中国絵本市場の外国絵本の存在感
絵本の「超人気商品」をつくっているのは誰か?
十数年前、絵本が中国本土の市場に参入したとき、親たちはまだ、児童書の価格
が妥当であるかを評価するのに文字量を使っていた。
児童書出版ブランド「ププラン絵本館」(蒲蒲蘭)の李波編集長がそのころ受け
た親からの反響は、「本1冊で20ページ、数十文字なのに、数十元で売るのは高過
ぎるのではないか」だった。
中国国内児童書市場では、絵本が登場する前、幼児のための最も主流な読み物は、
伝統的な漫画や、物の名前や文字を覚えるための啓蒙的壁かけ製品だった。
2003年、民営の出版社の新経典は、「愛の木」(The Giving Tree)という翻訳
版の米国の児童絵本を導入し、これが中国の絵本業界で最初に出版された作品の一
つだった。それ以来、海外のすぐれた絵画を翻訳編集することは、中国国内の出版
社の最も主流な方法となっている。2015年の当当網の統計によると、輸入版絵本は
この垂直市場の総額の約7割を占める。
「これは、求められれば必ず応えるリンゴの木と、求めて飽くことのない子供に
よって、ともにつくられた暖かく、少し悲しい感動的な物語です……」、中国語版
「愛の木」の物語の紹介にはこのように書かれている。この本は、その後10年間で
70万部を販売し、新経典社の児童書分野における重要な代表作となった。さらには、
新経典社は「愛の木」をみずからの児童書事業の事業名とした。
2020年、京東図書の絵本販売の取引額は、このeコマースプラットフォームで最
大の児童書カテゴリーとして、初めて児童文学を上回った。
京東図書自営児童書部担当者の万峰氏は「その理由は、主に2020年の新型コロナ
の流行に関連している。幼児が自宅にいる時間が長くなり、多くの父兄が、子供の
家での生活を充実させるために絵本を購入した」とした。
しかし、2020年は、中国絵本市場が10年の急速な成長サイクルを終了させる転換
点となる可能性がある。
北京開巻の統計データによると、絵本製品の売上規模は、前年同期比で2019年の
25.47%から1.91%まで下落した。2020年の国内書籍小売市場で出版された新しい絵
本種類も、毎年の増加傾向を終了し、2019年前年同期比で800種類余り減少し、3713
種類を記録した。2018年の新刊出版と比べると4割近く減っている。
実は、ププラン、愛の木に代表される幾つかの大きな児童書出版ブランドは、毎
年、新刊図書の生産量が相対的に固定されている。ププランの2020年の実際収入
(書籍販売収入)は、前年同期比で15%増加した。しかし、2015年以来、絵本ビジネ
スに高望みをした大手出版社がこの新市場に殺到し、絵本の新刊出品量を爆発的に
増加させた。
「父兄の絵本に対する需要が前倒しして満たされ、ここ1―2年で新たなプレーヤ
ーはほぼ参入していないので、市場の増長は2020年に停滞があらわれた」ある絵本
業界関係者はこう指摘している。
絵本は、なぜ数年のうちに一種の児童書ベストセラー商品となったのか?。答え
は絵本市場のベストセラーリストに隠されている。
2020年のベストセラーリストのトップ10のうち、ほとんどの書籍は2010年以前に
中国国内で初めて出版され、細分化された絵本市場のベストセラーリストに長年ラ
ンクインしている。これらの「人気商品」は、若い父兄に絵本の特別な価値を徐々
に認識させてきている。
2004年、日本の老舗出版社であるポプラ社は、中国で書籍発行会社「北京ププラ
ン文化展有限公司」を設立した。ポプラ社は、宮西達也のティラノサウルス・シリ
ーズ、ねずみくんシリーズ、こぐまちゃんシリーズなど、多くの高品質の児童書資
源を有する。
宮西達也のティラノサウルス・シリーズは、2005年にププランが中国に初めて導
入した作品に選ばれた。
この絵本は、同時期の日本では特に「人気商品」ではなかったが、ププラン編集
者は、著者の宮西氏はお話がうまく、小さな読者との良好なやりとりをすることに
注目した。そのため、ププランは、中国での絵本巡回講演に宮西氏を招待した。
李波編集長は「言葉が通じなくても、彼は表情やボディーランゲージを通して、
小さな読者と父兄に特別な感覚を与えることができる」と言う。
この絵本巡回講演は、書籍の販売に大きな役割を果たした。ププランは、参加者
数が数十人から数百人にふえ、さらには2000人の講演会さえ開催されるようになっ
た過程を目の当たりにした。宮西氏自身も、この活動に熱心に参加し、時には、1
日に2つの都市を巡り、3つの講演会・サイン販売会を開き、メディアのインタビュ
ーを受けることもあった。
▽2020年、中国児童書市場の主なカテゴリーと割合
児童文学 23.71%
児童科学 21.42%
児童絵本 18.56%
識字啓蒙 10.22%
その他 26.09%
〔第一財経2021年3月17日〕
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