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養育と介護の負担増 個人の立場と社会の介入

子供の養育コスト49万元とは 理性的ではない消費がコストをふやす

 先般、上海社会科学院家庭研究センターの徐安主任はある取材電話を受けた。
「私は月給3000元の夫の子供を産むべきかどうか」と銘打ったテレビ番組におい
て、司会者が彼女に電話をして尋ねたのだ。
 「あなたの「子供の養育費コスト49万」という研究結果が、多くの若者に子供
を産みたくないと思わせている。あなたの研究は一体どういうことなのか?」
 この質問に対し、徐安主任は間髪入れず「私の研究結果が大衆から誤解され
ている!」と嘆きの声を上げた。
 最近、社会において流行している「孩奴」という言葉、子供の養育の経済コス
トが高過ぎて、若者夫婦が子供の「奴隷」になって育児をすることを余儀なくさ
れてしまうという意味であるが、このような「孩奴恐怖症」について、徐安主
任は、事実関係を明らかにして誤りを正すべきだと述べる。
〈大衆は「49万元」を誤解している〉
 近年、「孩奴」のほか、「房奴」、「車奴」、「〓奴」等が社会的に注目を浴
び、日常生活をリラックスして過ごせない「80後」をまた緊張の糸で縛り上げて
いる。
 ネット上の「孩奴」の定義は、夫婦に子供ができた後、一生すべてを子供のた
めに苦労し、お金を稼ぎ、みずからの価値を失ってしまう生活状態を指す。した
がって、「孩奴」となった人は、病気もできないし、高額な買い物もできないし、
むやみに仕事も変えられない。
 そこで、「私は月給3000元の夫の子供を産むべきかどうか」というようなやり
とりが出てきたのである。
 あるウエブサイトで、「私は月給2500元の貧しい夫の子供は要らないが、間違
っているのだろうか?」という書き込みに熱心なやりとりがあった後、「都市の
低収入者は子供を産めないの?」というやりとりも起こった。その結果、投票に
参加した4200人のネットユーザーのうち「低所得では子供を望めない」に賛成し
たのは総投票数の86.6%を占めた。
 この種の問題の討論の中において、徐安研究員が6年前に研究した結論「1組
の夫婦が子供を出産してから30歳まで育てるのに49万元必要」というのが「重要
根拠」となった。「孩奴」になることを望まない人から見れば、出産後に生まれ
る経済コストは実に高過ぎるのだ。
 これに対し、徐安主任は、大衆は私の研究を誤解していると話す。
 まず最初に、「49万元」というのは、徐匯区において確率抽出法で行った調査
結果であって、この地域の住民の生活水準は上海の平均水準を上回っており、こ
の結論を一般化することはできない。
 第二に、中国の子供の結婚前の衣食住は実家が担っていて、父母がさらに子供
の一部または全部の結婚費用を支払うことを考慮して、研究の統計範囲に子供が
大人になった後の経済コストまで延長して含めたため、金額が多目になった。
 また、この研究はゼロ歳からの子供の30年間の追跡調査ではないが、2003年の
物価水準を基準としてゼロ歳から30歳までの子供の両親の平均出費を加算して得
られた結果である。
 つまり、今の子供の30歳になったときの両親の実際の出費がこのように高額な
経済コストであるとは限らない。
〈理性的でない出費は少なくない〉
 「さらに重要なことは、49万元というのが平均値であるということだ。さまざ
まな家庭において子供に投入される経済コストの個体差はとても大きいのが事実だ」
 徐安主任はこのように述べ、「現在、多くの保護者が「子供がスタートライ
ンで負けさせてはいけない」と考えるために、理性的ではない消費が多く、子供
を養育するコストの大幅上昇につながっている」とする。
 徐安主任の調査では、小中学生を持つ家庭のうち、家庭教師、補習塾や習い
事で年間最大で1.4万元に達していた家庭があった。
 自分の生活を切り詰めて、金には糸目をつけず子供に生後1カ月のお祝いをし、
豪華な誕生日を行い、学校を選んで、家庭教師を雇い、高額な幼稚園に通い、各
種英才教育をさせ、有名ブランドの服を買い与える保護者も少なくない。
 ある家庭では、子供の着る有名ブランドの服で年間1.5万元、家庭教師、習い
事で年間1.4万元、携帯電話、ネット接続料で0.8万元、お小遣いは最高額では1.2
万元、生後1カ月のお祝いや誕生日で2.8万元、買い与えた住宅、留学の最高費用
は50万元、30万元だった。
 しかし、これらの項目での出費が少なかったり、あるいはゼロである家庭も少
なくない。
 このことは、「1人当たり49万元」の養育コストは基準ラインではなく、実は
多くの出費はあることもあるし、ないこともある、高いときもあれば低いときも
あるということをあらわしている。仮に、両親が子供に対する高過ぎる期待を減
らし、小さいころから子供の自立や勤勉節約の習慣を養えば、その子供の養育の
経済コストは対外的に言われるような高額にはならない。
〈養育コストには伸縮性がある〉
 徐安主任は、別の研究では、家庭の経済出費と子供の学業成績、心身の資質、
健康、社会適応能力との間には顕著な正の関係は見られないとも表明している。
つまり、子供にかける費用が高過ぎないことが、子供の健全な成長と全面的な発
展にはより有利なのである。
 このインタビュー調査で、子供が優秀である家庭の保護者が徐安主任に述べ
たところでは、子供に家庭教師をつけたり、補習塾に通わせたりしなかったが、
小さいころから子供を多くの課外活動に連れていき、さまざまな博物館や美術館
に行き、人との交流を多くし、彼らの観察力や表現力や自立心を養った結果、子
供は強い学習の自覚、自己抑制能力、社会適応性を持つようになったという。
 「この研究結果で言えることは、子供の養育の経済コストには伸縮性があり、
代替可能であるということである」
 したがって、徐安主任は、両親は子供の養育のコスト構造を最適化するべき
で、多かれ少なかれ経済コストを減らし、時間コスト、一時的な感情的なコスト
投入をふやすことを提案する。このようにすれば、「孩奴」に陥らないだけでな
く、子供がさらに健全な成長ができるのだという。
注)〓は、「上」の下に「ト」
〔解放網―新聞晩報2010年8月30日〕

中国介護機関ベッド数不足300万 介護難到来 上

 伝統的な家庭における介護という重い負担を耐えられないが、介護機関のサー
ビスは逼迫していて空きベッドを探せない。保育所の待機児童の問題に引き続き、
介護難が表面化している。介護施設、サービスの大幅増が当面の急務である。
 ある92歳の高齢者は半身不随で、月壇街道エリアの敬老院の広い廊下に車いす
でいた。彼は立ち上がりたいと騒ぎ出し、そばにいたヘルパーは力を入れて彼を
持ち上げ、彼の足を地面に軽くつけてから、また車いすに座らせた。
 その高齢者は既に行動能力を失っていて、加えて重度の認知症で、終日ヘルパ
ーの介護が必要である。「もしここに連れてこれなかったら、私たち家族では対
処しようもありませんでした」85歳の妻の王さんはやるせない思いでこの様子を
見ていた。
 高齢者の周りにはまだ二十数人の車いすに乗った高齢者がいるが、大多数は話
すことも動くこともできない。高齢者の中には、鼻に流動食を入れるためのチュ
ーブを差し込み、頭が前のめりになり、目がうつろである者もいた。
 ここの専門ケア施設は行動能力のない高齢者50人を介護しているが、このケア
施設は依然としてコミュニティーのすべてのニーズを満たしていなかった。この
敬老院には随時50人の高齢者が施設入所を待っているのである。
 郷や鎮において組織的につくられた養老院であろうが、市に属する福利院であ
ろうが、北京の公共介護機関はすべて満員である。たとえ料金が高く、中間から
高級層に位置する北京太陽城高齢者マンションであっても、先日最後の2室を残
すだけで「この週末を過ぎれば、空き室はなくなる」。
 介護サービス機関は3816件あり、ベッド数は6万1823床であり、北京の226.6万
人の高齢者の介護ニーズを満たしようがない。北京のある街道エリアの敬老院で
働く従業員に聞いたところ、高齢者は一般的には2年前後待ってようやく空きベ
ッドが回ってくるのだという。「人が死なないと入れない」
 北京に限らず、中国の各大都市で、養老院の空きベッドを探せない。
 2009年末現在、中国の60歳以上の高齢者の人口は1.67億人に達し、総人口の1
2.5%を占めた。そのうち、80歳以上の高齢者は1899万人で、行動能力のない高齢
者は940万人、一部の行動能力を失った高齢者は1894万人である。
 社会がしっかり準備をしていなかったことは明白である。
 「行動能力のない高齢者が家族を滅ぼす」中国社会科学院社会政策研究センタ
ーの楊団副主任はこのようにコメントした。数年来の家族の小型化の趨勢、現代
化という背景のもと、高齢者だけで暮らす家庭が激増し、伝統的な家庭における
介護という重い負担にはとっくに耐えられなくなっている。
 多くの社会学者は介護施設、サービスの大幅増が当面の急務であると見ている。
 目下、第十二次五カ年計画の31の特別計画が既に基本的に画定しており、国務
院の最後の承認を待っている。その中には、意外にも、これまで注目されていな
かった基本介護サービスシステム建築計画が押し込まれた。この項目は初めて正
式に国家の五カ年計画に入ったものである。
 計画は中央から地方各レベルへの財政資金投入がはっきりしている。中央レベ
ルの資金規模が100億元で、中部、東部、西部に対し比例配分されるが、最終的
な比率はまだ確定していない。
〈介護不足〉
 2009年、中国人の平均寿命は73.05歳である。1人当たり寿命の延長は人体機能
の老化を必然的に伴う。
 全国の行動能力のない、一部の行動能力を失った高齢者は目下3000万人未満で
あるが、老齢人口の増加、寿命が延長するに伴い、数量はさらに持続的に増加する。
 楊団副主任は、介護サービスの提供は正位置と逆位置の2つの正三角形になぞ
らえることができるとしている。
 介護サービスを必要とする高齢者の人口構造は正位置の正三角形であり、行動
能力のない高齢者人口がそのトップに位置する。高齢者向けに提供される介護サ
ービスは逆位置の正三角形であり、トップの部分の高齢者に最も多くの介護サー
ビスを提供する必要がある。
 理論と現実の間にはやはり大きな落差が存在している。2009年末現在、中国全
国の各種高齢者福祉機関は3万8060件、ベッド数は266.2万床である。
 国際的な経験から見ると、先進国の介護サービス機関の1000人当たりのベッド
数は50―70床である。中国における65歳以上の高齢者の1000人当たりのベッド数
は23.5床である。保守的に見積もったとしても、介護機関のベッド不足数は300
万床以上である。
 専門のヘルパーも非常に不足している。全国のすべての機関のヘルパー数は20
万人余りにすぎず、ヘルパー証を持つのはわずか2万人強である。
 中国の伝統に基づけば、お年寄りに対する介護は義務で、多くは家庭が負担を
担っていた。しかし、家庭の介護能力は限界に達していて、社会機関やサービス
の力をかりざるを得なくなってきており、このことが社会の介護サービス不足を
ますます激化させている。
 家庭形態の変化も、この結果を後押しするに至らせている。中国の一人っ子政
策が実施されて30年がたった。初代の一人っ子の保護者が高齢期に入り、中国で
は全面的に「421家庭」時代が到来した。すなわち1組のカップルが4人の高齢者
と1人子供を養うという構図が日増しに主流になってきており、負担が極度に過
重となっている。
 同時に、現在の都市化の波による、人口移動や家庭の小型化も、家庭の旧来の
世代間の養育機能に打撃を与えている。民生部及び中国老齢工作委員会のデータ
によると、都市の高齢者のうち、高齢者だけで暮らす家庭の割合は既に49.7%に
達している。
 農村においては、大量の青壮年が外に出稼ぎに行ってしまい、高齢者、子供、
中年以上の女性が家で留守を守ることが常態化している。中国社会科学院政策研
究センターが2008年に山西、陝西、甘粛の農村で行った調査によれば、70歳以上
の高齢者の半数以上はみずからの面倒をみずからで見るか、配偶者が面倒を見て
いる。
 たとえ家族が介護の義務を果たしたとしても、介護の質は意に沿ったものにも
なっていない。
 社会科学院の「中国農村高齢者介護サービス研究」では、伝統的な家庭の介護
基準は低く、専門性も劣っていることがはっきりしている。
 農村の農繁期では、家族が高齢者に対する介護で過失によるミスや放置を起こ
しやすく、身の回りに子供のいない高齢者はなおざりにされやすく、甚だしきに
至っては、子供が身の回りにいるお年寄りであっても介護放棄に遭遇することも
ある。
 北京心理危機研究及び介入センターの費立鵬執行主任は以前、農村の高齢者の
自殺率は都市高齢者の5倍で、農村の自殺者数は中国の自殺者数の90%を占めるこ
とを明らかにした。
 中国老齢事業発展基金会の李宝庫会長もまた、ある会議の席上で、「中国の農
村の高齢者の自殺率は世界平均水準の4倍から5倍に達している」と紹介し、湖北
省の京山地区では、自殺小屋、自殺穴まで存在するとした。
 相当大部分の高齢者は病気のために子供の迷惑になりたくないために、古い家、
傾斜地、林、川の溝を選んで、静かにみずからの命を絶っている。
(次号に続く)
〔2010年8月30日財新網〕
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