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マクロ経済運営の懸案と日帰り貿易問題

エコノミスト調査 地方債リスクが最大の課題

 地方政府債務を中国マクロ経済の直面している最大の課題として認識しているエ
コノミストが全体の63%に上ることが、18日に公表されたエコノミストを対象とす
るアンケート調査から明らかとなった。
 生産能力の過剰問題や経済成長の減速、不動産バブル等分野もまた、今後の中国
経済の健全な発展を左右する決定的、あるいは重要な要素であるとされている。
 この「中国マクロ経済の年間情勢及び政策に関するアンケート調査」は、新華社、
経済参考報社とアモイ大学マクロ経済研究センターが合同で行った初の調査である。
 回答者の多くは、中国の年間GDP成長率は7.5%の目標値に達すると考えており、
また、回答者全員が、年間CPI成長率は3.5%の目標値を下回ると考えている。2013
年中国の国民所得レベルは向上する見込みとしたのは、回答者のわずか2%であった。
 回答者の多くは、中国政府が再び政府投資主導の大規模な景気浮揚策や、貸付刺
激主導の通貨政策を行う可能性は低く、下半期の中国のマクロ経済政策においては
適時適切に微調整を行うとともに、税制、金融制度、民間資本の活性化等分野の改
革推進を加速させ、制度改革においてより一層の効果を上げると見ている。
 回答者の多くは、2013年の中国マクロ経済運営に対して楽観的な態度を示してお
り、72%が「目下、中国のマクロ経済運営は安定しており、成長率も合理的範囲に
ある」、77%が「年間GDP成長率は7.5―7.9%の範囲」と回答している。
 しかしながら、これらの楽観的な態度は非常に注意深く見るべきである。
 回答者の67%が「中国の実体経済の発展は減速する」、51%が「中国の金融システ
ムには体系的なリスクがある」としており、「国民の所得レベルが向上する」と回
答したのはわずか2%にすぎなかった。政府当局の打ち出した不動産価格抑制策「国
5条」が不動産の投機的売買及び不動産価格上昇の抑制に効果があったとする回答
者はいなかった。
 また、「現下の中国のマクロ経済において特にすぐれている点」の項目に関して
は、回答者の判断が分かれ、「物価水準が安定的に推移し、国民消費の伸びが期待
できる」を選択した回答者が最も多かったが、それもわずか49%であり、3割近い回
答者が選択肢にない回答を挙げた。
 回答者の23%が、年間GDP成長率を7.1―7.4%の範囲と予測している。2013年上半
期のGDP成長率が7.6%に達したことを考慮すると、この結果は、下半期中国の経済
成長はより一層減速するとの見方があることを示している。また、年間GDP成長率
が7%以下あるいは8%以上と回答した者はいなかった。
 現在、中国の経済発展が直面している最大の課題を「地方政府債務」とした回答
者が全体の63%、次いで「生産能力の過剰問題」42%、「経済成長の減速」37%、
「不動産市場価格の報復的上昇が将来的に招く可能性がある不動産バブルの崩壊」
30%、「輸出の減退」16%だった。
 以上の結果から、多くの回答者の意見が、地方政府の債務リスク、生産能力過剰
問題、経済成長の減速、不動産バブルの4分野に集中しており、これらが今後中国
経済の健全な発展に影響する決定的あるいは重要な要素であることが明らかになった。
 また、回答者の21%が、最大の課題は他にあるとしている。
 「産業構造調整の進展が遅く転換や高度化に障害が出ている」「過剰な生産能力
の調整、デレバレッジング」「所得格差による消費需要の不足、需要拡大の難し
さ」「新体制下における経済発展が直面する一連の2つの難題、改革と発展のいず
れも有効的な全体設計が不十分であり、目下の対応策が断片的」「雇用基盤が弱
い」「資源的制約、生態系の急激な悪化」等がこれに含まれる。
 下半期の中国マクロ経済政策の方向性に関して、「税制改革を推進し、小規模零
細企業の減税措置を実施し、増値税の転換を全面的に推し進め、税制改革において
効果を上げるべき」とする回答が86%、次いで「金融改革を推進し、実体経済を立
て直し、金融改革において効果を上げるべき」、「民間資本を活性化し、市場で解
決できるものは市場にゆだねるべき」との回答がともに77%であった。
 通貨、財政政策の分野においては、多くの回答者が「中国政府は着実な通貨政策
のもと、適時適切な調整を行うべき」とした。回答者の63%が「下半期、中国政府
は引き続き確固とした財政政策を推進する」としており、37%が「拡張的な財政政
策を推進する」とした。
 今回の調査アンケートには、現下の中国マクロ経済運営及び政策の方向性に直接
関係する12項目が設けられ、8月初旬に電子メールを通じて中国国内のエコノミス
トに調査への参加を呼びかけ、最終的に43通の有効回答を得たものである。
〔経済参考報2013年8月19日〕

「日帰り貿易」現象横行 半年で600億ドル米ドルも

 7月、中国の対外貿易情勢に大逆転現象があらわれた。
 8月8日、税関総署が発表した対外貿易データによると、7月期の対外貿易総額は
3541億米ドルで前年比7.8%、輸出が1859億米ドルで前年比5.1%増、輸入が1681億米
ドルで前年比10.9%増だった。
 輸入と輸出の成長が対前月比で大幅に反転し、マイナスがプラスに転換し、増加
幅は市場の予想をはるかに上回った。
 一方、税関情報ネットが8日に発表した対外貿易報告の詳報「2013年上半期経済
情勢概要及び我が国輸出入貿易情勢分析報告」によると、「日帰り貿易」の影響を
取り除くと、上半期の中国の輸出入総額は1兆9332億米ドルだった。以前に公表さ
れたデータは1兆9976.9億米ドルであり、両者には644億米ドルの差があった。
 専門家は取材に対し、次のように述べた。
 中国が打ち出した新政策では一部商品に対して輸出検査を実行しなくなったのだ
が、そのことは貨物通行に利便をもたらす反面、虚偽貿易行為が再び勢いをもって
台頭してきている。さらにまた、下半期の輸出分野では、強い勢いの人民元高、相
対的に下がりぎみの外需注文等の試練に直面している。
〈7月の輸出入がマイナスからプラスに大転換〉
 以前、エコノミストは、7月期の対外貿易データは景気回復の状態があらわれる
と予測していたが、輸入は10.9%増、輸出は5.1%増で、2.9%増、3.5%増という平均
予想をはるかに上回り、6月期の0.7%減、3.1%減というマイナス成長から大きく逆
転した。
 交通銀行のシニアエコノミストの連平氏は取材に対し、次のように述べた。
 7月期の輸出入データでは、アメリカ、EUの二国間貿易がある程度回復している。
最近の諸外国の消費、生産活動の季節性要因による景気押し上げを受け、アメリカ、
日本、EU、BRICsへの輸出は全体的に上昇に転じている。
 データによると、中国とEU、ASEAN、アメリカ等の2国間貿易は比較的活発で、7
月の主要貿易パートナーとの二国間貿易のうち、対日貿易が下がっただけで、対中
央ヨーロッパは5%増、対アメリカは10%増、そのほか対ASEANも13.1%増だった。
 海通国際のシニアエコノミストの胡一帆氏は、7月の輸出は主にASEAN加盟諸国の
輸出の力強さによるものと見ている。対ASEAN輸出額の上昇が最も高く、前年比21.3%
増に達し、6月の前年比10.2%増に比べて大幅上昇となった。
 「対EUの輸出上昇は、最近の中央ヨーロッパの太陽光パネル輸出に関する貿易紛
争が合意に達したことに関係している。輸出品目のうち、服装とハイテク製品の輸
出額の上昇が最も高く、それぞれ前年比13.9%増、3.6%増となった。6月は前年比
2.6%増、3.1%減だった」(胡一帆氏)
 政策においては、政府は既に輸出支援のかなめとなる政策を発表している。7月24
日、国務院の第18回常務会議で「輸出入の安定した成長、構造調整の促進に関する
若干の意見」が通過した。
 胡一帆氏によると、財政部も、戦略業種の比較優位の向上についての一連の措置
を提案しており、輸出入データは、需要回復と支援策に伴い、今年上半期に好転の
兆しがあると予想している。
 一方、人民元レートの大幅上昇が企業の輸出に影響を与えている。過去6カ月の
人民元高はすさまじく、仲値は累計で1068ベーシスポイント上昇し、上昇幅は2%近
かった。
 しかし、7月に入って以降、人民元上昇は明らかに弱まり、年内に初めて減少す
るとも予想されている。このように考えられているのは、輸出促進が一つあるから
である。
 輸入においては、7月の中国の貿易は大幅成長となった。輸入総額は1681億米ド
ルで、対6月期の前年比0.7%減より反転した。
 連平氏によると、7月の輸入成長は早いのは、原油輸入量が比較的大きく関係す
るとともに原油価格が上昇していることで、輸入総額の押し上げ効果があったため
という。
 有名な職業投資家の黄生氏は取材に対し、輸入額の大幅成長は、原油に関する製
品価格の大幅上昇との関係を除くと、資本流出と関係しているかもしれないとした。
〈「日帰り貿易」半年で644億米ドル〉
 以前、虚偽の貿易増加を抑制するために、国家関連部門は一連の措置を講じた。
 厳しい抑制策のもと、5月期の中国大陸の対香港輸出は前年比7.7%減、4月より29%
減となった。6月の減少幅は7.0%減に縮小したが、6月の中国輸出入データには輸出
入ともにマイナス成長があらわれた。7月期には、中国の対香港貿易総額は292.8億
米ドルで2.8%増となった。
 データの全面的な回復に対し、専門家は、取り締まり緩和をすると、虚偽貿易は
またもや繰り返される可能性は排除できないとしている。
 同様の事例として、税関総署直属の事業単位である全国税関情報センターが主催
する税関情報ネットで8日発表された「2013年上半期経済情勢概要及び我が国輸出
入貿易情勢分析報告」(以下「報告」)によると、2013年上半期の中国の輸出入総
額は12.5兆元、ドル換算で19976.9億米ドル、8.6%増で、前年同期より0.7ポイント
増だった。
 この報告では、中国の「日帰り貿易」に対しても重点的に分析を行っており、結
論として、「日帰り貿易」の影響を受け、上半期の中国の輸出入貿易には急激な乱
高下があり、月ごとの変動幅が大きいとしている。
 1月の輸出入規模は3458.4億米ドルに達し、26.8%増だった。2月、輸出入成長は
大幅下落し、輸出入総額は1%増で、前期比23.8%減だった。3月、輸出入貿易に反動
があらわれ、12.1%増だった。4月、輸出入総額の成長は持続的に上昇した。5月、
輸出入貿易に転換点があらわれ、成長速度は大幅下落し、前年比0.4%増にとどまっ
た。6月、輸出入貿易は引き続き下落状況で、輸出入はともにマイナス成長となり、
そのうち輸出の成長速度が大幅減で、前年比3.1%減だった。
 「報告」によると、上半期輸出入データが激しく変動するのは、「日帰り貿易」
の影響を受けたものであり、過去4カ月、対香港との日帰り貿易が全体として積み
上がったことをあらわしている。
 仮に、「日帰り貿易」の影響を取り除くと、今年上半期の輸出入総額は1兆9332.0
億米ドルで、前年比5.1%増で、8.6%より3.5ポイント低くなる。つまり、「日帰り
貿易」は輸出入貿易の3.5%、計644億米ドルの貿易額に影響している。
〈保税区域の「日帰り」が深刻〉
 以前、当紙が報道したように、国境をまたぐ資金が虚偽貿易を利用して、輸出製
品の単価を高く申告して域内に持ち込んで利ざやを稼ぐ、これはよくある手法である。
 「報告」でも裏づけているが、同じ商品が中国と香港の間を頻繁に出入りするの
は、地方政府が推進しているほか、さらに高い次元の原因としては、資本というの
は利益を追求するものだからである。
 今年以降、人民元の対米ドルの仲値が累計で1.52%人民元高になり、強力な人民
元高と中国域内外での顕著な金利差が、域外のホットマネーの巨大な吸引力を生み
出し、「日帰り貿易」はホットマネー流入の土台として絶えず大きくなっている。
 社会科学院世界経済・政治研究所国際貿易研究室の宋泓主任は取材に対し、同一
の商品が中国、香港の間を頻繁に出入りする最も重要な原因は利ざやを稼ぐことで
あると述べた。
 また、地方政府の推進も原因の一つかもしれず、一部の地方が対外貿易成長デー
タを完成できない場合、幾つかの虚偽性が高い貿易活動をしているはずだという。
 「報告」の対香港「日帰り貿易」の税関管轄区の分析では、約70%の税関特殊監
督区域貿易は福田保税区で発生していることがわかったが、それは地理的条件が原
因であり、「日帰り貿易」の商品は基本的に香港―深セン間の頻繁な出入りによる
ものだと判断できる。
 「報告」によると、1―6月、税関特殊監督区域方式で香港に輸入した製品の生産
最終地のうち、台湾は中国にわずかに次ぐ27.0%の第2位で、「日帰り貿易」の主要
発生地であった。
 1―6月の中国と香港、台湾の貿易激増の原因は「日帰り貿易」だが、中継地とし
ての香港は主に貨物集散機能を引き受け、電子生産が集中する台湾は日帰り貿易の
商品の提供地という役割を演じている。
 目下国務院が12条措置で輸出を促進し、8月1日から年末までの5カ月、輸出商品
検査費用の免除、税関の通関速度の加速、さらに金融機関の外資企業に対する融資
協力を求めている。質検総局は1507商品に対して輸出検査を行わないことにしている。
 これらの措置は輸出企業の輸出を促進し、注文数の増加に有利に働く。しかし、
関係者は、貨物の通行がさらに便利となり、虚偽貿易行為が再び勢いをもって台頭
すると見ている。
 有名な職業投資家の黄生氏は取材に対し、7月の貿易データに大幅な反動があら
われたことは、取り締まり強化緩和のためか、水増しがあるのかどうかはまだ疑問
があると述べた。
〔毎日経済新聞2013年8月9日〕
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