中央委員会は10月8日―11日に北京で全体会議を開催し、今後5年間
の国民経済・社会発展計画について討議した。
 アナリストは、中国の政策は、経済の持続的な高度成長を追求すると同時に、
成長のバランス、機会均等、社会的公平に念頭に置いており、貧困者はより貧し
くなり、富裕層がより豊かになるというような不利な局面を避けようとしている
と話す。
 アジア開発銀行中国駐在代表処の湯敏チーフエコノミストは、「改革発展の成
果を享受し得る人々の数を最大化するには、貧富の差、都市・農村間の格差をな
くすことは、社会調和を実現するための重要な目標だ」と話す。
 世界的には、一人当たりGDPが1000米ドルに達した後の一時期には社会矛盾が
拡大したり、繰り返されやすくなる。
 湯氏は、中国にとって今後5年間がこの重要な時期に当たると指摘する。中国
はリスクを回避するために努力し、一部の国の二の舞となることを避け、他の発
展途上国に発展の参考例を示すべきだという。
 そして、中国の第十一次五カ年計画ではこの問題の解決に重点が置かれている
ことがさまざまな点からうかがえるという。
 あるアナリストは、市場経済の特徴であるインセンティブメカニズムが国民の
所得不均衡を生み出していると話す。政府の政策の偏りや政策の欠如が所得不均
衡を深刻化させている。
 国務院発展研究センターの盧中原マクロ部部長は、第十一次五カ年計画期間中、
政府はマクロ政策上から国民所得の配分制度、国家財政支出構造の調整を図り、
農業支援・保護システムを構築するとともに、農民に対する公共サービスの充実
を図るだろうと予測する。
 また、政府は今後、投資資金の増額対象の重点を農村、農業、農民に移し、そ
の資金額が財政の経常収入の伸び率をはるかに上回るペースで増額する可能性が
あるという。
〈1953年に始まったソ連式「五カ年計画」〉
 総じて中国の今後5年の成長目標と方向性を策定する影響は大きい。
 第九次五カ年計画、第十次五カ年計画期間中は、「経済建設を中心とする」と
いう指導思想によって、中国経済は年平均8%を超える速度で成長。
 2004年、第十次五カ年計画で確定した目標値であるGDP総額12億5000万元、一
人当たりGDP9400元を達成した。
 だが、高度成長とともに中国社会には著しい不均衡が生じた。特に都市と農村
との格差、貧富の差は拡大し、二極化が顕著になった。
 胡鞍鋼・清華大学教授はある研究レポートの中で、中国の都市住民、農村住民
の一人当たりの所得格差は1995年には2.5倍だったが、2003年には3.23倍に拡大
したと指摘する。都市住民が得た各種の交付金、補助金などを加味すると、所得
の実質格差は約5倍に達するという。
 中国は所得が比較的平等な国から、所得格差が深刻な国へと急速に変化してい
る。
 都市と農村との格差は農業人口の多くを貧困層におとしめているのみならず、
都市住民に対しても大きな就業上の圧力を生み出している。第十次五カ年計画期
間の全国のGDP平均伸び率は8.6%だったが、工業分野では高成長の半面、就業率
がわずか0.7%の伸びにとどまり伸び悩み、2004年には初めてマイナスに転じた。
 観測筋によると、中国の都市と農村では既に「貧困」層ができているという。
 急速に拡大する貧富の差は、中国の将来の経済成長、社会の調和を阻害しかね
ない。
 統計の試算によると、第十次五カ年計画期間中に各種民事訴訟件数が急速に増
加し、訴訟金額はGDPの7%前後を占めた。中国の刑事事件は1986年以降、年平均
で10%以上増加した。 
 このような厳しい状況に対し、中国は第十次五カ年計画後期には調和のとれた
社会の建設を目標として掲げている。
 国務院の温家宝総理は今年3月、数百人の中国人、外国人記者に対して、ノー
ベル賞を受賞した米経済学者シュルツの「貧困の経済学」理論を引用し、調和の
とれた社会を建設する国家統治の総合計画について注釈してみせた。
 胡鞍鋼は「これが第十一次五カ年計画の基本理念の一つになるだろう」との認
識を示している。
〔市場報10月10日〕

ジニ係数0.45を超える 貧困家庭収入差は8倍超

 第16期中央委員会第5回全体会議で貧富の格差について白熱した討論がされて
いるが、それ以前に行われた調査によると、目下政府は社会余剰生産物の総価値
の87.5%を掌握し、社会には12.5%しかとどめていなかった。
 国家発展改革委員会経済研究所研究員の楊宣勇氏は10日、「第一財経日報」に
対し、このような局面が変わらないのであれば、社会投資能力の低下を招き、住
民消費能力の低さや社会再生能力がそがれ、技術進歩等に深刻な影響を与えると
指摘している。
〈あるデータ ジニ係数〉
 統計局のデータによると、都市住民の可処分所得のジニ係数は断続的に上昇し
ており、2003年0.34に達し、前年比0.018上昇となり、第十次五カ年計画末期の
0.35を超える可能性がある。
 「これは、最も豊かな10%の家庭と最も貧困な10%の家庭の一人当たり可処分所
得の格差が8倍を超え、あるいは6割の都市住民の一人当たり可処分所得が平均水
準に達していないことを意味する」と楊宣勇氏は示している。
 事実上、中国の都市のジニ係数は早くも2000年には国際的に認知されている警
戒線である0.40を超えており、現在既に0.45を超えている。
 「改革開放から既に26年が過ぎ、我々は多くの民衆がさらに普遍的に経済社会
の発展の成果を享受することができるように考慮しなければならない」第十一次
五カ年計画で実行すれば、それだけでも社会経済の全面的な協調発展が実現する
と楊宣勇氏は見ている。
〈2つの現象 賃金上昇とストック収入〉
 民衆にはジニ係数の話をするよりも、産業の格差を挙げる方が一人一人がよく
理解できるかもしれない。
 第十次五カ年計画の期間において、中国の電力、ガス、水道、鉄道、通信とい
った産業の平均賃金の年間成長率はそれぞれスピードアップし、3―5ポイント上
昇している。金融保険業、党政機関及び社会団体も、それぞれ第9次五カ年計画
の期間において7ポイント、5ポイント以上上昇している。
 楊宜勇氏によると、これら各業界の就業者の所得水準はある程度上昇している
ものの、上昇の程度は異なっている。特に明らかになっているのは、独占的企業
と一般業界の職員との間の所得格差が引き続き拡大しているという趨勢である。
 そのほか注目に値する現象としては、現在全国の一人当たりのストック所得の
成長速度は、労働収入(都市における賃金収入及び農村の経営収入)の倍になっ
ていることである。
 つまり、ある人がなお努力して労働力の対価として報酬を得ているときには、
ある人は働かなくても財産がもたらす収益を享受できる状態になっていて、しか
も前者の成長の速度は後者には及ばないということである。
 2004年の第1―3四半期を例にとると、全国の都市住民の一人当たり賃金収入は
前年同期比11.8%増となっているが、一人当たりのストック収入のうち不動産賃
貸収入は何と54.5%に達している。
 ストック収入の増加幅は比較的早く、ストック格差の拡大はさらに収入分配の
不平等を劇化させている。
 楊宜勇氏は、第十一次五カ年計画の所得分配問題とその対策報告を起草すると
き、この問題をコントロールをするよう提案をした。
〈民衆に経済発展の成果を享受させる〉
 よく言われていることとして、ある一つの国家の一人当たりGDPが1000ドルか
ら3000ドルに進む過程で、往々にして産業構造が劇的に変化し、社会構造が再調
整され、収入が急激に分化し、利益矛盾がふえ続ける。
 楊宜勇氏は、現在の中国が穏便にこの難関を乗り越えることが、科学的発展観
の全面的な貫徹のために不可欠であると考えている。具体的には、所得分配問題
を高く重視し、多くの民衆がさらに普遍的に経済社会の発展の成果を享受させる
ことである。
 この過程において、政府は最も重要な責任を負っており、立法及び政府の行為、
社会政策のシステム化を通じて成果の享受を完成させなければならない。
〔第一経済日報10月11日〕