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治山治水と水資源の行方

長江の洪水防止に憂慮 三峡ダムの洪水防止目標は達成できていない 下

(前号より続く)
〈今夏の全国の洪水防止情勢は楽観を許さない〉
▼記者:豊水期の情勢は全国的に見るとどういった状況でしょうか?
▼鄂竟平副部長:4月中旬―5月上旬、江南では局地的に暴風雨が頻発し、長江流
域の支流の一部では史上最大の基本高水水量以上の洪水が発生しています。
 5月中旬、今年の台風第1号「珍珠」が広東に上陸しましたが、これはこの時期
に上陸した台風では過去五十数年間で最大規模のもので、上陸が早く、大型で強
く、進路も特殊なものでした。広東、福建の2省は大がかりな防災準備をしまし
たが、それでも多くの死傷者が出ており、かなりの経済的損失を与えました。
 気象部門は、今夏は華北南部から長江下流にかけて降雨量が多く、漢江上流地
域で洪水や浸水による災害が発生するかもしれないと予測しています。異常気象
による災害は毎年この時期に比較的多くなっています。
 年間を通して見ると、太平洋北西部と南シナ海の海域で発生している熱帯性暴
風雨や台風は明らかに昨年より多くなっており、中国に上陸する回数は例年より
かなり多くなっています。
 中国は国土が広く、地形が複雑で、豊水期の気象は複雑性に富んでおり、不確
定要素が多くなっています。大型河川流域では毎年必ず災害が発生すると言われ、
局地的な暴風雨や洪水が引き起こす浸水被害も避けることは困難で、台風による
災害の影響を小さく予想することはできません。
 現在の科学技術で長期の気象状況に対する正確な予測を行うことは困難です。
我々は、発生する可能性が高い河川の洪水、局地的な洪水被害、突発的な鉄砲水、
台風災害に対して強い警戒心を維持しなければなりません。
▼記者:今年の洪水防止事業はどういった準備がされていますか?
▼鄂竟平副部長:4月10日、国家洪水干害防止総指揮部が今年初めて全体会議を
開いています。中国共産党の中央政治局委員で、国務院副総理、国家洪水干害防
止総指揮部の回良玉総指揮官は、この会儀で重要な講話を行い、2006年度の洪水
防止干害防止工作を発表しています。
 4月25日、国家洪水干害防止総指揮部は浙江で2006年全国ダム洪水期安全対策
現地会議やテレビ電話会議を行っており、全省挙げてダムの洪水期安全対策を行
っています。
 5月15日、国家洪水干害防止総指揮部は今年の豊水期洪水及び干ばつに対する
分析会議を開き、対策を研究しています。
 昨年の豊水期後、大規模な洪水や干ばつ防止工事として、全国範囲で、補強工
事、水害後の修復、洪水期を安全に過ごすための応急工事、干ばつ防止工事をセ
ットにしたものを主要な内容とする冬春水利建設を展開しました。
 鉄砲水災害の損失は重く、その防止事業は困難で、台風上陸が多く規模が大き
いという問題については、国家は専門家を招集して会議を開いており、防御策に
ついて評価し、事業構想と重点ポイントを発表しています。
 ダムの安全は洪水防止事業の重点でもあり難点でもあります。
 ダム水力発電所の洪水防止責任制度、権限の配置、運用計画と洪水防止の災害
救助訓練の許認可の配置等をさらに進めるべく、各ダム、水力発電所の安全管理
を強化し、国家洪水干害防止総指揮部は「ダム、水力発電所の洪水防止管理の関
連問題の明確化に関する通知」「ダムの応急措置編成大綱」を印刷配布していま
す。
 また、国家洪水干害防止総指揮部は、全国733カ所の洪水防止重点中型ダムを
指定し、「全国洪水防止重点中型ダム管理強化に関する意見」を制定しています。
 4月下旬から、国家洪水干害防止総指揮部は、七大河川流域と西北地域に対し、
豊水期以前に検査を行い、各地に洪水防止の準備作業を実行するように促してい
ます。
 5月下旬、国家洪水干害防止総指揮部は、地レベル、市レベルの洪水防止行政
指導者研修を行い、行政上級指導者の洪水防止の指揮能力とレベルを上げていま
す。国家洪水干害防止総指揮部は近日中に、全国の主要メディアに責任者の名簿
を発表することにしています。
〔新華網5月31日〕

黄河中流に重化学工業企業群 水戦争発生の可能性

 寧夏と内モンゴルの黄河沿岸に大量の水を消費する大規模な重化学工業産業群
が建設されることで、黄河の水資源の供給配分状況はさらに逼迫することとなり、
「水戦争」を誘発するかもしれないと一部の人が警告している。
 寧夏回族自治区の銀川市から内モンゴル自治区のフフホト市までの800キロ足
らずの黄河中流の沿岸に、総投資額4000億元以上の石炭と水にかかわる重化学工
業産業群が現在建設中である。
 黄河は中国で2番目に長い河川で、西北と華北の人口密集地域を流れている。20
年以上にわたって水資源が不足しているその沿岸に密集して重化学工業を建設さ
れるということは、新たに巨大な水需要が増加することを意味する。
 水利専門家は、寧夏、内モンゴルの黄河流域の2010年の工業用水需要量は21億
3000立方メートルで、5倍以上になるだろうと予想している。現在、寧夏と内モ
ンゴルでの使用水量は黄河の総使用水量の35%を占めている。
 黄河水利委員会水量調節局の安新代局長は、黄河中流に黄河の水資源能力を超
えた重化学工業が建設されれば、恐らく工業、農業、生態系間に「水戦争」が誘
発されることになり、黄河下流の省の取水にも深刻な影響を及ぼすことになるだ
ろうと警告している。
 2003年以来、黄河の寧夏流域と内モンゴル流域では16回も川が枯れているが、
これは歴史上、極めてまれなことである。1972年から1999年までの27年間でも黄
河下流では21回しか川は枯れていない。
 寧夏銀川の寧東鎮では、黄河に中型ダムをつくって蓄水し、11カ所の大規模発
電所、炭鉱、化学製品工場の使用水に充てている。現地の政府官僚によると、こ
こでは大規模な電力、石炭化学工業基地が建設されており、総投資額は2000億元
以上になるという。
 内モンゴルのオルドス市では、電力、石炭化学工業プロジェクトとして総投資
額1500億元が建設中や建設計画中である。今年だけで600億元の投資が計画され
ている。
 水利部の黄河水利委員会の分析では、1990年代の黄河の平均河川水量は450億
立方メートルで、実際に使用できる水量は350億立方メートルだという。
 黄河水利委員会の李国英主任は黄河の水資源利用は既に限界点にあるという。
 黄河水利委員会の専門家は、2010年までの黄河流域での中ぐらいの渇水が起こ
るときの年間の水不足量は100億立方メートルとなり、農業、工業、生態系の水
使用状況のバランスが崩れてしまうだろうと推計している。
 安新代局長は「黄河の現状では寧夏と内モンゴルに新たな水の割り当ては許さ
れない状況で、黄河からの取水ができない地域が増加しています」と話す。
 2003年から、水利部は寧夏と内モンゴルで水資源配分の移転を試み、この地域
での水資源の供給矛盾を緩和している。2010年までに、農業から工業へ6億立方
メートル近くの水資源を移転し、工業の増加し続ける水需要を満たすことになる
だろうと予想している。
 しかし、一部の専門家は、市場メカニズムによる水資源配分の移転は水資源不
足緩和に画期的ではあるが、短期的な需給バランス維持にすぎず、黄河の水資源
の需給矛盾を根本的に解決できないだろうと指摘している。
 内モンゴル水利庁の陳欣副庁長は「水資源移転での水使用バランスが維持でき
るのは2010年までで、それ以後も維持することは困難です」という。
 一部の水利専門家は、農業での節水は有限で、オルドスかんがい地域の年間降
水量は300ミリ以下なのに、蒸発量は2000ミリ近くもあり、もし黄河の水による
かんがいができないのであれば、とっくに砂漠になっていただろうと指摘してい
る。
 内モンゴルの巴彦泥爾(Bayanur)市かんがい総局の張浩文さんは「5年近くで、
私たちは累計10億立方メートルを節水してきました。しかし、地下水位は3年連
続下がっており、一部地域では最高2メートルも下がっています」と話す。
 政府の統計によると、2005年の5月と6月だけで、寧夏黄河かんがい区は農業用
水の逼迫が原因で59件の紛糾が起こっている。
 専門家たちは、黄河中流の生態は非常に脆弱で、水資源は工業、農業、生態系
の三者に配慮を加えるべきであり、有効な措置をとることで、沿岸地域の経済発
展も「水の状況を見て行う」ようになると話す。〔新華網6月1日〕