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電子マガジン・中国最新情報
中国国内各紙の報道をもとに編集部が独自のセンスで選んだ、中国経済全般、政策動 向、産業一般、社会などホットな中国情報満載。日本の報道では物足りない、今の中 国を日本語で読みたい方は必見!
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電子マガジン《中国最新情報》  No.661 2016年11月8日
発行:《中国最新情報》編集部 http://www.bizchina.jp/
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◎「ビジネス企業研修@中国」http://www.bizchina.jp/
★今週の読者数合計:6,453名(2016年10月24日現在)

━【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏【特集:加速する海外投資と着実な資産の海外流出】
●米国が最大の投資先 中国の今年の海外不動産投資額は235億米ドル
●海外投資がとまらない なぜ外国人からの受けが悪いのか
●中国で9万人の資産が億に 60%が海外資産

┏【国内経済】
●上海で利益状況が「良好」と回答する企業は24.3%にとどまる
●5割以上の企業 人件費負担が重いと回答
●経済が最も発達した省市を苦しめる サービス業減速

┏【経済データ】
●外国為替(11月7日)

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……【特集:加速する海外投資と着実な資産の海外流出】…………………………
●米国が最大の投資先 中国の今年の海外不動産投資額は235億米ドル
 世界をリードする不動産サービス組織のDTZが発表した「中国対外投資市場報
告」で、今年以降、中国人投資家が海外不動産市場で累計235億米ドルを投資し、
史上最高を更新したことが明らかになった。

 2016年1―8月、中国の海外不動産投資の大口取引総額は235億米ドルに達し、既
に2015年全年の257億米ドルの投資額に近づいている。中国国内の一線都市に高品
質な購入可能な資産が不足し、主要資産の利益率が圧縮され、中国人国内投資家は
ますます海外への投資チャンスを求めるようになっている。

 米リアル・キャピタル・アナルシスのデータによると、キャッシュフローが比較
的安定しているオフィスビルが中国人投資家に最も選ばれている。8月末現在、今
年の中国の海外取引額のうちオフィスビルは51%、、ホテル投資は33%を占めた。

 今年1―8月、米国経済の回復とドルの力強い動きにより、米国は中国人不動産投
資家の最大の投資先になり、投資額は海外投資総額の57%を占めた。香港、オース
トラリア、イギリス、カナダも今年の人気投資先となった。この5市場は今年の不
動産投資先の97%を占め、前年に比べ、投資先は先進国の拠点都市に集中し、中国
人投資家の比較的保守的な投資傾向を体現するものとなった。

 DTZの予測によると、2016年全年で、中国の対外大口取引は前年比37%増、投資額
はこれまでの記録を更新する350億米ドルが見込まれる。今年の海外資本投資は成
熟した不動産市場や拠点都市に集中し、当面は、アメリカ、オーストラリア、イギ
リス等の先進国が中国海外投資の人気投資先となる。〔中国新聞網2016年10月20日〕

●海外投資がとまらない なぜ外国人からの受けが悪いのか
 2016年10月18日、商務部は定例記者会見において今年1―9月にかけての中国ビジ
ネスの全体状況を報告した。
 今年1―9月において中国全国で使用された外資は計951億米ドルである一方、国
内投資者は世界160カ国・地域の6535社の海外企業に対して非金融型の直接投資を
行った。その累計投資額は1342.2億米ドルとなり、同期に吸い寄せた外資金額をは
るかに超過することとなった。
 海外投資は近年徐々に過熱状況にあり、今年はよりその勢いがとどまることがな
く、映画館チェーンからヨーロッパサッカー強豪チームまでと、中国ビジネスマン
たちはまるで世界を購入しようとするかのような勢いである。

 今年の海外投資は果たしてどこまで過熱していくのだろうか。
 商務部データによると、2016年1―9月の非金融型の対外直接投資は既に2015年の
前年の投資額を上回っており、2011年の2倍以上だという。

 英フィナンシャル・タイムズの統計によれば、過去20年間、中国の海外投資はま
ず石油と天然ガスが投資の26.2%を占めていた。その次が採鉱と金融領域で、それ
ぞれ12.9%、11.2%を占めていた。住宅を熱狂的に購入していた中国の富裕層は当然
不動産業を放ってはおかず、4.1%の投資割合は科学技術業に次いだ。

 「一帯一路」の政策実施が中国の海外投資を後押しする作用はあったものの、中
国企業の投資の重点は依然として経済の発展した最先端技術を持つ北米やヨーロッ
パにあった。経済構造の転換とグレードアップのニーズに伴い、中国企業の主要M&A
目標も資源企業からハイテク企業へと変わっていった。

 転換ニーズを除き、海外投資が急激に伸びたもう一つの原因は、潤沢な資金にある。
 経済鈍化に伴い、中央銀行は金融緩和を行い、一部企業は大量に低コストの融資
を得た。中国国内の良質の資産は少なく、また、国家政策が海外投資を支持する状
況下において、資金に困らない中国企業は海外で大量の購入が可能だった。
 このほか、人民元の持続的な貨幣価値の下落も、資本を海外に回すことでリスク
を減らすという適当な方法を企業が探すことになった理由である。

 中国の海外投資の激増は外国政府の神経に触れたばかりでなく、多くの外国民衆
にも不満を持たせることとなった。
 大多数の中国人の意識において、外資が参入し投資することはよいことで、先進
技術をもたらすだけでなく、経済にとっても最大のプラスとして考えられているが、
なぜ中国が他国に投資をすることが現地の人々から歓迎されないのだろうか。

 カナダ・アジア太平洋基金が以前行った調査によると、西欧の人々は、日本、韓
国、インド、中国の4大アジア大国による投資においては、日本を最も歓迎し、中
国の投資に最も反対するという。
 半分近くの人が、中国の投資後、本国が資源のコントロールを失うことを心配し、
42%の人が中国企業の労働水準が非常に低いと考え、40%の人が中国企業による現地
の環境破壊を心配している。このほか、企業腐敗と安全問題も西欧の人々が心配す
る重点だという。

 実際、これらの心配には筋が通っていないわけではない。上述の基準から見た際、
多くの中国企業は国内でよいパフォーマンスを行っておらず、その上、一部企業は
過去に海外現地の法律を守らず、環境破壊等の行為を働き、海外に対しよくない印
象を与えた。
 このほか、中国企業には長期にわたり透明度が足りないという問題があり、融資
と全ての権利情報が曖昧で、政府の企業経営に対する介入もとても多く、外国の管
理部門に中国投資者に対する審査への力加減を強めさせている。また、中国企業の
M&A成功後の管理方法と経営状況もたびたび不安視される。中国投資は歓迎され尊
重されるべきであるが、お金があるだけでは足りない。

〈中国の対外投資空前の人気〉
▽非金融類対外直接投資額(億米ドル)
 2011年 600.7
 2012年 772.2
 2013年 901.7
 2014年 1028.9
 2015年 1180.2
 2016年1―9月 1342.2

▽中国投資はカナダで最も歓迎されていない
  投資に賛成 投資に反対
 中国  42% 49%
 インド 59% 30%
 韓国  77% 14%
 日本  78% 13%

▽中国の投資を歓迎しない理由
 本国が資源のコントロールを失う48% 労働水準が低い42% 環境被害40%
 企業腐敗30% 安全問題29%

▽1995―2015年中国対外投資分布
 石油・ガス26.2% その他19.0% 採鉱12.9% 金融11.2% 公共事業・エネルギー7.7%
 科学技術6.8% 不動産4.1% 自動車3.7% 交通3.6% 食料・飲料2.7% 保険 2.1%
〔網易2016年10月27日〕

●中国で9万人の資産が億に 60%が海外資産
 10月21日、平安証券有限責任公司(平安証券)の第1回家族資産運用サミットが
海南省三亜市で行われた。
 平安証券公益事業部の楊敬東総経理は先日のインタビューの際、国内富裕層の中
で60%が海外資産を保有しているが、海外資産は制限があったり、余り親しみがな
いため、金額的には決して高くなく、総資産の10%程度になっていると答えた。
 楊敬東総経理は、富裕層の投資の重点は「貯蓄に重点を置き、投資はほどほど、
非金融資産が多くを占め、投資の種類が偏っている」と指摘する。

 平安証券は、中国平安(保険)集団股フェン有限公司子公司の平安信託有限責任
公司の子会社であり、総合金融企業である。平安証券は今年に入ってから、家族資
産運用システムの準備を始めたばかりで、5チームが参加し、現在管理している資
産規模は120億以上になる。
 平安証券は富裕層に対しさまざまなレベルを設けており、その中で、富裕層の個
人顧客の年間1日平均の管理額は3000万元に上り、投資の専門家や企業顧客は6000
万元に上る。
 胡潤財富が報告した最新のデータによると、平安証券の目標投資資産である3000
万元以上に達する中国富裕層顧客は1.7万人以上に上り、総資産は31兆元、平均で
は18億元程度である。
 「数億、十数億の資産がある人間のみが数千万の投資が可能である」楊敬東総経
理は解釈する。

 胡潤研究院最新報告によると、2011年から現在に至るまで中国の富裕層は増加し
続けており、2016年5月には、中国で1000万の資産を持つ富裕層は134万人となり、
昨年に比べて13万人、10.7%の増加となっている。1億以上の資産を持つ富裕層は8.96
万人で、昨年に比べて1.1万人、14.1%の増加となっている。
 地域ごとで見ると、華東地区の富裕層が一番多く43%、華北地区が23%と2番目に
多い。華南が19%で3位となり、西南、華中、東北、西北の4地域を合わせて15%とな
っている。
 省ごとで見ると、2016年は広東省が北京にかわって最も富裕層が多い地域となっ
た。広東省の富裕層が24万人となり、大きく増加した。2位は北京で23.8万人、昨
年に比べ2.4万人増加した。3位は上海で20.5万人、昨年に比べ2.4万人増加した。4
位は浙江で16万人、昨年に比べて1.4万人増加した。
 注目すべき部分は、この4省の富裕層は84.3万人になり、全体の63%を占めている
ことである。

 胡潤のさらに詳しい報告によると、中国の1000万の富裕層は4種類に分類される。
企業が55%、エリート層が20%、土地ころがしが15%、トレーダーが10%となっている。
 その中で、エリート層の主な構成は大企業やグローバル企業の上層部の人間にな
っている。また、その4種類の分類の中で、企業とエリート層の人数は比較的に安
定している。
 今年から都市部の土地価格が爆発的に上昇した。土地ころがしの富裕層は昨年に
比べ5%増加した。統計によると、土地投資において彼らの持っている資産が占める
割合は89%になる。それと同時に、昨年からのA株の調整によって、富裕層の中のト
レーダーはA株の暴落とともに減少している。

 家庭状況で見ると、富裕層は核家族が中心で77%、次に3世代同居が13%、独身が1%
になっている。
 財テク方法の選択では、富裕層は依然として貯金、不動産、保険に頼っている。
 胡潤富財の報告では、これらの部分の中国富裕層顧客の投資傾向では、98%の資
産は貯金と不動産になっており、単一的である。90%の顧客は保険を買う習慣があ
り、たった20%の顧客のみPE/VC(非上場企業に投資するリスク投資)に投資している。

 しかし、ノーリスク投資の利率が下がるにつれて、富裕層の投資要求も多様化し
ている。
 「中国の家庭資産運用の概念は比較的新しい。ヨーロッパの発達した市場の家族
資産運用領域は既に100年以上の歴史がある。モルガン・スタンレー、スイス銀行、
ゴールドマンサックスは既にすばらしい家族資産運用の商品を確立している」と中
金公司資産運用部責任者の孫冬青氏は指摘する。

 地球規模で見ると、中国の個人資産運用市場は既に世界2位の市場になっている。
 ボストン・コンサルティング・グループの予測では、2020年末に、中国富裕層家
庭は2015年の207万から388万世帯にふえ、年平均13%の増加となり、金融資産は100
兆元となり、年成長率は15%になる。
〔澎湃2016年10月23日〕
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……【国内経済】…………………………………………………………………………
●上海で利益状況が「良好」と回答する企業は24.3%にとどまる
 上海市の政府管理部門の委託を受け、上海企業競争力研究センターが先日発表し
た調査研究結果によると、2016年上半期の上海市の市場景気指数は下降傾向で、利
潤獲得状況を「良好」とした企業は24.3%、「普通」52.3%、「よくない」23.4%だ
った。
 企業経営者は、政府が企業税収負担軽減策を講じ、イノベーションを奨励する積
極的な外部環境整備を期待している。

 上海市の企業の運営状況を深く分析するため、今回の調査研究では、データの調
査研究と分析体系をつくった上で、定量的、定性的な分析方法でデータモデルをつ
くり、利益獲得能力、経営成長、運営リスク、市場景気、経営マインド等5大指標
で上海市の企業経営総合指数を計算し、かつ、今年上半期の調査研究データを企業
運営管理の分析ツールとした。

 調査研究結果によると、2016年上半期の上海市の市場景気指数は下降傾向だった。
具体的には、企業の利潤獲得能力の状況を「良好」とした企業は24.3%、「普通」
が52.3%、「よくない」が23.4%だった。
 企業の販売収入指数の一部に下降が見られ、資産、利潤指数は下降が鮮明だった。
リスクにおいては、企業経営が正常であるのは45.6%、高リスクの割合は33.3%に達
し、低リスク企業はわずか21.1%だった。そのほか、企業経営総合指数は前期比2.1
ポイント減だった。

 報告では、企業経営は目下相当困難な時期にあり、その原因は、外需不足が企業
製品の輸出数量や輸出価格の大幅減を招いていることや、生産能力過剰がますます
激しくなり、企業の設備利用率の下落が鮮明であることが指摘された。したがって、
目下のマクロの背景に基づき、経済復調プロセスが比較的長くなる可能性があると
見ている。

 資料によると、上海企業競争力研究センターは、同済大学、東華大学、上海社会
科学院、上海貿易促進会、上海市企業家協会、上海市商業連合会の6団体により設
立され、2016年10月末までに既に各種報告を379件発している。
〔上海証券報2016年10月21日〕

●5割以上の企業 人件費負担が重いと回答
 工業情報化部中国中小企業発展促進センターが24日に発表した報告で、現下の経
済減速圧力のもとで、企業の主観的な負担感が強くなっており、56%の企業は現在
全体的に負担が重いと見ていることが明らかになった。

 工業情報化部が24日に開始した第5回全国企業負担軽減政策宣伝週間活動で、工
業情報化部中小企業発展促進センターの苗長興主任は、同センターが全国31省市6000
企業に企業負担調査業務を展開したことを明らかにした。そのうち、第一次、二次、
三次産業の企業の割合は5.19%、84.48%、10.33%。
 調査結果から、人件費コスト、融資コスト、水道・電気・ガス・土地等要素コス
トが企業負担の比較的重い3分野で、次なる企業負担減の重要な方向ともなってい
ることがわかった。前年と比較すると、46%の企業は人件費コスト負担がさらに重
くなったとし、28%は融資コストがさらに重くなったとしている。同時に、20%の企
業は行政の許認可と監督検査の負担が軽くなったとしている。

 北京大学経済政策研究所の陳玉宇所長は取材に対し、現下の国内企業の負担は2
つの方面からのもので、一つは有形的なもので、主に労働力コスト、税金等で、も
う一つは無形的なもので、取引コストや許認可コスト、さらに複雑な行政手続等で
あるとした上で、企業の負担軽減のために、さらに無形コストをなくすべきである
とした。

〈負担軽減はルールづくりが鍵〉
 工業情報化部のチーフエンジニアの張峰氏は、ルールづくりを通じて、行政の許
認可や料金徴収項目数の減少をさらに進め、企業の発展環境を最適化することを強
調する。
 このほか、国務院企業負担軽減部際聯席会議弁公室の主任で、工業情報化部運行
局の鄭立新局長は、中央や各地域の各料金徴収ルールを整理し、統一的な整ったフ
ォーマットに基づいてデータベースをつくっており、これを基礎としたルールの検
索システム構築は目下システムテストと機能整備中で、年末には企業に照会サービ
スを提供する予定であるとしている。

 「ルールは企業負担軽減業務推進の「鍵」であり、サービス企業発展の重要な足
がかりである。最近、国務院の構想に基づき、工業情報化部、財政部は企業保証金
の整頓を全国展開した。残す予定の企業保証金項目についてルールをつくった。今
後、ルール外の企業保証金項目は一律に徴収されることがなくなる」
 張峰氏によると、「ルール」は企業の料金徴収の規範化にとり非常に良好な効果
があるが、幾つかの企業によると、個別の地域や部門では料金徴収ルールの公表項
目が不明確で、フォーマットも統一しておらず、公表地域も分散し、ルールの効果
に影響している。

 苗長興主任によると、調査回答企業の45%は水・電気、ガス等の機関の料金徴収
負担が最も重く、その次が銀行の料金徴収(39%)だとしている。
 ここ数年来、融資コストの高どまりで、企業は「銀行融資の基準利率が高い」
「利率の上昇幅は大きい」と見ており、各レベルの政府部門が関連規定を出しても、
「中間業務の料金徴収が高過ぎる」「銀行から融資を受けると一部が強制的に預金
となる」等の問題が依然として存在する。これも、各種料金徴収の公開、透明化す
るというルールづくりをなぜ行うかという原因である。

 陳玉宇所長は、企業負担が比較的重い原因は2つあるとしている。
 一つは外部要素で、例えば各種行政手続費用、保険金費用等、これらは国家の
「ルールづくり」を通じてさらに規範化が進められる。もう一つは、企業自身が直
面する高度化転換に関するもので、多くの企業の労働生産効率の伸び率が労働力コ
ストの伸びの速度より遅いことである。

〈人件費コスト負担がトップ〉
 今回の工業情報化部が発表した評価報告によると、企業の目下の負担が重い分野
として、人件費コスト(64%)、融資コスト(55%)、水・電気・ガス・土地等要素
コスト(50%)が挙げられた。企業が直面する大きい負担のうち、人件費コストが
依然としてトップだった。

 「9月の生産者価格指数は54カ月ぶりにマイナス成長がとまった。経済の下押し
圧力が大きいが、速度は遅くなっている。しかし、我々企業の労働生産率は高くな
く、さらに労働集約型の道を進めば、国内労働要素の上昇に伴って、企業収益は自
然と下落に転じる。企業収益が下落に転じてから、金融機関の支援を得ることは困
難で、融資難の問題があらわれる。企業の負担が重くなる理由は、経済の下押し圧
力が大きくなるということだけではない」(陳玉宇所長)。

 北京のある建材店の女社長は取材に対し、ここ数年の従業員募集の給料待遇は上
がりっ放しで、確かに企業に大きくない負担をもたらし、特に技術者には月給は7、
8000元となったと答える。
 「2010年より前、従業員の月給は約3000元だが、現在はトラック運転手募集の基
本給は5000元である。各種税金を除くと、企業自身としての利益はひどく押し潰さ
れている」
 陳玉宇所長によると、従業員の給料は雇用主が決定するのではなく、労働市場全
体の労働の需要と供給のバランスのもとに決定されるという。中国の労働市場の需
要が非常に旺盛であるため、農村労働力もそれほどふえず、中国の労働力の賃金は
上昇し続けている。

 南開大学社会建設管理研究院の関信平院長によると、ここ数年、中国の労働力コ
ストの伸びは急激で、従業員の賃金収入と社会保障が引き上がったが、これらは企
業の利潤の伸びを押し潰し、製品の価格を引き上げ、製品競争力も弱め、産業能力
過剰の問題があらわれている。
 また、現在、中国は中所得国から高所得国へと発展しており、過去の労働集約型
企業に依存した成長というハードルを乗り越えなければならない。したがって、中
国は現段階で産業転換を促進し、いかにして労働生産性を向上させるかを考えるべ
きで、労働者の資質の向上させなければ労働生産率は向上できない。

 これは陳玉宇所長の考え方と一致している。
 関信平院長は、正しい思考方法としては、まず企業の労働生産性を上げるべきで、
これは最も根本的だが、長期的なプロセスが必要であると見ている。また、一方で、
国が社会保険比率を下げることだとしている。内外双方をあわせれば、これらの負
担を解決できる。〔毎日経済新聞2016年10月25日〕

●経済が最も発達した省市を苦しめる サービス業減速
 各地の統計局の統計数字によると、今年の第3四半期(7―9月)の北京、上海、
江蘇、浙江、広東の経済成長は上半期(1―6月)に及ばなかった。
 北京、上海、浙江、江蘇、広東の5省市は全国の省域経済の総合競争率のトップ
にあり、中国で最も発達した地域となっている。しかし、第3四半期の経済データ
では、そのさらなる転換がさまざまなレベルで課題に直面していた。

 北京、上海の第3四半期の経済成長は6.7%だった。江蘇、浙江、広東の第3四半期
の経済成長率は8.1%、7.5%、7.3%で、上半期よりそれぞれ0.1、0.2、0.1ポイント
減だった。
 この原因は、江蘇を除いた他の4地域でサービス業の成長が減速したためである。
もっと言えば、金融業、不動産業が減速したためである。
 今年9月末から10月初めにかけて、上記地域の多くの都市で不動産購入制限、融
資制限措置が講じられていることを考えると、第4四半期の不動産の経済への貢献
はさらに減少することは排除できない。
 このほか、これらの地域の不動産の高騰は、科学技術や製造業産業に影響を与え
ている。

〈北京、上海、浙江、江蘇、広東は経済が加速していない〉
 西部、東部の多くの省市と異なり、今年第3四半期の北京、上海、浙江、江蘇、
広東は経済減速あるいは現状維持となった。
 第3四半期の北京、上海経済の経済成長率は上半期の水準を維持して6.7%だった。
江蘇、浙江、広東の第3四半期の経済成長は上半期より0.1あるいは0.2ポイント減
速し、それぞれ8.1%、7.5%、7.3%にすぎなかった

 これらの地域の経済は加速していないし、工業がリードしたわけでもない。
 例えば、北京、上海の第3四半期の一定規模以上の工業の成長率は3.9%、マイナ
ス1.5%で、上半期の1.7%、マイナス4.7%の成長率を大幅に上回った。江蘇の第3四
半期の一定規模以上の工業の成長率は上半期と同じ7.8%だった。浙江、広東の第3
四半期の一定規模以上の工業の成長率は6.6%で、上半期の6.7%に比べて相対的に安
定していた。

 以上の地域の経済が加速していないのは、主にサービス業の減速にある。江蘇の
第3四半期のサービス業成長率9.5%、上半期比0.1ポイント増を除けば、他の4地域
は減速した。
 北京、上海の第3四半期のサービス業の成長率は7.3%、10.3%で、上半期の7.6%、
11.6%を下回った。浙江、広東の第3四半期のサービス業の成長率は9.2%、8.6%で、
上半期の9.7%、8.7%を下回った。

 現在、北京、上海、浙江、江蘇、広東5省市のサービス業が占める割合は全国ラ
ンキング上位、北京、上海はトップ2都市は全体の7割以上を占める。北京、第3四
半期において上海の金融業が経済全体に占める割合はそれぞれ18%、17%、不動産業
が経済全体に占める割合は7%、7.5%だった。江蘇の今年第3四半期の金融業、不動
産業が経済全体に占める割合は8%、5%と、支柱産業である。

 上海社会科学院応用経済所の李偉副所長は、一つの地域でのサービス業の割合の
上昇を単純に強調できないとしつつ、しかし、これらの地域のサービス業の減速は、
調整による原因もあるとしている。
 浙江省社会科学院産業経済研究所の聶献忠副所長は、最近の経済が発達した地域
のサービス業の減速は、国家が実体経済発展のマクロ政策を加速している影響で、
経済が金融から実体へ向かっている結果であると見ている。

 一方、相次いで出される不動産調整措置は、不動産の経済への貢献を下げ、不動
産融資を減速させ、金融業の発展に影響を与えている。
 首都経済貿易大学の張貴祥教授は、北京、上海は人口抑制、産業振興の誘導とし
て不動産購入制限措置を講じており、不動産の影響のほか金融業にも影響が及んで
いるはずだと見る。特に、北京の人口抑制目標の負担は重く、環境、大気汚染状況
の問題を考慮すると、他産業の発展にも一定の影響を与える可能性がある。

〈不動産高騰で押し出し警戒〉
 第3四半期の統計データによると、北京、上海、江蘇、浙江、広東では日に日に
不動産価格が高騰し、ハイテク製造業、科学技術産業にも影響を与えている。
 北京の今年上半期の科学技術サービス業の成長率は11.2%だったが、第3四半期は
10.9%だった。上海の今年上半期のICT、ソフトウエア、情報サービス業の成長率は
16.5%で、第3四半期は15.1%だった。

 事実上、これらの高度サービス業も不動産高騰の影響を受けている。
 北京航空航天大学自動化学院の段海辺副院長は10月19日の2016北京自然科学界・
社会科学界合同会議トップフォーラムの席上、物価、不動産価格の持続的な高騰で、
奨励制度が青年科学技術人材による都市での起業を担保するニーズを満たせず、青
年科学技術人材は科学技術研究において実利志向になり、青年科学技術人材の多く
は「早く効果が出るもの」を選ぶようになっているという。

 李偉副所長は、上海の金融業、不動産業といった業界の割合が増加したのは主に
価格高騰がもたらしたものであり、実際の成長はそれほど早くはないと見ている。
 だから、この問題を重視するべきだとしている。「製造業等の産業移転が産業構
造高度化の一つの目標だと単純視できない。このことで実体経済が発展余地と成長
潜在力を早く失うことになりかねない」(李偉副所長)

 張貴祥教授は、経済発展地域はやはり産業の高度化が進み、産業構造調整が進む
と見ている。
 それによると、大事なことは、調和のとれた発展であり、例えば、北京、上海の
不動産価格が高騰していれば、低所得者層に住宅を保証する政策を講ずるべきであ
る。そのほか、多くの産業は都市の周辺に配置してもいいが、交通が整わなければ
産業の最適な配置等は解決されない。
 「目下不動産調整の堅持は必要であり、妥協できない」(張貴祥教授)。
〔21世紀経済報道2016年10月26日〕

……【経済データ】………………………………………………………………………
●中国の外国為替レート(仲値)
                         (中国人民銀行11月7日)
外貨名  100日本円  100米ドル  100香港ドル  100ユーロ
     6.5064  677.25    87.32  750.99
関連ページ:http://www.boc.cn/sourcedb/whpj/
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《編集者コラム――読者数》
 ここ2回ほどで最近読者数が現実的じゃないほどふえています。正しくない気が
するのでボスに後で確認するとして、今週はこのままにしておきます。(ま)
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●「ビジネス企業研修@中国」 http://www.bizchina.jp/
●バッグナンバーの入手
(83号以降 2000/9/25―) http://www.bizchina.jp/ja/nweek/
●《中国最新情報――編集者コラム》http://ameblo.jp/jckc-colum/
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編集長:李年古/副編集長:前野貴子 特別協力:劉莉生
翻訳:竹内はる菜 澤田裕子 楊桃
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