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出稼ぎ労働者の子女の流動する未来

流動する「通学生」 大きくなったら「他の地域の人」

 全国の教育発展統計公報によると、2009年、中国の農村の留守児童数は2200万人
を超えたが、当時の流動児童は1000万人には達していなかった。
 ここ10年で、流動児童の数は40%以上増加した。統計データの中では、彼らは
「都市に移住した出稼ぎ労働者の子女」と呼ばれている。
▽農村留守児童と流動児童の10年間の変遷
 流動児童 農村留守児童
2009年 997.10万人 2224.24万人
2010年 1167.17万人 2271.51万人
2011年 1260.97万人 2200.32万人
2012年 1393.87万人 2271.07万人
2013年 1277.17万人 2126.75万人
2014年 1294.73万人 2075.42万人
2015年 1367.10万人 2019.24万人
2016年 1394.77万人 1726.29万人
2017年 1406.63万人 155.056万人
 子供を家に置いてくることが忍びなく気にかけることや、教育がますます重視さ
れることがあり、出稼ぎ労働者の父母の多くは子供を呼び寄せている。
 「義務教育法」は、学齢期児童や青少年の無償で教育を受ける権利の保障につい
ての一部の流動児童の学校問題を解決した。
 上海を例にとると、2007年から2012年までで、上海市の公立学校で学ぶ出稼ぎ労
働者の子女は17万人から40万人に増加した。
 その後の3年で、上海の公立学校では流動児童をそう多くは受け入れていないが、
出稼ぎ労働者の子女総数の減少により、公立学校で学ぶ流動児童の割合は大きく増
加し、2015年に80.42%に達した。
 同じ一線都市である広州、深センでは、公立学校で学ぶ流動児童の割合はかなり
低い。
▽広州では流動児童10人中4人しか公立学校に行けない
 義務教育段階の流動児童数 公立学校で学ぶ数
上海  50.06万人 40.26万人
北京  48.36万人 37.87万人
広州  60.13万人 25.45万人
深セン 78.58万人 36.29万人
 公立学校の人数枠には限りがあり、より多くの流動児童に無償の義務教育を受け
させるために、地方政府は現地の私立学校と協力し、政府出資により私立学校の人
数枠を購入し、流動児童に無償の学びを提供した。
 しかし、政府の経費にも限りがあり、購入した人数枠にも限りがあり、地方政府
の教育経費で引き受けられる範囲を上回れば、私立学校で自費で学ぶことを選択す
るしかできない流動児童もいる。
 2015年、一線都市のうち、義務教育段階の流動児童数が最も多いのは深センで78
万人を上回った。その次が広州で約60万人、上海と北京はそれぞれ50万、48万人だ
った。
 流動児童の入学者数に影響する2大要素は、現地政府の人口政策や教育経費の多
寡である。まず、教育経費から見てみたい。
 「教育部、国家統計局、財政部の2017年全国教育経費執行状況統計公告」による
と、昨年、全国の普通小学及び普通中学の学生当たりの教育事業費はそれぞれ1万
199.12元、1万4641.15元だった一方、学生当たりの公共経費は2732.07元、3792.53
元だった。
 教育事業費には、小中学校の教職員の給料、学校の開設、建設及び正常運営費用
が含まれている。公共経費は学生が学ぶ日々の費用である。
 つまり、財政は、小学生及び中学生の教育経費として、それぞれ1人当たり1.3万
元、1.8万元を毎年補助している。
 しかし、教育経費は主に戸籍によって支払われる。ある場所の戸籍の学齢期児童
が別の場所に流入し、その場所で入学すると、流入地では、当該児童の生徒当たり
の公共経費(基準による定額計算される、毎年1人当たり600元)及び「両免一補」
(学費免除、教科書費及び貧困寄宿学生に提供する生活補助、毎年1人当たり約600
元)が支給されるだけである。
 これはつまり、義務教育段階の流動児童の90%以上の教育経費は流入地の財政が
引き受けているということである。
 一線都市、北京、上海、広州、深センの学生当たりの教育経費は全国平均水準を
はるかに上回る。
 上海を例にとると、2008年から2015年まで、上海市の公立学校で学ぶこれら子女
の学生当たりの投入額は1.4万元から2.1万元にまで増加し、政府委託の私立学校の
学生当たり投入は2千元から6千元にまで膨張している。
 2015年、上海の流動児童の教育に対する財政投入は88.68億に達し、当年の上海
市公共財性教育総支出の12%近くを占めた。
 北京、上海に比べ、珠江デルタ地域は流動児童数が巨大で、地方財政圧力は過大
になっている。
 例えば、深セン市には80万人近い義務教育段階の流動児童がおり、毎年必要な教
育経費は100億を超える。教育経費の不足により、珠江デルタ地域の流動児童が無
償で義務教育を受ける割合は50%にとどまっている。
 その一方、たとえ経費に余裕があっても、流入地で比較的厳格な人口政策を実行
していれば、当該地域の流動児童が無償の義務教育を受ける割合は低くなっている。
 2014年以降、大都市人口規模の調整に伴い、北京、上海の流動児童の入学のハー
ドルは高くなった。北京での「5証」、上海での居住証及び就業登記という要求は
多くの非正規就業の父母を困らせた。
 このほか、多くの私立学校、特に出稼ぎ労働者の子供の学校では、建設の不合格
や学校の資質の問題で閉鎖させられた。そのため、北京や上海でスムーズに入学で
きた流動児童数は大きく減少した。
 北京では、流動児童の一部は入学基準に達していても、非北京戸籍の学生は高校、
大学入試に参加できないため、多くは中学卒業までもたず、外国に行ったり故郷に
帰ったりすることになる。
▽中学校に上がるハードルで流動児童はもとの戸籍地
 小学校卒業数 中学校募集数
北京  12.6万人 10.3万人
上海  14.7万人 12.53万人
広州  13.3万人 11.63万人
深セン 11.99万人 10.88万人
 「流動児童は、中学校ではもとの戸籍の場所に戻って勉強せざるを得ないのが普
通になった」
 陳媛媛氏(上海財政経済大学高等研究院人口流動・労働力市場研究センター主
任)は「風の中の綿毛 中国流動児童生存報告」の中で、「しかし、大部分の、も
との戸籍地に戻った子供の父母は一緒に帰ることはできず、もとの戸籍に戻った子
供は流動児童から留守児童へと変わる」と言及する。
 研究によると、これらの逆流児童と青少年の抑うつ水準は普通の児童や留守児童
よりも顕著に高くなっている。彼らは長い時間父母の近くにいたが、進学問題でも
との場所に戻らなければならなくなり、親と離れ離れになってしまった。
 各地の教育指導大綱やシステムがさまざまなことにより、多くの逆流児童は多か
れ少なかれ学業上の試練に直面する。
 このほか、大都市から小さい町に戻ることで心理的な落差が生じ、一部の逆流児
童に、できるだけ早く学業を終え再び大都市に戻ろうという考えを持たせるように
なっている。
▽各教育段階学業終了数(2015年全国1%の抽出調査)
 都市 鎮 農村
小学   2.8万人 4.3万人 14.3万人
中学   1.3万人 1.7万人 4.7万人
普通高校 0.26万人 0.25万人 0.52万人
 データによると、相当の割合の逆流児童は、高校を終えたら学業を終え、その後
以前いた都市に戻りアルバイトを考えている。しかし、このような「都市回帰」は、
彼らが「他の地域の人」という身分をできるだけ早く抜け出すことを助けることは
できない。目下、一線都市のポイント制の定住政策では、彼らの相当数は永遠に定
住し「現地の市民」に変わることはできないかもしれない。
 「家庭の背景がよくない学生、成績がよくない学生であればあるほど、学校の質
がますます重要になる」
 陳媛媛氏によると、「なぜなら、優秀な学生あるいは家庭背景がよい学生は、自
分自身あるいは家庭が学校教育の不足を補うことができるからである。父母に余裕
がない学生は、学校の質が重要な役割を果たす。そのため、政策上は、弱者の家庭
の児童であるほど政府は彼らが受ける教育の質を注視すべきである」
 もし流動児童の教育経費が人数枠に合わせて移動できれば、もし一線都市で人口
規模の調整と同時に流動児童の学校問題に力を入れていれば、これらの千とも万と
も言える「都市に移住した出稼ぎ労働者の子女」はもう少し気楽に過ごせるし、少
なくとも「他の地域の人」という身分に包囲される必要もなくなる。結局、彼らも
国の未来なのだから。
注:近年来、「農業移転人口」の都市定住が奨励され、「その場所での都市化」の
政策が加わり、もともと相当多かった農村留守児童の一部は「都市留守児童」にな
った。したがって、上記文章で取り上げている約3000万の農村留守児童と流動児童
は、現在の中国の人口流動の影響を受けた児童数の全てではない。
〔2018年11月8日新京報〕
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